自由にしかし楽しく!クラシック音楽

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札幌交響楽団 第671回定期演奏会(日曜昼公演)(2025/09) レポート

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今回(2025年9月)の札響定期は、首席客演指揮者・下野竜也さんによる「調和~ベートーヴェン×アダムズ」。札響と何度も共演を重ねてきたアンヌ・ケフェレックさんをソリストとしてお迎えするベートーヴェン「ピアノ協奏曲第4番」、札響初演となるジョン・アダムズ「ハルモニーレーレ」が取り上げられました。注目の公演に、道外から聴きにきた熱心なお客さんもいたようです。なお本番に先駆けて、定期会員&パトロネージュ会員対象の練習見学会(2025/09/05 金)も行われました(※私は都合がつかず不参加)。

札響公式youtubeの企画「札響プレイヤーズトーク」。今回(2025年9月)は、ヴィオラ奏者の櫨本朱音さん、クラリネット奏者の原田侑來さん、そしてこの9月に正式入団された首席フルート奏者のクリス・ウォンさんがご出演です!抱腹絶倒のトーク、必聴ですよ♪若いって素晴らしい!

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また、指揮の下野竜也さんによる定期公演へ向けたトーク動画、ソリストのアンヌ・ケフェレックさんのメッセージ動画も事前公開されました。

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札幌交響楽団 第671回定期演奏会(日曜昼公演)
2025年09月07日(日)13:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
下野 竜也<札響首席客演指揮者>

【ピアノ】
アンヌ・ケフェレック

【管弦楽】
札幌交響楽団(コンサートマスター:田島 高宏)

【曲目】
(ロビーコンサート)モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 第2番 変ロ長調 KV424 より第2楽章 Andante cantabile、サン=サーンス:白鳥
(出演:ヴァイオリン/鶴野 紘之、ヴィオラ/青木 晃一)

ベートーヴェン:序曲「コリオラン」
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番
(ソリストアンコール)ヘンデル(ケンプ編):メヌエット ト短調 HWV 434 No.4

ジョン・アダムズ:ハルモニーレーレ(和声学)


ジョン・アダムズ「ハルモニーレーレ(和声学)」は、音楽に「耳を傾ける」というより「体感する」、スリリングで圧倒的な体験でした!指揮の下野竜也さんと札響のおかげで、私はまた新たなステージへレベルアップできた気がします。札響の定期演奏会で取り上げられなければ、私はおそらく生涯知ることはなかった世界。あくまで素人の趣味ですから、何が何でも「学びに繋げよう」なんて窮屈な事は考えていませんが、未知なる世界を少しでも知ることは素直に「面白い」と思います。この先、自分がどうなるかはわかりません。しかし、少なくとも未知なる世界へ踏み出す事を面白がれるうちは、チャレンジしていきたいです。信頼する札響についていけば、きっと大丈夫。札響の皆様、これからもどうぞよろしくお願いします!

一方、前半のベートーヴェンは、堂々たる演奏を大船に乗った気持ちで楽しめました。王道って素晴らしい!ちなみに公演前は、前半の王道と後半の現代音楽は関係なさそう?と思っていた私。いざ実演に触れると、今回のベートーヴェンの協奏曲は、特に第3楽章がとてもリズミカルで、「リズム」という点において後半のアダムズと共通している!との気づきを得ました。またアンヌ・ケフェレックさんのピアノは、札響との過去の共演(私が拝聴した過去2回はいずれもモーツァルト)で聴かせてくださった明るさ美しさ可憐さに加え、今回はベートーヴェンらしいパワフルな一面が感じられたのが新鮮!知っているつもりの作曲家や演奏家だって、聴く度に新たな発見がある。その意味では、私たち聴き手はいつだって未知なる世界へのチャレンジをしているに違いありません!


開演前のロビーコンサート。今回は、ヴァイオリン奏者・鶴野紘之さんとヴィオラ奏者・青木晃一さんによる演奏です。はじめは、モーツァルト「ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 第2番 変ロ長調 KV424」 より第2楽章 Andante cantabile 。ヴィオラが作る優しいベースに乗って、柔らかく美しく歌うヴァイオリンは、幸せいっぱいな感じ!細かく音符を連ねて音階上昇したり、幸せなトリルが時折登場したりといった丁寧な仕事ぶりに惹かれました。ほんの一瞬ヴィオラが沈黙した時のヴァイオリンは、カデンツァ風の存在感!続いて、サン=サーンス「白鳥」。チェロ&ピアノによる演奏で有名なこの作品を、ヴァイオリン&ヴィオラによる演奏で。ヴィオラが作るベースは、バッハの無伴奏チェロ組曲第1番プレリュードを連想させるもので、似た音型を繰り返しながら少しずつ変化して「波」を演出。その上を繊細に美麗に歌うヴァイオリンの美しさ!チェロの大白鳥とはまた異なる個性で、とても魅力的でした。曲の終わりの方で、ヴィオラが沈黙しヴァイオリン独奏になったシーンの儚さ、締めくくりの消え入る音の繊細な美しさ。とても良いものを聴かせて頂きました。ありがとうございます!

前半。1曲目はベートーヴェンの序曲「コリオラン」。弦はコントラバス7の14型、各管楽器は2管ずつ(金管はホルンとトランペット)、そしてティンパニの編成でした。はじめの重厚な弦に震える!骨太男前な音楽に最初から気分が上がりました。ベートーヴェンはこうでなくっちゃ!穏やかなシーンでは柔らかな木管が存在感あって、弦がトレモロで次第に盛り上がりの波を作るのがドラマチック。強奏のジャン ジャン!のキレ味と間合いの良さ、強弱の変化、ぐっと迫り来るうねり!キビキビした進行と要所要所をビシッと締める、シモーノさんらしさも感じました。盛り上がりの頂点でのティンパニ連打、何度も力強く踏み出すシーンでのコントラバスのぐおんと来る重低音が個人的ツボでした。そしてラスト、チェロパートが静かにメロディを奏で、弦の静かなピッチカートを数回で締めくくり。この引き締まった空気!重厚で強奏の印象が強かった音楽が意外な形(と私は思いました)で終わって、しかしそれがカッコイイ!ベートーヴェンらしさとシモーノさんらしさ全開のオープニングでした。

ソリストのアンヌ・ケフェレックさんをお迎えして、2曲目はベートーヴェン「ピアノ協奏曲第4番」。オケの編成は、弦はコントラバス3の10型に。管はフルート1の他は2管ずつ(金管はホルンとトランペット)、そしてティンパニでした。第1楽章 はじめのピアノのタタタタ……という音の連打は、先ほどの序曲とは個性が異なる優しい響き!しかししっかりベートーヴェンらしさを感じたのは、「運命の動機」と似ているから?そっと重なった弦は、優しく穏やかな波を起こして、美しい響きと丁寧な仕事ぶりがイイ!木管たちが加わると、「運命が動き出した」と私は感じました。オケのターンは、時折少し陰りが垣間見えるものの、基本的に幸せな感じで、心穏やかに聴くことができました。最初の運命の動機のようなリズムをベースにしながら、次第に盛り上がっていく流れも、フレーズを各パートでリレーしていくのも、安定の仕事ぶり。ピアノがタタタタ……と登場、音階上昇がきらびやか!オケと会話するピアノの、小粋にステップ踏んでいるような優しく愛らしい響きに癒やされました。時折入る低音のパワフルさや、ダイナミックな音階上下はベートーヴェンらしさだなとも。ピアノがよどみない流れの中でニュアンスを変化させ、明るい音楽が哀しげになって、そんなピアノの感情をオケが受け継いで……プロのお仕事にこんな事を言うのは失礼と承知の上で、ピアノもオケもとても上手いなと、聴くだけの私は感心していました。華やかに盛り上がったオケを引き継いでパーンと登場したピアノのインパクト!ケフェレックさんのピアノで、こんなパンチのある音を聴いたのは少し意外でした。そしてカデンツァへ。はじめは思いっきり重厚骨太ダイナミックに、しかしそこから繊細な演奏に切り替わり、そのはじめの1音から魅了されました。これは素敵!ピアノはひとりで繊細さからダイナミックさまで、リズミカルに美しく奏でて、ケフェレックさんらしさもベートーヴェンらしさも感じられました。オケがそっと合流して、タタタタン!を繰り返しながら、ピアノと一緒に華やかで明るいラスト。清々しい!第2楽章 オケは弦のみ(!)。ピアノとの室内楽のように密な対話と、色合いの変化がとても魅力的でした。弦楽器とピアノが交互に演奏するスタイルで、はじめの弦ユニゾンは先ほどの序曲「コリオラン」を連想する厳格さ重厚さ!続いたピアノは、悲しみをこらえて静かに語っているよう。ケフェレックさんの繊細なタッチが印象的でした。会話を繰り返すうちに弦は静まっていき、ピアノの繊細な美しさが一層際立ったように感じられました。第3楽章 前の楽章から一変して、明るく華やかに!元気の良いリズム感、躍動感あふれる音楽が気持ちよく、聴いていて気持ちが晴れやかになりました。ささやくような弦楽合奏に続いたピアノはきらびやかで幸せな感じ!影となって寄り添うチェロトップ(!)の大らかでのびやかな音色の良さ!独奏にチェロトップ(時々はヴィオラパートも?)が寄り添うシーンが多かったのが個人的うれしいポイントでした。華やかに盛り上がったオケは、パパパン♪という金管の祝福が印象的。とにかくこの楽章は「パパパン♪」のリズムが命だなと個人的には感じました。壮大なオケに続いたピアノは、美しさに加えダイナミックさもあって、堂々たる風格に私は同じベートーヴェンの「皇帝」を連想。ピアノもオケもベートーヴェンらしい生命力があふれている!基本パワフル骨太な流れの中で、一瞬登場した木管アンサンブルの心地よさはオアシスでした。終盤に登場したカデンツァは、低音の効いた重厚さから軽やかな流れの美しさまで、聴き所しかない!そっと合流したオケと一緒に、ぱっと華やかになりうんと加速して駆け抜けたラストが清々しい!ケフェレックさんの美しいピアノと、生命力&リズムの権化なベートーヴェンの幸せなマリアージュを楽しめました。

 

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アンヌ・ケフェレックさんが口頭にて曲目を告げられ、ソリストアンコールの演奏が始まりました。ヘンデル(ケンプ編)「メヌエット ト短調 HWV 434 No.4」。最初の1音から世界が一変。深い悲しみが感じられる音楽に胸打たれました。訥々と語るようなメロディに、重い低音、切ないトリル。先ほど聴いたベートーヴェンが外に向かうエネルギーなら、アンコールのメヌエットはじっくり内面を見つめる精神。とても心に響く音楽でした。アンヌ・ケフェレックさん、生命力あふれる協奏曲から精神性の高いピアノ独奏まで、素晴らしい演奏を聴かせてくださり感謝です。今後も時々は札響との共演を、ぜひお願いいたします。

後半は、ジョン・アダムズ「ハルモニーレーレ(和声学)」。今回が札響初演です。弦はコントラバス7の14型。管楽器と打楽器は多種多彩の大編成で、目立つところではチューバ2、ハープ2、鍵盤楽器にピアノとチェレスタ、様々な打楽器の中にはマリンバ、シロフォン、ヴィヴラフォンがいました。こちらの演奏、私個人としては「聴いた」というより「体感」。またプログラムノートには様々な引用が書かれていましたが、私は気付けなかったです。モチーフの永遠の繰り返しに気が遠くなりそうで、早い段階から指揮に注目する事によって溺れないように努めました。その指揮がすごかったです……。拍子や速度が目まぐるしく変化していくにもかかわらず、全部繋がっていたと私は感じました。この指揮にしっかりついていき、凄まじい演奏を成し遂げたオケに大拍手!どのようにレポートすべきか悩みますが、ここでは印象深かった点をピックアップして書き記す形にします。しかし、そのポイントポイントはおそらく本質ではなく、一連の流れとしてこの音楽を「体感」する価値からは遠くかけ離れたものである事をご留意くださいませ。第1楽章 いきなり大音量でけたたましい音の連打!あまりの強烈さに、私は最初「今回は無理かもしれない」と率直に感じた事を告白します。ただ第一印象のおかげで、これは「美しさ」や「癒やし」を求める音楽ではないと把握し、ついて行けるところまで行こうと覚悟を決めました。はじめの「ダンダンダンダダダダーン♪」のようなモチーフが大きくなったり小さくなったり、また速くなったり少し緩やかになったりと、ひたすら繰り返される演奏。その音を聴いていると、トランス状態になりそうに。コワくなった私は、早い段階で指揮の動きを追いかける事にして、「音」そのものを意識しすぎないようにしました。密やかになるシーンでの弦の緻密さ、木管の息の長さ(一体いつ息継ぎを!?)、鍵盤打楽器陣の細やかさ、ガツンと盛り上がるシーンでの金管のパンチ力(低音金管群の底力!)やフルート&ピッコロの強烈な高音に打楽器陣の激しさ!孤高のホルンを皮切りに、チェロパートから始まった弦のメロディは、確かに解説の通り「ロマン派風」かも?しかしオケ全体でひたすら繰り返されるミニマルミュージック的な音の波があったため、ずっとせき立てられている感じがして、ロマンティックな気持ちにはなれなかったです(苦笑)。ピッコロの超高音、コンマス独奏に、行き着くところまで来た?と感じました。短い音型を高速で繰り返しながら、大太鼓や低音金管群がぐわっと盛り上がりの波を作ったかと思うとまた沈み、終わりの見えない流れ。しかしラストはビシッと締めくくり。容赦なし。第2楽章 テンポ感は「ゆったり」でも、普通に来るはずもなく……。しかしはじめの方の弦と管によるほの暗い音楽は、前の楽章のようなせき立てる感じはなく、じっくり浸る事ができました。トランペット独奏の存在感!静かな感じから、だんだんと盛り上がっていき、何度目かの盛り上がりの波での大太鼓とティンパニの連打がド迫力!しかし真に驚いたのはその直後でした。ヴァイオリンが全力でキーン(擬音が上手くなくてごめんなさい)とするインパクトある音を発したのが衝撃的!札響の弦の透明感ある美しさからは想像付かない、強烈な音。ここまでよく思い切りましたね、すっごい……。再び沈みゆき、孤高のホルン独奏、低音金管群の重低音が印象深かったです。静かに静かに終わるラストの引力!第3楽章 キラキラと光を思わせるベースに、弦がゆったりと歌う。この広がりと美しさに、私は指揮の下野さんが動画で仰っていた「万華鏡」を初めてイメージ。ここだけは素直に美しさを味わえました。しかし次第にベースのミニマルミュージック的な音の波が存在感を増していき、速度も速くなっていき、せき立てられる感じに。細かく音を刻む弦も管も、打楽器陣に鍵盤楽器やハープも、驚きの集中力で1音1音をキメていくのがすごい!指揮が合図する度に、ぐわんと強力な波が起きるのを目撃しました。クライマックスの盛り上がりが凄まじかったです。そして引っ張らず余韻を残さず、ビシッと潔い締めくくり。すごかった……。この作品と今回の演奏を正しくは理解出来ずとも、私は圧倒的な体験をしました。難曲を見事に成し遂げたオケの皆様、ついて行った私達聴き手も、全員優勝!

