こっそり教えるナイキの裏名品モデル5選、足元に差をつけるなら“じゃないほう”を選べ!自分へのプレゼントにも◎
2024年12月23日(月)8時0分 JBpress
今や運動靴という枠組みを飛び越え、1つのカルチャーとしても世界中で愛されているスニーカー。その魅力である軽快な履き心地と個性豊かなデザインは、一流の革靴を日々の相棒とする読者諸氏をも魅了してやまない。ここでは“本物”を知る大人の男が選ぶべきスニーカーを提案する。
写真=青木和也 スタイリング=泉敦夫 文=TOMMY 編集=名知正登
玄人好み・通好みの“裏名品”
「わしとおまえは焼山かつら うらは切れても根は切れぬ」
明治幕末期を代表する傑物のひとり、高杉晋作が山縣狂介(有朋)に宛てたとされる都々逸である。互いを植物の葛(くず)に見立てて、焼けて葉茎は枯れても根はつながっている。要は切っても切れぬ仲であると詠んだのだ。
スニーカーアディクトたちと“とあるブランド”の関係性は、まさにこれではないだろうか。近年、新興勢力の台頭とカスタマーの嗜好の変化により一時の勢いこそ落ち着くも、我々の心に深く根を張っている存在、それがナイキ。1964年にアメリカ・オレゴン州で創業以来、ただの運動靴に過ぎなかったスニーカーを1つのカルチャーにまで高めた功績とその偉大さに対する評価は、シーンがどんなに移りかわろうと色褪せない。今回は数多の名作群が収められたアーカイブから、決してメインストリームではないが玄人好み・通好みの“裏名品”を紹介する。
そして同時に、『今欲しい、大人が選ぶべきスニーカー』と題し“本物”を知る大人の男が選ぶべきスニーカーを提案してきた本連載シリーズもひとまずラストを迎える。これまで取り上げてきたモデル総数は210。これは、イチローがオリックス・ブルーウェーブ時代に残した「プロ野球のシーズン安打数パ・リーグ記録」と同数。時にポテンヒット、時にホームランを読者諸氏に提供しつつの42回目というわけだ。
また同時に42が“死に”にもつながり、男の大厄の歳であることも踏まえるならば一旦の締めくくりにこれほどふさわしい数字はない。願わくばまたいつか、ナンバリングを継承して43がえり(蘇り)、読者諸氏とここでお会いできることを祈るばかりである。
1. NIKE SPORTSWEAR「KILLSHOT 2 SDE」
元々は、テニスでもスカッシュでもなくラケットボール用
4面の壁と天井、床に囲まれた空間で、前面の壁に当たったボールをラケットで打ち合う競技。それがラケットボール。よく似たスポーツで著名なスカッシュを表と考えるならば、その専用シューズとして1979年に誕生した「キルショット」は間違いなく裏。
インドアコートでのグリップ力を高めるラバー製のアウトソールは、急な横の動きにもクイックに対応し、足元をコントロール。それでいてトゥとヒール部の補強パーツ以外はどこまでもミニマル。これをなめらかなレザーアッパーとガムラバーソールで一新したのが「キルショット2」。しかも本作はさらにスウェード素材を纏ったニューバリエーションだ。
かつて『エスクァイア』や『GQマガジン』といった海外の権威あるファッション誌にも“洗練された大人の1足”として取り上げられていたという事実も、名作たる証左と言えよう。
2. NIKE SPORTSWEAR「AIR MAX TL 2.5」
ハイテクスニーカー冬の時代の名作が、オリジン仕様で復活
往時の熱気も冷め、2000年代半ばにおとずれたハイテクスニーカー冬の時代。その真っ只中の2006年にリリースされた「エア マックス TL 2.5」の転機は2024年にやってきた。
フランスはパリで開催されたコム デ ギャルソン・オム プリュスのコレクションで突如姿を現し、大きな話題に。そして今回ピックアップしたのは、オリジン仕様で復活したインラインモデルだ。
最大の特徴はフルレングスのビジブルエアを備えたソール。ワンピースで構成されたメッシュパネルのアッパーのトゥからヒールにかけて描き出された、未来的で流れるようなシルエットを際立たせる最上のスパイスに。カラーリングは清潔感のあるホワイトをブラックがクールに引き締め、00年代生まれらしくヴィヴィッドな蛍光色をアクセントに添えて。“古くて新しい”エア マックス像が足元の新たな選択肢となるに違いない。
3. NIKE SPORTSWEAR「AIR MAX PLUS」
“あの頃”を知る世代には懐かしい、FL別注がそのルーツ
今や、そこかしこに乱立する“別注”の2文字。この言葉が特別な魔法のワードとして輝きを放っていたのが1990年代。その終わり頃の1998年にアメリカの老舗スニーカーショップ、フットロッカーの別注モデルとして誕生したのが、2023年にデビュー25周年を迎え、ユーロ圏を中心に高い人気を誇る“マップラ”こと「エア マックス プラス」だ。
通気性の高いメッシュ素材のベースに波状ラバー素材のラインを配したアッパーは、ヤシの木や海の波といった“自然の美”からのインスピレーション。
ソールには高性能ランニングシューズ向けに開発されたチューンドエアを搭載し、エア部分に樹脂製半球状クッション材を組み合わせることで、抜群の安定性と耐衝撃性を発揮する。また前後分割で軽快さを演出したラバーアウトソールの優れたトラクションと耐久性が足元を支える一助に。
4. NIKE SPORTSWEAR「AIR MAX 2013 SLVR」
ハイパーフューズ×フルレングス ビジブルエアの革命児
1985年の初代誕生か連綿と続く「エア マックス」史。2013年の項を開くと登場するのが本モデルだ。デビュー年を冠する歴代ネーミングの伝統にのっとった名称は、正統後継者の証明でもある。
アッパーには通気性、軽量性、耐久性、加えて柔軟性と全方位に優位性を示すハイパーフューズ メッシュを採用し、圧着構造によるスタイリッシュでミニマルなデザインが特徴。さらに内部に張り巡らされたケーブルにより、シューレースを締めるとタイトなフィット感が得られる機構、フライワイヤーテクノロジーも完備。
最も重要なソールには、360°大容量のフルレングス ビジブルエアを搭載し、前足部に深いグルーブを刻むことで屈曲性も向上。歩行や走行といったアクション時において、足の自然な動きに追随する快適性を実現。周囲とかぶる心配もなく、まさに裏名品と呼ぶにふさわしい。
5. NIKE SPORTSWEAR「FULL FORCE LO」
フルなんだけど新しい。そんな“じゃないほう”のフォース
これが正真正銘のラスト1足である。ランシューの“マックス”と並ぶナイキの象徴的シリーズといえば、バッシュの“フォース”。なかでも1984年にリリースされた初代「エア フォース 1」は、コラボ・別注・インラインと無限のバリエーションを誇る王道。だが正直、面白味には欠ける。そこで裏として推すのがこちら。といっても大多数が多分初見。それも当然で、なんせ近年モノの新顔。
バスケットボールをあしらったシュータンなど、1988年に発売された「エア フォース 3」の意匠を踏襲しつつも、ソールユニットはノンエアというチグハグ感がミスマッチの妙。シルエットもまた然りだ。トゥはシャープな形状なのに、ヒール部に厚みを持たせてNIKEロゴとFORCEロゴを併記する変わり種。
誰かの“イイね”を求めて没個性になるよりも“じゃないほう”を貫く。そんなチャレンジャーに贈る。
筆者:TOMMY