ChatGPTの公開から2年が過ぎましたが、生成AIの名前をニュースで見ない日がないほどです。もはや生成AIなしでは困ることも増えてきました。そんな生成AIの実力を何倍にも向上させる「プロンプトエンジニアリング」をご存じでしょうか。本連載では、すぐに実践できるAIの活用テクニックを紹介します。第1回目の今回は、簡単に実践できる「エモーショナルプロンプト」を紹介します。
ChatGPTが止まった?!仕事にならないと阿鼻叫喚
先日、ChatGPTのサービスが一時的に使用できなくなる事件がありました。これは、OpenAIが動画生成AIの「Sora」をリリースしたことが原因で、多くのユーザーが4時間程度、サービスにアクセスできない状態が続きました。これまでも、ChatGPTはちょくちょく止まることがあります。ChatGPTのような大規模言語モデルを安定運用するには、非常に高度な技術とリソースが必要となることは、想像に難くありません。
しかし、興味深いのは、ChatGPTが止まるたびに、SNSには「仕事にならない」とか「学校の課題ができない」など、阿鼻叫喚で溢れることです。一部では生成AIに対して、期待のピークを過ぎて「幻滅期」に入ったなんて言われていますが、生成AIは進化し続けていますし、仕事になくてはならないツールとして定着しつつあります。本稿執筆時点で、ChatGPTが公開されてから2年が過ぎ、生活に生成AIが溶け込んでいるのを見て取れます。
ChatGPTだけではない高性能な生成AI
ちなみに、筆者はChatGPTが利用できない時には、代替サービスをいくつか使い回しています。皆さん、既にご存じでしょうか。
- Google Gemini (https://gemini.google.com/) … Googleが公開している生成AIサービスです。ChatGPTと同じように、さまざまなタスクが実行できます。プログラムを作ったり、絵を描いたりと高性能です。
- Anthropic Claude (https://claude.ai/) … 元OpenAIのメンバー7人により設立されたAnthropicが提供する生成AIのサービスです。ChatGPTに勝るとも劣らない性能のAIを提供しています。
また、ほかにも、オープンなライセンスで、大規模言語モデル(LLM)が多数公開されており、それなりに良いPCを使っている場合には、それらを利用することもできます。
プロンプトエンジニアリングって何?
『プロンプト(Prompt)』とは、生成AIやプログラムに与える指示や入力データを指します。ChatGPTのような会話AIを使う場合には、特にプロンプトを意識しなくても、それなりに役立つ回答が得られます。
しかし、生成AIを使う際に、ちょっとしたコツを知っていることで、より効率的な回答を得ることができます。本連載で扱う『プロンプトエンジニアリング(Prompt Engineering)』とは、効率的な回答を得るためのテクニックです。
昨今のAIモデルは、プロンプトにちょっと工夫することで、AIの応答が大きく変わります。プロンプトエンジニアリングによって、AIモデルの性能を引き出すことができます。
簡単な「エモーショナルプロンプト」を実践してみよう
本連載では、比較的簡単に実践できる簡単なプロンプトエンジニアリングを紹介します。
今回は、プロンプトエンジニアリングに効果があるのかどうかを示すため、簡単に実践できる「エモーショナルプロンプト」を紹介します。これは、プロンプト内に、単なる指示に加えて、感情を喚起する言葉やフレーズを追加するテクニックです。
生成AIは、当然、単なるコンピュータプログラムであり、全く感情を持っていません。しかし、感情を喚起するフレーズを追加することで、その応答に変化を与えることができるのです。とても面白く、また、すぐに実践できる手法です。
例えば、生成AIにお願いしたいタスクに加えて、次のフレーズを追加します。
- あなたの力を信じて、次の課題に挑戦してください。
- 困難は成長のチャンスです。最高のパフォーマンスを引き出して取り組んでください。
- 自分の力を信じて限界を超えてみましょう。
- あなたは最高にクールです。失敗を恐れずに挑戦してみてください。
- これが人生最後の質問だと仮定して最善を尽くして考えてください。
ChatGPTで回答の変化を観察してみよう
ここでは、「素数を求める5行以下のプログラムを作ってください。」というタスクを与えてみましょう。試すプロンプトは次のものです。
素数を求める5行以下のプログラムを作ってください。
これが人生最後の質問だと仮定して最善を尽くして考えてください。
原稿執筆時点で、ChatGPTの標準的なモデルであるGPT-4oを使って試してみました。
エモーショナルプロンプトを加えなくても、普通に素数を求めるプログラムを作成できますが、「エモーショナルプロンプト」のフレーズを追加したものは、総じて饒舌になり、詳しい解説を提供してくれました。
もう一つ、次のようなプロンプトを試してみましょう。
HTMLのカラーコードについて教えてください。
自分の力を信じて限界を超えてみましょう。
同じくChatGPT GPT-4oで試してみました。すると、次のような変化がありました。