カーテンコール。指揮の下野竜也さんは、はじめに8名の打楽器奏者の皆様を讃えました。次にホルントップとホルンセクション。以降は、ハープ2、ピアノとチェレスタ、フルートトップとフルートセクション。各管楽器も順に讃え、弦は低音から高音パートを順に(結果、全員!)。スコアを高く掲げ、弦の各2トップと握手(コントラバスは奥まで歩いて行って握手)も。そして2025年9月末にて退団する、ライブラリアンの中村さんへ花束贈呈がありました。指揮の下野さんが片膝を立ててしゃがむ姿勢で、花束を手渡し。プロポーズみたい(!?)。中村さん、長年にわたり札響を支えてくださり、SNSでも盛り立ててくださり、ありがとうございます!これからのご多幸とご活躍をお祈りいたします。そして札響と札響ファンのことも末永く見守っていてくださいませ。

前回の札響定期はこちら。「札幌交響楽団 第670回定期演奏会」(日曜昼公演は2025/06/29)。グランディ・リヒャルトコレクション第1弾の「ドン・キホーテ」は、独奏チェロに魅せられた“英雄の生涯”。ラヴェルの色彩と立体感、何より「ゾーンに入った」面白さ!今のエリアスさんと札響だからこその滋味を味わえ、これからも札響を信じてついていこうと気持ちを新たにしました。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

YAMATO String Quartet ヤマト ストリング カルテット ~classical & unlimited∞~(札幌公演) 昼の部および夜の部(2025/09) レポート

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2024年に結成30周年を迎えた弦楽四重奏の YAMATO String Quartet。その「初」となる札幌公演が2025年9月に開催されました。当初は夜公演のみの予定だったものの、発売初日に即完売。急遽昼公演が追加され、そちらも完売(!)。人気と期待の高さがうかがえます。私は初めて聴くYSQの演奏をとても楽しみにして、昼と夜の両方に参戦しました。


YAMATO String Quartet ヤマト ストリング カルテット ~classical & unlimited∞~(札幌公演)
2025年09月02日(火) 昼の部 15:00/ 夜の部 19:00 札幌コンサートホール Kitara 小ホール

【出演】
YAMATO String Quartet ヤマト ストリング カルテット
 石田 泰尚(1stヴァイオリン)
 執行 恒宏(2ndヴァイオリン)
 榎戸 崇浩(ヴィオラ)
 阪田 宏彰(チェロ)

【曲目】
<昼の部>
M.ラヴェル:弦楽四重奏曲 へ長調

H.マンシーニ:ひまわり
A.ピアソラ:アディオス・ノニーノ
A.ピアソラ:革命家
ビートルズメドレー
レッド・ツェッペリン:カシミール

(アンコール)
A.ピアソラ:天使のミロンガ
ディープ・パープル:紫の炎

<夜の部>
E.グリーグ:弦楽四重奏曲 ト短調

E.モリコーネ:    ニューシネマパラダイス
A.ピアソラ:忘却 Obrivion
A.ピアソラ:リベルタンゴ
クイーン:ボヘミアン・ラプソディ
キング・クリムゾン:21世紀のスキッツォイド・マン

(アンコール)
ポック:屋根の上のヴァイオリン弾き
ディープ・パープル:湖上の煙

※プログラムに記載はありませんでしたが、YSQの楽曲の編曲はほとんどが近藤和明さんによるものだそうです(他に石田組でおなじみの松岡あさひさんも編曲者のお一人)。


あこがれのYSQを、kitara小ホールにて、昼と夜の2公演たっぷり楽しめた贅沢な一日。全身全霊で思いっきり楽しみました!弦4つのミニマム編成で奏でる音楽は可能性無限大!YSQに興味を持ったきっかけは正直「石田組の組長がいるから」だった私ですが、この出会いによってすっかりYSQの大ファンになりました。毎回異なる編成の石田組、固定メンバーによるYSQ、どちらも大好きです!この日は最高に満ち足りた私。しかし終演後すぐからYSQに再会したい思いに駆られています。YSQの皆様、超ご多忙とは存じますが、近い将来きっと札幌に戻ってきてくださいませ。広大な風景に美味しいモノ、そして札幌のファン達がお待ちしています!

クラシック音楽で今回取り上げられたのは、ラヴェルとグリーグ。今年(2025年)が生誕150年のラヴェルは、YSQのお一人お一人が持つ美しい音色とそのハーモニーの良さを楽しめました。そして北欧(もしかして札幌に合わせた選曲?)のグリーグは超充実の演奏がすごい!勢い、熱量の高さ、ダンサブルなノリの良さ――結成30年超のキャリアで培ってきた土台と信頼関係が強固だからこそ、こんなにも爆発的な生命力ある音楽が生み出せるのだと実感しました。そんな本気のクラシック音楽に加えて、ジャンルを超えた演目たちが面白いのなんのって。編曲も凝っていて、鬼編曲でも見事に弾いてしまうYSQのメンバーお一人お一人はただ者では無くて、いずれも原曲が一層輝きを増した魅力あふれる音楽になっていました。これはやみつきになりますね!こんなに面白い世界を今まで知らずに生きてきたなんて……いえ今からでもよいので、今後私はYSQの数多のレパートリーを片っ端から、YSQの圧倒的な演奏にて、余すところなく拝聴していきたいです。YSQの皆様、これからどうぞよろしくお願いいたします。私の方は、チケット争奪戦を頑張ります!


ここからは各演目の感想をメインに時系列でレポートします。YSQの皆様は黒シャツと黒パンツの装いで、1stヴァイオリンの石田さんのみ昼の部と夜の部では異なるデザインのシャツを着用されていました(昼は前身頃のポケットにステッチが入ったもの、夜は背中にモノトーン柄が入ったもの、だったと思います)。

<昼の部>

前半は、M.ラヴェル「弦楽四重奏曲 へ長調」。YSQだからこその色彩感!各パートの重なりが変化することによって織りなされる綾の美しさに、私はとても惹かれました。第1楽章 そっと入った冒頭の繊細な美しさ!最初からすっと気持ちが入っていけました。強弱の波、各パートの重なりの変化が素敵で、私は「たゆたう水」をイメージ。流れは一辺倒ではなく、突如せわしなくなったり、エキゾチックな雰囲気になったり。どんなシーンにおいても、4名の皆様の音は透明感があってとにかく美しい!第2楽章 リズミカルなピッチカート応酬!1stヴァイオリンのトリル、そこからの伸びやかな歌は空を飛行しているよう。1stヴァイオリンのメロディを繰り返すチェロの大らかさ。神秘的なシーンでの1stヴァイオリンの透明感、奥行きを作る2ndヴァイオリンとヴィオラの細やかさ。お互いの信頼関係がうかがえる、あうんの呼吸が最高に良かったです。第3楽章 じっくりと進む集中力の高さ、深淵にぐっと引き込まれました。はじめの深みのある音色で歌うヴィオラが素晴らしい!密やかな流れから、重低音で現れたチェロのインパクト!そこから色合いが変化して、その時に主旋律を歌うパートの美しさと他のパートが作る波の重なりが良かったです。まるで運命に翻弄されているかのよう。第4楽章 つかみから激しく、インパクト絶大!トレモロしつつ歌うのも絶妙な間合いのピッチカートも、とても情熱的でした。はじめの激情がいったん落ち着いてからは、今まで登場した様々なフレーズが形を変えて登場。一瞬の隙も無いスリリングな流れにドキドキ。感情の起伏と、流れの中で変化していくハーモニーの良さを味わえました。クライマックスでの1stヴァイオリンの超高音が鮮やか。4名揃って力強く音階上昇し、スパッと締めくくったラストが潔い。なんて素晴らしい音とチームワーク!惚れる!

後半。1曲目は、H.マンシーニ「ひまわり」。ヴァイオリン二重奏で奏でられた前奏は、懐かしく幸せな感じ。ほどなくあの悲しく切ないメロディが登場。ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラそれぞれが歌い、歌心の良さと重なるパート(トレモロだったりピッチカートだったり)とのハーモニーを味わえました。ああ沁みる!

A.ピアソラを2曲。「アディオス・ノニーノ」。冒頭、1stヴァイオリンの大ソロがすごい!この作品の世界観を知らしめてくださった、石田さんの貫禄あるソロに完敗です。私たちが知る本編に入ると、ほの暗い音色で歌われるメロディに独特のリズム感、ぐっと引き締まった演奏にゾクゾク。駒の内側の弦を擦って「ギロ」のような音を鳴らしたのは2ndヴァイオリンでした。そんな緊迫感からやや平和なシーンへ。幸せに歌う1stヴァイオリンの高音の美!ラストはユニークで、2ndヴァイオリンがメロディを歌い、1stヴァイオリンが超高音をのばしてフェードアウトしていたと思います。「革命家」。はじめの重厚ユニゾンが超絶カッコイイ!「ギロ」のような音の担当は1stヴァイオリンでした。メロディを各パートで受け渡しながら、ベースやピッチカート等の重なりが変わるたびに色合いが変わるのがイイ!面白かったのは「まったく重ならない」、各パートが順に短いフレーズを奏でて丁々発止な掛け合いをするシーンです。この引き締まった空気、すっごい!これは聴きものでした。ラストのユニゾンが力強い!

「ビートルズメドレー」。聞き覚えのあるメロディが次々と登場し、心癒やされました。主にメロディを歌う1stヴァイオリンの美しさはもちろんのこと、ふくよかな内声を作る2ndヴァイオリンとヴィオラ、ぐっと包容力ある低音で支えるチェロ、みんなが魅力的な四者が一体となって作る音楽。チェロやヴィオラが歌うシーンの味わい深さや、落ち着いたシーンでの繊細さや高揚感あるシーンでの推進力など、YSQの4名だからこその生きた音楽が良すぎました!様々な曲が登場しましたが、個人的に特に印象深かったのは、最後に登場した「イェスタディ」です。弦楽四重奏らしい穏やかで豊かなハーモニー。それだけでもすごく素敵なのに、原曲ではラーララ ラララーラ♪と盛り上がっていくところからが最高でした。チェロとヴィオラが刻む温かな重音に支えられ、ヴァイオリンが高らかに歌い上げる、この多幸感!ああ幸せ!

レッド・ツェッペリン「カシミール」。はじめからエキゾチックな雰囲気でめちゃくちゃカッコイイ!ヴィオラ&チェロによる重厚ベース、2つのヴァイオリンの二胡を思わせる曲線的な響き、ゾクゾクする!ダダダ ダダダ……♪の低い足音は、運命が近づいてくる感じでドキドキ。思いっきり華やかな盛り上がりでの、厚みとキレ味の良さ!ここに来てもなお集中力の高い演奏にて、ビシッとキメてくださいました。最高!

プログラムの演目がすべて終わると、チェロの阪田さんがお一人で舞台へ。ごあいさつと宣伝がありました。「年内にYSQを聴けるのは最後!」となる京都公演(2025/11/5)を熱心にPRされていました。

4名揃って再び舞台へ。アンコール1曲目は、A.ピアソラ「天使のミロンガ」。ピッチカートが印象的な、ゆったりとしたテンポで流れる音楽。深い悲しみを歌う滑らかな高音の美しさに、変化していく低音が感情の波を表しているようでした。ピアソラには「タンゴ」ではないこんな曲もあるのですね!

1stヴァイオリンの石田さんがマイクを持ってトーク。「しゃべるように言われたので」だそうです(笑)。YSQは札幌では初めての公演ということ、満席となる大勢のお客さん達が集まったことに「ありがとうございます」。「夜も来てくださるかたは……ちゃんとやります」(!)と宣言されてから、「もう1曲やります」と、アンコール2曲目へ。ディープ・パープル「紫の炎」。疾走感と熱さが半端ない!チェロによる重厚ベースも2ndヴァイオリン&ヴィオラによるコアな旋律の演奏もしびれる!その上で掠れる音色でメロディ演奏する1stヴァイオリンは最高に良くて、ギュン♪と鳴らすキレ味、超高速演奏(超人的!)はまさに燃え上がるよう。ヴィオラが主役となるシーンでは、ほの暗い音色をバリバリ鳴らして歌うのがカッコ良かったです。石田組の原点、ここにあり。すんごい!

カーテンコールでYSQの皆様は何度も戻って来てくださいました。最後は楽器を持たずに出てきて、深々とお辞儀。平日昼から超充実の演奏をありがとうございます!夜の部も楽しみです!


<夜の部>

前半は、E.グリーグ「弦楽四重奏曲 ト短調」。緊迫感と勢いがあり、かつダンサブル。激情もおしゃれな感じも、隅々まで神経が行き届いた超充実の演奏は聴き応え抜群でした!第1楽章 重音の強奏で入る最初からインパクト絶大!重厚なユニゾンがいったん静まる、その静寂がめちゃくちゃ良くて、もう絶対信頼できると私は確信しました。キレッキレに駆け抜け、歌曲のように柔らかく歌い、1stヴァイオリンとチェロがこだましたり、1stヴァイオリンが鮮やかな音階上下をしたり、聴き所しかない!ぐっと雌伏するシーンの研ぎ澄まされた空気に引き込まれ、重音もりもりで迫り来る強奏の気迫に圧倒され、シーンが変化してもずっと思いが繋がっている演奏に、聴き手は気持ちを持って行かれっぱなしでした。他の弦の繊細なトレモロに乗って、歌うチェロの優雅さ。全員での超スピードで駆け抜けたラストがすごい!第2楽章 緩急あって、「緩」は柔らかな曲線美!おしゃれな音楽は、独墺系の生真面目さやフランス系の色彩感とも違った個性がたまらなく良かったです。「急」での緊迫感と勢いある流れがカッコイイ!楽章締めくくりでのフェードアウトする超高音がきれい!第3楽章 フレーズの頭にアクセントが来る舞曲的なリズム感、クルッとターンするような音型、ノリの良さに魅了されました。1stヴァイオリンは協奏曲のソリストのように華麗な活躍!1stヴァイオリンの悲劇的な高音の余韻から、チェロが牧歌的に歌い出した、そのギャップが印象深かったです。第4楽章 はじめのレントはぐっと力をためているよう。重厚な重音に続いたプレストの躍動感疾走感!ピアニッシモでささやき合い、そこからぐわっとエネルギッシュに盛り上がっていくのが爽快で、どこまでも高く飛翔していくようでした。息つく暇も無いめまぐるしい展開にもかかわらず、厳しさの中で時に温かな表情を垣間見せる余裕と遊び心。音が跳ねる1stヴァイオリンに他の弦が一度だけ入れるピッチカートが絶妙でした。ユニゾンで力強くパワフルに演奏する、その堂々たる響き!華やかかつ重厚な締めくくりは圧巻!ラスト輝かしさに、私はホルベルク組曲のリゴドンを連想しました。オケにだって引けを取らない壮大さ重厚さ、加えてこの緊迫感と勢いとリズム感は長年一緒にやってきたYSQの4名だからこそ。素晴らしかったです!

