ネットの音楽オタクが選んだ2021年のベストアルバム 50→1

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ネットの音楽オタクが選んだ2021年のベストアルバム、最終日です。Twitterのハッシュタグと告知記事のコメント欄で参加していただいた722人分のデータを集計しました。

今回のランキングは僅差でした。ありがたいことに年々参加者が増えているので集計対象外のものは除外しているのですが、そういうものに配慮すればまた順位は変わってきたと思います。だけど順位は目安であり、場所や時期を変えれば当たり前のように変わります。だからあまり気にしすぎないでください。この記事はあくまで知らなかった作品を知る場として使っていただければうれしいです。

有志によるレビューもつけました。まだまだレビューも受け付けています。記事末尾にプレイリストも用意しました。楽しんでいただけたら幸いです。それではお楽しみください。(ぴっち)

 

このランキングについて
  • ネットの音楽オタクが選んだベストアルバムは音楽だいすきクラブ、及びそのメンバー等の特定の誰かが選んで作ったものではありません。
  • Twitterのハッシュタグ、募集記事のコメント欄に寄せられたものを集計しています。
  • 722人分のデータを集計しました。
  • 募集期間は2021å¹´12月1日から31日の間です。
  • 同点の場合、乱数を発生させて順位づけしています。
  • そのため順位に深い意味はありません。気にしすぎないでください。
  • 150位以内はすべて7人以上に挙げられたものです。
  • レビューは有志によるものです。500字以内ディス無しでやっています。
  • レビューは随時追加しています。興味がある方は@pitti2210にリプかDMください。

 

50. James Blake『Friends That Break Your Heart』

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49. Grouper『Shade』

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48. 土岐麻子『Twilight』

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「Twilight(夕暮れ)」というタイトルが表すように、アルバム全体を通してアップテンポな曲はほとんどなく落ち着いている。そう言われると"チルアウト"みたいな言葉が似合うかなと思うけど、そんなフィーリングがありながらも、なんかちょっと寂しさみたいなのがある。歌詞をあらためて見返すと、だいたい誰かのことを想っている。そう言われると気持ちのいい夕暮れを見かけた時って、誰かのことを想っているような気がしてきた。懐かしいような恥ずかしいような。あのマジカルな時間。

けんじ(@knj09)

 

47. The War On Drugs『I Don't Like Anymore』

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46. Base Ball Bear『DIARY KEY』

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結成20周年イヤーの10thアルバム。3ピースサウンドを磨き上げながら、あらゆる音楽的可能性を探究する手法は本作でも顕著だ。爽快なギターロックナンバーに加え、持ち味のカッティングギターと語感のグルーヴで聴かせる「動くベロ」、歪みきった音像のハードロック「悪い夏」、関根史織(Ba/Cho)がメインボーカルを務めるセンチメンタルなポップチューン「A HAPPY NEW YEAR」など、硬軟をしなやかに往来し続ける楽曲群はこれまでのアルバムの中でも特に個性的でユニークなものが揃っている。

バリエーション豊かな11曲。通して聴き込むうちに統一されたムードが浮かび上がってくる。人生は死ありきで進むという事実とそれでもなお今を掴み、生きることを肯定する優しさ。この相反するようで、密接に関わり合う価値観が全編に滲んでいるのだ。”結局は死”と”でも生きよう”を何層にも重ね合わせた歌詞は緻密だが、同時に独白のような温度感もある。「海へ」にある《胸の奥にある 日記に鍵かける これだけはどうか変えないで》という一節の切実さは、小出祐介(Vo/Gt)がこれまで書いてきた言葉のどれとも違う。”言わない”ことも表現であるという、一つの境地に達しているように思えた。

月の人(@ShapeMoon)

 

45. Low『HEY WHAT』

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44. Big Red Machine『How Long Do You Think It's Gonna Last?』

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43. Pino Palladino & Blake Mills『Notes With Attachments』

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42. millenium parade『THE MILLENNIUM PARADE』

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41. CHAI『WINK』

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難しい言葉は抜きにして、ただただ単純にCHAIの進化が凄い。これだけ音楽ファーストでクリティブな進化を遂げている今のCHAIの音楽にきっと驚く。ポップス、R&B、ヒップホップ、四つ打ち、サイケデリック……なんでもありなのに凄くまとまっていて、全てにCHAIらしさがある。「ACTION」とか「PING PONG!」に心鷲掴みされてしまった。これがアジアのクリエイトポップスかと思うと少し嬉しくなった。シンプルに人をハッピーにさせる音楽は尊い。

Y(@y_3588)

 

40. Dry Cleaning『New Long Leg』

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名門4ADからのデビュー作。ソニックユースやピクシーズを思わせる、冷徹な音楽をしていて、非常に4ADらしい。

余計なものがまるでない、これぞポストパンクといった音楽だが、よく聴いてみるとエレクトロニカとかテクノとか打ち込みの音楽のような感触がある。シンプルなビートと淡絶妙に浮遊感をまとうギター。それらが強すぎるとポップスになってしまうが、引き算が上手い。ボーカルが淡々としていることで、温かくなりすぎない。バランスがとても良い。一見シンプルなようでよく作りこまれていて、聴くたびに味が出るようなアルバム。

June(@h8_wa)

 

