ノーチラス二年目終了して三年目へ

二年経過したので記録として置いておく感じで。

ということで気がついたら設立から二年経過していました。正直、まだ二年しか経過していないのか、という感じがします。この一年は二年分ぐらいの時間感覚でした。まじで時間経過が速すぎて死ぬかと思った。去年の今頃はAsakusaの立ち上げで、特にSI屋向けのサポートに力を入れていた時分で、今と状況がまるで違う状況でした。この一年では大きな試行錯誤を二回ほどやった感じになっていて、現在ではAsakusaの向こう側の違う方向性の模索し始めているところです。

大きな方向性としては、この一年で以下が大きく違ってきていると思います。

1.クラウド・コミットが普通になってきた、とはいえ、一方でまだまだというところも実情。元々クラウド上で構築や作業や環境の獲得は普通にやってきましたが、やはり、春先の西鉄ストアさんの基幹業務系をAWSで動かしたというのは、それなりのインパクトがあったと思います。日本でのファーストケースになった実績という対外的な意味もありますが、社内的には「AWS?いや別に業務系で普通に使えるけど?」という感覚になっています。(社内にいると普通に常識になっているけど、この感じは日本ではまだまだ多分特殊だと思います。)

一方で、日本での業務系のクラウド受容はまだまだ、という感じも受けています。まずは文化的な問題が一番大きいでしょう。「クラウドを使わない」という選択は、本来的にはクラウド固有のメリット・デメリットを把握しつつ、いろいろ試行錯誤した結果としての、積極的な非選択という形が望ましい(おそらく海外ではそういった流れになっていると思う)のですが、日本では、触りもしないで評論・敬遠する人も未だにおおいのが実態です。ただ、今後はクラウドを実際に体感した上で、「選択しない」という方向も出てくるでしょう。いろいろ体感した上での選択と、評論家的な選択では意味はまるで違うのですが、表面上は同じに見えてしまうな、と思っています。あまり良いことではないですね。

可用性の強化や運用負担のコストの低減、ソフトウェアをハード環境から引き剥がすことによるライフサイクルの管理強化等、業務システムのクラウド化は相当のメリットはあるわけですが、そこまで進むのはまだまだですね。ということがよくわかる一年ではありました。

クラウド化については、今後はどうなるかはちょっと不透明だなと思っています。クラウドのメリットは非常に大きいけど、その一方で、サポート問題も含めて業務系で使うには、それなりの課題があるのも事実です。大規模業務で使いこなすには技量と経験が必要でしょう。

2.ユーザーさんの試行錯誤のコストが異様に高いこともわかってきた
これは間違いなくユーザーさんのIT部門の弱体化が原因だと思います。SI屋さん以上に、ユーザー側の弱体化のほうが致命的になりつつあるな、という感じがします。正直、人を削りすぎた後遺症が発生している感じです。先に向けての試行錯誤ができていません。

スタッフ部門の役割はバックエンドの事務処理ではありません。フロントとは別の視点からビジネスを俯瞰して、会社の戦略・戦術案を経営層に提示することが仕事であるはずです。これはIT・物流・人事・調達すべてにおいてそうなるはずなのですが、全般的に人手が足りなくて機能不全になりつつあります。まわすので精一杯という感じです。

人員削減の埋め合わせとして期待したSI屋さんへのアウトソーシングも、SI屋さん自身の技術向上の劣化がキャップになり、ただの人員派遣になりつつあります。アウトソーシングは、ソーシングがなくなってしまって、ただのアウトだろ・・というところもあります。

スタッフ部門の人員不足は、以前はリストラ的な意味合いでの積極的な人員削減がベースにあったのですが、最近はむしろ、優秀な若年就労層の縮小で、そもそも補充が効かなくなっている気がします。ユーザーサイドでは、この現状について有効な手を打てていないどころか、問題として認識すらしていないところもあり、先はなかなかに厳しいでしょう。

僕らのようなエンタープライズで勝負しているベンチャーは、このあたりの状況には積極的に対応していかないとまずいわけですが・・・いままでもこれからもこれは課題だと思います。

3.ビッグデータの「次」がポイントになってきた。本来、Asakusa等は「ビッグデータ」とは違うドメインにいるわけですが、プラットフォームとしてHadoopを利用している手前、どうしても「ビッグデータ」ブームの流れには巻き込まれてしまいます。場違い的に呼ばれることもしばしばありましたし、今もあります。とはいえ、分散環境の普及は自分らにとっても歓迎すべきことではあるので、一応距離を取りながらフォローしているという状況です。んで、この一年を見てみると、かなり進み方が変わったな〜と思います。

