全国内航タンカー海運組合は、将来船員になることを目指す学生を対象としたタンカー見学会および説明会を、2025年9月30日、愛媛県松山市の三津ふ頭とアイテムえひめにて開催した。
全国内航タンカ-海運組合は、所属海運会社456社(ほか構成員30社)、登録船845隻の全国団体。今回の取り組みは、船員の職場兼生活空間となる船橋、甲板、機関室、居住環境を学生が見学し、乗組員から直に説明を受けるというもので、本年度は仮バース(乗組員の休養のために着岸すること)で三津ふ頭の岸壁に係留されていた、旭タンカーの黒油タンカー船「旭蓬丸(きょくほうまる)」(5,000kl型)と鶴見サンマリンの白・黒油兼用タンカー船「鶴伸丸(かくしんまる)」(5,000kl型)の船内見学が行われた。
●最新タンカーの設備を見学
見学会には、愛媛県今治市の国立波方海上技術短期大学校からおよそ90名の学生が参加。タンカーの船内を見学するのに先駆け、全国内航タンカー海運組合の船員対策委員長である東汽船 代表取締役社長の越智崇氏より、「船員になるために毎日勉強をしている皆さんも、実際に働くことになるかもしれない現場を見る機会はなかなかないと思いますので、怪我や熱中症などに気をつけて、最新設備の整ったタンカー2隻の見学を楽しんでください」との言葉が贈られた。
●タンカー会社の就労状況を詳しく紹介
タンカー見学会は昨年度に続いて2回目の開催となったが、本年度は見学会に加えて説明会を実施。石油タンカーだけでなく、LNGタンカーやケミカルタンカーなどの各種タンカー船を所有・運用する約40社の企業が参加し、船会社に就職した際の船員職務、乗船期間や休暇、待遇面などを学生たちに説明した。
説明会は、参加各社が会社概要を説明し、学生たちの質問に応えていくという形式。乗船サイクルと休暇日数、仮バースの頻度など勤務状況に関する質問から、女性向けの設備の充実度など様々な質問にひとつひとつ丁寧に、船員生活のリアルな状況が説明された。
将来の進路としては、タンカーに限らず、フェリーや貨物船という選択肢がある中、今回の説明会はタンカーが中心ということもあり、タンカーならではの魅力も紹介された。
タンカーの船員は“荷役”も自分たちでしなければならず、最初は覚えることも多い。しかし通常の運航に関する知識だけでなく、貨物に対する知識を身につけたり、危険物を扱うことで危険予知など安全に関する感覚も学びやすく、より多くの知識が身につくそう。将来的にタンカー以外の船種に移ることも比較的容易ということで「最初はタンカーに乗るのがおすすめ」とのアドバイスが送られた。
また、タンカーの船員は給料の良さも大きなメリットだと強くアピールされたが、「お金と休みならどちらを優先する?」という質問に対して、“休み”を優先したいという学生が多かったのが印象的。乗船サイクルも3カ月乗船して1カ月休みという一般的なサイクルよりも、より短いサイクルを希望する学生が多かった。
タンカー見学会は、学生が船員職業としてのイメージをより具現化し、就職後のミスマッチ防止に繋がることを期待して企画されたものだが、本年度は説明会をあわせて開催したことによって、学生たちもより具体的な将来像が描けたのではないだろうか。