39. KIRINJI『crepuscular』

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「ちょっと、あの、生まれてきた意味がありますね」

一生の中で、こんな言葉を言える瞬間がいったい何度あるだろう。一度だけかもしれない。一度も無いかもしれない。そんな瞬間に想いを馳せながら、僕らは死ぬまで生きていく。

悲しいけれど、この世界は絶望することで溢れている。僕はそう感じる人達の中の1人で、そう感じている人は皆それぞれ心が俯きながら日々を生きているんだと思う。勿論日々に楽しいことがないわけではない。日々に楽しいことや幸せなことがあった上でなお、僕は自分の人生を肯定できず絶望しているのだ。

そんな自分の人生を肯定できない僕が選んだ道は、誰かを応援し肯定することだった。僕が応援した人は、最初は芸人としての月収が恐ろしく低く、バイトでかなり年下の先輩に殴られ、大学の新歓でじゃがいも星人と呼ばれ、11ヶ月で離婚し、エロ虫だった。そんな人が、自分の人生を自分の言葉で全肯定した。その姿が何よりも美しくて、堪らなく嬉しくて、僕も彼のように自分の人生を自分で肯定したくなった。

嘘でもいいから言っていこう。嘘を本当にしたいから言っていこう。僕の人生は、あなたの人生は、いつだってはじめからサイコゥ!サイコゥ!サイコゥ!

ハタショー(@hatasyo5)

 

38. くるり『天才の愛』

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変態っぷりを隠そうともしないで、気楽で楽しげなノリを音楽的に詰め込んだくるりならではのアルバム。ここまで大胆に好き勝手にやっていれば痛快だろう。冒頭2曲がわかりやすく良い曲で、そこからは野球だったり、大阪万博へ連れて行かれたり、いろんなことを時代も超越して代わる代わる体験させられる。インスト曲も含んだアクロバティックな展開が続いての、9曲めの「渚」でまたしみじみと良い歌が来て、畳野彩加との「コトコトことでん」で微睡む。ラストの「ぷしゅ」が華やかで、また新たな始まりを想起させるちょうどいいワクワク感。これが冒険。音楽体験の魅力のひとつは、こんな作品が聴けることかもしれない。

ウラニワにて、わど。(@wadledy)

 

37. For Tracy Hyde『Ethernity』

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前作『New Young City』から2年弱の時を経てリリースされた4thアルバム。前作で編成がトリプルギターになったことで各曲の完成度が劇的に向上した。そのまま、今回は「アメリカ」をコンセプトとしたアルバムが完成した。

テーマ通りというか、豪快な仕上がりになっている。音がより分厚く感じられるように作られているし、コードがかき鳴らされている時もUSオルタナティブロック直系のような疾走感を前作より強く感じられ、「Chewing Gum USA」のようなダークにグランジライクに煽るようなボーカルEurekaの歌い方もある。新しい面がそれぞれ、コンセプトにそってすばらしく表現されている。

ハイライトはたくさんあるが、やはり個人的には「Interdependence day Part I & II」だ。徐々に高揚していき、そのまま流れるようにパート2に繋ぎ、ゆったりと美しいギターが鳴り響く中、ラジオの演説のような声が紡がれる。演出として非常にすばらしい。ギターの夏bot氏の歌が入る曲も多く、バンドとしての一体感が強まっている。アルバムとしての完成度は今までを遥かに凌ぐ。

現在もFor Tracy Hydeは新曲を作り続けていて、止まることを知らない。シーンの最前線にいる期間はまだまだ長くなりそうだ。

June(@h8_wa)

 

ざっくりとこれまでのアルバムの印象を言うと、1stでは初期衝動溢れる青春を描き、2ndでは都会が映す光に焦点を当て、3rdでは理想的な桃源郷を構築したようだった。その次はどこへ向かうのかと思えば、ドリームポップらしさはそのままにアメリカというテーマを描いたことで、新たなるノスタルジーとリアリティが生まれている。

引用、コラージュ、サンプリング的な文化を用いてのシューゲイザー、チルウェイブ、J-POPといった音楽性を引き継ぎつつも、今作はエモ・オルタナの成分を濃く浮かべて、カントリーまで打ち出してきた。乗っかる歌詞も淡く儚い美しさがあるが、記号的にアメリカを想起される単語や描写がしっかり敷き詰められ、曲全体で文章としての繋がりは綺麗なのに、なんというか、いつにも増して書きたいこと書いてるなって気もして新鮮でおもしろい。

タイトルからど直球に透明なネオアコ 、シューゲを期待した「ヘヴンリイ」の爆発力は情緒ぶっ壊れの高揚感がある。「スロウボートのゆくえ」でのゴスペル感は締めに相応しく、要所でトラップビートが展開されたりと見事な組み合わせの妙。音像こそ夢見心地であれど、しっかりと現実に残り続ける物語が文字数

ウラニワにて、わど。(@wadledy)

 

36. CHVRCHES『Screen Violence』

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35. 小袋成彬『Strides』

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34. The Weather Station『Ignorance』

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33. Royal Blood『Typhoons』

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32. Squid『Bright Green Field』

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リリース前から、WARPよりデビューということで話題になっていたSquid。WARPといえばBattlesが所属しているレーベル、ということもあってマスロック的なアプローチを期待していた。

