大切なことは伝説の受験本が教えてくれた

『超合格術 大学合格のための学習プランと心理テクニック』という勉強法マニアの間でとても有名な本があります。

1995年に発売されて以来マニアの間で語り継がれる伝説の勉強本です。

著者の有賀悠さんが「二度と受験本は書かない。再販もしない」と宣言したことから価格が高騰。

一時は3万円ほどの価格がついたこともありました。

今でもアマゾンでは9,000円以上の値段がついています。

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僕は学校の成績は底辺でしたが、勉強法の研究に関しては並ぶ者のない第一人者であったため、その自負を持って、世に存在するありとあらゆる勉強法を集めていました。


僕には同じように「勉強法の研究」を生業とする同志が数人いました。

放課後の教室に集まり、効率の良い勉強法をディスカッションし、

「いかに楽して志望校に合格するか」

を連日連夜議論していました。


そんな愛すべき勉強法マニアの友人たちでしたが、誰一人として成績が良い人はいませんでした。

たった一人もです。

「効率的な勉強法を駆使して楽々志望校に合格だぜェ」

と吹聴している勉強法マニアで、実際に志望校に合格した人は一人もいません。

全員落ちました。

なぜなら、みんな勉強法の研究ばかりに熱心で、肝心の勉強は全く進んでいなかったからです。


サッカーのルールを極めたからといって一流のサッカー選手にはなれません。

イチローの練習方法を詳細に研究してもプロ野球選手にはなれません。

勉強方法を極めても、肝心の勉強をしなければ成績は上がらないし、どんなに「効率の良い勉強法」を知っていても、遺伝による記憶力の差は埋められません。

とはいえ、僕がライフワークとして収集し続けた「珠玉の勉強法」は今になって振り返ると「大人のライフハック」として十分に役に立ちそうな内容が多々あります。

スティーブ・ジョブズが"Connecting the dots."と言ったように、何が将来につながるかはわかりません。

受験のときに全く役に立たなかった「勉強法」がこのブログにつながり、そして光を浴びることになったのです。

今日は伝説の勉強本に書かれていたテクニックの中で、社会人にも役に立ちそうな内容を紹介します。

行動パターンを変えるにはどうしたらいいか

本の冒頭にはこんな記述があります。

まずこの本を5回以上読むこと。
新しいことが行動パターンとして頭に定着し、習慣になるには約100時間の脳への刷り込みが必要といわれている。
習慣化するまで繰り返すこと。

《他人と同じことをやっていたら結果も同じ。》

これ、僕たちが自分を変えるためにも使えるんじゃないでしょうか。

たとえば、何か感銘を受けるような本があったとしても、一回読んで終わりにしてしまう人は多いと思います。

僕も一度読んで満足してしまいます。

でも、心を動かされた本の内容を頭に刷り込み、自らを変化させ、行動パターンに組み込むには繰り返しが必要だと思うのです。

しつこく、100時間くらい

「こうやって生きるんだ」

みたいなことを刷り込み続けないと、ビジネス書を読んでスッキリするだけで、結局何も変わらないのではないでしょうか。


逆に考えると、毎日刷り込んだ内容は価値観を変えるってことですよね。

気になる人のオーディオブックとか、毎日通勤時間に聴くといいと思います。

スケジュールの立て方

スケジュールは長期計画、一ヶ月単位の中間目標までの中期計画、一週間単位の短期的計画、そして一日の中での24時間をどう使うかという時間計画の4つからなる、と受験王は言います。

