“退屈なのは世界か?それとも自分か?”――やや挑発的なスローガンを掲げながら、次世代を担う学生約1500人が東京有明・国際展示場に結集。学生による学生のためのイベント『起業家スーパーカンファレンス2014summer』が行われた。
20代で起業し、オフィス賃貸「オープンオフィス」を創立。“レンタルオフィス”という概念を日本に根づかせたパイオニア、株式会社ビジネスバンクグループ代表取締役の浜口隆則氏は、未来を担う若者たちを前に「理想のライフスタイルを実現するために、今するべき10のこと」について語った。
浜口隆則氏
横浜国立大学教育学部卒、ニューヨーク州立大学経営学部卒。会計事務所、経営コンサルティング会社を経て、起業家を支援するために20代で起業。「日本の開業率を10パーセントに引き上げます!」をミッションに掲げ、株式会社ビジネスパンクを創業する。企業専門会計事務所、ベンチャーキャピタル会社、起業家教育事業など、起業支援サービスを提供する複数の会社を所有するビジネスオーナー。アーリーステージの事業に投資する投資家(エンジェル)でもある。
理想のライフスタイルを実現するために、今するべき10のこと
1.逆算思考を習慣にする
成功者はこうありたいという目標を先に考え、そこから逆算して考えるという習慣を身につけている。なんとなくやっていたら成功した、ではなく、必然的に成功するやり方を身につけることが大事。
2.死を意識する
究極の逆算思考とは「死を意識する」こと。私たちの人生は死で終わる。命とは与えられつつも、限られた時間であると理解をすること。そうやって死を意識していないと、やらなくてはならないことを先のばしてしまい、結局やらないまま人生を終えてしまう。人生における最大のリスクは後悔の山に埋もれてこの世を去ることであり、何かやろうとして失敗することはリスクではない。
3.理想を描く
もし、自分の理想が分からないなら、「幸せの境界線」ワークをやってみよう。やり方は至ってシンプル。紙の真ん中に1本線を引き、上には「こうなったら幸せ、こうなったら最高」という内容を、下には「こうなったら不幸せ、こうなったら嫌だ」ということを書き加えていく。こうして境界線を引くと、自然と自分のバロメーターが見えてくる。
人生に大きな影響を与えるストレスは大きく分けて3つ。
・お金のストレス
・好きなことができないストレス
・人間関係のストレス
幸せな人生はストレスがなく、代わりに3つの自由がある。
・経済的な自由
・行動の自由
・人間関係の自由
要するに「幸せな人=愛されて、好きなことをして、お金持ち」。一見イヤミな感じがするが、これができていれば幸せと言える。
ところが、この3つの幸せは同時に得ることが難しい。「お金が欲しいから、行動の自由をあきらめよう」といった、何かひとつ叶うと、別のひとつを差し出してしまう“生贄の心理”が働くからだ。常に自分の中で心理的な取引が行われていると意識していれば、不安や恐れに押しつぶされず3つの自由を同時に得ることが可能となる。
4.メンタルブロックを外す
成長の足かせとなる心理に「エレファントシンドローム」と呼ばれるものがある。
象はインドでは動力源として飼われている。農作業や交通手段に使われたりする。頭もよくて力のある象が逃げずに人間に支配されている理由は、子どもの頃から同じロープで繋がれているから。そのロープは大人の象だと簡単に千切れるが、子どもの象は千切ることができない。なので、子どものうちに何度も逃げようとして絶対に切れないと知ると、頭がよい象は学習し、心のブレーキをかけてしまう。学習効果がマイナスに働いてしまうのだ。それは人間も同じこと。
こういったメンタルブロックを外すには、その存在に気付き、再定義(リフレーミング)を行うこと。まず、自分にはできないと自己制限をかけてしまっている人が多いが、今の自分を制限せず、これがゴールと思わないようにしよう。
もうひとつは、失敗の定義を変えることだ。成功と失敗は常に反対側にあると考えがちだがこの考え方を改める。行動を起こす人は、成功の反対は何もしないことと考えており、失敗は行動を起こす際のプロセスに過ぎないと捉えている。
