地方の「カネと政治」の闇‥‥傑作ドキュメンタリー『はりぼて』

今月はあまりに忙し過ぎて、こちらでの更新がなかなかできず、大晦日になってしまいました。

連載「映画は世界を映してる」、今回はドキュメンタリー『はりぼて』(監督/五百旗頭(いおきべ)幸男・砂沢智史、2020)を取り上げてます。

 

13人もの議員辞職を生んだ富山市議会を巡る不正を追っていった地元のテレビ局。前半の失笑は二転三転するうち次第に重苦しい空気へと変わっていき‥‥。
編集が上手いです。政治家の「顔」も見ものです。以下、本文から抜粋。

 

このドキュメンタリーを面白くしているのは、こう言っては語弊を招くかもしれないが、登場する人々の顔だ。まるで本物の役者を起用しているかのように、それぞれの”役割”に顔がぴったりとハマっている。
まず前半の要の人物、中川議員の面構えが凄い。睨まれたら怖そうな大造りで肉厚の顔立ちだが、よく見るとどこか味わいもある。いろんな場面を酒と金と人情でまとめてきたんだろうなと想像させるような、昔ながらの”地元の顔”。謝罪会見での見るも無惨な憔悴ぶりと合わせて、タイトルの「はりぼて」感がもっとも端的に現れている。

議員たちが次々辞めていく中で、まるで人ごとのような態度の森市長は、いわば小狸顔だ。不正や問題発覚のたびに取材を受けるが「コメントすべき立場にない」「制度論の話だから」などと判で押したような同じ返答でかわす様子は、おそらく見る人を一番イラつかせるだろう。中川議員のような小悪党より、こういう”狸”が実は一番問題なのではないかとさえ思わせる。
政務活動費情報請求者の名前の漏洩という疑惑を持たれ、弁明と謝罪に追い込まれた事務局長の困り果てた顔も印象的だ。元は真面目で若干気弱な人が、さまざまな圧力の中で忖度するようになってしまった、そんな”板挟み”状況が顔つきにそのまま現れている。

 

最後まで緊張感が途絶えることなく、引き込まれました。おすすめ!