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「ゲームショウにコンパニオンがいたころが懐かしい」と言うだけで欧米ではフルボッコにされる──フランス人ライターから見た東京ゲームショウ

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 皆さん、ボンジュール!
 お久しぶりの方も、初めましての方もいると思いますが、あらためて軽く自己紹介をさせていただきます。私はグレグと言います。ゲームをはじめとする日本のエンターテインメントをフランスに紹介している、パリ在住のライターです。

 過去にも20年近く、いくつかのファミ通グループの雑誌などに「フランスで“和ゲーム”はどういう風に受けとめられているのか」ということを書いてきました。
 それくらい、日本のゲームを長年愛し続けているフランス人です! 今回は縁あって電ファミニコゲーマーに書くことになりました。それにしても、ヘンな名前だよ、電ファミ!

 さて、日本のゲームと言えば、海外が拠点の僕にとっては、東京ゲームショウが年に一度のもっとも数多く触れられる機会です。
 その東京ゲームショウでは、近年、欧米人は会場に入った瞬間に文化的なショックを受けます! 今日はそのことに関して、ちらっと書かせていただきます。

取材・文
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グレグ(Greg)
日本とフランスの架け橋を担うフランス人。16歳からゲームライターをしながら、通訳、日本のプロレスの実況、漫画編集など、フランスのエンタメ業界に日本を紹介するベテラン。1999年からファミ通グループの多数の雑誌に寄稿し、欧米のゲーム情報から、日本が知らない海外の日本好きぶりまでを紹介している。自称「ハンサムなオタク」。
【過去の記事例】パリ在住ライターから、テロとゲームについて少し

取材・文/グレグ


欧米ではゲームショウをコンパニオンが彩らなくなっている

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 昨今の時代の流れに従い、東京ゲームショウ(TGS)に取材しに来る海外のメディアは、試遊レポートを書くより、動画でレポートすることが多くなりました。そのためクルーが最低でもふたり必要になり、近年では海外メディアの人数はトータルで増えています。

 そのクルーの面々は、もちろんアメリカのE3やドイツのgamescomなど、世界のゲームショウにも何度も行っているわけですが、彼らは久しぶりにTGS会場に着くと必ず、「相変わらずコンパニオンが多いな~」というリアクションを取ります。
 そう、TGSの特徴のひとつにいまも各ブースにコンパニオンが存在することが挙げられるんです。

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ゲームをPRするコンパニオンの皆さん

 もちろん過去には、欧米のゲームイベントもTGSと同様、おもなブースでゲームを紹介するのは女性の仕事でした。
 ところが欧米のゲームユーザーの46%以上は女性と誰かが気付いたからか、数年前から女性解放思想がパワーアップし、アメリカではとくに「女体を宣伝道具に見立てるのは彼女たちの人権を奪うのと一緒!」という意見が広がったのです。

 同時にコンパニオンへの痴漢行為や暴言などのケースもSNSで話題になって、当たり前のようにいたコンパニオンは、ほんの数年でゲーム業界の黒歴史になりました。
 「コンパニオンがいたころが懐かしいなあ」と発言でもしたら公然と辱められるぐらい、いまやコンパニオンがいないことが自然となっています(これは欧米のゲームショウだけでなく、モーターショウのレースクイーンや彼女らのグラビアの消失にも繋がっています)。

MeToo、そしてGamergateに至る流れ

 こうしたゲーム業界など、比較的ポップな文化領域でもフェミニズムが強化されたきっかけはいろいろありましたが、スマホとSNSの普及、そして欧米で“オタク文化”が一般化したことが根っこには挙げられますね。

 というのも、「ゲームやSF、そしてファンタジーが好きなのは男性のみ」と欧米ではずっと考えられていましたが、これが勘違い。
 SNSの普及でゲームやマンガ、そしてアニメなどへの愛を“告白”する女性が多くなったと同時に、スマホのおかげでゲームはさらに一般化し、“人口の半分”である女性も当たり前のように“プレイヤーの半分”であることが自然に受け止められるようになりました。

 開発スタジオにも、半分とまではいきませんが女性スタッフが増えました。すると増えた女性とともに、男性向けのゲームに見られる性差にまつわる矛盾や不満を伝える女性YouTuberやタレント、コラムニスト、パーソナリティが現れたのです。

 その反響でか、“昔ながら”のゲームを遊んでいる一部の男性たちがそれに納得せず、「ゲームの“社会的な進化”を許さない」とまくしたて、日本人でもゲーム好きなら聞いたことがあるかもしれないGamergateというムーブメントが現れたのです。Gamergateとは、簡単に言えば、ゲームをめぐる性をはじめとするさまざまな対立議論です。