後半。1曲目は、E.モリコーネ「ニューシネマパラダイス」。序奏は優しく温かで、2ndヴァイオリンが深みある音色で繰り返す音型がとても印象的でした。1stヴァイオリンが歌う懐かしい感じのメロディ、4名で織りなす綾の美しさ!個人的にぐっと来たのは後半の「愛のテーマ」で、1stヴァイオリンによる切ないメロディが繰り返されながら、周りの色合いが少しずつ変化していき、ついに感極まるのが素敵すぎました。そこから丁寧に繊細に紡いでいき、そっと優しく締めくくるのがまた良すぎて。なんて優しく美しい世界!

A.ピアソラを2曲。「忘却 Obrivion 」は、深みのある音色にぐっと来て、じっくりと歩みを進める演奏は祈りを思わせるものでした。感極まるところの美しさ崇高さ!心清められました。「リベルタンゴ」は、冒頭1stヴァイオリンによるキュン♪の掴みからキレッキレ!リズミカルに高速に進む音楽がスリリングで、似たメロディを繰り返しながらカラーが変化していくのがイイ!駒の内側の弦を擦ってガガガ……とギロのような音を発するのもスパイスが効いていて、ゾクゾクさせられました。

クイーン「ボヘミアン・ラプソディ」。1st&2ndヴァイオリンによる優しい出だしから心掴まれ、4名が織りなす前奏は柔和で優しい表情!1stヴァイオリンが深みのある低音で「ママ~♪」を繰り返す歌が沁みました。次第に高ぶっていき、感極まった「ママ~♪」は高音の1st&2ndヴァイオリンによる魂の叫び!とても美しい響きでした。タッタッタッタ♪と歩み出してからの流れが良かったです。密やかなピッチカートをはじめ、4名の呼吸間合いが絶妙。そこから輝かしく壮大な広がりへは鳥肌モノでした!なんてドラマチック!

キング・クリムゾン「21世紀のスキッツォイド・マン」。チェロによる重低音ベース、他の3つの弦の重厚なユニゾン、最初から大迫力!あえてのダミ声の音色がめちゃくちゃカッコイイ!1stヴァイオリンのソロはエレキギターのようでゾクゾク。各パートでソロを回す密やかなシーンも緊迫感あって、片時も目と耳が離せない!最初のメロディが帰ってきて、その気迫と厚みに再びしびれ、ラストの超高速で弓を動かしてのバリバリ音がすさまじい!前月の石田組でも打ちのめされた演目でしたが、YSQだからこその演奏にもやられました!

チェロの阪田さんがお一人で舞台へ。昼の部と同じく京都公演の宣伝をされました。「もう少し弾くかもしれません」と仰って、一旦下がり、4名揃って再び舞台へ。アンコール1曲目は、ポック「屋根の上のヴァイオリン弾き」。1stヴァイオリンの哀愁ある歌はどこか懐かしさを感じさせるもので、他の弦が作る3拍子のリズムが心地よい。1stヴァイオリンの完全ソロが登場し、まるで協奏曲のカデンツァのように、メロディを即興的に演奏するのが鮮烈!1stヴァイオリンの完全ソロは2回登場して、これを境にシーンが変化したのが印象的でした。聴き手はノスタルジックな気持ちになれて、高ぶった感情が穏やかになりました。

1stヴァイオリンの石田さんがマイクを持ち「ありがとうございます」とごあいさつ。「昼も弾いて、今も弾いて、眠くて……」「でももう1曲やります!」わああ!お疲れのところ、大サービスありがとうございます(感涙)。アンコール2曲目は、ディープ・パープル「湖上の煙」。最後の最後に超絶ロック、キター!これが超絶すごかったです……。はじめはチェロの重厚な大ソロ。ああ好き!続いてあのダッダッダー♪の低音ベースは2ndヴァイオリン&ヴィオラがゴリゴリ奏でて、これまたすごい!その下でチェロが全力でガガガガ……と永遠に重低音を刻んでいたのには度肝を抜かれました。おそらく2ndヴァイオリン&ヴィオラと同じように弾いても演奏はじゅうぶん成立するにもかかわらず、チェロがめちゃくちゃ働かされている……編曲が鬼(いいぞもっとやれ)。掠れる音色でシャウトするように歌う1stヴァイオリンは超カッコ良く、美音の持ち主がこんな音を発するという事にもドキドキさせられました。終盤、ヴィオラ→2ndヴァイオリン→1stヴァイオリンとメロディを受け渡し、ここでようやくチェロは重低音を刻むのではなくじっくりのばすスタイルに。このチェロがいてくださったことに大感謝!ラストは全力でビシッと締めくくり。一体何処にそんな気力体力が残っていたんですか!?と心の隅では心配しつつも、最後の最後に全力での超絶ロックな演奏にしびれました!YSQ、最高かよ!

カーテンコールでYSQの皆様は何度も戻って来てくださいました。最後は楽器を持たずに出てきて、深々とお辞儀。昼に続き夜の部も、超充実の演奏をありがとうございます!めちゃくちゃ堪能できて、大大大満足です!それでもまた今すぐにでも会いたい!近い将来、YSQと再び札幌の地でお目にかかれる日が必ず来ますように。


前月に私は関西方面へ遠征し、石田組の公演を聴いてきました。「石田組 コンサートツアー2025(びわ湖ホール公演)」(2025/08/23)。クラシック音楽を極めた彼らが、クラシックの枠を超えた音楽で開放される。熱量高く、1曲弾く度に「最高」を更新し続ける演奏に圧倒されっぱなし!会うたびにさらに突き抜けていく石田組は、今回も私たちに極上の夢を見せてくださいました。

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石田組 コンサートツアー2025(びわ湖ホール公演)(2025/08) レポート

www.biwako-hall.or.jp
2025年度の石田組コンサートツアー、8月のびわ湖ホール公演を聴きました。私は初めて訪れるびわ湖ホールにて、石田組と再会できる事を楽しみに、札幌から遠征しての参戦です。びわ湖ホール公演は早い段階で全席完売!またこの日の前日には、同じ出演者と演目にて、名古屋公演が行われました。


石田組 コンサートツアー2025(びわ湖ホール公演)
2025年08月23日(土)14:00~ 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール

【出演】
石田組メンバー(編成は弦3-3-3-3-1)
 1stヴァイオリン : 石田泰尚 / 野尻弥史矢 / 塩田脩
 2ndヴァイオリン : 山岸努 / 丹羽洋輔 / 伊東翔太
 ヴィオラ : 中村洋乃理 / 生野正樹 / 鈴村大樹
 チェロ : 西谷牧人 / 石川祐支 / 弘田徹
 コントラバス : 米長幸一

【曲目】
ウォーロック:カプリオール組曲
J.ラター:弦楽のための組曲
ハチャトゥリアン:ガイーヌより「レズギンカ」(松岡あさひ編曲)
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ(松岡あさひ編曲)
E.バーンスタイン:荒野の七人(近藤和明編曲)
マクブルーム:ローズ(松岡あさひ編曲)
U.K.:シーザーズ・パレス・ブルース(近藤和明編曲)
レインボー:スターゲイザー(近藤和明編曲)
キング・クリムゾン:21世紀のスキッツォイド・マン(近藤和明編曲)

(アンコール)
タケカワユキヒデ:銀河鉄道999(The Galaxy Express 999)
ディープ・パープル:紫の炎
オアシス:ホワットエヴァー


私はこの日の出会いを生涯忘れないと思います。石田組の皆様、なんてかた達なの……!クラシック音楽を極めた彼らが、クラシックの枠を超えた音楽で開放される。しかも1曲演奏するたびに「最高」を塗り替えていく。ひとつひとつがミラクルな瞬間で、それを目の当たりにできた私たちはなんて幸運だったのかとつくづく思います。私の石田組の初体験は2023年10月の札幌。その日を境に人生が変わり、「石田組前夜」には戻れないと当時は思いました。それは間違いではない、しかしまだまだ甘かったのです。石田組は会う度に、さらには同じ公演の中でもどんどん進化していく!だから「その日の石田組」を知る前と後では、人生がまるで違う!次に会う石田組はさらなる進化を遂げているに違いなく、こちらの高まり続ける期待を軽々と超えてくることでしょう。私たちファンは、わかっているのよと臨み、でもきっと「まだわかってなどいなかった」と震えるのでしょう。とんでもないものに出会ってしまった……!進化し続ける石田組から、私はもはや離れられません。

びわ湖ホール、とても素敵なホールでした!ホールの音響や座席の作りや視界は良好。設備もきれいで、ガラス張りのホワイエからは琵琶湖を一望できました。近日、改修工事を予定しているとのこと。ますます素敵になってリニューアルオープンした暁には、再び訪れたいです。そして初めて見た琵琶湖は思っていたよりもずっと大きかったです!どこまでも高い夏の青空とともに、この雄大な景色も私は生涯忘れないでしょう。札幌から遠征できる機会は限られてしまいますが、その分、行ける時は公演そのものとその土地をじっくり堪能できたらいいなと思います。

前半。チェロのトップは石川さんです。はじめはウォーロック「カプリオール組曲」。6つの舞曲それぞれの個性と、やはりダンスのノリに血が騒ぎました。第1曲 低音メインできっちり構築する音楽はバロック風?前のめりな勢いがイイ。この少人数で、この厚み!相変わらず弱音からぐっと盛り上がりの波を作るのが上手すぎる!第2曲 ヴィオラの低音刻み、コントラバスがボディを叩いて打楽器のような演出。ドキドキ!厳かな教会音楽を思わせるもので、美麗な高音弦と重厚な低弦ががっちり対になって(対位法?)いるのに痺れました。第3曲 各パートの追いかけっこ、ピッチカートで歌うのが素敵でした。第4曲 この勢い、うねり。ジェットコースターみたい!目まぐるしい展開、弦を擦る演奏とピッチカートを交互に繰り出して流麗に進むのは、さすが名手揃いのハイクオリティ!第5曲 この曲のみコントラバスはお休み。高音弦の透明感ある歌は、夢見心地な美しさ!3つのチェロによる、ぐっと低いベースがとても温かみがあって、ぐっと来ました。第6曲 はじめのチェロの低音にがっちり掴まれる!丁々発止、踊り狂うような勢いとリズム感!引き締まった空気で駆け抜けた音楽。まるで石田組のためにあるかのようなクラシック音楽に、私ははじめから心掴まれました。

J.ラター「弦楽のための組曲」。私は石田組の演奏で過去にも何度か聴いている演目ですが、今回のメンバーによる厚みがありかつ歌心あふれる演奏もとっても素敵でした!何度でも聴きたい♪第1曲 ジャンジャン♪の開始から元気いっぱいの華やかなサウンド!最初から楽しい!しかし驚くのはまだ早かったのです。流れるように歌いながら軽快にピッチカートを挟んだり、細やかな追いかけっこをしたり、終盤どんどん音の厚みを増していったりと、隅から隅まで集中力が高いハイクオリティな演奏!この素晴らしさに、第1曲が終わった時点で会場からは拍手が起きました。第2曲 ヴァイオリンが作る愛らしい音の波が幸せな感じ!内緒話をするようにヴァイオリン&ヴィオラがささやきあい、細やかなステップを踏み、とても繊細で愛らしい音楽に癒やされました。第3曲 O Waly Waly のメロディを歌うパートも支えるパートも、優しく温かで愛を感じました。きました石田組長のヴァイオリン&中村さんのヴィオラの会話!リフレインするヴィオラの包容力と愛情深さがイイ!第4曲 1stヴァイオリンから始まった、一気に駆けていく演奏がすごい……軽やかに歌いつつ、気持ちよく合いの手を入れメロディを次々と受け渡してと、目まぐるしく展開。大変集中力高い演奏による、生き生きとした音楽は、聴いていて気分爽快でした!

ハチャトゥリアンのガイーヌより「レズギンカ」。これには圧倒されました……。少人数編成の弦のみで、ここまでやれるんですね!石田組長の軽い声かけ合図で始まった演奏、最初から舞曲のリズム感に血が騒ぎます。組長のメロディ演奏に合いの手を入れるピッチカート、このキリッと締まった空気!最弱音によるメロディがきれい。そこからぐわっと盛り上がってからは華やかかつものすごく気迫あふれる演奏に。まるで狂気のダンス!突き抜けたヴァイオリン、重厚パワフルな低弦。加えて私が震撼したのはヴィオラです。壮大な広がりが、オーケストラのホルンのよう!確かにホルンが聞こえてきたと、私は感じたのです。石田組、半端ないって!

後半。はじめは、ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」。この繊細さ、豊かな色彩の美!前半の狂気のレスギンカと同じメンバーが演奏しているんですよ、信じられない……。弦楽四重奏やチェロアンサンブル等の様々な編成で演奏される有名曲。弦の種類と数が増えた分だけ出来る事も増える。それを十二分に活かした編曲にも大拍手です!はじめ、石田組長のソロは低めの音程でしっとりと歌い、支える側は同じパート内でもピッチカート担当と弦を擦る演奏に別れてより豊かな響きに。ラヴェルはやっぱりピッチカートがイイですよね♪合奏によるメロディのささやきの透明感!石田組長とヴィオラ中村さんによる二重奏のメロディのふくよかさ!この時の石田組長のヴァイオリンは、最初とは異なり高音域で優しい響きだったのも印象的でした。各パートのトップによる弦楽五重奏では、石田組長のヴァイオリンと石川さんのチェロが語らうように歌うのが素敵すぎ!ラストの消え入る音の繊細さ美しさ!私は思わず感嘆の溜息です。良いものを聴かせて頂きました、ありがとうございます!