結果は見事。とにかくリフがいい。シンプルに硬派に反復されるメロディがまさにWARP印。現行のUKポストパンクバンドとも交流が深く、新時代のスタイルを切り開いた。Black Country, New Roadなど多数のバンドでもサックスを担当しているLewis Evansを迎えて制作された。

ロンドンのポストパンクと思われているが、彼らは現在、ロンドンから200km離れたブリストルにいる。Squidはバンドを始めた頃、BEAK(ブリストルを代表するミュージシャン、ポーティスヘッドのメンバーが組んでいたバンド)が好きだったということだ。そこに近づいたことで、また違った音楽の影響を受けて、さらなる表情を見せてくれるに違いない。

June(@h8_wa)

 

 

31. Official髭男dism『Editorial』

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1曲め「Editorial」で心奪われかけ、2曲め「アポトーシス」でもう一気に虜になってしまった。過去のJ-POPと広義で括られる表現の、ひとつの最終形態まで辿り着いたのか。懐かしい、そして新しい。ショックで月並みな感想が呪詛のように延々と巡る。意識外から感覚を支配されたみたいだ。

勝手な印象だけど、普段はこのバンドのような音楽をあまり聴かなかったほど雷が落ちるのかもしれない。歌唱力やメロ重視のポップス好きも、雑食な音楽好きも、流行りモノ好きなミーハーなアイツ(他意はない)も、多方面を満足させるような圧倒的なパフォーマンスで仕上げた超絶エンターテインメント。こういうことをやりたかったけど、出来なかった同業者もたくさん居そうな、金字塔と呼べる傑作ではないでしょうか。そのくらいのテンションで聴けてしまう。

こういう作風が、もともと好きかと言われたらそうでは無い筈なんだけど、そもそも出逢う機会が少なかった。音で納得させられるような国内スタジアムロック最新系。これからも更新されていってほしい。

ウラニワにて、わど。(@wadledy)

 

30. 東京事変『音楽』

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東京事変が新しいアルバムを出したということだけで2021年のビックニュースだった。一周目を聴いて直感的に大人の余裕さを感じた。約10年ぶりのオリジナルアルバムはアダルトでジャジーでミステリアスでポップスな音を楽しんでいる。それでいて東京事変らしさをアップデートしている。それぞれの活動での時を得た5人のそれぞれの色がある。

毒味と一服の中毒性は素晴らしい。拍手喝采。閏年が来るたびにきっとそわそわしてしまう。また2024年にも期待していいですかね。

Y(@y_3588)

 

29. Floating Points, Pharoah Sanders, London Symphony Orchestra『Promises』

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28. Kanye West『Donda』

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「Hurricane」における《みんな批判的すぎるよ》というライン、あるいはDaBaby、Marilyn Manson、Buju Banton、Chris Brownらの配置を根拠に、本作をキャンセルカルチャー批判と見なすのは簡単だ。それに眉をひそめる者も多いだろう。確かに、特に後者のいくつかは悪手の一言に尽きる。

だが描きたかったテーマはそこにはない。前作『Jesus Is King』よりグッとラップに回帰した作りながらオルガンが多用されていたり、Explicitマーク付きの曲が1つとして存在しないことからもわかるが、本作はこれまでのKanyeのキャリアを折衷的にまとめたものとなっている。

ゴスペルとラップ。聖と俗。両面を絶えず行き来し矛盾にまみれながら掲げるものはただ1つ、赦しだ。全ての人が罪を犯し間違えるが、みなキリストの贖いによって人として認められる。リリック・サウンド両面で描こうとしていたのは、恐らくそういう性質のものだろう。まあ、《神はリモコンを持っている》って表現はキリスト教的にどうなのとか、結局赦しを与えている主体はKanye自身じゃんとか思うこともあるけど。

まっつ(@HugAllMyF0128)

 

27. ROTH BART BARON『無限のHAKU』

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26. Homecomings『Moving Days』

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メジャー1stアルバム。結成9年、インディーズシーンでは既に安定を築いているように見えていたが、ここにきて新天地を選ぶところに常に変化を望む姿勢が現れているように思う。バンドを取り巻く状況そのままに"引っ越し"をテーマにした楽曲たちには心地良いそよ風が吹く。元居た場所を懐かしみ、新しい生活に馴染んでいく。そんな心の動きを捉えたストーリーテーリンにはさりげない温かさが通っている。ストリングスとホーンの本格的な導入、ソウルやR&Bを経由したリズムメイクなど新たなカードが多く切られているが全てもともとそこにあったような雰囲気すらあり、バンド本来の懐の深さと間口の広さを物語っている。

そういえば僕も昨年、長く住んだ町を離れて全く縁のない土地に住み始めた。程よい緊張感と新鮮な高揚感がある生活。忙しくなった仕事と疲れた帰り道。ドライブミュージックとしてこのアルバムを選ぶと、無性に涙が出そうになる。家で待ってくれている、新しく家族になった人の顔を思い浮かべ、ともに食卓を囲むそのシーンがぽつぽつと脳裏をよぎっていく。誰かを大切に想う気持ちが恥ずかしいくらいシンクロしていく。今日も明日も、家に帰ろうと思えるのだ。

月の人(@ShapeMoon)

