NATROMのブログ

ニセ医学への注意喚起を中心に内科医が医療情報を発信します。

開かない窓と狭いクローゼット

昔の総合病院の精神科病棟は、だいたい一階にあった。自殺企図の患者さんに飛び降り自殺をされないためである。ところが自殺を試みる患者さんは別に精神科に限らない。かつて、中庭にハリーコール(緊急のドクターコール)があって、行ってみたら飛び降りであった。新しい病院ではこういうことが考慮されていて、窓は開かないか、開いてもごくわずかな隙間だけである。バルコニーや屋上へも鍵がかかっていて行けない。風や日光に当たりたい人にとっては不自由であるが、仕方がない。

さて、私はごく最近気付いたのであるが、私の勤務していた病院では、個室であっても、病室にはハンガーをかけるところがほとんどないのである。まあ入院中はほとんど病衣を着ているのだが、それでも入院するまで着ていた服があるし、人によっては洗濯したものを干しておきたいだろう。なのに、床頭台の後ろに申し訳程度に狭いクローゼットがあるだけだ。ちなみに、床頭台とは引き出しがついたテレビ台のようなものである。ベッドのそばの頭側にあるから床頭台と言うのだろう。写真を見ていただくのが早い。






床頭台

狭いクローゼット

この狭いクローゼット以外に、ハンガーをかけられるようなところはほとんどない。場所をとるからという理由も考えられるが、わりと広い個室にもないのだ。思うにこれは、首吊り防止なのではなかろうか。立派なクローゼットをつくっておくと、そこで首吊り自殺される危険があるものだから、狭くて首吊りどころではないように作ったのかも*1。私の考えすぎで、単にコストやスペースの問題なのかもしれないが。

*1:やろうと思えば可能だろうが