成功の反対は失敗ではなく、何もしないことだ。リスクを考えるなら、やった時に起きるリスクと、やらない時に起きるリスクを天秤にかけて、低いほうを取るべき。私たちはどうしてもやるほうのリスクばかりを考えてしまうので、結果的にやらないことを選んでしまいがち。
象は自分だと思うこと。子供の頃や若い頃に学習してしまったことに捉われ、自分を制限していないかを見直そう。今、常識と考えられていることが実は常識じゃないかもしれない。自分の“非常識”に踏み込む勇気を。
5.仕事を味方にする
学校を卒業して社会に入ると、よほど恵まれている人以外、仕事をしないといけない。多くの時間を仕事のために費やすことになる。
「仕事=嫌なこと」と定義して、嫌なことをするからお金になると思っている人が多いが、実際は「仕事=喜ばれること」だ。仕事の醍醐味は、人に喜ばれる価値を提供して、その対価をもらうことである。
6.成長し続ける
成長し続ける人の武器はふたつある。ひとつめは素直さ。多くの人は素直じゃないことで損をしている。優秀な人間が陥りやすい罠は、自分の優秀さを証明するために他者を否定したり、批判したりすることだ。そうすると、なんとなく自分が優秀に思えて楽だが、それだと何も学べない。
もうひとつは、人生で起きているすべてのことを100パーセント自分の責任だと考えられる力だ。外部要因思考ではなく内部要因思考。言い訳をしなければ、じゃあどうやったら変わろうかという発想になれる。その逆で誰かのせいにしていたら、自分は変わる必要がないので変われなくなってしまう。成長できる人になり、任される人になろう。
7.学び続ける
最も費用対効果が高い投資先は自分だ。20代は投資の世代。20代の時にがんばらなかった人間が、30代40代で20代でがんばった人間に追いつこうと思ったら、10倍努力しないといけない。それだけ20代の投資には価値がある。ただし、アウトプット優先で学ぶこと。多くの人が“学ぶための学び”を続けていて、一歩を踏み出せないままでいる。勉強や本を読むことは実は楽だと知ろう。そこから行動を起こすほうがよほど難しい。
8.行動量を増やす
学んだことを実践できているかのセルフチェックを。できていて、初めて「知った」と言える。
成長し続けられる人の特徴は、第一歩がとにかく早く、すぐ実行に移せること。自分がやろうと思ったことややるべきと思ったことは72時間以内に第一歩を踏み出そう。72時間何もしないでいると、やろうとしていたことを忘れたり、おっくうになってしまう。
9.群れるのをやめる
世の中の多くは現状維持組。何か新しいことをしようとすると、その人たちが足を引っ張る。しかし、自分がやりたいことがあるなら、現状維持組とは距離をつくらなくてはならない。群れの心地よさから離れる勇気を持つこと。そういった群れの中にいると、同じような仲間が集まり、ギザギザすることもない。成長できる人は自分の心地よいゾーンから出て行ける人。コンフォートゾーンの外から、はみ出るべき。
10.最初の一歩を突破する
最初の一歩を突破するのは難しい。けれど一歩を踏み出したいのであれば、やるリスクとやらないリスクの両方を考え、「明日はある」と思い込んでいないかを疑おう。なんとなくあると思っているだけで、明日があるとは限らない。私たちが当たり前と思っている明日は、ある人にとっては願っても得られなかった明日だったりする。
明日がある人間には、明日がある責任がある。人生を豊かにするということはその責任のひとつ。それも行動することでしか変えられない。成功というのは、“できる/できない”で決まっているのではなく、“やるか/やらないか”で決まってくる。
浜口氏にとっての理想のライフスタイルは、自己成長と社会貢献に尽きるという。
自分の最高を目指して、そこで得たものを最終的に他者に捧げられるか。「最も感化された言葉のひとつ」として、最後に浜口氏がスライドで見せたのは、ジョン・F・ケネディのあの有名な言葉だ。
“社会が自分に何をしてくれるかではなく、自分が社会に何ができるかと考えられる人”
理想のライフスタイルを実現できる人は、社会が何をしてくれるかを考える人ではなく、社会に何ができるかを考えられる人だ。社会や他者に何かしてもらおうと考えるのをやめれば、“自立人”へ一歩近づける。
「“自立人”だけが豊かな人生を得られる。自分の大切な人生をコントロールできる人になってほしい」と締めくくった。
文・撮影 山葵夕子