Snowflakeは9月11日・12日、年次イベント「SNOWFLAKE WORLD TOUR TOKYO 2025」を開催した。基調講演では、全日本空輸(ANA)上席執行役員 グループCIO デジタル変革室長の加藤恭子氏が自社のデータ活用について語った。
AIを活用するうえで必要不可欠な存在がデータだ。データを統合し、セキュリティとガバナンスが確保された状態でデータコラボレーションを実現するデータプラットフォーム「Snowflake」を、両社はどのような形で活用しているのか。
実のところ、小誌はANAのデータ活用について、2回にわたりお伝えしている。同社は全社員4万人のデータ活用を支える基盤として、Snowflakeを活用した「BlueLake」を運用している。BlueLakeは2022年にVersion1がリリースされ、現在、Version4まで進化している。
今回、グループCIOの加藤氏がBlueLakeを含め、ANAグループ全体のデータ活用について説明した。
データによってCX、EX、SXを向上
加藤氏は、「現在、グループの事業領域を拡大しており、シナジーにより顧客体験価値を高めたい。デジタルとデータを活用して、CX(Customer Experience)、EX(Employee Experience)、SX(Sustainability Transformation)の向上に貢献することを掲げている。企業文化の変革にデータが重要と考えている」と語った。
同社は、データを人やモノ同等に重要なものと考えているという。ただし、加藤氏は「データは時間と共に価値が劣化するので、適切なマネジメントが必要」と、データマネジメントの重要性について言及した。
また加藤氏は、「データは新しい価値が創出され、初めて価値が出る。多様なデータと組み合わせることで、その価値が向上する。さらにAIによって、人では見つけられなかった価値を見つけることで、価値を最大化できる」と、データの価値について説明した。
Single Source of Truthでデータを統合
加藤氏は、データに基づく意思決定の重要性が高まっていることから、BlueLakeを構築したと述べた。「これまでビジネス利用をターゲットとしていたが、旅行やインバウンドが増えたことで、パーソナルなニーズに適したものを提供することが求められている。また、異常気象 自然災害などのリスクにも迅速に対応できる必要がある」(同氏)
これまで、データは特定の部門が使うものと捉えられていたが、ANAグループでは誰もがデータに基づく意思決定できるようにすることを決めたという。全社にデータを有効に活用するため、「Single Source of Truth」に取り組んでいる。
「Single Source of Truthに取り組む理由はデータマネジメントをシンプルにしたかったから。全社のデータを統合することを意識づけるために、BlueLakeのデータ量を経営KPIに設定している」(加藤氏)
Single Source of Truthの実現に向けて、SnowflakeにおいてIceberg tableを導入し、レイクハウスの2層構造にも取り組んでいる。
加藤氏は、Snowflakeの魅力について、「BIと親和性が高く、シンプルなユーザービリティが4万人のデータ活用を支える基盤開発や運用の効率化に役立っている」と語った。
BlueLakeを「新しい価値への中継地」にする
そして、加藤氏はBlueLakeの展望として、データ分析基盤からデータ活用基盤への進化へ促そうとしていると語った。
「現在、サイロ化された業務データが統合されてきている。今後は、BlueLakeをデータ分析基盤から、データを用いて分析した後の終着点、活用基盤へと促す。BlueLakeを新しい価値への中継地と捉えたい」(加藤氏)
また、加藤氏は「AIにより働き方の常識が変わろうとしており、創造的な仕事に向き合えるようになっている」と、AIについても言及した。最後に「人の力こそがANAグループの魅力。人の力にデジタル技術を加えることで、ワクワクで満たされる世界を実現したい」と語り、講演を結んだ。