 

かつては英語で綴られるジャングリーなギターポップを軸にしていたバンドも、前作あたりから日本語詩が中心になり、以前にも増して穏やかな雰囲気の音作りになってきました。やんちゃにかき鳴らしたようなギターは減っても、ネオアコの透明な音色は相変わらずで、安心感がある。アルバムにおいて電子音の混ざりかたもナチュラルで、雰囲気を損ねることなく溶け合っています。

季節や時間帯に問わず、多種多様なシチュエーションに適応する柔らかい空気。ちょっとした切なさと、後味スッキリな聴き心地。朗らかで、のんびりと癒されるアルバムとしてサラッと聴けちゃいますが、この日常をささやかに彩る祝祭感が、暮らしに寄り添うだけで無敵になれるよねって言う意味で、元気になれる生活応援歌でもあります。現実は小説よりも奇跡でも奇妙でも奇怪でもないけど、ドラマにはなり得るんだなと思わされる素敵なガイドメロディ。

ウラニワにて、わど。(@wadledy)

 

25. Lana Del Rey『Chemtrails Over the Country Club』

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彼女は一貫して欲望について歌っていて、そこが好きだ。人が何かを欲望するとき、政治的正当性などは目に入らない。欲望は選べない。神様だか精子だかが飛ばしたダーツの当たり位置によって、私たちは何かを追い求め続ける。

本作もまた、欲望することの暴力性を描き出している。冒頭の「White Dress」では音楽業界の男に見出された思い出が語られるが、後にそれは単なる性的搾取に過ぎなかったのだと示される。だが、彼女はそれを甘美なものとして回顧する。ハッシュタグでは括れない思慕の白熱。特権を得たことを自己反省と、それでも止めることができない愉悦。あまりに人間的なダブルスタンダード。

しかし、本作はラストのJoni Mitchellカバー「For Free」でそこから飛翔する。ストリートミュージシャン讃歌と言っていいこの曲をもって、これまでの名声や官能、およびそれらを育む土壌となった白人至上主義から降りる覚悟を明確に示した。欲望から降りること、欲望を選択すること、欲望を強化してきた社会の枠組みから逃れること。そうした決意を描き出した本作の仮タイトルは『White Hot Forever』だった。

まっつ(@HugAllMyF0128)

 

24. Billie Eilish『Happier Than Ever』

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23. Black Country, New Road『For the First Time』

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現行UKポストパンクの雄として登場したBlack Country, New Road。音楽性としては確かにポストパンクを下敷きとしているが、どちらかといえば音響系のポストロックだったり、ジャズに近いと感じる。サックスやヴァイオリンを加えた編成から多彩な音を入れているが、怒涛の作りこまれた展開を見せるBlack Midiと異なり、まるでセッションをしているように、バトルをするのではなく、自然に流れていくように各曲を作り上げている。

長尺の曲が入っていても疲れないのは、そういった自然さがあるからだ。「Track X」のようなメロウな展開になっている時が、このアルバムのいい瞬間だと思う。UKポストパンクバンドたちの中では、すごく"聴かせる"ということができるバンドだ。

そんな彼らも、早くも2022年に新作のリリースが控えている。Black Midiはプログレ的に進化したが、彼らはどの方向に行くだろう。注目。

June(@h8_wa)

 

22. Cleo Sol『Mother』

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21. Hiatus Kaiyote『Mood Valiant』

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20. Snail Mail『Valentine』

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19. Wolf Alice『Blue Weekend』

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英国ロックバンドのあらゆるレジェンドに並ぶ作品を作ろう、と思っていたかは定かでないが、聴いているこちらがドギマギするくらい気負いを感じる作品なのは間違いない。前2作ともに全英チャートトップ5入りを果たし、マーキュリー賞を受賞した後なのだ、そう感じたとて不思議ではなかろう。プロデューサーにColdplay『Viva la Vida』やArcade Fire『The Suburbs』などを手がけるMarkus Dravsを迎えた本作は、その甲斐あってかスケール感が増している。全ての音がジワジワとクレッシェンドしていくドラマティックなオープナー「The Beach」や、The Beatles「A Day In The Life」ないしはDavid Bowie「Space Oddity」を彷彿とさせる先行シングル「The Last Man on Earth」などはその成果と言っていい。彼女たち固有の特色こそ少しばかり減退したものの、先人たちへの飽くなき憧れがそのまま表出したようなこのレコードを、私は嫌いになれない。

まっつ(@HugAllMyF0128)

 

18. D.A.N.『NO MOON』

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『NO MOON』という文字列は、Oの連続に目をつぶればだいたい回文である。本作リリース時のインタビューにおいて、タイトルトラック『No Moon』はメンバーが映画『TENET』を観た直後に製作されたと語られている。『TENET』で時間の順行と逆行が重要なテーマになっていたことの影響か、アルバム中の場面転換のように配置された3つのインスト曲はいずれも『Antiphase』すなわち逆相と名付けられている。そして「Antiphase Of the Moon」と題されたリリースツアーのセットリストは、アルバムの最終曲を序盤でいきなり演奏しつつ1曲目の『Anthem』を本編の最後に持って来る構成だった。