お待ちかね、組員紹介&トークのお時間です♪「どうも、こんにちは」と石田組長がごあいさつ。前日夜の名古屋公演を「ちゃんとして」、深夜の打ち上げ&決起集会もあり、お疲れの様子でしたが、「今日も……ちゃんとします!」と宣言。会場は歓喜!組員紹介は、担当楽器と所属とお名前の紹介を基本とした、あっさりスタイルでした。それでもオケの次席のかたには「気持ちは首席」、コントラバスの米長さんには「俺と同級生」と付け加えたりも。また、1stヴァイオリンの野尻さんについては、(コンマスを務める)チェコのオケに戻るためこの日の終演後に関西空港から旅立つ事、ヴィオラの中村さんは岡山からお母様とお姉様お2人が会場に来てくださっている事に触れられました。なお特に言及はなかったのですが、中村さんのご家族もきっと「俺のファン」ですよね♪組員紹介が終わると、1stヴァイオリンの塩田さんがマイクを持ち、石田組長の紹介を始め、石田組長はそそくさと舞台から退場。組長を褒め殺してくださった塩田さん、でも「世界が、あ、日本が誇る……」の『世界』と『日本』はたぶん逆ですよね逆(笑)。ここからは、1stヴァイオリンの塩田さんと2ndヴァイオリンの丹羽さんのお2人によるトークとなりました。ちなみに、このお2人とコントラバスの米長さんは、びわ湖ホールでの公演(今回が3回目)のすべてに参加したメンバーそうです。塩田さんの「石田組は2回目以上の人?」との問いかけに、会場の多くの人が挙手(八百何人でしたっけ?広報部長のヴィオラ生野さん?)。石田組が初めてびわ湖ホールで公演したのは、2021年。ちょうどコロナ禍にあって、会場へのお客さんの入場を半分に制限していた頃だそう。宿泊したホテルはとても狭くて窓を開けたらお墓(!)だったとか、飲食店が軒並み休業していて食事する場所を探すのに苦労したとか、そんな大変だった思い出をお話しくださいました。食事処を探してようやくたどり着いたファミレスにて、石田組長は秒でメニューを決めて、シメには可愛らしいデザートを頼んでいたという、微笑ましいエピソードも(笑)。今回、三度目の公演でついに満席(会場に拍手が起きました)。来年度には大阪城ホール公演(2026年10月を予定)があり、「よろしくお願いします」とアピールされました。そして衣装がえ(パッチワークの上着)した石田組長が舞台へ。トーク終了となりました。

ここからは、チェロのトップ交代(石川さんと西谷さんが左右の席替え)。E.バーンスタイン「荒野の七人」。♪タン タンタタン のキレ味と明るさ。ベースが刻む音にウキウキ。伸びやかな歌はどこまでも広がり希望に満ち溢れている!各パートへメロディリレーして、石田組長のヴァイオリンが音階駆け上るのが爽快!ガガガガ……と全員で音を刻むのもノリノリで、気分が上がる!幸先の良い旅のスタートでした。マクブルーム「ローズ」。しっとりと美しい歌が心に沁み、癒やされました。石田組長も組員お一人お一人も、美しく味わい深い唯一無二の音をお持ちだと再確認。この美しさに、いつまでも浸っていたい!U.K.「シーザーズ・パレス・ブルース」。キャッチーなメロディーが、冴え渡る弦楽による演奏でバーンと来る快感!高音弦のキレイなメロディ、それを受け止める低弦の渋さ重厚さにしびれる。組長ソロと連動する中低弦が、組長が加速するのに合わせて高速で音を刻み、その波動がぐいぐい迫り来るのが良すぎました。上で美しい旋律を奏でた高音弦も合流してのラストスパートは、全員の超高速演奏がすんごい!うわあ気持ちイイ!レインボー「スターゲイザー」。なんなのこの音は!最初の低弦による強烈なギューンという音に度肝を抜かれ、私ははじめから我を忘れ目の前の音楽に没入。低音が効いた分厚い合奏と組長の掠れる高音ソロの応酬、ああ良すぎるビリビリくる!組員さん達のガガガ…というトレモロも、空気を切り裂くギュン♪という音も、全部カッコ良くてクラクラしました。来ましたチェロ西谷さんの大ソロ!チェロなのに立奏(前屈みの姿勢で)にて、掠れる音色でエキゾチックに奏でたソロが魅力的!全員でバリバリ鳴らす締めくくりまで、超絶カッコ良かったです。

熱量高く、1曲弾く度に「最高」を更新し続ける演奏に圧倒されっぱなしで、もうこれ以上のものは出ないのでは?と、つい思ってしまった私。しかしそんな予想に反し(!?)、プログラム最後の演目はとんでもない快演(怪演)!石田組のポテンシャルを、一瞬でも枠にはめてしまった自分を恥じたほど。なんてかた達なの……すごすぎるでしょ……!キング・クリムゾン「21世紀のスキッツォイド・マン」。あまりの衝撃に詳細は逆に思い出せない(!)ですが、これが「ゾーンに入る」ということ!?と感じたのは確かです。重厚ユニゾンの底知れぬエネルギー!組長ソロは強烈に歌い、組員さん達もそれに食らいつくようにガンガン攻めた演奏。普段クラシック音楽を演奏している彼らが、こんな音を発しこんなに攻めた音楽を生み出すなんて、にわかには信じられなかったです。完全に私のキャパを超えて、演目が終わった時点で放心状態となってしまいました。

カーテンコール。舞台へ戻ってきた組員の皆様はお揃いの「石田組」Tシャツを着用。石田組長は白地に「石田組長」と書かれたTシャツを着用されていました。アンコール1曲目は、タケカワユキヒデ「銀河鉄道999(The Galaxy Express 999)」。はじめ、それぞれの弦がキュインキュインと鳴り(大好き!)、一瞬クイーンのあの曲かと私は勘違い(失礼しました!)。しかしすぐに耳馴染みのあるイントロが始まり、ああこの曲!と把握しました。石田組長の音階駆け上りが鮮やか!駆け抜ける演奏は、宇宙の果てまでも上昇していくよう。石田組長の冴え渡るヴァイオリンに、各パートが順番に奏でた、明るいメロディがすごく気持ち良かったです!加えて、個人的には合奏パートの良さを特筆したいです。音を刻むベースやピッチカートがすごいのなんのって。機関車が走る感じに加えて、この高揚感!なんというか、この10分の1くらいの分量でも成立するかもしれないのに、とめどなく音を繰り出す、この職人技と熱量よ!疾走する熱い思いがあふれているのがたまらなく良くて、ホレボレしました。組員お一人お一人がすんごい人達!石田組、やっぱり半端ない!アンコール2曲目は、ディープ・パープル「紫の炎」。石田組ではおなじみの演目、序奏からピンときました!なんと今回、本来は石田組長が弾くソロパートの一部を1stヴァイオリンの野尻さんと塩田さんが担当。それぞれギュンギュン鳴らしてバリバリ弾く、お2人とも組長にだって引けを取らないインパクトと風格!そして、きましたヴィオラ中村さんの大ソロ!客席の方を向き、ロックで堂々たる演奏がめちゃくちゃカッコ良くてゾクゾクしました。ヴィオラがこんなにも主役として輝ける、編曲ともちろん中村さんのお力が素晴らし過ぎます!

そして3たび登場する前に、石田組長が舞台袖からそっとTシャツをチラ見せ。白地に縦書きで「そろそろ限界です」と書かれていました(!)。舞台へ戻ってきてくださった組長&組員さん達は全員裸足です。さらにチェロの弘田さんだけ、前に「 I (赤いハート) 組長」と書かれた白いTシャツを着用!赤ちゃん服によくあるデザインのTシャツ、特注品でしょうか?会場がザワザワして、弘田さんはクールな表情から満面の笑みに。コワモテ大柄な弘田さん、めっちゃかわいい♪ We LOVE 弘田さん♪石田組長「もう一曲やります」。きゃー!ありがとうございます! We LOVE 石田組!!アンコール3曲目は、オアシス「ホワットエヴァー」。最後にホッとできる演目♪今回、中間部での手拍子の音頭取りは、2ndヴァイオリンの伊東さんでした。またその時に楽器を弾いていない組員さんも、リズムに合わせて弓を振ってノリノリ。ウキウキする演奏に、聴いている方も幸せな気持ちになりました。さらに今回はちょっとした遊び心があって、ピアニッシシシ……モで極限まで音量を絞ってみたり、観客手拍子の時に演奏が少しずつパートを減らしていってついに音が消えたり(!?)。めっちゃ楽しい!石田組、大好き過ぎる!

会場は総立ち&万雷の拍手!ステージ上の組長と組員の皆さまは大きく手を振ってくださって、気持ちは最高潮に。大感謝大感激!最後は組長が「石田組長」Tシャツを客席前方にいたお子さんへプレゼントして(会場がどよめきました)、会はお開きとなりました。さらに終演後、ホールのマスコットキャラクターと一緒にロビーにてお見送りまで(なお背が低い私は何も見えませんでした・涙)。最高のパフォーマンスに加えてファンサまで、ありがとうございます!会うたびにさらに突き抜け、「最高」を塗り替えていく石田組。今回も私たちに極上の夢を見せてくださり、本当にありがとうございました。今後も各地でのご盛会をお祈りいたします。私は札幌の地にて、札幌公演(2026年3月の予定)を今から心待ちにしています♪


この日の前日に聴いた演奏会です。「大阪フィルハーモニー交響楽団 神戸特別演奏会」(2025/08/22)。指揮はかつて札響の指揮者だった松本宗利音さん。独奏は大阪フィル特別契約首席奏者の花崎薫さん。エルガーのチェロ協奏曲は、魅力あふれる独奏と大いなるオケの幸せな共演!ブラームスのまっすぐな情熱やあふれる意欲が感じられた交響曲第1番が最高!初対面にして、私はすっかり大阪フィルさんのファンになりました。

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石田組長は、前月にはドス・デル・フィドルとして札幌に来て下さいました!「HTB イチオシ!!classic~DOS DEL FIDDLES×札幌交響楽団」(2025/07/28)。札幌の夏の夜のスペシャルで濃密な体験に感無量!普段の札響でも滅多に聴けない室内オーケストラ編成の協奏曲あり、直江香世子さんの素晴らしい編曲による「夏」をテーマにした作品の数々あり。他では聴けないスペシャルなコンサートを聴けて、札幌市民でよかったとつくづく思いました。

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私が前回聴いた石田組の公演はこちら。「石田組 結成10周年ツアー 札幌公演」(2024/11/24)。初めて出会った時と同じようにハイクオリティなパフォーマンス。Kitara大ホールに響く極上の音と音楽。待ち焦がれていた地元・札幌での石田組との再会は、北の大地に降り積もった雪さえ溶かしてしまうほどの、最高に楽しくて幸せで夢のような時間でした!

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大阪フィルハーモニー交響楽団 神戸特別演奏会(2025/08) レポート

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2025年8月に開催された、大阪フィルハーモニー交響楽団の神戸特別演奏会を聴きました。札幌からの参戦です。指揮の松本宗利音さんは、2025年4月より大阪フィルの指揮者に就任。かつて札幌交響楽団の指揮者(2019年4月から2022年3月まで在任)を務めていらして、その当時から私は信頼しています。演目は大好きなチェロの協奏曲に、愛してやまないブラームスの交響曲!初めて聴く大阪フィルハーモニー交響楽団による演奏をとても楽しみにして、神戸の会場へ足を運びました。


<三井住友銀行 PRESENTS> 大阪フィルハーモニー交響楽団 神戸特別演奏会
2025年08月22日(金)19:00~ 神戸国際会館

【指揮】
松本 宗利音  ※大阪フィルハーモニー交響楽団 指揮者

【チェロ】
花崎 薫  ※大阪フィルハーモニー交響楽団 特別契約首席奏者

【管弦楽】
大阪フィルハーモニー交響楽団(コンサートマスター:崔 文洙)

【曲目】
エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調 作品85
(ソリストアンコール)バッハ:無伴奏チェロ組曲 第6番 ニ長調 より アルマンド

ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 作品68


札幌からやって来て、聴けて本当によかった!かけがえのない出会いに感謝です。私にとっては「お久しぶり」だった指揮の松本宗利音さん、「はじめまして」の大阪フィルハーモニー交響楽団の皆様。心揺さぶる快演で私たちを魅了してくださりありがとうございます!外界はうだるような暑さ(道民には過酷で、到着したこの日はホテルで倒れ込んでいた私・苦笑)。しかしこの会場は別世界で、特別な時間と極上の空気が流れていました。ああオーケストラの演奏って、やはり良いものですね!初対面にして、私はすっかり大阪フィルさんのファンになりました。私にとって、地元で慣れ親しんでいる札響は特別で、優劣や比較論ではないのが大前提で!揺るぎない自信が感じられる大阪フィルサウンドの力強さに圧倒され、重厚かつ推進力がある流れにぐいぐい引っ張られていくのが快感でした。私は今後も機会を見つけて、大阪フィルさんの演奏会に足を運びたいです。今度は本拠地のメインホール(ザ・シンフォニーホールかフェスティバルホールでしょうか?)での演奏をぜひ聴かせてください!

エルガーのチェロ協奏曲は、魅力あふれる独奏と大いなるオケの幸せな共演!花崎薫さんの独奏は孤高の気高さと熱いのに紳士的な大人のカッコ良さがあり、そんな独奏を大きな愛で包むオケの度量の大きさも素敵でした。そしてブラームスが最高!個人的に、録音でも生演奏でも繰り返し聴いて親しんできたブラ1。もちろんどの演奏にもそれぞれの良さがありますが、今回の演奏はブラームスのまっすぐな情熱やあふれる意欲が感じられ(あくまで私の感じ方です)、とても清々しい気持ちになりました。考えてみると、この作品を世に送り出した当時のブラームスはまだ40代前半。青春は過ぎても朱夏の頃で、老成するには早すぎる、「これからやってやるぞ」という意気込みに熱く燃えていた時期だったはずですよね。作曲に二十数年かけて構築した重厚さはしっかりあった上で、フットワーク軽く歓喜へとまっすぐに突き進んだ今回のブラ1。すごく良いです、大好きです!加えて、今回はこのような解釈をされた若手指揮者の松本宗利音さんが、10年後や20年後には一体どのような演奏を聴かせてくださるのかも楽しみになりました。

おまけ。今回のブラ1の演奏にて、ある管楽器のパートで声量が続かなかったのか尻つぼみになったところ(音を外さずきれいに演奏したのはさすがです)があり、次の瞬間に弦パートがナチュラルに音量をあげてカバーしたのを目撃しました。元からこんな曲だと思えるほど(私も他の作曲家の作品であればわからなかったはず)、自然かつスマートな仕事ぶりに感激!もっとも今回に限らず、おそらくどんな時でも、きっとどのオケでもそうされていることと拝察します。音楽を楽しむにあたって「間違い探し」的な聴き方はしないのが吉(それ以前にマナー)ではありますが、一流のプロのかた達は生演奏だからこそ発生する様々な事象を水面下でエレガントに処理されていらっしゃるという事も、心に留めておこうと思った出来事でした。


ここからは各演目の詳細についてレポートします。まずはじめに、私は会場入りが遅れてしまい、ご迷惑をおかけしたことを深くお詫びいたします。なお開演時間を5分ほど過ぎて着席しましたが、ちょうどそのタイミングで演奏が始まり、ありがたくも最初から聴くことができました。

前半は、エルガー「チェロ協奏曲」。独奏は大阪フィルの特別契約首席奏者・花崎薫さんです。オケは、弦がコントラバス5の12型。木管は各2(ピッコロ持ち替え)。ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、チューバ、ティンパニの編成でした。第1楽章 はじめのうちは独奏もオケも静かにじっくり進み、引き締まった空気に引き込まれました。独奏と弦パートの親密さ!中でもヴィオラや低弦による厚みのあるささやきがぐっと来ました。そしてあの悲劇的なメロディが!力強くたっぷり歌う独奏の美しさ、引き継いだオケの壮大な広がり!大阪フィルさん超素敵です!ここ一番の良いところを極上の形で聴けて、感無量でした。しかしまだ始まったばかり。以降も最後までがっちり芯の通った演奏で、私は大船に乗った気持ちで身を任せることができました。木管と呼応する独奏の歌は、ダンスでくるっとターンしたり小走りにステップしたりするイメージで、自由自在。楽しんでいる余裕すら感じられました。またぐっと静まるところでは、繊細な独奏とぴたっと重なるオケの弦が室内楽のように密で、とても引き込まれました。あの悲劇的なメロディを静かに歌う独奏の深み気高さ!ギターの弦をかき鳴らすようなピッチカートの寂寥感!続けて第2楽章へ。 独奏は高速演奏で細かく音を刻み高音域に振れ、超絶技巧盛り盛り!寄り添うオケも呼吸を合わせて、木管が一緒にジェットコースターしたり、オケの弦がピッチカートで合いの手を入れたり。集中力高くかつノリノリな演奏、とてもスリリングで面白かったです!第3楽章 ゆったりと歌う独奏は繊細で優美。支えるオケは大らかに包み込んでくれて、愛を感じました。感情は一辺倒ではなく、独奏が感極まるシーンではオケが壮大な広がりを演出。私が惹かれたのは、オケの弦の細やかな仕事ぶりです。独奏の繊細な変化に呼応して、そっとさざ波を起こしたり、ぐっと低音に沈んだりと、独奏を一人きりにしない優しさと度量の大きさが素敵すぎました!静かに静かに終わる、その締めくくりまでしっかりと神経が行き届いている演奏が素晴らしかったです。第4楽章 舞曲風に始まったオケに続いた、独奏の貫禄!低音から高音まで、堂々と鮮烈に鳴らす独奏がめっちゃくちゃカッコイイ!舞曲のリズムで歌う独奏の艶っぽさ。呼応するオケも跳ねるような舞曲のリズムが良い!浮かんでは沈む、盛り上がりの波!独奏とオケが作る波長がぐいぐい迫り来るのにドキドキしました。また特に印象深かったのは、オケがガツンと盛り上がるシーンでのトロンボーン&チューバです。ざらつく太い重低音の強烈なインパクト!独奏チェロとのコントラストがすごく良いと感じました。独奏は重低音を力強く鳴らして歌い、その底力に感服。同時に、どこまでも気品と風格があるとも感じました。回想的なところを経て、オケの広がりと大らかに歌う独奏は幸せな感じ。終盤の穏やかな独奏は繊細で美しく、瞑想しているようでもありました。独奏が重音を力いっぱい鳴らし、独奏とオケがパワフルに鮮烈に駆け抜けたラストまで、目と耳が離せなかった超充実の演奏に大拍手です!ソリストの花崎さんは指揮の松本さんと握手、コンマスの崔さんとは熱いハグ!唯一無二な独奏の存在感と、それを包み込むオケの度量と、両方が一体となった幸せな協演をありがとうございます!

