Z1000LTDは輸出専用モデルであり、日本にはあまり馴染みがない。Z系のエンジンとフレームをベースにしたこの「ジャメリカン」は、アメリカンスタイルとZの走りを持ち合わせた、今となってはレアなバイクである。

アメリカを目指したジャメリカン

日本において「イージーライダー」公開以降のアメリカンバイクブームにより、並列の4気筒や2気筒エンジンのロードスポーツバイクをベースに、プルバックハンドルや段付きシートを装備することで「アメリカンっぽい」スタイルにした、いわゆる「ジャメリカン」バイクが誕生。日本国内でジャメリカンが各メーカーがラインナップし、カワサキは「LTD」、ヤマハは「スペシャル」、ホンダは「CUSTOM」、スズキは「GL」や「L」といった名称のモデルを用意した。

このジャメリカンの元祖と言えるのが1976年に登場したカワサキの「Z900LTD」で、1977年にはさらに排気量をアップしたZ1000をベースの「Z1000LTD」をアメリカ市場に投入した。最初期モデルはA型と呼ばれ、いわゆる丸ヘッドのZ系エンジンを搭載、その後Z1000MKIIベースのB型となって角ヘッドのZ系エンジンが搭載された。さらに1981年にはベースがZ1000J系のK型となっている。今回撮影した車両はB3型で、Z1000MKIIベースの角ヘッドエンジンが搭載されたモデルだ。

Z1000MKII譲りのパワーユニットを搭載

B3型のZ1000LTDは角タンクのZ1000MKIIがベースだが、そのデザインはZ1系のティアドロップ型デザインのタンクや跳ね上がったテールカウル、直線的なデザインのサイドカバーが組み合わされる。ハンドルはプルバックタイプで、シートはキング&クイーン風の段付きシートが与えられる。一歩間違えると旧車會仕様になってしまうような車体構成だが、そうはならずに「少しバタくさいZ1」的なまとまりを見せている。

Z1000MKIIベースのエンジンは空冷DOHC2バルブ4気筒で、ボア×ストローク70×66mmの排気量1015cc。点火方式はフルトランジスタで、トランスミッションは5速が組み合わされている。マフラーはメッキ仕上げのクラシカルなデザインで、左右2本出しとなる専用品だ。そして、始動方式はセルフスターターとキックスターターの併用式となっている。当時としては最強レベルのZベースのエンジンを積んだZ1000LTDは、ハーレーダビッドソンよりも速く一部のバイクマニアには好意的に受け入れられ、1980年代にはZ1000J系ベースのK型やインジェクションのZ1クラシックなどに発展した。

Z系フレームをベースにアメリカン化

車体はZ1000系のフレームをベースにしており、ホイールサイズをフロント19インチ、リア16インチにすることでアメリカンテイストを出している。ホイールはキャストタイプで、ブレーキはフロントダブル、リアシングルのトリプルディスクにするなど当時としては最高レベルの装備が奢られている。サスペンションはフロントが正立タイプのテレスコピック、リアはツインショックというコンベンショナルな組み合わせとなる。車重は乾燥で531lbs.(約241kg)となっており、これは245kgのZ1000MKIIよりも4kgほど軽いことになる。シート高は30.5インチなので約775mmとなり、815mmのZ1000MKIIよりも40mmほど低い。

カタログなどを見ると、カワサキはZ1000LTDを「チョッパー」という言葉で表現しているが、ステップの位置はミッドでありフロントフォークも寝てはいない。フレームの基本形がZ系なので、タマ数が減ってきたZ1やZ1000MKIIの代わりにカスタムベースとして使われる例も増えてきている。もちろんそれはひとつのZ1000LTDの価値ではあるが、貴重になりつつあるスタンダードをピカピカの状態で乗り続けるのも悪くないチョイスだ。

Z1000LTD主要諸元(1979)

・ホイールベース:59.3インチ(約1500mm)1530mm

・シート高:39.5インチ(約775mm)

・乾燥重量:531lbs.(約241kg)

・エンジン:空冷4ストロークDOHC2バルブ直列4気筒1015cc
・変速機:5段リターン

・燃料タンク容量:3.6US gal.(13.5L)
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク

・タイヤ:F=ML90-19、R=MT90-16T

撮影協力:バイク王つくば絶版車館

住所:茨城県つくばみらい市小絹120

電話:0297-21-8190

営業時間:10:00~19:00

定休日:木曜日

アメリカで人気を博した、名車Zの血を引くジャメリカン「Z1000LTD」 (23枚)

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