ライブ・エンターテイメントの現場で不自由や自粛が求められる時代の中で、D.A.Nの楽曲は時間と空間を超越したかのようにスケール感を増すだけでなく、クラブで聴きたい!!と思わずにはいられないストイックで力強いビートに彩られている。逆相と名付けられた曲と踊ることが、逆境の中で生き続けることのメタファーに結果的になっているようで、でもとてもそんな風には思わせないクールな佇まいが途方もなく熱い。

おカラカル(@Apteryx_lwk)

 

聴いている間『DEATH STRANDING』と『DUNE/デューン 砂の惑星』が脳裏をよぎった。美しいものもあるはずなのに、全体を見渡すとただ荒涼とするばかりの風景。決定的な繋がりを欠いたまま、それでも動き続ける世界のシステム。今ここを舞台とはしていないSFでありながら、その時々の社会の在り方を明確に反映させた2作品と本作には通じるものがある。

サウンドはいよいよ国籍不明・住所不定の様相が色濃い。スペーシーなシンセベースと砂漠の上を滑るようなスティールパンが混ざる「Anthem」。複雑なビートからMIRRRORのTAKUMIによるラップを挟んで四つ打ちへと急展開していく「The Encounters」。チェロが全体を牽引するインタールード群。曲の引き出しに伴い、櫻木のヴォーカルもメロウに浮遊するものからラップよろしく言葉数を詰め込むものまで幅が広がっている。全体をガッチリと結ぶのは、夢見てなどいない現実が眼前にあるという認識だ。本作はそんな世界を前にして《どうする?》と問いかけて幕を閉じる。彼らも含めて全員が、今もなお藪の中を歩いている。それでもどうしようもなく、未来は僕らの手の中なのだ。

まっつ(@HugAllMyF0128)

 

17. betcover!!『時間』

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グループサウンズ、ガレージサイケ、歌謡曲……、往年のフレーバーを存分に含んでいる、最先端の鋭さがあるオルタナティブ。聴けば聴くほどに刺さる刺さる。聴く人によって、かつて摂取してきた様々な音楽が過ぎるかもしれない。昔から合唱で使われるような曲ともリンクしたり。得体の知れない混沌、鉛色と鈍色のコントラスト。遠くへ離れていくものを、すごく近くで囁かれてるみたい。一方通行の世界を、後戻りできない当たり前の事実を突きつけられる。そんな時間が必要だった。

ウラニワにて、わど。(@wadledy)

 

16. Silk Sonic『An Evening With Silk Sonic』

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果たしてこれはノスタルジーに塗れた回顧厨のためのアルバムなのか?自分にはそうは思えなかった。確かに、Bootsy CollinsやLarry GoldなどのR&B〜ディスコにおけるレジェンドを召喚した布陣を見ればそう感じるのも無理はない。しかし同時に「After Last Night」にThundercatが、「Fly As Me」にBig Seanが参加するめちゃくちゃモダンな作品でもある。そのため「70年代R&Bサウンドを完全再現!」の一言で括れる単純なサウンドになっていない。リムショットのバリエーションやスネアの鳴り、コーラスワークの忙しなさなども含めて、むしろ「R&Bをやろうとしたけどよくわかんない着地になった」という印象が強くなっている。

微妙に歪ながらそれでも気持ちいいのは、皆が享楽的なユートピアの構築に全神経を傾けているからだろう。下心を隠せない、ひたすらに情けない、でも底抜けに楽しいひとときの創出。異なるフィールドの猛者が生み出した本作はまさに愛すべき紛い物であり、それゆえ永遠には続かない。33分という収録時間と『Evening』の名は、これ以上ないほど相応しい。

まっつ(@HugAllMyF0128)

 

15. NOT WONK『dimen』

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1組の手に色とりどりのマニキュア。輪郭のはっきりした撮り方。名は体を表すじゃないが、アートワークの通りのアルバムだと思う。

まず冒頭「spirit in the sun」からしてこれまでと違う。ハンドクラップに始まりエレピとともにドリーミーな展開がやってきたと思ったら、1分と経たずにリズム隊の音が前に出る。しばらくするとシューゲイザーと見紛うギターの洪水が襲い、一瞬の後、静寂とともにフォーキーなストロークを残して終わる。パンキッシュな出だしから唐突にサックスが入りジャズの様相を見せる「slow burning」然り、複数の音楽ジャンルを混ぜることなく接続させる、ビートスイッチと言っていい展開を持った曲が多い。

それでも本作は、その音圧によってトータリティを破綻させない。他のパートを食うギリギリまで音の幅が拡張され、存在感を見せつけ合うフォルムは共通だ。誰の存在をも殺さず多くのジャンルを繋ぐことで、1人の中に潜むいくつもの"あなた"、1つの街や国に暮らすそれぞれの"あなた"が浮かぶ。多面性そのものなアルバムは、各々の輝きを祝福するように「your name」という曲で幕を閉じるのだ。

まっつ(@HugAllMyF0128)

 

全曲カンストのレベル。もうなんかロックとソウルのキメラだぜ!