 それから、エンタメ業界で強くなった女性の声は、いくつかの形で確かめられますが、いちばんはやっぱり「MeToo」(ミートゥー)運動だと言えます。
 ハリウッドで絶対的だったプロデューサー、ワインスタインによる数十年におよぶセクハラを告発する昨年の新聞記事を発端に、それに続いて実名でセクハラを告発する女優が多く現れ、結果として何人かの俳優、監督、プロデューサーなどが業界から退くこととなったムーブメントです。

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(Photo by pic_studio|Getty Images)

 こういう(めっちゃ)不適切な行為をする男性たちの取るべき責任も前より多く語られ、「女性側から挑発した」というありがちな言い訳を許さないのと同時に、「女性も男性が挑発と感じるような外見や様子は我慢するべき」という意見が少しずつ常識になっています。

 同様に「女性のイメージを悪くするとされる映画やゲームが、その“女性を対等に扱わない”思考を育ているのではないか」という意見もあります。
 具体的に言うと、「ゲームに登場する女性はセクシーなだけで無能だったり、主人公の便利な道具に過ぎなかったすることがあり、そういうキャラクターは望ましくない、消えて欲しい」という意見です。

でもコンパニオンやコスプレイヤーはあってほしい

 ゲームショウの話に戻ると、最近まで海外のゲーム誌でTGSを扱う場合、ゲームの試遊レポートの次に人気の記事といえば、日本のコスプレイヤーやコンパニオンの写真でしたから、僕ら海外のゲームライターも余裕があったらできるだけ素敵な女性の写真や動画を撮ったりしていました。

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 ですがコンパニオンの写真を撮るたびに感じていた違和感──ゲームなど見もせずそれぞれの女性の前に貼り付いている男性たちに気付き、「彼らはゲームじゃなく女の子のために来ているのでは?」と思うようになったわけです。
 こうして巨大なレンズを持ち歩く集団は海外のライターたちの目に強く焼き付き、TGSは「エロ天国ゲームショウ」であるという印象を強めたかと思います。

 この印象から、和ゲームを馬鹿にするように煽り、大げさに紹介する海外のメディアは少なくありませんでした。個人的に、僕はこれを「自称聖なる欧米対野蛮なアジア視点」と呼んでいます。
 これは自分のメディアを売るために、日本など他国の社会や伝統を、自称「聖なる欧米」の文化視点でジャッジし、「野蛮」と決めてかかるものです。

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 読者の笑いを手軽に誘うために、「いや~日本人はね~」と巨乳コンパニオンの映像を見せながら、「ゲームの特徴がよ~くわかりましたw」みたいなコメントを入れる手法です。そういうものを見ると、「いや~、まだまだ日本についての初心者だな」としか思えないけどね、僕にしてみれば。

 僕はビジネスデイも一般公開日も東京ゲームショウへ行きます。ビジネスデイの2日間だけで遊びたいゲームが全部遊べるかどうか不安だし、「一般のプレイヤーが気になる作品とプロが気になる作品は違うでしょ」と思うから、プロではない方々の好みをチェックできる嬉しいチャンスだからです。

 そして一般公開日のもうひとつの楽しみが、個人のコスプレイヤーの皆さんなのです。毎年変わらずとてもよく出来ているし、華やかかつすごく穏やかな雰囲気に充ちているのが楽しいんです。

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 ただ、一般公開日ですから、会場にはブースの公式コンパニオンや個人コスプレイヤーだけを探し求めるレンズのでかい軍団や、もっと言えばパンツの狙撃者たちも来ているわけです。
 2016年にブログで『“キャバクラゲームショウ”やめませんか?』という記事を書いたサイバーコネクトツーの松山洋社長が、エスカレートする露出に忠告をしましたが、きっとプロデューサーとして制作したゲームを遊んで欲しい気持ちで書いたのだと思います。

実際のところ当のコスプレコンパニオンはどう思っているのか

 その功罪はともかく、アジアは総じてセクシュアルに対して無邪気でおおらかです。僕自身は20年ほどTGSに通っていますが、アメリカやフランスのゲームイベントと比べて、来場者による痴漢やセクハラなどはかなり少ないように思います。

 そこで気になったのは、実際のところ、いまも被写体となっている彼女たちはどんな気持ちでレンズを向けられているのか? ということ。推論してもいいのですが、「40代のムッシュが乙女心を語るのはさすがに不自然かな」と紳士な自分は感じたので、現役のコンパニオンに話を聞くべきと思いました。
 海外メディアであることを利用して、仕事で声をかけたわけです。その結果、今回はニキのブースで笑顔をキラキラさせていた成賀くるみさんに話を伺うことができました。以下はそのやりとりです。

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成賀くるみさん

──自己紹介をお願いします。

成賀くるみさん(以下、成賀さん):
 成賀くるみです。おもにコスプレイヤーとして活動していますが、普段はカレー屋さんの店長です(笑)。コスプレをするのとプロレスを観るのが大好きです。

──ゲームショウでは何年ほどコンパニオンをしていますか?

