キャブレターモデルの燃料タンクとキャブレターの間には、必ず燃料コックが設置されています。タンク内のガソリン残量によってONとRESの通路を切り替える燃料コックにはシール製確保のためゴム製のガスケットやOリングが組み込まれていますが、経年劣化でゴムの性能が低下してすることもあり、ガソリン漏れの原因となります。内部のゴム部品が交換できる車種は修理可能ですが、コックアッセンブリーでしか部品供給していない車種はどうすれば良いのでしょうか……。

燃料コックの種類と働きをおさらいしてみよう

いわゆるバイクタイプに多い手動式とスクーターでポピュラーな自動式の違いはありますが、キャブレター車の多くは燃料タンクをキャブレターの間に燃料コックがあり、ガソリンのオンとオフ、ガソリン流路のONとRESを切り替えることができます。
それに加えて、燃料コックにはキャブレターのオーバーフローを予防する重要な働きもあります。一般的なバイクの場合、車体デザインとして燃料タンクがキャブレターの上にあり、ガソリンは重力によって流れます。もしタンクとキャブレターが直結していたら、キャブレターのフロートバルブの不具合で閉じなくなった際にタンク内のガソリンがすべて流れてオーバーフローしてしまいます。しかし中間に燃料コックがあることで、キャブ側にトラブルが発生しても燃料タンク内のガソリンをせき止めてくれます。

それだけに燃料コックの役割は重要で、コックの不具合がガソリン漏れを引き起こすことがあります。
燃料コックはレバー操作によって切り替えるONとRESポジションの他に、車種によってOFFやPRIといったポジションがあります。ONとRESは燃料タンク内のガソリン残量に応じて使い分けるもので、それぞれのポジションによってタンク内に突き出しているパイプの長さが異なります。
OFFやPRIについては、コックが重力落下タイプの場合はOFF、負圧作動式の場合はPRIが用意されていることが多いようです。負圧作動式はエンジン稼働中に発生するインテークマニホールド負圧によってメイン通路が開閉するため、エンジン停止中は自動的にOFFポジションと同様の状態となります。

その一方、重力落下タイプの場合はエンジンの運転状態とは関係なくOFFポジションでガソリンの流れを絶つことができます。そのためONにするのを忘れて走行していれば、タンク内にガソリンがあってもガス欠症状になりますし、駐車中にOFFにしておかないとフロートバルブ不調などキャブレターに問題が生じると燃料タンク内のガソリンが流出してしまいます。

慣れてしまえば当たり前のように操作できる燃料コックですが、タイプや作動原理をあらためて説明するとこのようになります。

燃料コックが分解可能か否かが運命の分かれ道!?

ガソリンの流路を切り替える燃料コックの切り替えレバー周りには、いくつかのパッキンやシールなどのゴム製部品が組み込まれています。それらはスムーズなレバー操作とガソリンを漏らさないシール性を両立させる非常に重要な役割を担っています。
ただ、その性能は永遠に維持されるわけではありません。キャブレター内部のゴムパーツが劣化するのと同様に、硬化したり痩せたり亀裂が入るなどしてガソリン漏れを起こす場合もあります。
その際に、劣化したゴムパーツが出るか=純正部品として設定されているか否かが、修理の難易度に大きく影響します。

燃料コックが分解可能なタイプで、純正パッキンやOリングなどのシールが入手可能であれば、修理は可能で作業も難しくありません。
分解できるものの純正部品が販売終了となっていると難易度が上がります。しかしかつては純正部品が存在したというのであれば、未使用部品が市場に存在する可能性があり、社外品があるかもしれません。例えば純正キャブレターのセッティングを可能とする燃調キットでお馴染みの岸田精密工業(キースター)は、1960年代のホンダスーパーカブ用の燃料コックパッキンを製造しています。

最も面倒なのは「非分解」かつ「純正部品が販売終了」というパターンです。
一部機種の例外を除き、非分解コックの内部パーツが社外品として供給されている例はごく稀です。ネットオークションなどで未使用品が出品されていれば幸運ですが、これも必ず入手できるとは限りません。
また同じくオークションに出品されている中古品を落札するという手段もありますが、経年劣化でガソリン漏れが生じているものと同年代の部品を入手しても、同じようなトラブルが発生する可能性は低いとはいえません。

このような場合、他車種用で流用できそうな純正部品を見つけて交換する方法や、燃料タンクプレートを製作した上でピンゲルのような汎用コックに交換する方法があります。その一方であくまで自己責任になりますが、トラブル発生箇所によってはDIYで修理できる可能性もあります。

ガソリン漏れの場所が分かれば「ゴムひも」で直る可能性も!?