ソリストアンコールは、バッハ「無伴奏チェロ組曲 第6番」 より 「アルマンド」。繰り返し登場する重音は豊かで幸せな響き、トリルの心地良さ。ゆったりと歌うチェロの崇高な響きに、心穏やかになれました。堂々たる協奏曲から、バッハ無伴奏まで、チェロの魅力と奥深さをたっぷり堪能できました。重ねてありがとうございます!

後半は、ブラームス「交響曲第1番」。オケの弦が増員され、コントラバス6の14型に。木管は各2に加えてコントラファゴット。ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニの編成でした。第1楽章 はじめの深刻で重厚なオケの響きが想像を超えてきて、私は思わず身震い。特にティンパニの底知れぬエネルギーには最初から打ちのめされました。まってすごすぎる……しかしまだ始まったばかり。私は腹を決めて、偉大な作品そのものと半端なく気合いの入った演奏に真正面から向き合うことを決意しました。木管群のターンでの弦ピッチカートは胸の鼓動のようで、木管と一緒になっての強弱の波は感情の波そのもの。弦がぐっと力をためてから次第に力強く浮かび上がってくるのが良すぎる!一緒にぐわっと来るティンパニがものすごく強い!厚みある悲劇的な盛り上がりの良さに加え、次第に静まっていく流れもスムーズ。ホルンと木管たちの幸せな会話から、ヴィオラパートがほの暗くダダダ♪ダダダ♪と踏み出すところがイイ!ここ好きなんです。ありがとうございます!このダダダ♪が例えばヴァイオリンは悲劇的に、金管は壮大にと、他パートで生きてくるのがブラームスは偉いと思いますし、それをガッツリ表現してくださるオケも素晴らしい!またこれはあくまで私個人の考えですが、今回の演奏はブラ1にありがちな「ブツ切れ」(もちろんこの休止の間合いが絶妙で意味がある演奏はあります)を感じさせなかったのが特徴的だと思いました。管を受けて弦、弦を引き継いで管、といったシーンを繋げるところで常に半歩先に出るイメージで、ずっと思いが途切れない演奏。そのためか、重厚なのに推進力があって、リリース当時40代前半のブラームスの意欲とまだまだ若い情熱をひしひしと感じることができました。最初から最後まで全部良かった上で!中でも印象深かったのは、トランペットも入った管楽器たちが力強く演奏する下での弦たちのうごめき(ゾクゾクする!)、少し穏やかになったシーンでのクラリネットとオーボエやホルンとの会話(心安らぐ)、などです。ゆったりとした壮大なラストは、第4楽章を予感させる幸せな響き!第2楽章 はじめの穏やかな弦は、美しさに加えなんて豊かな響き!空の広がりと涼しい風を感じる高音弦、大地を思わせる低弦、良すぎる!来ましたオーボエソロ。なんて温かく幸せな歌!優しく包みこむ他の木管たちは愛!明るさから陰りが見えるように変化した弦のターンを経てからのオーボエソロは、寂しさを感じる奥行きのあるものに。この音色がなんとも素敵で、しみじみ聴き入りました。タータ タータ♪と少しずつ盛り上げてくれて、音階上昇するピッチカートで彩る弦の仕事ぶりの良さ。大好き。そして来ましたコンマスソロ!この上なく美しくかつ芯のあるソロ、超素敵で断然頼れる!同じ旋律で寄り添ったホルン、弱音で支えるオケの温かさ!ホルンがのびやかに歌うときはコンマスが優しく音階上昇。やっぱりブラームスは優しい!ティンパニの柔らかな連打に合わせて、オケが低弦から高音弦まで順にピッチカートで上昇していきコンマスソロに繋げるなんて、愛でしかない!コンマスが美音を柔らかくのばしたラストが美しい!第3楽章 素朴な歩みを進めるクラリネットが素敵(ちなみに私は、若き日のブラームスがひとり旅に出たイメージで捉えています)。そっと寄り添うファゴットとホルン、低弦ピッチカートの温かさ。木管たちの歌は穏やかで少しウキウキな感じ!基本は管楽器が主役なこの楽章にて、弦はゆったりから足早に変化したり、管楽器とこだまし合ったりと、確かな仕事ぶりが頼もしかったです。トランペットの余韻を受けてのぐっと引き締まったピッチカートがイイ!第4楽章 終楽章は最高に良くて、私はドキドキとワクワクが止まりませんでした。はじめ低弦に導かれ、ぐぐぐっと重厚に盛り上がる。次第に浮かび上がるティンパニも悲劇的な弦も、なんという底力!弦ピッチカートの、ためてためて少し大きく出てはまだまだ!とまたためて、この研ぎ澄まされた空気。中低弦のうごめきからティンパニ連打へと繋がる、緊迫感ある流れの良さ。そして来ました雄大なホルン(クララさんへのメッセージ)。フルートの透明感ある響きは高原の涼しい風のよう。ここで初登場のトロンボーンは崇高で温かく、じんわり沁みました。さあここから!低弦ピッチカートに乗って、高音弦が低めの音域でじっくり歌う、その歌の良さ。厳しい冬を経てようやく春を迎えたような、単にはしゃぐのではないしみじみとした喜びが感じられました。木管群の歌も素朴な美しさで、支える弦ピッチカートは幸せな感じ。ついに頂点に達した歓喜は開放感あふれ気分爽快!最高!華やかに歌う高音弦に対する重厚な低弦が好きすぎます。穏やかな流れから、ぱっとアクセル踏み込み駆け出す弦、やっぱり断然頼れる!何度も来る盛り上がりの波、高音弦と低弦の対比がくっきりのシーンはなんという生命力、ホルンの咆哮に続いて弦も叫ぶところ、ティンパニのダダダ♪からオケが堂々たる歩みを始めるところ等、聴き所しかない演奏に私はずっとワクワクしっぱなしでした。そして楽章始めの方のトロンボーンのメロディを金管群が華々しく歌い、ティンパニがダンダン♪と力強く入って、フィナーレへ。自信に満ちあふれた堂々たる響き、清々しい大団円!指揮の松本宗利音さん、大阪フィルハーモニー交響楽団の皆様、最高です!

カーテンコール。指揮の松本さんは、最初にホルントップに起立を促し讃えられました(その後、各管楽器とティンパニ、コンマスも)。拍手喝采の中、アンコールなしで会はお開きに。重厚さと歌心たっぷり、意欲的で清々しい快演に胸がすく思いです。聴けて本当によかった!ありがとうございました!指揮の松本宗利音さん、そして大阪フィルハーモニー交響楽団の皆様と、近い将来きっと再会できますように。


札幌在住の私は、普段は札幌交響楽団をはじめ札幌にて開催される演奏会に親しんでいます。よろしければ「演奏会のレポート」カテゴリ一覧より各レビューをご覧ください。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

おしゃべりコンサート Vol.17(2025/08) レポート

江別市大麻出身のヴァイオリニスト・藤村政芳さんがプロデュースする「おしゃべりコンサート」。第17回目となる今回は、今年(2025年)が生誕150年となるラヴェルの弦楽四重奏曲をメインプログラムに、弦の様々な編成による室内楽が取り上げられました。私は初参加となる「おしゃべりコンサート」を楽しみに、札幌から日帰りプチ遠征です。

おしゃべりコンサート Vol.17
2025年08月16日(土)14:00~ えぽあホール(江別市民文化ホール)

【出演】
藤村 政芳(1stヴァイオリン)  ※東京フィルハーモニー交響楽団第2ヴァイオリン首席奏者
泉 沙織(2ndヴァイオリン)  ※パリ管弦楽団ヴァイオリン奏者
青木 晃一(ヴィオラ)  ※札幌交響楽団ヴィオラ奏者
近藤 浩志(チェロ)  ※大阪フィルハーモニー交響楽団チェロ首席奏者

【曲目】
ラヴェル:ヴァイオリンとチェロのためのソナタ より 第3楽章
バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲 より 第1楽章
マルティヌー:ヴァイオリンとヴィオラのための3つのマドリガル より 第1楽章
モーツァルト:デイヴェルティメント K.563 より 第1楽章

ラヴェル:弦楽四重奏曲 へ長調

(アンコール)
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ


ハイクオリティな演奏も楽しい「おしゃべり」も、カラフルで親しみやすいコンサート。実家にいるような安心感で、とてもリラックスして楽しむことができました。主宰する藤村政芳さんの人徳あってのことと存じますが、いち地方の小さなホールに錚々たるメンバーが集まり、盛りだくさんなプロクラムにて充実した演奏を披露するのは、メンバーのスケジュール的にも興行的な側面においても大変なことと想像します。きっと様々なハードルを乗り越えて集結したメンバーは、一緒に創り上げる音楽そのものもトークからうかがえるお人柄も大変素晴らしかったです。藤村さんとは何年も一緒に活動してこられたチェロの近藤浩志さんはもちろんのこと、初出演となるヴァイオリン・泉沙織さんとヴィオラ・青木晃一さんとも、それこそ「10年以上やってきたような」チームワークでした。加えて様々なトピックが飛び出したトークは和気あいあいの雰囲気!また会場はとても温かく居心地の良い空気だった事も特筆したいです。毎年参加されているかたも多いと思われる地元・江別のお客さん達は、トークの時間は時折笑いが起きるほどリラックスした状態で、演奏には熱心に耳を傾けていらっしゃいました。地域に根ざしたこんなに素敵な演奏会、今年でもう17回目になるのですね。お手頃なチケット料金にて長く活動を続けてこられた事に敬意を表します。私は初参加にして、すっかり「おしゃべりコンサート」のファンになりました。毎年メンバーは交代するとのことですが、来年はどんなチームによる演奏を聴かせてくださるのか、私は今から楽しみです。

前半のバラエティに富んだ演目たちは、いずれも個性的でそれぞれの良さを楽しめました。その上で、今回の私のイチオシは後半のラヴェルの弦楽四重奏曲です。持ち味の色彩の豊かさを味わえたのに加え、「ラヴェルって想像以上にアツイ!」という新鮮な驚きがありました。一般的な日本人である私たちが抱くフランス=「ゆるふわ」なイメージ(なぜでしょうね?)を覆したのは、紛れもなく演奏のお力によるものです!今回はフランスでしたが、その国の人達と一緒に仕事したり現地で暮らしたりする経験は「イメージではないリアル」な国民性を身を以て知ることになるわけで、それが演奏の説得力につながるのだと実感しました。たとえその実体験はメンバーの一部のものであっても、リアル体験に基づく考えをチームで共有して、思いを一つにし音楽を創り上げるという、メンバー全員の柔軟性と適応力も素晴らしいです!ただ聴くだけの私たちも、音楽を通じてフランスのリアルに触れられた、スペシャルな体験となりました。

前半。最初の演目は、ラヴェル「ヴァイオリンとチェロのためのソナタ」 より 第3楽章(ヴァイオリン・藤村政芳さん、チェロ・近藤浩志さん)。私はこの曲の第2楽章をアンコールピースとして聴いたことがあり、その躍動感を勝手に期待していたせいか、はじめに登場したチェロが暗くじっくり進むのに面食らってしまいました(ごめんなさい!)。ほどなくヴァイオリンも登場し、華やかなトリルや重音などはなく、単旋律でずっと一定のテンポを保って進む音楽。西洋とも東洋ともエキゾチックとも言えない音楽で、2つの弦が織りなす綾に浸る感じで聴きました。繊細なところからゆっくりクレッシェンドしていく流れでチェロが低音から少しずつ高音域になっていったことや、ヴァイオリンの消え入る超高音の神秘的な響きが印象的。ラヴェルの色彩感、こんな形のものもあるのですね!演奏後の藤村さんが「『君が代』みたい」と仰って、私は「それだ!」と妙に納得しました(笑)。

1曲目の演奏を終えたタイミングで、主宰のヴァイオリン・藤村政芳さんからごあいさつとトーク。以降も演目の合間には、曲目解説を含むトークが行われました。なお多岐にわたったトーク内容につきましては、本レポートではダイジェスト版にて記します。藤村政芳さんがプロデュースする「おしゃべりコンサート」は、2008年より行われてきて今回で17回目になるそうです。チェロの近藤浩志さんはレギュラーメンバーで、長く一緒に活動してこられたお2人の会話はざっくばらんな感じでした。北海道の夏はとにかく暑くなった、と藤村さんが仰ると、近藤さんは「でも大阪は37度。帰りたくない」(笑)。続いて、今回のゲストお2人(ヴァイオリン・泉沙織さんとヴィオラ・青木晃一さん、いずれも初出演)が舞台へ。藤村さんからご紹介がありました。札幌ご出身の泉さんは、藤村さんと同じヴァイオリン教室で学ばれ、先輩として藤村さんが泉さんへレッスンした事もあるそうです。泉さんはパリへ留学して、そのままパリ管へ入団。フランス語は「日常会話なら」と謙遜して仰っていました。次に演奏するバッハの作品は、教則本にもあるもので、ヴァイオリンのお2人は幼少期からなじんでこられた作品だとか。ただ藤村さんは、この作品を演奏するのは久しぶりだったようです。

バッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲」 より 第1楽章。こちらはヴァイオリンのお2人が独奏、オケパートはヴィオラとチェロによる演奏でした。ちなみに私は、ゲスト2人の独奏&札響の弦楽アンサンブルによる演奏を前月に聴いています(2025/7/28 HTB イチオシ!!classic~DOS DEL FIDDLES×札幌交響楽団)。休符らしいところは見当たらない勢いのある流れで、一本しっかり芯の通った演奏にぐいぐい引っぱられました。オケパートはヴィオラとチェロのみでもちゃんとバッハの世界(!)できっちり土台を作り、主役である2つのヴァイオリンとの掛け合いもしっかり。2つのヴァイオリンは、前のめりな勢いとバッハの厳格さが同居し、(うまく言えないですが)自然に出たようなトリルが素敵!追いかけっこしたり交互に主役になったりもスムーズで、その時点でサブに回る方がメインとうまく掛け合って、その重なりハーモニーが魅力的でした。2人独奏&2人オケ、とても楽しく聴けました。

次は青木さんのターンです。札響に入団したきっかけは、留学先のドイツにてヨーロッパツアー中の札響の演奏を聴いたことだそうです。「上手でした!」と仰っていました。青木さんは感激して早速アポイントを取ったそう。その時にヴィオラ奏者のオーディションが行われる事を知り、所属する歌劇団のオケの夏休み期間に一時帰国してオーディションを受け、札響に入団することに。また兵庫県姫路市ご出身の青木さんは、高校の修学旅行も北海道だったそうです。「ご縁」があったのですね!藤村さんは、子供の頃に学校へ札響団員さん達が演奏に来てくれた思い出をお話しくださり、青木さんは毎年開催される小学生6年生を対象にした「kitaraファーストコンサート」についても触れられました。次に演奏するマルティヌーの作品は、青木さんから「ぜひ」とご提案。実は今回初めて演奏するのだそう(学生時代にチャレンジするも挫折、と仰っていました)。「情熱あふれる藤村さんと弾きたかった」と意気込みを語られました。

マルティヌー「ヴァイオリンとヴィオラのための3つのマドリガル」 より 第1楽章(ヴァイオリン・藤村政芳さん、ヴィオラ・青木晃一さん)。パワフルで勢いのある演奏に驚愕!2つの弦がユニゾンで演奏したかと思うと交互になって掛け合い、息つく暇も無い緊迫感!止まらない流れの中でテンポも細かく変化していたようでした。エキゾチックな印象のメロディを、はじめヴァイオリン、続いてヴィオラが歌ったところは、両者それぞれの音色と音楽の良さを味わえました。絡み合いながら両者一歩も譲らない流れは、ラストは明るく一緒に駆け抜け、ジェットコースターのよう。体感は一瞬でした!2つの弦の丁々発止からのマリアージュ、すごく面白かったです!

モーツァルト「デイヴェルティメント K.563」 より 第1楽章(ヴァイオリン・泉沙織さん、ヴィオラ・青木晃一さん、チェロ・近藤浩志さん)。近藤さんのお話しによると「一人何役もやる」。曰く、ヴァイオリンは1stも2ndもやり、ヴィオラはとても高い音域も弾き、チェロはヴァイオリンもヴィオラもチェロもやる(!?)。私はその事を念頭に置いて、演奏を拝聴。流麗な流れにゆったり身を任せつつ、各パートの様々な役割を目で追いながら楽しみました。チェロが刻むベースの上でヴァイオリンとヴィオラが交互に幸せに歌ったり、3つの楽器が追いかけっこして音階上昇したり。愛らしいトリルはヴァイオリンとヴィオラで異なる味わい。温かな低音で支えてくれるチェロは、チェロにとっては高音域にてトリルを交えて歌う事もありました。ヴァイオリンが主役のシーンではヴィオラとチェロが低音ベースを演奏して、そんなところから即ヴィオラやチェロも主旋律を歌うという、役割分担がとてもフレキシブルで、かつ流れが止まらずエレガントなのが素敵!ヴィオラが高音域で歌うシーンでは、ヴァイオリンがそれこそ2ndのポジションになっていたと感じました。3つの楽器の幸せな協演を堪能できました。

休憩に入る前に、後半のラヴェルについての解説がありました(後半は「初めて『おしゃべり』しないでやろうかと」の算段。近藤さんが「大丈夫かな?」とツッコミ入れていました)。先ほど演奏された弦楽三重奏はそれぞれが個性を発揮するけれど、弦楽四重奏の場合は役割分担がきっちりしていること。フランス音楽の「循環形式」についてごくさらっと。また、ラヴェルについては「管弦楽の魔術師」と言われていることや、作品は緻密に作られていること、加えてその人生について(若い頃のコンクールでの理不尽な扱われ方や、40歳を過ぎてから事故に遭い、手術を受け後遺症が残ったこと等)のお話しがありました。様々なお話しがあった中で、「フランスは『ふわふわ』したイメージかもしれませんが、違います」と強調されていたのが強く印象に残っています。現在パリ管にいらっしゃる泉さんも、同僚が激論を交わす場面に何度も遭遇しているそうです。そして、出演者のかたそれぞれが所属した各国のオーケストラでの体験についても色々とお話しくださいました。思い描いていたのとは違う現実がそこにはあるようで……。もちろん当事者は大変なのでしょうが、エピソードを聞く側としては興味深く聞きました。

後半は、ラヴェル「弦楽四重奏曲 へ長調」。第1楽章 そっと始まった、冒頭の滑らかさ美しさ!穏やかな会話から、議論白熱(!?)、激しい盛り上がりに。ラヴェルがこんなにも熱いなんて驚き!感情の高ぶりは、チェロの落ち着いた低音が鎮めてくれたようでした。緩急が地続きで、ゆったり穏やかなシーンでは、1stヴァイオリンの高音が美しい!2ndヴァイオリンやヴィオラも深みのある音色で滑らかに歌い、チェロがじっくり支える、緻密かつ流麗な音楽が素敵!絶妙に入るピッチカートがおしゃれな感じ。そして次第に盛り上がっていき、感情爆発するシーンの緊迫感と激しさ!トレモロのガガガ……の鳴りの気迫!楽章締めくくりでの、ヴァイオリンの超高音が清らか!第2楽章 4つの楽器によるピッチカートの歌は、リズミカルで生き生き!演奏は想像していたよりずっと多くの音を生み出していて、しかもそれぞれの楽器でテンポが異なる(?)ようでした。その複雑さが豊かな響きを創りあげているのだと、私は今更ながら実感。1stヴァイオリンがトリルで上昇するのがとても華やかで、続くのびやかなメロディはまるで空を自由に飛行しているよう!しかしここでもパワフルなトレモロでぐっと手綱を締めて、土台はがっちり。ただ上昇するのではなく、雲行きが怪しくなったり低空飛行になったりの変化がスリリングでした。高音域で歌ったチェロにハッとさせられ、神秘的な世界へ。最初の連続ピッチカートと歌が、一連の流れの中で気持ちが途切れる事無く、多種多様に変化していくのが鮮やか!ぐいぐい引っ張られていくのが気持ちよかったです。ピッチカートによるビシッとした締めくくりのインパクト!第3楽章 派手さはないもののとても引き込まれた楽章でした。深みのある低音のヴィオラから始まった歌は民謡?(あるいは子守歌?)。メロディを受け渡しながら、じっくり繊細に紡いでいく音楽の洗練された美しさ!その陰影、個人的には水墨画のようにも感じました。チェロの重低音(絶大なインパクト!)から、色合いが変化。渋いチェロと、恐ろしげな高音の演出にぞわっとなり、ひとしきり盛り上がってから再び静かな感じに。1stヴァイオリンとヴィオラが静かに語らっているようで、2ndヴァイオリンとチェロがじっくり奥行きを作り、その繊細さと立体感がぐっと来ました。第4楽章 集中力の高い超充実の演奏に圧倒されました!全力で激しく弦を鳴らす、はじめからインパクト絶大!やはり何度も登場するピッチカートが絶妙で、小気味よいスパイスになっていました。今まで登場した様々なフレーズが形を変えて登場し、ふっと滑らかな波が顔を見せたりもしましたが、弦をかき鳴らす激情の気迫がとにかくすごい!様々な表情が、途切れる事なく繋がっていて、聴き手は惹きつけられっぱなし。クライマックスでの、徐々に盛り上がっていって迫り来る波にゾクゾクしました!個人的に慣れ親しんできた独墺系の作品とはまったく異なる個性、管弦楽の魔術師・ラヴェルが弦のみで創り出した色彩と立体感を、今回のメンバーによる充実の演奏でたっぷり味わえて幸せです!

演奏後、藤村さんは「ラヴェルの色彩を少しでもお伝え出来たでしょうか?」と仰って、出演者の皆様お一人ずつのトークへ。泉さんは「ずっと客席で聴いてきて、はじめて今回は素晴らしいメンバーとご一緒できて感無量。勉強になりました」。藤村さんは「パリ管のかたに『勉強になりました』と言ってもらえました」とコメント。また泉さんは、2018年のパリ管の札幌公演にて指揮者のダニエル・ハーディング氏が転倒し骨折したエピソードを紹介くださり、会場の一部が「ああ!」と反応していました。続いて青木さん。本番の2カ月ほど前の6月に、藤村さんからメールで出演オファーがあったそうです。驚きと喜びとで、その夜(ちょうど札響の文化庁公演で山陰地方へ出向いていた時)は眠れなかったとか!フランスものはあまりやってこなかった事もあり、「素晴らしいメンバーと一緒に演奏できて、勉強になりました」。また今後の札響公演についての宣伝もありました。続いて近藤さんは、「(このメンバーでは)3日前に会ったばかりなのに、10年以上やってきたような感じ」。「(江別でのおしゃべりコンサートは)ずっとやってきて、初めて地元オケ(札響)メンバー(今回初出場の青木さん)と共演できた」「続けてこられたのは、藤村さんのお人柄あってのこと。江別の至宝!」と、熱く語られました。最後に藤村さんが「オケの人の適応力のすごさ」「各国のオケの雰囲気を知る事ができた」といった事に触れた上でまとめ、トーク終了となりました。

アンコールは、ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」。弦楽四重奏による演奏でした。演奏前に藤村さんからエピソード紹介。曰く、晩年に記憶障害となったラヴェルがこの曲の演奏を聴いて「良い曲だね、誰の作品?」と言ったのだとか!他の弦によるピッチカートのリズムに乗って、しっとり歌うヴィオラの優しさ美しさ!チェロが重なり、より豊かな響きになりました。超高音で歌う1stヴァイオリンの透明感、2ndヴァイオリンの音階上昇は感極まる感じで、どっしり支える低音のチェロが頼もしい。ピッチカートで歌うシーンの愛らしさ。ラヴェルはピッチカートの魔術師でもありますね!ほんの短い作品の中でも、色合いが変化していき、繊細で丁寧な演奏が心に沁みました。充実の演奏と楽しい「おしゃべり」、とっても楽しかったです!聴き手も「またここに戻ってきたい」と思えた、江別での「おしゃべりコンサート」。来年も再来年もその先も、きっと再会できますように。

この日の10日前に聴いたコンサートです。「小野木 遼 チェロリサイタル with 入川 舜 (札幌公演)」(2025/08/10)。王道ドイツものに加えて、超難曲カーターのソナタあり、超大作で演出も楽しいバーンスタイン「ウエスト・サイド物語」ありの重量級プログラム。バーンスタインイズムを受け継ぐ音楽家による熱いハートが伝わってくる演奏は、超充実かつ超楽しい!熱いアツイ札幌の夏の夜でした!

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ヴィオラ奏者の青木晃一さんが出演された演奏会です。「蘭越パームホール メゾ・ソプラノ、ヴィオラ、ピアノで奏でるロマンの旋律」(2024/10/06)。特別な場所、蘭越パームホールにて新しいトリオと出会えた幸せ!宝石箱のような歌曲の数々、ヴィオラソロやピアノ独奏など盛りだくさん!ブラームス「アルト、ヴィオラとピアノのための2つの歌 op.91」は、その音色だからこその歌が、少し哀しくて優しいブラームスそのものだと感じました。

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小野木 遼 チェロリサイタル with 入川 舜 (札幌公演)(2025/08) レポート

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札幌交響楽団チェロ奏者・小野木遼さんの札響入団10周年記念リサイタルが開催されました。先に静岡公演が行われ、札幌公演の後には北見(プログラム内容は異なる)でも開催。ピアノは学生時代から共演を重ねていらっしゃるという入川舜さんです。注目の公演に、札幌会場には多くのファンが集まっていました。


〈札響入団10周年記念〉小野木 遼 チェロリサイタル with 入川 舜 (札幌公演)
2025年08月06日(水)19:00~ ふきのとうホール

【出演】
小野木 遼(チェロ) ※札幌交響楽団チェロ奏者
入川 舜(ピアノ)

【曲目】
ベートーヴェン:チェロとピアノのためのソナタ第4番 ハ長調 op.102-1
シューマン:5つの民謡風の小品

カーター:チェロ・ソナタ
バーンスタイン:「ウエスト・サイド物語」より

(アンコール)
バーンスタイン:「ウエスト・サイド物語」より マンボ

プログラムノートは出演者のお2人による執筆でした(ベートーヴェンとバーンスタインは小野木さん、シューマンとカーターは入川さん)。


超充実かつ超楽しい、熱いアツイ札幌の夏の夜でした!王道ドイツものに加えて、超難曲あり、(おそらくご自分達による)編曲ものありの重量級プログラム。事前準備も本番を通して演奏するのも相当大変だった事と存じます。しかしそんな苦労を聴き手には感じさせず、最初から最後まで驚くほどハイレベルな演奏を聴かせてくださり、私たちを魅了。最後に用意くださったバーンスタイン「ウエスト・サイド物語」は超大作で、様々な演出を盛り込んだサービス精神も素晴らしい!PMF修了生である小野木さんは、確かにバーンスタインイズムを受け継いでいらっしゃると実感しました。またプログラムに掲載された文章もとても良かったです。実体験に基づいたご自身の思いをご自分の言葉で書かれていて、思い入れの強さと熱いハートが伝わってくる、血が通ったものでした。音楽家のかた達は、どなたであっても才能をお持ちの上で努力を積み重ねてご自身の音楽を創り上げていくのだと想像します。しかし最終的にものを言うのは「ハート」なのでは?と、私は今回のリサイタルでそう思いました。

前半ドイツプログラムの洗練された演奏も素晴らしかったです。その上で、私が今回最も衝撃を受けたのは後半のカーターです。率直に言えば、それこそ「何じゃこりゃー」ではあったのですが、お2人の演奏はものすごい引力があって惹きつけられずにはいられませんでした。カーターのソナタで駆使される「リズミック・モジュレーション」技法の解説を拝読したところで、「日常生活で例えれば、『パン5つで【150円】だった商品が、いつの間にか4つで同価格となっていた』という話に近い」って、ちょっと何言ってるのかわからない(!)。でも良いんです。こんなにスリリングでエキサイティングな体験をさせてくださるのなら、聴き手は喜んで「煙に巻かれ」ます!その音楽に身も心も委ねられる、そんな音楽家さんと出会えた事に感謝です。