ウラニワにて、わど。(@wadledy)

 

14. Tyler, The Creator『Call Me If You Get Lost』

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13. Parannoul『To See the Next Part of the Dream』

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控えめに言っても、2021年に世界で最も評価されたロックアルバムの一つと言って差し支えないだろう。韓国の一人の宅録ミュージシャンが、世界を狂喜させる存在にのし上がったシンデレラ・アルバム。

シューゲイザーやエモの系譜でこの作品は語られることが多い。だが、そもそもすべての音をDAWで作ったことによるノイジーでローファイなサウンドが心地よい。非常に聴きやすいオルタナティブロックをしている。

冒頭の『なに聞いてんの? ―リリィシュシュ。』という映画のサンプリングから、あらゆるナードの心をつかむ。それぞれの歌詞の意味はとてつもなく暗い。それでいて旋律は比較的優しい。韓国のどこかにいる、そして同じように世界中にひっそりと存在している、孤独で暖かい人間の抱えている閉塞感。それが韓国語で歌われることによって、その世界中の孤独な人間ひとりひとりに、「ここに仲間が一人いる」と寄り添うように、語りかけるように演出されていると感じる。

June(@h8_wa)

 

シューゲイザーで、あとNUMBER GIRLじゃん!って思った。一部オタクの大好物を初期衝動のまま綿密に具現化した作品である。日本のバンドでは、pegmap、blgtz、Syrup16g、BURGER NUDS、THE NOVEMBERSを好んで聴いているという。頼しすぎるラインナップに恥じぬエモーショナルが疾走する10曲、計1時間越え。生楽器ではなく、VSTでの録音による宅録らしいが、金属的なバンドサウンドがまたいい味出している。インターネットで活動し理想のバンドサウンドを一人で打ち出そうとするプロジェクトが増えてきたが、音の整え方と熱量のバランスは最高峰だと思う。ラフだけどクリーンな音像に日本語のサンプリング音声の挿入…王道を発展させた、正に新時代のオルタナティブ。

ウラニワにて、わど。(@wadledy)

 

12. Cassandra Jenkins『An Overview on Phenomenal Nature』

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11. GRAPEVINE『新しい果実』

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前作は外部プロデューサーがいたのですが、今回はセルフプロデュースに戻りました。なのにいつもと違う何かを強く感じました。コロナ禍以後初の作品ということを差し引いても今回は癖強めのゲキ渋で、バインの構成要素でも「難解で掴みどころが無く、もはや不気味」感が特に際立ってます。それはバインもう一つの代名詞である「亀井節」=「感情を突き刺す天才メロディーメイカー亀井亨の作曲数」が4曲と少なめなところにも出てます。

例えば「ねずみ浄土」がそうだったように、もっと作品全体をネオソウルに振ってもよかったし多分できたはず。その他、イントロが1分くらいあったり、曲調ずっと暗かったり、完全に「サブスク時代での新たな挑戦」というモチベの現れだ、と思えば曲中のギターソロなり先述の亀井節なり、途中唐突に差し込まれるいつものバインに気づいたり。情緒めちゃくちゃだけど向こうがそうさせてくるんだから仕方ないですよね?

はちくん(@Hat_chyu)

 

10. Tempalay『ゴーストアルバム』

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ついにメジャーデビューしたTempalay。より一層表現できることが増えた印象を持った『ゴーストアルバム』。Tempalayの音楽性はいつも中毒性がある。民謡?サイケ?ディスコ?の雑多音色でもすべてテンパレイ独自のビートが気持ち良い。いつも彼らの作品から感じるのは"自由な表現"。摩訶不思議なポップスでドバドバと脳に入っていく。それはきっとボーカルの小原氏の歌詞が底上げしていて。いつもワクワクと心地よさが更新する。「GHOST WORLD」の歌詞に聴き入ってしまった方はきっと私だけじゃないでしょう?それはもうTempalay沼の二丁目です。

Y(@y_3588)

 

シンガポールの芸術家ホー・ツーニェンが愛知県で開催していた「百鬼夜行」という個展に行った。不安や恐怖といった"得も知れぬ感情"に対して輪郭を与えてきた妖怪たちが、徐々に人間そのものの心を巣喰い、狂気や蛮性を引き起こしていく。そんな日本人の精神史が時代の移ろいとともに表現されたそのアニメーション群を観ている最中、ずっと脳内に流れていたのがこの『ゴーストアルバム』だった。

心は時に恐ろしい苛烈に染まり、時に諦めたかのように全てを受け止める。人であるようでいて人でない、化けているようでいて化けてはいない。人間としての揺らぎの幅が甚大になりつつあるこの2年間(いやもしかしたら有史以来ずっと?)に渡る彷徨が幻惑的な音楽として形になっている。漫画特撮絵画etc..ポップカルチャーをふんだんに引用しながら、漂流する人類への静観と大いなる自然への畏怖を映したこのサイケデリック・ミュージックは21世紀の黙示録のように響く。人の姿を保ったままで、僕らはこの生涯を生き尽くすことができるのだろうか。

月の人(@ShapeMoon)

 

9. Clairo『Sling』

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きゃわわ!な愛しいメロディのインディーポップを届けるClairoの2作目のアルバムは、エレガントな側面が増してきた。前作もツボをドスドス突かれまくって穴という穴から幸せ汁が噴き出してしまうが、今作はもっと冷静に良さを噛みしめられる、拝聴後にひとつの穴から纏まった幸汁(こうじゅう)を纏めて放出するような厳粛な趣深さがある。もうウィスパーボイスとインディーポップと雉を引き連れて鬼ヶ島に行ったら、鬼に金棒ではないか。余りにも全治全能、地産地消のトキメキを感じる。コーラスとメインボーカルの間に挟まれて漫画みたいにペラッペラになりたいな。