燃料コックからガソリンが滲み始めたのは、1992年にホンダから発表されたCB1000スーパーフォアです。プロジェクトBIG-1コンセプトに基づいて開発されたネイキッドモデルはビッグバイクらしい堂々としたスタイリングとパフォーマンスで多くのユーザーに愛され、CB1300となった現在もラインナップされています。
問題となっているのは1995年モデルで、非分解タイプの純正燃料コックはすでに販売終了となっています。発売からすでに29年を経過しているので仕方がないといえばそうですが、この部分以外は不具合はないのでなんともやりきれません。

燃料コックやキャブレター内部のゴムパーツの劣化には、ブヨブヨに膨れる膨潤と柔軟性が失われる硬化や収縮の2パターンがあり、前者はガソリンの浸漬、後者はガソリンに触れた後に長期間に渡り乾燥状態が続くことで生じることが考えられます。
バイクメーカーではそうした条件でも性能が損なわれないよう開発テストを行っていますが、ユーザーによって使用条件が異なるバイクの性能を30年もの長期にわたって完璧に担保することは事実上不可能です。
このCBの場合、オーナーが仕事の都合で数年間乗れなくなる際に燃料タンク、燃料コック、キャブレター内部のガソリンを抜いて保管していました。タンクのサビ防止やキャブレター内部の腐食防止の観点では適切な対応でしたが、再びガソリンを入れた際にキャブレターのジョイントパイプのOリング部分と燃料コックから漏れ始めたとのこと。
キャブレターのジョイントパイプはキースターの燃調キット内のパーツで修理できましたが、燃料コックのオーバーホールキットは存在しません。
コック正面のプレートは本体にかしめられており、さらにこのカシメはリベットではなく本体と一体化したスタッドピンの先端を潰しているため、カシメ部分の頭をドリルで削り落としても軸部が抜けるわけではありません。

とはいえ分解してみなければガソリン漏れの原因は分からす対策もできないので、ドリルで揉んでプレートを取り外してみると、コック本体とプレートの接触面のパッキンに無数のヒビ割れが生じており、コック内部のガソリンが漏れるのは無理もありません。
このパッキンは円形でも矩形でもない独特な形状で、断面は丸型です。廃盤となっている純正燃料コックは非分解タイプなので、このOリングが部品として出回っているとは考えられません。
このような場合、あくまで自己責任となりますが汎用のゴム素材でパッキンを自作してみるのも対応手段のひとつとなります。

丸い断面のゴムひもは、ネットのショッピングページで大量に販売されています。素材としては合成ゴム系で最も普及しているニトリルゴム(NBR)や、耐油、耐薬品性に優れたフッ素ゴム(FKM)が一般的です。
どちらも構成要素の含有量やグレードによって性能が左右されるため、NBRとFKMのどちらかを使えば絶対に安心と断言することはできません。時間の経過という要素があるにしても、メーカー純正のOリングでも亀裂が入ってガソリンが漏れてしまうのですから。
ここでは直径2mmのフッ素ゴムの丸ヒモを用意して、修理を行ってみます。

繰り返しになりますが、これは「直ればラッキー」の自己責任で行う作業です。コック本体とプレートの合わせ面に耐ガソリン性の液体ガスケットを塗れば一時しのぎにはなるかもしれませんが、根本的な対策にはなりません。また、亀裂が入っていることが分かったこのコックをこのまま使用することはできないので「ゴミ箱に廃棄する前にDIYで最後の抵抗をしてみた」程度に解釈していただければ幸いです。その上で、次回は具体的な修理手順を紹介します。

POINT

  • ポイント1・燃料コックには重力落下タイプと負圧作動式の2種類があり、どちらもガソリン流路の切り替え部分にゴム製のガスケットやパッキンを使用しいてる
  • ポイント2・バイクメーカーでは耐ガソリン性や耐久性を考慮した素材を使用しているが、製造から数十年を経過した絶版車ではメーカー想定外の劣化が生じることもある
  • ポイント3・ガソリン漏れが生じているパッキンが単純な丸断面であれば、市販の耐ガソリン性ゴムひもを使って修理できる可能性がある
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