現状の「ビッグデータビジネス」は、世の中で期待されるサイズには届かない一方で、そこそこビジネスになっているところもあるね、という一年だった気がします。従来のCRMや分析的なマーケットよりは、確実に拡大しているけど、少なくとも二倍以上にはなっている感じはしません。いわんや、マスコミの方が言われるマーケットサイズにはまったく届いていません。うまくマネタイズしているところもある一方、まったくお金にできてないところも多いです。なんとかビジネスになっております、というぐらいが関の山でしょう。

全体の傾向としては、「もっとデータをちゃんと使った方がいいわね」という非常に当たり前の結論が、当たり前になってきているところが、ここ一年で確実に違ってきている点だと思います。ただし、この「データをちゃんと使いましょう」という発想は従来からもあったわけでして。それがうまく回らなかった理由は様々にあったわけですが、その反省はされていません。なので、また肝心なところで詰まる可能性は高いと思うし、実際詰まっていますね。

現在のビッグデータの利用での成功は、かなり限定的でリコメンデーションや不正検出のフィールド等の一定のドメインに限られていると思います。これらが成功している理由は簡単で、サービスのデリバリーに「不必要に人間の介入がない」からだと思います。データを利用した業務向上は、データ分析の結果をどのように業務に反映させるか、という点が大切です。これは40年間変わっていません。このためには、携わる人間のマインドセットを変える必要があり、これは非常に難易度が高い。

データをちゃんと見ましょうということを業務に活かすのであれば、現場、管理職、経営上位層のすべての階層にわたってマインドセットを変えていく必要があり、統計解析ができる人間をそろえればよい、という話ではまったくありません。ビッグデータ系のIT屋・コンサル・評論家・書籍・データサイエンティストな人たちを見ていると、意図的に、この「マインドセットを変える」という論点を避けているように見えます。曰く「それはユーザーさんの仕事です。」それができれば苦労はないです。

そもそもビッグデータに限らず、なんらかの業務メリットをとるために、関わる人間のマインドセットを変える必要があるIT技術は、導入にハードルが高いのが相場です。その上、中間管理職が壮年層から老年層に移りつつあり日本では、「マインドセットを変える」コストはさらに天井知らずです。なおさら導入が困難なのが実態でしょう。

要するに今の路線ではうまく行きません、ということも明確になったと思います。とはいえ、データを利用していきましょうという機運はあるわけで、また成功している事案もないわけではない。観点もそれなりにある。よって「ビジネスにするには、何がまずくて、どうすればよいか?」を模索していく段階になっていると思います。まぁ次の一手を考えましょう、とそんな感じかと思いますので、この辺は横目に睨みながらいろいろ考えるというのが今後ですね。

4.次に向かっていかないといけませんね。んで、3年目のノーチラスはどーすんだ、という話ですがAsakusa-Hadoopはそれはそのまま拡大路線は続けていきます。ユーザーさんも確実に増えていますし、「ま、バッチ処理時間は短いにこした事はないし、確かに分散させればそれは速いよ」という結論は出たと思います。これはこれでいいと思います。

Asakusa-Hadoopの導入だと「分散環境を準備するための、まず環境コストが高い」という課題があったため、ここ半年ぐらいは、Asakusaの実行環境としてのクラウドを開発、提供してきました。んで、そのフィードバックとして前述のように業務系のクラウド移行が事前の想定よりもなかなかハードルが高いということも見えてきているので、オンプレ・クラウドの両者を見ていく必要があるな、と今はそういう感じです。

それに加えてもっと「ユーザーよりの方向」に進めて行きたいと思っています。もともとそちらが自分の得意なフィールドではあったので、そちらに軸を打つ方向で次の年は進めたいと思っています。個人的には業務系処理で重要なのは「データ量」ではなくて、「計算量」だとおもっているので、ちょっと現在のビッグデータ的な流れとは違う目線で進みたいなと・・「分散処理を業務に利用するとこんなこともできますよ」ってのを出せればいいな、と思っています。

 例によって一緒にやっているメンバーとは
「こんなんあるとオレ的に画期的だけど、どう思う?」
「オレ的に画期的の意味がよくわかりませんが・・・それができればそれはそうでしょ」
「技術的にはギリできそうな気がするけどw」
「技術的にはギリ無理そうな気がしますがw」
なんて会話しながら3年目に突入してます。

いろいろやり方が試行錯誤できるのがいいところなので、そんな感じです。この試行錯誤も「もっと早くやれ」とか「もうちょっと様子見ろ」とかいろいろ意見がありまして。このあたりは・・まぁ苦労しています。いやはや。まずは体調第一で。

というわけで3年目なので、今後とも宜しくお願い申し上げます。