Joni Mitchellが由来の愛犬、「Joanie」はほぼインストだがメロディは雄弁である。他の曲の歌詞の鋭さや悲哀は、音の温もりとは少し相反するかもしれないが、その温度差がまた惹きつけられる。軽率に楽しむから、どうか笑い飛ばして。それでもちゃんと噛み締めるから。それも素敵な音のチカラよね。

ウラニワにて、わど。(@wadledy)

 

8. Arlo Parks『Collapsed In Sunbeams』

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いつどこで生まれ、どのような決断を行ったか。その人を規定するのは畢竟、各々の環境や決断でしかない。であるならば、同じ年代というだけで精神的な傾向を推し量り全世界規模のラベリングを試みる、そんな営みにどれほどの意味があろうか。Arlo Parksは2022年1月現在21歳だが「Z世代」を背負う気など更々ないことが楽曲からも窺い知れる。

というのも、彼女のリリックはどれも具体性に溢れたものばかりなのだ。自身が影響を受けたであろう人や物の固有名詞だけでなく、友人の名前が(恐らくは実名のまま)飛び交ったりする。日々の情景をまるごと活写するような言葉選びが特徴だ。

だが、それらのリリックが内輪ノリに留まらないのは、声や音があまりに親密さを帯びているからで。ロウでオーガニックな楽器の響き、揺れやズレを拒まないR&Bの意匠、友に語りかけるような(実際に語りかけることもある)か細い声。個人と「みんな」を架橋するマジックはまさにこの点においてだ。あらゆる「ポップミュージック」はまず個別の事象が存在する。それを然るべき音で鳴らした時に、暴力的なまでの普遍性が生まれるのだ。順番を間違えてはならない。

まっつ(@HugAllMyF0128)

 

7. カネコアヤノ『よすが』

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現バンドメンバーで録音した3作目のアルバム。彼女はいつだって歌うように生き、生きるように歌う。そんな飾らない在り方で欺瞞と見栄に満ちた世界でみるみるうちに支持層を拡大し続けた。日々が一変したコロナ禍においてもその姿勢は変わらない。ふと湧いてくる物悲しさや静かな絶望でさえも、つぶさに掬い取って歌にして返す。自然体なままで続けられた創造の反復がこのアルバムとして結実した。

芯の太い咆哮も健在だがどちらかと言えばメランコリーで儚げな歌唱表現が印象に残る。「あぁしんどかったな……」とあの日々のことを彼女とともに追体験するような聴き心地だ。希望などないと思う程に気持ちが沈んだ日も、希望しかないと思い腹の底から笑えた日もきっとこのアルバムは寄り添ってくれる。よすが、とは身や心の拠り所を意味する言葉だ。不安定な日々の安息地として今ここに必要な1枚なのだと思う。そしていつか思い出として振り返れる日が来ること願いたい。

 月の人(@ShapeMoon)

 

6. Porter Robinson『Nurture』

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ポーター、大好き!ポーターにはほんと救われた一年だった。コロナのパンデミックが広がってライブができなくなった4月後半、無観客のオンラインフェス「Secret Sky」(日本からはセカオワ、高木正勝、Serphが出演)で僕の世界を変えてくれたから。あの頃を覚えている?日本でいうと第4波の真っ只中で感染者数は今から見ると大したことがないけど、死者数は第5波より多かった。Twitterでも鬱憤が溜まってて正直雰囲気は悪かった。

でも4月25日のあの日、ポーターがピアノを弾いて、歌って、サンプラーを叩いて、踊っているステージで、背後だけでなく床いっぱいにまで敷き詰められたLEDに画面いっぱいの青空と海と花火を背景に打ち鳴らされた「Get Your Wish」が僕の世界をぶち壊してくれた。お客がいなくても、ラグが多少あっても、僕らは同じ時間を共有できることを教えてくれた。

9月の有観客の「Second Sky」の配信を含め、2021年にアルバムをこれまで以上の形で体験させてくれたのはポーターだけだった。なぜそれができたのか?彼は挑戦したからだ。J-POPにも接近を果たしたアメリカのエレポップの最高傑作、と僕は思ってる。

ぴっち(@pitti2210)

 

ふわふわしてる。これって恋じゃない?

ウラニワにて、わど。(@wadledy)

 

5. black midi『Cavalcade』

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満を持してリリースされたセカンドアルバム。ファーストアルバム『schlagenheim』の時から大好きだった。来日ライブも観に行った。2019年のこのブログの年間ベスト記事にも寄稿したほどだった。「あと何段階進化できるだろう」という言葉でその寄稿は締めたが、まさにこのアルバムは彼らの底知れない可能性を見せてくれた。

今作は、わかりやすく言えば、プログレ的な彼らの感性が爆発していると思う。各パートの演奏力はもともと高かったが、今度はアルバム全体を通してコンセプトを感じるような作りこみを見せ、多彩な音を入れて、物語を聴いているようだった。

