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小泉首相の「プレスリー物真似」は笑って済まされない

 昨夜は、映画演劇産業の労働組合「映演労連」が運営の中心になっている「映画人九条の会」の勉強会に講師として参加した。テーマは「改憲はどこまで来ているか」。わたしからは、このブログの以前のエントリー(ここここ)をもとに、自衛隊のイラク派遣と撤収をめぐる報道統制の現状を報告した。
 勉強会には講師がもう一人、メディア研究の桂敬一さんも参加。桂さんのお話にはいろいろ思うところがあったが、特に印象に残ったことを書き残しておきたい。それは、小泉純一郎首相が先の訪米で見せたプレスリーの物真似のことだ。わたし自身は、最初に写真を見たときには「???」だった。続いて「恥ずかしい」と思った。ご主人さまの前で得意になって芸を披露する猿回しの猿、という構図だと思った。
 桂さんが指摘したのは、戦後の61年におよぶ日米関係の連続性の中で、今回のエピソードをどうとらえるか、との視点だった。一般に、戦争が終わった直後は、敗戦国は戦勝国に隷属せざるを得ない。しかし、それは永久的なものではなく、国力を回復するにつれ、対等な関係になっていく。しかし、小泉政権の5年間はどうだっただろうか、という視点だ。ただひたすら、日本は米国への服従の道をひた走っただけではないか。そして、その象徴が「ご主人さま=ブッシュ米大統領」の前で、プレスリーの遺品のサングラスをかけ、得意げに物真似をしてみせる任期満了直前の小泉首相の姿だ。
 比較は1945年の昭和天皇とマッカーサーの会見にさかのぼる。日本政府が不敬罪にあたるとして新聞への掲載を差し止めようとした会見写真は、GHQの逆検閲によって世に出た。その写真を見れば、敗戦国ではあるけれども、少なくとも昭和天皇の背はまっすぐに伸びている。
 桂さんはまたメディアの問題点として、小泉首相のこうしたはしゃぎぶりをきちんと伝えないことを批判した。メディアは繰り返し取り上げなければならないのではないか、あるいは海外ではこうした小泉首相にどんな見方がされているのか、そうしたことも伝えなければならないのではないか、と。そうでなければ、日本人は自分たちの首相を通じて自分たちの国が国際社会でどのように見られているのか、そうしたことすら客観的に情報を得られなくなってしまう、と。
 その通りだと思った。自分たちの国際社会での客観的ポジションすら分からないままに、中国や韓国など近隣諸国との外交関係も進展させられず、「北朝鮮=絶対悪」を掲げる例えば安部晋三のような政治家が人気を集める今の状況は、ある種の社会不安と呼んでもいいのではなかろうか。社会不安が行き着くところで戦争が始まるのは、歴史が繰り返し証明している通りだ。

追記 7月20日午前
 ロシアサミットでも小泉首相ははしゃいだ。韓国メディアも注目している。

 朝鮮日報(日本語版)「踊る小泉首相にブッシュ大統領が一言」
(引用開始)
【G8】踊る小泉首相にブッシュ大統領が一言
「少しおとなしくした方がいい」
 日本のメディアによると、今月15日のG8首脳会議午さん会の最中、ロシア民謡が流れるや、日本の小泉純一郎首相が突如ステージに上がって踊り始めた。
 ブッシュ大統領は小泉首相に「少しおとなしくした方がいい」と言ったところ、小泉首相は「(先日行われた米日首脳会談後、故エルビス・プレスリー宅で)一緒に踊ったじゃないか」と答えたという。
ワシントン=ホ・ヨンボム特派員
朝鮮日報
(引用終わり)

 中央日報(日本語版)「ブッシュ大統領『小泉首相、ちょっとお静かに』」
(引用開始)
 ブッシュ大統領と小泉純一郎日本首相が交わした冗談も話題になった。小泉首相は15日、非公式夕食会でロシア民謡が流れると急に舞台に上がり、踊り始めた。これを見たブッシュ大統領は 「小泉首相はいつも場を支配する」と冗談を言った。
 先月米国で首脳会談を終えて2人の首脳が一緒にエルビス・プレスリーの邸宅を訪問したとき、小泉首相がエルビスの歌に合わせてダンスをしたことを踏まえての言葉だった。それとともに 「小泉首相、ちょっとお静かに」と言うと、その場が爆笑に包まれた。
 これに対して小泉首相は「(米国で)ブッシュ大統領も一緒に踊ったじゃないか」と返していた。
(引用終わり)

by news-worker | 2006-07-20 09:51 | 平和・憲法

 

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