クライアントや取引先、上司などお世話になった方々に、1年の締めくくりとして年末に挨拶メールを送る場合、どういう点に気を付ければいいのでしょうか?
今回は、年末の挨拶メールを書く際のポイントやコツ、注意点などについて、伝える力【話す・書く】研究所所長、山口拓朗ライティングサロン主宰・山口拓朗さんに伺いました。挨拶メールの例文もご紹介しています。
年末の挨拶メールのポイント
一昔前までは、年末に顧客や取引先を回って直接1年のお礼を伝える文化がありましたが、現在ではメールでの挨拶が一般的になっています。ただ、メールであっても対面の挨拶と同様、この1年の感謝の気持ちをきちんと伝えることが大切です。
もしも、「共に難しいプロジェクトを成し遂げた」「大きなトラブルを乗り越えた」など、送る相手との間に印象的なトピックがあるならば、それに軽く触れつつ感謝を伝えるのもいいでしょう。
また、年末の挨拶メールは、「年末年始の休業期間を伝える」という目的もあります。箇条書きでいいので、年末は何日から休みに入り、年明けは何日から業務開始するのか、明記しましょう。可能であれば年内最終日の業務終了時間、年明け初日の業務開始時間も記しておくとより親切です。
年末の挨拶メールの基本構成
年末の挨拶メールを作成する際には、以下の流れを意識するといいでしょう。
メールの構成要素
【1】件名
年末は業務メールが集中しがちなので、一目で年末の挨拶だとわかる件名をつけましょう。例えば、「【年末のご挨拶】株式会社○○ 山田太郎」などとすると目的がわかりやすく伝わります。
【2】年末の挨拶と、今年1年の感謝の気持ち
一番の目的はこの部分。1年を振り返り、お世話になり感謝しているという気持ちを明確に伝えましょう。
【3】(任意)この1年で印象に残ったエピソード
年末の忙しい中、長々とエピソードを書き連ねるのは読み手の時間を奪うことになり、あまりお勧めしません。印象的なトピックがある場合のみ、1年の振り返りと共に簡単に触れ、2~3行程度でまとめましょう。
【4】(社外向け)自社の年末年始の休業期間
普段から業務でやり取りしている相手であれば、年末ぎりぎりに急に連絡を取りたい案件が出てくるかもしれません。できれば、仕事納めの年末最終日を示すだけでなく、最終日は何時まで業務対応しているのかも記すといいでしょう。
もし「最終日の午後は納会がある」「部の忘年会がある」など、普段よりも早めに業務が終了する場合は必ず記しておきましょう。
【5】締めの挨拶
最後は「良いお年をお迎えください」などと締めましょう。「来年もどうぞよろしくお願いします」など年始に向けた挨拶を入れるのもいいですが、必須ではありません。
【社外向け】年末の挨拶メール例文
まずは社外向けの挨拶メール例文を、ポイントと共にそれぞれご紹介します。
クライアントに送るメールの例文
株式会社○○ 吉田様
いつもお世話になっております。
△△株式会社の佐藤です。
早いもので今年も残りわずかとなりました。この1年、大変お世話になりました。
○○プロジェクトでは、吉田様にご尽力いただき無事完遂することができました。
至らない点も多々あったかと思いますが、常に暖かくご対応をいただき心より感謝しております。
さて、誠に勝手ながら、年末年始は下記の日程で休業させていただきます。
・年末年始の休業期間 2023年12月29日(金)~2024年1月3日(水)
※年末12月28日は17時まで、年明け1月4日は10時より業務開始いたします
休業中のお問い合わせは、2024年1月4日以降に順次対応いたします。
ご迷惑をおかけしますが、ご了承のほどどうぞよろしくお願いいたします。
メールにて恐縮ですが、年末の挨拶とさせていただきます。
どうぞ良いお年をお迎えください。
● ポイント
クライアント相手の場合は、感謝の気持ちに加え謙虚な姿勢を示すのも大切。「至らない点もあったかと思いますが」「ご迷惑をおかけしたかもしれませんが」などとへりくだる言葉を添えることで、来年はより一層クオリティの高い仕事をしてくれそうだと期待を抱かせることができます。
取引先の場合
株式会社○○ 長谷川様
いつもお世話になっております。
△△株式会社の川口です。
2023年も残りわずかとなりました。長谷川様にはこの1年、本当にお世話になりました。
長谷川様からさまざまなアイディアをいただいたおかげで、新商品のリリースを滞りなく進めることができました。無事に目標販売数をクリアできたのは、長谷川様のご尽力の賜物だと企画部一同感謝しております。本当にありがとうございました。
さて、誠に勝手ながら、年末年始は下記の日程で休業させていただきます。
・年末年始の休業期間 2023年12月27日(水)~2024年1月3日(水)
※年明け1月4日は10時より業務開始いたします
弊社は今年、例年より少し早く休みに入らせていただきます。
年内最終日の12月26日(火)は18時まで稼働しておりますので、何かあればお声がけくださいませ。
なお、休業期間中に緊急のご用件がありましたら、080-XXXX-XXXXまでご連絡くださいませ。
では、メールで恐縮ですが、こちらを年末の挨拶とさせていただきます。
どうぞ良いお年をお迎えください。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
● ポイント
取引先はビジネスパートナーであるため、普段のお礼を前面に示しましょう。「助けていただいた」「ご尽力の賜物」など、相手を称えるフレーズを加えると、関係性を深めるきっかけにもなります。