そのうちで最も重要なのは「一日をどう使うか」です。

毎日いかにして集中した学習時間を確保するかが大事だと言います。

社会人の場合は受験勉強をするわけではないので、「いかに集中して仕事に時間を投入するか」がポイントになるでしょう。


まずは「今日やるべきこと」をすべて書き出します。

次に、書き出した内容に優先順位をつけます。

どこで終わっても優先順位が高いものからこなしたことになるように、優先順位1位のものから始めよ、と受験王は言います。

「○ページを9時から10時までやる」

みたいな計画はだいたい崩れます。

どれくらい時間がかかるかはやってみないとわからないからです。


もっとも優先順位の高いものから取り掛かり、重要なものから片付けていきましょう。

これは社会人としても基本ですね。

いつ誰からチャットが飛んできて、誰に話しかけられて、作業が中断させられるかはわかりません。

大事なことから終わらせるしかないのです。

何かを記憶するには「一度思い出してみること」

受験王は言います。

試験で必要な能力は「限られたことを限られた時間の中で覚え、それを組み合わせてアウトプットすることのできる能力だ」と。

「必要な知識を短期間で覚える」ためには、しっかり記憶することが大切です。

僕は物忘れが激しく、今朝読んだ新聞の内容も既に忘れてしまっています。

いま、受験王の教えを読み返してハッとしました。

なぜ覚えられないかというと、思い出す訓練をしていなかったからです。


「覚えたいものを目にしたら、ひと通りぼんやり覚えたところで、それを視界から除いて思い出してみることが大切なのだ」


と受験王は言います。

漢字や英単語を覚えるときも、無心で何回も書くのではなく、何回か書いたら一度目を離して別の紙に書けるか試してみるのがいいでしょう。

受験王の「思い出す訓練をせよ」という教えは、社会人が何かを学んだとき、TOEICの勉強をするときなどにも使えそうです。

また、受験界では常識のようになっていますが、同じ本を何度も繰り返すことの大切さも強調されています。

一回で何かを覚えられる人はなかなかいないということですね。

それは受験王でも例外ではないということです。

理解とは何か

「理解というのは、暗記した一つ一つの点と点を、なるべく多くの線で結んでいくことだ」

と受験王は言います。

僕はいま、なんとなく統計学の勉強をしているのですが、最初は何がなんだかさっぱりでした。

でも一つ一つの内容を覚えて、何度か復習しているうちに、覚えていたこと物同士の点と点がつながって、理解が進んできた気がします。

まずちゃんと覚えること。

そして覚えた内容をつなげること。

それが理解になるのだ、という受験王の教えは正しいと思います。


会社で何か新しいことを始めるときも、小さなことから覚えていって、それを一つ一つつなげていくのが大事だと感じました。

集中力を高め、学習時間を増やせ

受験王はタイマーを活用して、締切効果を演出せよと言います。

「タイマーで制限時間を設けて、その時間内に問題を解く」

といった使い方をします。

これは会社で資料を作ったりするときにも使えそうですよね。

「30分で資料を8割完成させる!」

みたいに時間を区切って締切を作らないと、ダラダラとやって残業してしまいがちです。

社会人は受験と違って試験管が「やめい!」と言ってはくれません。

できるまでいつまでも残業し放題なのです。

なので逆に締切を作ることで、いい感じに焦って仕事が早くなります。


また、我々は受験王のストイックさも見習わなければなりません。

受験王曰く、

「基本的に休憩は3分がベストである。

タイマーで時間を測り、決めた時間以上は休んではならない」


家で本を読んだりしていると、ついダラダラと休憩してしまいがちです。

特にツイッターは危険です。

いつまでもダラダラと時間を使ってしまいます。


受験王はタイマーで締切を作るのとは別に、ストップウォッチで合計勉強時間を計測せよ、と言います。

朝9時から夜の7時まで勉強したとしても、僕たちは10時間勉強しているわけではありません。

ちなみに僕は今日、朝の9時から机に向かっていて、夜の22時にこの記事を書いているのですが、今、この時間までで読書やプログラミングなどの生産的な活動に費やせたのは5時間弱です。

他はネットサーフィンしたり昼寝したりテレビを見たりで遊んでしまっていました。

「勉強しているつもり」の時間と、「実際に何かに費やせている時間」はかなりギャップがあるということですね。


受験王はストップウォッチで実際の活動時間を測ることで、「意図せぬ活動の空白時間」を減らすことができると主張しています。

「今日は一日13時間勉強するぞ」

と具体的な時間の目標を立てて、ストップウォッチで測れ、ということですね。


これも当然、社会人でも活用できます。

というか、社会人にこそ活用できます。

僕だけかもしれないのですが、会社員生活はものすごく無駄が多いです。

無駄な会議、無駄な資料、周りのうるさい声で集中を妨げられる時間...


生産的な活動に費やせている時間を実際に測ったことはないのですが(怖いので)、
実は労働時間の半分くらいは無駄なことに時間を使っている気はしています。


会社にいる時間は最も頭が働く日中で、その時間を生産的に過ごせてないと、そりゃあ成長しませんわな。

会社でストップウォッチをピッピやるのは難しいかもしれませんが、せめて時間を意識して無駄を減らすようにしましょう。

個人で何かを生み出す場合は一分も無駄にしないつもりでやりましょう。


伝説の受験本は「モチベーションの高め方」的なことにも触れてくれているのですが、それはまた別の記事で紹介します。


「図説」超合格術―大学合格のための学習プランと心理テクニック

「図説」超合格術―大学合格のための学習プランと心理テクニック

大人の勝負は試験と違って正解がない

有賀悠さん、和田秀樹さん、福井一成さん、石井大地さん、荒川栄輔さん...


僕が敬愛し、研究し続けた受験テクニック会の先人たちは今、何をしているのかを検索してみました。

結果、和田秀樹さん以外は何やってるのかよくわかりませんでした。

なんというか、こんなことを言うのはおこがましいのですが、偉大な勉強法研究家で、彼らが残した素晴らしい勉強法に匹敵するような偉大な成果を残している人はあまりいなさそうには見えます。

というのも、試験に合格する能力と社会で何かを生み出す能力はまた別のものだからです。

受験には攻略法があっても、人生には攻略法がないってことです。


社会は答えがないことばかりです。

努力の対象が明確で、やればやるだけ成果が上がる試験勉強と異なり、ビジネスは何を頑張ればいいのかがまずわかりづらいものです。

頑張る場所を間違えたらただのブラック企業労働者として終わってしまうかもしれないですし、「効率さ」とは真反対にある泥臭く人間臭い根回し的なものを頑張らなければいけないこともあります。


受験勉強テクニックの核を成す部分───

つまり、時間を効率的に使って、多くの時間を投入せよ。

目的から逆算して目標を作り、それを達成する手段を考えよ。

という部分は当然社会人にも役に立ちますが、まずもって「自分の頭で目的や目標を考える」部分に正解がなく、答えもないのが社会人です。


だから、面白いんですけどね。

だって、受験勉強に強い人が天下を取れる世界だったら勝ち目ないし。


自分が得意な分野で戦いましょう。

受験は逃げたらダメですが、社会人は負けそうだったらさっさと退散して別のゲームにチャレンジできるのも良いところです。

人生を楽しみましょう。