成賀さん:
 ゲームショウは2013年から毎年コスプレコンパニオンとしてお仕事をさせていただいてます!

──欧米のゲームイベントではコンパニオンが「不適切」とされたことを知っていましたか?

成賀さん:
 全然知りませんでした。最近は女性蔑視がTwitterなどで何かと話題になってるのは感じています。
 キャットコール(通りすがりの女性に男性が口笛を吹いたり、セクシャルな意味合いで声をかけること)に対する動画を以前観たりして、欧米がそういった問題にすごく厳しいことを何となくは知っていましたが、そこまでとは思っていませんでした。

──コンパニオンはゲームを宣伝するときに邪魔になると思いますか? それともお客さんに興味を持たせるきっかけになると思いますか?

成賀さん:
 うーん………難しいところですけど、直結はしないものの、目に止まる可能性としてはあるのかなぁと思います。実際コンパニオンに興味を持って、そのイベントに来るためにゲームを始めたりする人もいるので。

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 加えて、いまはスマートフォンのゲームも多いので、競争の激しさや入れ替わりの早さなどの性質を考えると、コンパニオンでPRするのは相性がいいのではないかと思います。

──ゲームショウで痴漢やセクハラなどされたことがありますか? もしありましたら、スタッフの対応はどうでした?

成賀さん:
 ありますよ。写真撮ってもらった後に近寄ってきて、いっしょにいた子の衣装(露出なし)の生地を「すごい細かいですねー」なんて言いながら近くで見てから私のところへ来て、正面から衣装のミニスカートの裾を掴まれました(笑)。

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 そういうつもりではなかったのかも知れませんが、「どういう神経をしているの?」って思いました。
 一瞬のことでスタッフさんは見ていなくて、たまたま近くにいたクライアントさんが気付いてくれて、「いまの何? 大丈夫?」と心配してくださいましたけど。

──僕はセクシーな衣装を着ているコンパニオンがいても、TGSは変わらず穏やかだと感じていますが、実際にはいかがですか?

成賀さん:
 そうですね、日本ではそれが定番というかひとつの楽しみ? コンテンツ? になっています。

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 そういったセクシーな衣装のコンパニオンやコスプレイヤーがいるのが当たり前になっているので、それを撮影したり楽しみに来る人も多く、そのぶんほとんどの方はマナーを守っています。
 毎年来られる目立つ方もいますけど、そういう方がブースにいらしたときに、「ああ1年経ったんだな」と感じたりして(笑)。

──素敵な対応&返事をありがとうございました!

国際化とは一元化ではなく、それぞれの特徴を尊重したうえで共生すること

 というわけでたったひとりのサンプルでしたが、今回話を伺った成賀さんはコンパニオンの存在には好意的でした。「コンパニオンはダメ。女性のイメージを悪くする」という意見は欧米ではそうなのかもしれませんが、正直、日本ではそれほどそう受け止められていないのではないかと思います。これにしてもどこまで行っても男性の楽観的な意見なのかもしれませんが。

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 日本のアニメ、マンガ、ポップカルチャーがいま世界中で人気だからこそ、日本の独特の文化的なことまで見られ、語られ、判断されるわけです。そして彼らはじつに欧米らしく、自分たちの道徳規範で判定します。
 たとえば、「TGSのセクシーなコンパニオンは、きっと無理やりやらされているに違いない」、「日本の変なエロゲームは、きっと女性を嫌う組織が裏で製作しているんじゃないか」など。アジアや日本の価値観を無視して、自分たちの価値観で考えるからこんな回答が導かれます。

 20年来日本に通っている僕も、もちろん人間であり完璧ではないので、日本についての仕事をしながら、日本にしか見られない変なゲームを見たときに無意識に「ぷぷっ」と笑ってしまったり、「うおおっ」と興奮しながら少しだけセクシュアルな目で見てしまうことはあります。ですが、こうした日本に独特なものを批判するのではなく、いいもの、悪いもの両方を意識して受け入れるのが大事だと思っています。

 国際化とは一元化ではなく、各国の特徴を尊重したうえで共生すること
 「コンパニオンがまだ存在する日本は可哀そう」と欧米的に言うのは簡単ですが、「コンパニオンがまだ問題なくいられる日本は平和だなあ」と日本が大好きな僕は思います。
 この件に限らず、よその国に自分たちの価値観に基づく生きざまを強引に「教えようとする」のは、欧米の悪い癖ですし。

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 なお「どこで会えたの?」や「紹介してるゲームはなに?」と、気になるブース位置なども紹介します!

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