【社内向け】年末の挨拶メール例文
社内向けの挨拶メール例文を、ポイントと共にご紹介します。
上司の場合
鈴木マネージャー
お疲れ様です。営業2グループの前島です。
今年もあと数日残すのみとなりました。
4月に営業部に異動して以降、鈴木マネージャーには本当にお世話になりました。
営業未経験で失敗続きの自分でしたが、粘り強くご指導をいただき、少しずつ成果を上げられるようになりました。これも鈴木マネージャーのおかげです。
中でもA社のプレゼン前に何度もロープレにお付き合いいただき、商談にもご同行いただいたことは忘れられません。おかげで初めて月間目標を達成することができ、感謝しております。
来年こそは営業表彰されるよう、精一杯努力いたします。
引き続きお世話になりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
ぜひ楽しい年末年始をお過ごしください。
● ポイント
1年間指導してもらったことに対する感謝に加え、来年の抱負を伝えるといいでしょう。上司の立場からすれば、部下の意欲を感じ嬉しく思うもの。今まで以上に期待をかけてくれるかもしれません。文体は、かしこまりすぎなくてもいいですが、丁寧で失礼のない表現を意識しましょう。
同僚の場合
山口さん
お疲れ様です。小林です。
早いもので、もうすぐ2023年も終わりますね。このプロジェクトが始まって1年が経とうとしているなんて信じられないほど、あっという間でした。
プロジェクト開始時から、山口さんにはお世話になりっぱなしで感謝しています。
特に○○の知見はとても役立ちました。資料にまとめ共有してくれたときは、本当に嬉しかったです。ありがとう!ここまで大きなトラブルもなく、スケジュール通りに進められているのは、山口さんのおかげです。
来年は年始早々からまた忙しくなるけれど、お互いに健康に気を付けて頑張りましょう!
では、よいお年を!落ち着いたら、同期のメンバーを集めて慰労会でもしましょう。
● ポイント
仕事でかかわっている親しい同僚であれば、お互いの健闘をたたえ合ったり「いい1年だった」と振り返ったりするのがいいでしょう。同僚なので多少文面がくだけていても問題ありません。
もし仕事で何らかのサポートを受けたり助けられたりした経験があるならば、「あなたがいたから成功した」「サポートしてくれてありがとう」など感謝の言葉を素直に伝えましょう。
挨拶メールを送る際の注意点
年末の挨拶メールで注意したいことをまとめました。以下の点に留意して、挨拶メールを作成・送付しましょう。
年末休業に入る1週間前を目安に送る
社外に送る場合は、年末年始の休業を伝えるのが目的の一つであるため、年末の最終休業日の1週間ほど前の送付が目安になります。企業によってはクリスマス以降休みに入るところもあるので、日付で言えば12月20~23日が目安です。
社内の場合は、年末最終日の数日前程度が一つの目安。早めに休みを取る場合は「一足早く○日から休ませていただきます」などと断りを入れておきましょう。
一斉送信ではなく個別に送る
たくさんの顧客や取引先がある場合、挨拶メールを一斉送信したいところですが、できれば個別に送ったほうが感謝の思いが伝わります。大事な顧客や関係性を深めたい取引先などの場合はなおさら、個別に思いを記しましょう。
とはいえ負担が大きすぎるようでしたら、ベースのメール文面を作成し、相手ごとに感謝の言葉を変えたり、エピソードを一言添えたりするといいでしょう。
業務連絡は別メールで行う
年末年始の挨拶メールに、「あの資料は年明けにお願いします」など業務連絡を加えてしまう人がいますが、別メールで行うことをお勧めします。「挨拶メール」はあくまでこの1年の感謝や休業期間を伝えるのが目的。業務連絡は切り離して考えましょう。
年末に挨拶メールを受け取ったら、年内に返信を
挨拶メールを送ろうとしていた相手から、いち早く年末の挨拶が届いてしまうケースもあるでしょう。
通常ビジネスメールは、受信してから24時間以内に返信したほうがいいとされていますが、この場合は、本来自分が挨拶メールを送ろうと思っていた日時に送ればOK。ただメールの冒頭で「このたびは年末のご挨拶をいただきありがとうございます」など、挨拶メールのお礼をしておきましょう。
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山口拓朗さん
伝える力【話す・書く】研究所所長。「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」「売れるキャッチコピー作成」などの文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う。『伝わるメールが「正しく」「速く」書ける92の法則』(明日香出版社)のほか、『残念ながら、その文章では伝わりません』(だいわ文庫)、『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(日本実業出版社)、『書かずに文章がうまくなるトレーニング』(サンマーク出版)などがある。2023年11月に最新刊『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)が発売予定。
公式サイト:http://yamaguchi-takuro. com/