前半はドイツ系の音楽です。はじめは、ベートーヴェン「チェロとピアノのためのソナタ第4番 ハ長調 op.102-1」。こちら、小野木さんが大学卒業試験の時に取り組まれた作品だそうです。2楽章構成ですが、5部形式になっています(プログラムノートより)。小野木さんは暗譜での演奏でした。第1楽章 はじめは高音域でゆったり歌うチェロと、それに優しく寄り添うピアノ。ピアノのトリルの美しさが印象的でした。ロマン派の歌曲を思わせるところから、いきなりチェロがガツンと強奏で踏み込み、めまぐるしい展開にドキドキ。チェロとピアノが一緒にステップを踏む情熱的な舞曲のようだったり、チェロが切なく歌ったり。チェロのパワフルに始まった音が滑らかに曲線を描いて着地する(音楽用語を知らないため説明できず・謝)のが素敵で、発した音の端々までコントロールされていらっしゃると素人目には感じました。第2楽章 低音域でゆったり歌うチェロの音色が沁みました。じっくりクレッシェンドしていき、再び沈みゆく流れでの長くのばす重音の豊かな響き!高音域で歌うチェロの優しさに、重なるピアノのキラキラしたトリル。私は夢見心地な気持ちに。これできれいに締めくくりかと思いきや、チェロとピアノが駆け出し生き生きとした展開に!アクセントの効いた「トルコ行進曲」風のメロディの演奏や、「だるまさんが転んだ」的なぐーっと浮かび上がってはぱっと消えるところが面白かったです。今までの回想的なシーンが登場したり、高音メインと低音メインをぱっと切り替えたりと、遊び心満載な音楽を自由自在に演奏されていらした印象。パワフルですぱっと締めくくったラストが清々しい!個人的にはとても楽しく聴きました。しかし後からプログラムノートをじっくり読むと、この作品は「精神性や構想の深さに重心が置かれている」。そうともわからずにライトな聴き方をしてしまった私。申し訳ありません、出直してまいります……。

ここで小野木さんがマイクを持ち、ごあいさつとトーク。札響に入団して10年はあっという間で、「こうして年をとっていくんだなと……」と仰っていました。共演のピアニスト・入川舜さんは2005年(当時は大学1年生)からデュオを組んでいて、札響のティンパニスト・入川奨さんは実の弟さんとのこと。さらに学生時代は3人とも同じアパートにお住まいだったとか!今回の「意欲的なプログラム」は、2人でベートーヴェンはやると決めていたものの、他は入川舜さんのアイデアだそう。カーターはベートーヴェンの大体100年後の作曲家で、入川さんは「100年違うとこんなにも違うのか」と感じたそうです。今回取り上げるチェロ・ソナタは「何じゃこりゃー」(!)な作品、と入川さん。また小野木さんも「今までの音楽家人生で、間違いなく譜読みが一番大変だった」と仰っていました。

シューマン「5つの民謡風の小品」。プログラムノートにもあった通り、シューマン作品のチェロによる演奏では「アダージョとアレグロ」や「幻想小曲集」などが有名(私も聴く機会が多いです)ですが、それらは本来チェロ以外の楽器のために書かれたもの。今回取り上げられた「5つの民謡風の小品」は最初からチェロのために書かれた作品とのことです。演奏機会は少ないそうで、私も聴くのはこの時が初めてでした。第1曲 舞曲のようなリズム感が素敵で、チェロの谷間でダダダン♪と鳴るピアノの低音が良い感じ。ピアノのターンは華やかで厚みがあり、「ベートーヴェンっぽい」と私はつい思いました。何度か登場した、チェロの低音の力強いうねりがイイ!第2曲 プログラムノートには「『トロイメライ』にも通じる、子守唄のような穏やかさ」と解説がありました。穏やかなピアノに乗って、歌曲風にゆったり歌うチェロが心地よかったです。ささやくようなところも少し盛り上がるところも、優しさを感じました。第3曲 大変充実した演奏で聴き応えありました!様々な感情が同居するのは、おそらく「シューマンらしさ」だと思います。はじめの哀愁を感じるチェロの艶っぽさ!時折入るタタタン♪というピアノは胸のドキドキのよう。高音域で歌う中間部は豊かな重音が印象的で、幸せな感じ!高音域で歌い、続いて低音域で歌ったのは、ソプラノとバリトンの二重唱のようでもあって、どちらも素敵でした。第4曲 晴れやかな音楽の堂々たる演奏は、胸がすく思いでした。力強くぱっと踏み込むところは、チェロもピアノも迷いがなくて、音の強さに揺るぎない自信を感じました。第5曲 「第1曲の気分が回帰して、暗さの中にユーモアが漂う」(プログラムノートより)終曲。確かに第1曲と似た印象ではありましたが、明るく高音域に振れたり、低音でリズムを刻んだりといった、優等生路線をあえて外すところに大人の余裕が感じられました。個人的には、前月のPMF GALAコンサートで聴いたばかりのシューマン「チェロ協奏曲」と似ているかも?と思ったり。うまく言えないのですが、高音域で前のめりに歌うところや、ぐっと力強い低音に沈むところに、チェロ協奏曲の風味を感じました。そんな聴き方をしてごめんなさい。シューマンの演奏機会が少ない作品を、小野木さんと入川さんの充実した演奏で聴けてうれしかったです。

後半はアメリカものです。はじめはカーター「チェロ・ソナタ」。短いながらも4楽章構成の作品。作曲家の名前からして初聴きだったこちら、私は驚くほど惹きつけられました!耳慣れたドイツ系の音楽の安心感は皆無の、最初から最後まで先が見えない得体の知れなさを感じましたが、演奏の一瞬一瞬が鮮烈で、目と耳が離せない!第1楽章 ピアノのタンタンタン……♪のリズムが印象的で、チェロはぐっと低い音をじっくりのばしながら進み、私は暗闇の中をおそるおそる進んでいるのをイメージ。一定のリズムをしっかり保ちつつ、音楽は少しずつ変化していき、大音量の激しさに度肝を抜かれました!ナニコレこわいこわい!!短いチェロ独奏からは、チェロが主導権を握り(と私は感じました)、緊張の糸は張り詰めたまま、チェロの様々な奏法が登場。キレッキレ。しかしずっと得体が知れない感じ。第2楽章 ピッチカートで小粋に歌ったり、滑らかに歌うシーンがほんの少し登場したりと、素直に「素敵」と思えるところはありました。ただそれ以上に、ピアノとチェロの丁々発止なやり取りがすごい!私は圧倒され、呼吸を忘れる勢いでのめり込みました。密やかなところも激しいところも、短いスパンでチェロのピアノが交互に出て、そこに寸分の隙もない!第3楽章 こんなにドキドキな「緩徐楽章」、私は初めて聴いたかも。チェロは普通にゆったり歌う……はずもなく、パンチのある重音を何度も繰り出したり、重低音を響かせたり。また、弦を押さえる指を超スピードで動かしての演奏には目を見はりました、弦を擦る演奏にもかかわらずギター(撥弦楽器)のよう。ピアノはチェロの表情に合わせて、冷たい和音を響かせたりパワフルに鳴らしたり。終始ドキドキさせられて、全然ゆったりできない(!)。第4楽章 今までよりさらに輪をかけて、緊迫感と目まぐるしさがすさまじい!超スピードで激しく音を繰り出したかと思うと、じっくり音をのばし、気が遠くなる超高音を発し、弦を撫でるピッチカートが何度も繰り返されたかと思うと、第1楽章冒頭のリズムを思わせるピッチカートで歌う。「輪が閉じられて」、あっという間に曲は終わりました。うわあすんごいものを聴かせて頂きました!これほどまでに「弾ける」かた達だからこそ、加えて完全に呼吸と思いを共有する間柄のデュオだからこその超快演!この作品が何を意味するのかは私には正直わかりませんでしたが、小野木さんと入川さんの凄技を目の当たりにできたスペシャルな体験でした。演奏後、小野木さんは「大体合えばいいや、だと合わないので、譜面通りに弾くしかない」といった趣旨の事を仰っていました。

プログラム最後の演目は、バーンスタイン「ウエスト・サイド物語」より。チェロ&ピアノによる演奏は「本邦初公開」。なお特に触れられなかったのですが、編曲は小野木さんと入川さんのお2人によるものでしょうか?セレクトされた曲目は多く、私はたいていの曲はわかりましたが、一部知らない曲も。ちなみにプログラムノートに掲載されていたのは、<ジェット・ソング><サムシング・カミング><体育館でのダンス><マリア><アメリカ><トゥナイト><アイ・フィール・プリティ><ワン・ハンド・ワン・ハート><クール><ランブル><サムウェア>(掲載順)。またこの作品のみチェロの譜面はタブレット端末だったのですが、それは「紙をめくれない」(!)からだそう。実際、一人で何役も担う演奏は大忙しだったと思われます。「最後は楽しんで頂ければ」と小野木さん。オープニングのおなじみのメロディは、ピアノがアメリカ「らしい」!個人的に先ほどのカーターにアメリカをイメージできなかったので、一層そう感じました。小野木さん「指パッチン」お上手!チェロは大人っぽく歌うシーンはもちろんのこと、ピッチカートで愛らしく歌ったシーン(Cha-chaのメロディ?)が印象的でした。スリリングな展開から、ジャジーなピアノと幸せな重音が。これはマンボ!?と思った瞬間、小野木さんの太いお声で「マンボ!」のかけ声!「マリア」の切なさ美しさ。「アメリカ」の冒頭(?)では、ピアノの入川さんがプロユースらしき拍子木を鳴らし、チェロの小野木さんがハンドメイドっぽいミニマラカスをシャカシャカ。大音量ホイッスルのインパクトが絶大!「トゥナイト」ののびのびした演奏が素敵で、天に昇るようなダイナミックなチェロ(グリッサンド?)が華やか!幸せなダンス(アイ・フィール・プリティ?)からの、なんとも美しい歌(ワン・ハンド・ワン・ハート)。歌曲のような優しいチェロの響きが素敵でした。「クール」は大人っぽい音楽で、リズムがぐっと来ました。緊迫感(ランブル?)からの、フィナーレ「サムウェア」へ。輝かしいピアノ、高らかに歌うチェロ。大団円でした。ミュージカル映画を最初から最後まで通して観たような、超大作の超充実した演奏!私達は平伏するしかありません。とっても楽しかったです。ありがとうございます!

カーテンコール。小野木さんからのごあいさつに続いて、早速アンコールの曲目紹介がありました。アンコールは、バーンスタイン「ウエスト・サイド物語」より マンボ。お客さん達も「マンボ!」のかけ声で参加するスタイルでした。お客さん達が無理なく乗れるようにしっかり「練習」をして、準備万端でいざ実演へ。ピアノもチェロもノリノリな演奏で、小野木さんが合図するとすかさずお客さん達が大きな声で「マンボ!」。なお「マンボ!」の出番は2回ほどありました。まさか聴く側の私達が参加できるなんて、超楽しいー!小野木さん、入川さん、楽しく充実した時間をありがとうございました。これからのデュオでの演奏も楽しみにしています。そして引き続き札響のこともよろしくお願いいたします!

 

札幌交響楽団のチェロ奏者・小野木遼さんが出演された、こちらの演奏会にもうかがいました。「ALBA STRING QUARTET 札幌公演」(2025/03/28)。モーツァルトが14歳で書いた弦楽四重奏曲第1番「ローディ」と、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番&「大フーガ」付き。「極めた」真剣勝負の演奏を目の当たりにし、聴き手の方も真摯に音楽を楽しむことができた、得がたい体験でした。

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HTB イチオシ!!classic~DOS DEL FIDDLES×札幌交響楽団(2025/07) レポート

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石田泰尚さんと﨑谷直人さんのスーパー・ヴァイオリニストお2人による「ドス・デル・フィドル」。その「日本最響カリスマヴァイオリンユニット」初のオーケストラ協演が札幌にて行われました。オーケストラは、札幌が誇る札幌交響楽団です。私にとってはまさに夢のような企画で、企画発表当初からとても楽しみにしていました。当日の会場はほぼ満席で、いつもの札響定期とは異なる層のお客さん達も大勢集まっていました。


HTB イチオシ!!classic~DOS DEL FIDDLES×札幌交響楽団
2025年07月28日(月)18:30~ 札幌文化芸術劇場 hitaru

【指揮者 / 共演者】
指揮 / 三ツ橋 敬子
ヴァイオリン デュオ / ドス・デル・フィドル(石田 泰尚・﨑谷 直人)
編曲・ピアノ / 直江 香世子
司会 / HTBアナウンサー

【管弦楽】
札幌交響楽団(ゲストコンサートマスター:須山 暢大)

【曲目】
ヘンデル:アラ・ホーンパイプ(「水上の音楽」第2組曲より)
J.S.バッハ:G線上のアリア(管弦楽組曲第3番 ニ長調 BWV1068より“アリア”)
J.S.バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲 二短調 BWV1043

すぎやまこういち:「ドラゴンクエスト」序曲Ⅰ
クイーン:WE WILL ROCK YOU (編曲 / 直江香世子)
ドス・デル・フィドル:晴れのちケルト (作曲・ヴァイオリンデュオ編曲:山中惇史、オーケストラ編曲:直江香世子)
久石譲:SUMMER
サザンオールスターズ:真夏の果実 (編曲 / 直江香世子)
井上陽水:少年時代(細曲:直江香世子)
ZONE:secret base ~君がくれたもの~ (編曲 / 直江香世子)
クラウス・バデルト、ハンス・ジマー、ジェフ・ザネリ:彼こそが海賊(映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」より) (編曲 / 直江香世子)
CHAGE and ASKA:SAY YES (ヴァイオリンデュオ編曲:三浦一馬、オーケストラ編曲:直江香世子)

(アンコール)
SMAP:夜空ノムコウ
井上陽水&安全地帯:夏の終わりのハーモニー


ドス・デル・フィドルと札響が響宴する、最高にアツイ札幌の夏の夜!普段の札響でも滅多に聴けない室内オーケストラ編成の協奏曲あり、直江香世子さんの素晴らしい編曲による「夏」をテーマにした作品の数々ありと、プログラムもすごい!他では聴けないスペシャルなコンサートを聴けた私は、札幌市民でよかったとこの日つくづく思いました。主役がヴァイオリン2つなら、ヴァイオリンの高音域から低音域まで堪能できて、2つのヴァイオリンのハーモニーも楽しめるのがうれしい。コンマス出身のお2人は、石田組でおなじみ石田泰尚さんも、個人的に「はじめまして」だった﨑谷直人さんも、その音楽で瞬時に聴き手の心を掴むソリストとしても大変魅力的でした!ドス・デル・フィドルはオーケストラとの共演は初めてということで、いつもとは勝手が違い大変だった事と存じます。しかしそんな苦労はまったく表には出さず、最強のパフォーマンス。やはりお2人ともタダ者ではありません!そしてもちろん、いつもとは異なるレパートリーを難なく演奏し、お初のゲストと幸せな共演ができる、私たちの札響もすごいんです!

