連載映画レビュー第八回は、2014年の韓国映画『私の少女』

サイゾーウーマンに連載中の『親子でもなく姉妹でもなく』、第八回がアップされています。


リスキーだとわかっても、少女を愛する決断をする女――『私の少女』の“災厄としての愛”


『私の少女』(チョン・ジュリ監督、2014)。この連載では初めて取り上げた韓国映画。結構話題になりましたね。傑作です。
同性愛差別と家庭内暴力の問題が背景にありますが、単にそれらを告発的に描いて主人公を讃えるといった内容ではありません。私は真摯な「純愛」(=「災厄としての愛」の選択)の物語として捉えました。
同性愛者であることを隠している大人の女性が守ろうとするのは、家庭内暴力に晒される少女。次第に距離を縮めていく二人。それは一つ間違えば、性暴力と見なされかねない関係でもありながら、共に欠損を抱える二人の間に育っていく感情が、痛みと切実感を伴って迫ってきます。
映像も非常に美しい、繊細で緻密で挑戦的な作品です。


キャリア警官をペ・ドゥナ、14歳の少女をキム・セロンが演じています。
硬質な透明感が魅力的なペ・ドゥナは、スリムな体型に制服のシャツとスラックスが似合っていて素敵です。しかし凄いのは、キム・セロンの見せる無邪気とエロスの危険な振り幅。“末恐ろしい感じ”がよく出ていました。


この作品に溢れているのは、水のイメージ。海、港、水田、水溜り、ペットボトル、浴槽、雨などが、印象深いかたちで登場します。それを意識して、イラストのバックもペールトーンの薄い水色にしてみました。テキストとともにお楽しみ下さい。
ただし記事はネタばれに配慮していませんので、未見の方はできればDVDをご覧になってからに‥‥‥。傑作です(二度目)。



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ラストシーンからエンドロールにかけて静かに流れる、アコースティックギターに乗せた歌声がとても沁み入ります。この「夢うつつか 風か」の作曲・演奏・歌はハン・ヒジョン、日本語訳で字幕が出る歌詞は監督作。残念ながら日本で販売はされてない模様。