「牛が山を駆ける牧場」奮闘記

新米 牛飼いの日常をお届け

初めて子牛を売りました

奇数月の25日にはここ高知県嶺北地域で子牛市場が開かれます。

↓こんな様子で牛が引き出されて、競り方式で牛が売買されます。

我が家では今後の展開(飲食店の開業)を視野に入れて、28か月という長い期間飼って(すなわちその間 牛にお金を入れて)お肉にする方向性から、いったん8か月程度まで育った子牛(特にオス牛)を販売し、短期で資金を回転させる方向にシフトしようと考えました。

 

↓はよくブログに登場する、我が家でお肉第一号になってくれた「ふじ」です。

例えばこの子が我が家で生まれたとして考えてみます。

子牛として生まれてくるまでにかかる親牛のエサ代+諸経費で15万円~20万円、生まれてから35か月育てるのに月平均2万5千円かかるとすると、おおよそ100万円の投資が必要となります。

 

一方で、子牛を8か月齢で販売したとすると親牛のエサ代+諸経費は同様に15~20万円、子牛のエサ代が月平均2万円(小さいうちはそれほどエサもいらないから)として16万円、合計で30万円強の投資となります。

 

このほか、子牛で販売することで飼養頭数があまり大きくはならず、手間が比較的にずいぶん軽くなるということも方針転換の一因です。

 

そういうことを考えて、「谷太郎」くんを販売することにしたのです...

↓市場に連れていく前に牛舎で撮影した「谷太郎」君の姿。

「谷太郎」くんは293日齢で289キログラム。1日1キログラムの成長には届かなかったけど、モリモリ草を食べて、腹がパンパンに張った、尾枕もつかない良い牛になってくれました。

市場に運び込む際も全く暴れず、いい子にしてくれます。しかしこういう時にいい子にされると気持ちとしては辛かったりするのです。

 

競りは完了、谷太郎くんは無事に売れてくれました。

購入してくださった肥育農家さんのトラックに乗る谷太郎↓。

牛とお別れするのは2回目だけど、子牛の状態で離ればなれになるのはこれが初めてです。トラックごしに頬をなでてやります。私は悲しくなって自然と涙が溢れます....

人が多い中で40歳のおっさんが牛に触れながら泣いているのです。

本当はお肉になるまで付き合いたかった...

購入くださった方はその道では有名な肥育農家さんです。谷太郎、、、どうか良い子で育ってください。

 

市場が終わった後は生産的なことをな~んにもする気が起きず、かといって時間を無駄にしたくないのでたい肥センターでたい肥積み替えのアルバイトにいそしみます。

たい肥センターは家から3分の場所にあって、隙間時間にいつでもバイトができるのです。また、たい肥をきちんと積みなおすことで、今度は自分が牛糞を持ち込む際のスペースを作っておくことにもつながります。

時給は800円ですが、自分のためでもある仕事でお金が入るのでいいな~と思いながらやっているのですが,,,,

ふと気づくことがあったんです。

市場の整理では生産農家も競りに参加して値段を上げられる(この仕組みがないと購入希望者1人の場合にありえないほど安くなってしまう)わけですが、ボタンを一回おすと1秒たたないうちに1000円販売価格があがるわけですよ。

1分そちこちで10万円上がることも珍しくありません。

「谷太郎」くんの話に戻りますが、購入いただいた農家さんから「安く買えたな~って話をしていたんだよ」とお話を頂きました(ちなみに、そのとき私は牛を見つめてポロポロ泣いていた)。

色んな思惑があって、私は35万円まで上がった段階でボタンを押すのをやめたんです。自分の牛を安売りしてしまっていたわけです。

自分の牛の状態を見て、適正価格を把握して、競りボタンを押し続ける胆力があればたい肥センターで50~100時間くらいバイトするお金がたったの1分のうちに入ってくるのです。

牛を見る目を磨いて、良い牛を育てて、市場での適正価格をしっかり見極める。

この力を磨くことに今後 力を割いていかなければと思いました。

 

牛を飼うことは本当に色んなことを教えてくれます。

谷太郎、ありがとう...

 

※谷太郎の思い出を過去記事として...

mountaincowfarm.hatenablog.com