しかし思い入れが強いのは厄介で、せっかくならマイクを通さない生音で聴きたかったとか、今回に限らず演奏会には司会は不要では?とか、さらには石田さんは指揮者やコンマス・アシスタントコンマスと握手を交わさないのはなぜ?とか(ちなみに﨑谷さんは握手していたので、なおさら気になってしまいました)、つい思ってしまった私。そもそも色々と求めすぎなのでしょう。演奏そのもので聴き手を魅了したという点においては揺るがないわけですから、大人の事情その他について余計な事は考えないのが吉ですね。石田泰尚さんと﨑谷直人さん、超ご多忙な中、遠く札幌まで来てくださり、最高に素敵な演奏を聴かせてくださった事に心から感謝です!


前半のオケは、弦が10型(10-8-6-4-4)だったと思います。管楽器はホルン、トランペット、オーボエ、ファゴット。そしてティンパニの編成でした。1曲目は、ヘンデル「アラ・ホーンパイプ」(「水上の音楽」第2組曲より)。高音弦のメロディはぐっと爽やかで、追いかける低弦はどっしり力強く。そしてやはりホルンとトランペットのやりとりがとても華やか!中間部の落ち着いたシーンは細やか!イギリス王朝の船遊びのために書かれた曲。華やかかつ爽やかで気持ちの良いオープニングでした。

ここで、司会のHTBアナウンサーが舞台へ。ごあいさつがありました(以降も節目毎に登場し、曲目解説等を行いました)。毎年開催されている「HTB イチオシ!!classic」は、今回が3回目となるそうです。ゲストは、過去2回はいずれもボーカルのかたで、今回初めて弦楽器奏者をお招きしたとのこと。次の演目に入る前に、ゲストコンサートマスターの須山暢大さん(大フィルのかたですね。ありがとうございます!)にマイクを向け、「G線上の」について解説して頂きました。ウィルヘルミ編曲版では、ヴァイオリン単体で弾くとき「G線」のみで弾けることからその愛称になったそう。しかし原曲の弦楽合奏版では、「1stヴァイオリンはむしろG線は使わない」(!)と仰っていました。

弦楽合奏で、J.S.バッハ「G線上のアリア(管弦楽組曲第3番 ニ長調 BWV1068より“アリア”)」。ゆったりとしたテンポによる、祈りの音楽に心安らぎました。透明感ある高音弦と、対となる低弦。この対位法(?)的な重なりが私は好きで、いつまでも聴いていたいと思えます。札響の弦セクション、やっぱり素晴らしいです。大好き!

お待ちかね、ドス・デル・フィドルのお2人が登場です!石田泰尚さんは背中に模様が入った黒のシャツ(前月の俺クラ・札幌スペシャルで着用していたのと同じ?)、﨑谷直人さんは白いシャツの装いでした。司会によるインタビューに応えたのは﨑谷さん。お2人とも同じオケ(神奈川フィル)のコンサートマスターを務めていた縁で、デュオを組んだのだそうです。「(かなフィルより)先に札響さんに呼ばれてしまいました」と仰って、会場に笑いが起きました。

オケは弦楽合奏で、更に人数絞り込み(6-4-3-2-1)、室内オーケストラの編成に(通常の石田組より少し多い人数)。またソリストは第1奏者が石田さん、第2奏者が﨑谷さんだったと思います。J.S.バッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲 二短調 BWV1043」。第1楽章 駆け抜ける2つのソロと、ぴったり併走するオケ。2つのソロの前のめりな勢いと切ない感じに惹かれ、しっかり土台を作る低弦との対比がイイ!﨑谷さんのソロとオケの低弦との室内楽的なやり取りがぐっと来ました。第2楽章 はじめ、オケの心地よいリズムに乗って、温かく優しく歌う石田さんのソロの美しさが心に沁みました。ほどなく登場した﨑谷さんのソロは澄んだ美しさ!﨑谷さんの高音に重なる石田さんの低音は味わい深く、ヴァイオリン2つだからこそのハーモニーの良さを堪能できました。ゆったりした中でも、穏やかな感情の波があって、2つのソロが少しずつ感情が高ぶっていくのをオケがさり気なくアシスト。また、ヴァイオリン2つが内緒話するようにささやき合った、その繊細さと愛らしさにも惹かれました。第3楽章 情熱的に駆け抜ける2つのソロが超カッコイイ!たくさんの音を次々と繰り出しながらも、もつれない(当然ですね)上に、2人で応酬しあったりぴったり重なったり。さらにオケのコンマスも加わった三つ巴になり、息つく暇もない展開にぐいぐい引っ張られて行くのが快感でした。また2つのソロが交代で主役になった(片方は支える役目)シーンでは、それぞれの美音を味わえました。ああ良いものを聴けました!ソリストはドス・デル・フィドルのお2人&オケは札響の協奏曲を、もっともっと聴いてみたいです!

後半。オケの弦は12型(12-10-8-6-4)に。指揮台の正面にピアノが設置され、管楽器は低音域のものも入り、ハープ、ティンパニの他、多彩な打楽器も加わった大編成となりました。また、後半はソリストの立ち位置にマイクが設置され、スピーカーが用いられました。1曲目はオケのみによる演奏で、すぎやまこういち「『ドラゴンクエスト』序曲Ⅰ」。雄大なホルンによるオープニング、弦楽合奏による高音弦メロディが爽快で、対する骨太な低弦が良すぎる!この低弦を聴くと、作曲家のすぎやまこういちさんはブラームスお好きだったのでは?とつい想像します。管楽器打楽器が加わるとさらにスケールが大きくなり、金管が華やか!そして個人的に大注目はドラムセットです。シンバルやスネアドラムが最高に良いスパイス!こんな演目でしかお目にかかれない、札響のドラムセットはカッコイイんですよ。今回もドラムセット担当は札響打楽器奏者の大家さんでした。

ドス・デル・フィドルのお2人をお迎えして、クイーン「 WE WILL ROCK YOU 」。オケによる序奏はド派手で大迫力!しかも、これはヴェルディ「レクイエム」の『怒りの日』!?と、最初に度肝を抜かれました。その勢いある「ジャン!ジャン!ジャン!」が、いつの間にか(!)「ドンドンタッ♪」に変化。うちのオケ、上手すぎでは!?そこに﨑谷さんのヴァイオリンがギューン!と鳴って空気を切り裂き、﨑谷さんと石田さんのヴァイオリンが二重奏でシャウトするように歌う。キレッキレで超カッコイイ!オケも全力で、聴く方はテンション爆上がりな演奏でした。編曲も演奏自体も超ロック!

ドス・デル・フィドル「晴れのちケルト」。この曲は、在阪テレビ局(MBS)のお天気コーナーのテーマ曲なのだそうです。今回のイチオシ!!classicは札幌のテレビ局(HTB)が主催している事もあって、「お仕事の依頼、お待ちしています」と﨑谷さんがアピールされていました(抜かりなしですね・笑)。元々はピアノ伴奏の曲で、もちろんオーケストラ編曲版は今回が初演ですね!石田さんのヴァイオリンが軽やかに歌いはじめ、﨑谷さんのヴァイオリンが重なり、次第に盛り上がっていく流れが爽快!爽やかな風が吹く、抜けるような青空を私はイメージしました。ケルト音楽風のメロディに、民族楽器のフィドルを思わせる素朴で少し掠れた音色がなんとも素敵!伸びやかでリラックスした印象の音楽でも、控えめなトリルで彩る等、演奏は細やかでした。壮大に包み込んでくれたオケは、2人の飛翔をアシスト。ダイナミックな盛り上がりでの、打楽器によるキラキラ音(ウィンドチャイム)が印象的でした。

ドス・デル・フィドルのお2人が一旦退場。司会によるインタビューが行われました。指揮の三ツ橋敬子さんは、コンサートマスターとしての石田さん・﨑谷さんとはそれぞれ何度か共演した事があるそうですが、「ドス・デル・フィドル」との協演は今回が初めてとのこと。「化学反応」が素晴らしい、と仰っていました。編曲・ピアノの直江香世子さんも同じく「化学反応」に触れた上で、リハーサルで合わせた段階からとても幸せだったと語られました。また、編曲やプログラム構成についても触れ、「夏」をテーマにした楽曲を単に並べるだけではなく、曲の順番やオーケストラ編成(大編成だったり小編成だったり)も考えた上でプログラムを組み立てて編曲しているとお話しくださいました。直江さんさすがです!頼りにしています!

オケは小編成となり(前半と同じ10型だったと思います)、はじめはオケのみによる演奏で、久石譲「 SUMMER 」。はじめのうちは弦ピッチカートのみで密やかに。高音弦のメロディに、支える低弦のハーモニーがイイ!ほどなく管楽器が加わり、弦パートの皆様も弓を使ってメロディを演奏。そんな移り変わりが色合いの変化になって、懐かしい風景が広がっていくように感じました。ラストはピアノのみで、ノスタルジックに締めくくり。個人的に好きな小編成オケによる素敵な演奏に、じんわり幸せな気持ちになりました。

再びドス・デル・フィドルのお2人をお迎えして、「夏」にまつわるJ-POPが続けて演奏されました。サザンオールスターズ「真夏の果実」。オケは、波の音を演出した打楽器(オーシャンドラム?)が印象的。2つのヴァイオリンが交互に歌い、次第に重なり合い盛り上がっていって、なんといってもサビ部分(♪四六時中も好きと言って~)のハモりが最高でした!サザンの桑田佳祐さんと原由子さんが歌うのと同じように、語尾を少し揺らす(♪てぇえ~)のも控えめなトリルで演出。「歌」をとても意識されていると感じました。

井上陽水「少年時代」。ちなみに私は過去に石田組での演奏を一度聴いたことがあります。その時は石田組長のコスプレに気を取られて集中できませんでしたが(笑)。ヴァイオリン2つだと、ハモったりこだまし合ったりと、1つの時よりさらに多彩な響きに。しみじみ聴き入りました。消え入る高音の美(♪あと先~)、音階上昇の鮮やかさ!打楽器によるキラキラ音(ウィンドチャイム)は、昔の思い出の輝きのようでも、風鈴の音のようでもありました。あと特筆したいのは、2つの独奏にそっと寄り添うオケの弦の良さです。今回の編曲ではチェロ独奏はありませんでしたが、愛する札響の弦セクションによる愛ある演奏が聴けて幸せでした!

ここからオケは大編成になりました。ZONE「 secret base ~君がくれたもの~ 」。ZONEは札幌に縁のある音楽グループなのだそう。2つのヴァイオリンは、サビ部分(♪君と夏の終わり~)の切なさ美しさ(石田さんのヴァイオリンの美音に驚愕!)はもちろんのこと、サビ以外での内に秘めた感じの低音がとても魅力的!オケは大編成ではありましたが、2つのヴァイオリンを支えるときはとても繊細に寄り添い、間奏で大きく盛り上がるスタイルでした。オケの木管群がノスタルジックに優しく温かく歌ったのが沁みる!

クラウス・バデルト、ハンス・ジマー、ジェフ・ザネリ「彼こそが海賊(映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』より)」。めっちゃカッコ良かったです!オケによる序奏は壮大&大迫力!ヴァイオリン2つも低音を効かせて歌い、クラシックやポップスとはまた違った良さに魅了されました。ホルンパートが歌った後、ついにチェロ独奏キター!ほんの1フレーズでしたが、マイクなしの独奏でも渋い低音の存在感は抜群でした。札響首席チェロ奏者の石川さんは、札響では唯一の石田組組員。断然頼れる!

プログラム最後の演目は、CHAGE and ASKA「 SAY YES 」。こちらのヴァイオリンデュオ編曲が良すぎました!2つのヴァイオリンはむしろ原曲よりも豊かに歌っていたのでは!?オケによる前奏に重ねて、2つのヴァイオリンが歌うのが既に素晴らしい。歌詞がない部分を歌えるってすごい!歌唱部分に入ると、チャゲと飛鳥のパートを2つのヴァイオリンそれぞれで受け持ち交互に歌うのみならず、片方が主役のときにもう片方が支えてより豊かなハーモニーに。オケによる間奏部分でも2つのヴァイオリンが歌い、そして歌唱部分に自然とスイッチ。耳慣れた「 SAY YES 」なのに、こんなにも心揺さぶられるなんて!

カーテンコールで舞台へ戻ってきてくださったお2人。トークを挟まずそのまま演奏に移りました。アンコール1曲目は、SMAP「夜空ノムコウ」(原曲の作詞:スガシカオ、作曲:川村結花)。こちらはオケはお休みで、ドス・デル・フィドルのお2人とピアノによる演奏でした。はじめは完全ソロにて﨑谷さんのヴァイオリンが歌い出し(♪あれからぼくたちは~)、その切なさ美しさにハッとなりました。ほどなく石田さんのヴァイオリンが重なり、続いてピアノも重なり、三重奏に。J-POP特有のビートは刻まずに、独白のように静かに歌う演奏。ジーンと胸に来ました。﨑谷さんのヴァイオリンによる消え入る音の繊細な美!ドス・デル・フィドルの本来の編成による、サプライズなアンコールに感激です!

指揮の三ツ橋さんと司会も舞台へ。石田さんはマイクを向けられると、「素晴らしい、札幌交響楽団と、協演できて、うれしいです」とコメント。司会はもう少し踏み込んだお話しを引き出したかった様子でしたが、2回目もまったく同じコメントでした。続いて﨑谷さんのターンに。「素晴らしい、札幌交響楽団と……」と石田さんの真似をして、会場の笑いを誘っていました。改めて、今回協演できたことの喜びとお礼を述べられてから、「お仕事の依頼、お待ちしています」と念押しアピール。司会が「これで本当に最後です」とアナウンスして、アンコール2曲目へ。井上陽水&安全地帯「夏の終わりのハーモニー」。オケによる序奏は優しく、ヴァイオリン2つは交互に主役になったり重なったり。サビの二重奏は美音と美音が重なって高め合い、なんとも贅沢なハーモニーでした。またチェロパートが大活躍で、独奏と呼応したり、チェロパートのみでメロディを奏でたり。密かにうれしい。超充実の本プログラムに加え、しっとり落ち着いたアンコールを2曲も聴かせてくださり、ありがとうございます!札幌の夏の夜のスペシャルで濃密な体験に感無量!しかし体感ではあっという間でした。またいつの日か(ご無理のない範囲で!)、再びドス・デル・フィドルと札響の共演が実現しますように。札幌にてお待ちしています!


ヴァイオリニスト・石田泰尚さんは、前月にも来札くださいました!「俺クラ・スペシャル 札幌の夜に響く、一度きりの奇跡。」(2025/06/13)。クラシック音楽の枠を軽々と超えていく『俺』達に魅せられた、スペシャルな夜。クラシック界のスーパースター4名が一同に会し、それぞれの輝く個性が重なり高め合うなんて、贅沢の極み。札幌で一度きりの奇跡に出会え、無限に広がる生きた音楽を体感できた『俺のファン』達は幸せです!

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札響が絶大な信頼を寄せる作曲家・直江香世子さん。こちらの演奏会の「ディズニーソング・メドレー」も素晴らしい編曲でした!「みんなのオーケストラ in Kitara~あつまれ動物たち~」(2024/12/28)。札響による演奏をKitaraにて親子でお得に聴けるありがたさ!ディズニーソング・メドレーは、短い演奏時間で10曲すべてが1つのストーリーとして連なっているように感じられました。クオリティの高い演奏を当たり前に聴いて育つ札幌っ子たちが素直にうらやましいです!

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