『schlagenheim』の頃からある、緩急・複雑な展開で押し切る力強さも持ちながら、柔らかく聴かせる瞬間もある。

サウスロンドンは現在、ポストパンクだけでなくジャズも非常に良作・素晴らしいアーティストにあふれている。多彩な音楽に囲まれながら自分たちの可能性を押し広げた大傑作。

June(@h8_wa)

 

4. Japanese Breakfast『Jubilee』

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長ネギのお味噌汁と白米です。え?しょうがないですね。わかりました、白状します。納豆も時々、です。以上。2021年、いちばん聴いたアルバムといちばん食べた朝食のお知らせでした。

9jack(@Nan4y)

 

3. KID FRESINO『20, Stop it.』

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2. 折坂悠太『心理』

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「朝顔」が収録されていない。それが全ての結論である。本作における楽曲のプロダクションは一筋縄ではいかない。「荼毘」のポリフォニーのように独立して動くフレーズや、「春」の打点の合わない揺らぎの強いビート。または「悪魔」の5拍子のなかで展開する山内弘太(Gt)の即興的でノイジーなギターソロなど、『心理』には「朝顔」のような情緒的でJ-POPの構造に則った歌は存在せず、捉えどころがなく歪な曲ばかりが散見される。

この歪さの正体は何か。私は"重奏"にあると考える。それまでの折坂はフォークや歌謡曲、民族音楽を参照点に置いていたが、本作はプログレ、即興音楽、ポストロックからの示唆を感じる。重奏メンバーの経歴を見ると、ポストロック系バンドLLamaで活動したsenoo ricky、即興音楽をフィールドとする山内弘太、ムーズムズのメンバーであり即興音楽も得意とするyatchi、Colloidとしてポリリズムやポリフォニーを用いた音楽を展開する宮田あずみと、各音楽分野が『心理』のエッセンスとして融合されていることがわかる。そう考えると本作は折坂悠太のアルバムではなく、折坂悠太“重奏”のアルバムなのかもしれない。

ゴリさん(@toyoki123)

 

「どれだけ理解し合っているはずの相手であれ、どれだけ愛している相手であれ、他人の心をそっくり覗き込むなんて、それはできない相談です」

これは映画「ドライブ・マイ・カー」で発せられる台詞だ。心の理(ことわり)と書いて心理。暴れ出しそうで、泣き出しそうで、踊り出しそうで、今にも飛び出しそうな心。その形状と動きは自分以外の、いや自分も含めて誰にも見えないまま存在し続ける。ただしかし、貴方を、私を、分かりたいと思うこともまた避けようのない心の理である。ユーモアとアイデアをもって、肉体と精神を憧憬と追憶へ飛ばしながら、貴方と私の心を見つめて今日も音楽が生まれてゆく。例えばこんな、真新しい歌曲として。

月の人(@ShapeMoon)

 

1. Little Simz『Sometimes I Might Be Introvert』

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ネットの音楽オタクが選んだ2021年のベストアルバム 50→1

1. Little Simz『Sometimes I Might Be Introvert』
2. 折坂悠太『心理』
3. KID FRESINO『20, Stop it.』
4. Japanese Breakfast『Jubilee』
5. black midi『Cavalcade』
6. Porter Robinson『Nurture』
7. カネコアヤノ『よすが』
8. Arlo Parks『Collapsed In Sunbeams』
9. Clairo『Sling』
10. Tempalay『ゴーストアルバム』
11. GRAPEVINE『新しい果実』
12. Cassandra Jenkins『An Overview on Phenomenal Nature』
13. Parannoul『To See the Next Part of the Dream』
14. Tyler, The Creator『Call Me If You Get Lost』
15. NOT WONK『dimen』
16. Silk Sonic『An Evening With Silk Sonic』
17. betcover!!『時間』
18. D.A.N.『NO MOON』
19. Wolf Alice『Blue Weekend』
20. Snail Mail『Valentine』
21. Hiatus Kaiyote『Mood Valiant』
22. Cleo Sol『Mother』
23. Black Country, New Road『For the First Time』
24. Billie Eilish『Happier Than Ever』
25. Lana Del Rey『Chemtrails Over the Country Club』
26. Homecomings『Moving Days』
27. ROTH BART BARON『無限のHAKU』
28. Kanye West『Donda』
29. Floating Points, Pharoah Sanders, London Symphony Orchestra『Promises』
30. 東京事変『音楽』
31. Official髭男dism『Editorial』
32. Squid『Bright Green Field』
33. Royal Blood『Typhoons』
34. The Weather Station『Ignorance』
35. 小袋成彬『Strides』
36. CHVRCHES『Screen Violence』
37. For Tracy Hyde『Ethernity』
38. くるり『天才の愛』
39. KIRINJI『crepuscular』
40. Dry Cleaning『New Long Leg』
41. CHAI『WINK』
42. millenium parade『THE MILLENNIUM PARADE』
43. Pino Palladino & Blake Mills『Notes With Attachments』
44. Big Red Machine『How Long Do You Think It's Gonna Last?』
45. Low『HEY WHAT』
46. Base Ball Bear『DIARY KEY』
47. The War On Drugs『I Don't Like Anymore』
48. 土岐麻子『Twilight』
49. Grouper『Shade』
50. James Blake『Friends That Break Your Heart』

 

プレイリスト

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