『イソップのお話』  河野与一 編訳

イソップのお話
河野与一編訳
岩波少年文庫
1955年7月30日 第1刷発行
2000年6月16日 新版第1刷発行
2007年10月25日 新版第9刷発行

 

図書館で目に入ったので、なんとなく借りてみた。

本の裏の説明には、
”有名な「イソップ寓話集」から、少年少女のために選りすぐった300編。「ライオンとネズミ」「北風と太陽」「ウサギとカメ」「肉をくわえたイヌ」「キツネとブドウ」など誰でも知っている話から珍しい話まで、原典ギリシア語からの訳。
小学3・4年以上”
とある。

たしかに、よく知っている話。だけど、そうか、それもイソップか!というものも。「北風と太陽」なんて、絵本もたくさんあって、日本の昔話かと思っていたかも。北風と太陽が、どちらが人間の着物を脱がせられるか競争する話。北風が風で無理やりはぎ取ろうとして失敗し、太陽がぽかぽかと照らすと、人間が自ら着物を脱いで川に入り水浴びをする。太陽の勝ち!という話だ。

本書には、編訳者河野さんのコメントもついている。北風と太陽には、

「いいきかせるほうが、むりにおしつけるよりも、ききめのあることが多いものです。」
って。

300編が掲載されていて、一つのお話が1ページくらいにコンパクトになっている。なので、とっても読みやすい。たしかに、小学3年生でも読めそうだ。

 

目次
有名なおはなし
キツネ
鳥Ⅰ
人間Ⅰ
オオカミ
虫 その他
人間Ⅱ
ライオン
植物
人間Ⅲ
イヌ
人間Ⅳ
ロバ その他
鳥Ⅱ
シカ・サル
人間Ⅴ
ウシ・カエル・ヘビ その他
ラクダ・ウサギ その他
鳥Ⅲ
人間と神


感想。
楽しいね。
ときどき、とほほ、、、というお話もある。むしろ、多くが「とほほ」かもしれない。小学生にはこの苦味はわからないだろう、、というような。。。でも、こうしてお話してあると、こころのどこかに残るのかな。そして、「あぁ、自分は今、北風になろうとしている」とか、思ったりするのかもしれない。

 

先に紹介されていたお話の内容をおさらい。

「ライオンとネズミ」
眠っていたライオンにネズミがぶつかる。 ライオンはネズミを食べようとする。 ネズミは「 いつか 恩返しするから食べないで」と懇願する。 ライオンは馬鹿にしたように笑ってネズミをにがしてやる。 あるとき、ライオンが 狩人に捕まって縄で木に縛り付けられてしまう。 ネズミはライオンのために縄をかじって自由にしてやる。ネズミはいった。
 「 あなたはあの時私を馬鹿にして笑って、私などから恩返しなんかしてもらうことはあるまいと言いましたね。 けれども、 ご覧なさい。 ネズミでもオンは忘れません。」

河野さんコメント:どんなに強い人でも、 いざという時には、自分より弱いものに頼らなければならないのです。


「ウサギとカメ」
イソップでも一番有名か? カメの足の遅いのを馬鹿にしていたウサギが、カメと競争を始めて、安心して寝ている間に、やすまずに歩いたカメに負ける、という話。

河野さんコメント: 生まれつきは良くても、いい加減にやっていてはダメになる人がたくさんいますが、 真面目で熱心で辛抱強い人は、生まれつき すばしこいものにも勝つことがあります。

 

「肉をくわえたイヌ」
肉をくわえた イヌが、 水にうつる自分の影を川でみる。 水に映るイヌは、 大きな肉を持ったイヌとおもい、 そのイヌの肉を取ろうとして、自分の肉が口から落ちてしまう。イヌは、肉を二切れなくした。ひとつは、初めからなかったし、ひとつは川に流れてしまった。

河野さんコメント:このはなしは、欲張りな人にしてやるといいのです。


「キツネとブドウ」
お腹の空いたキツネが、 ぶどう棚から下がっている ぶどうを見て、 取りたいと思ったけれど、とどかなかったので 諦める。 そこで立ち去りながら独り言を言いました。
 「あれは、すっぱいや。」

河野さんコメント: こういう風に人間の中には、 力がないためにできないことがあると、 時節のせいにするものがいます。

酸っぱいブドウ、だね。

 

と、お話も面白いけれど、河野さんの解説コメントが面白い。

他にも、いくつか。。。。

 

「アシとカシの木」
カシの木が、 風のために 根こぎにされて 川の中に投げ込まれながされてしまった。カシは、流されながらアシにむかって言いました。
「 お前たちは弱くてひょろひょろしているのに、どうして強い風にも 根こぎにされないのだ。」
アシは言いました。
「 あなた方は、 風には歯向かって戦うから根こぎにされるのです。 私どもはどんな風にも頭を下げるから無事でいられます。」


「猟犬と番犬」
ある人が、二匹の犬を飼っていた。一匹は猟犬で、一匹は番犬にした。猟犬が猟に行って何かつかまえてくると、飼い主は、それを番犬にもわけてやった。猟犬は、おまえはなにもしていないのにごちそうになるのはひどい、と番犬に文句を言った。番犬は猟犬にいいました。
 「 私を悪く言うな。 ご主人に文句を言え。 ご主人は私には骨を折らずに人の取ったものを食べるように教えたのだ。」

河野さんコメント: なまけている子供を叱ってはなりません。 親たちがそういうふうに育てたのですから。

 

「病気になったシカ」
シカが病気になった。見舞いにきたけものは、シカの周りに生えていた草を食べてしまった。シカは、まもなく病気が治ったが、食べ物がないために死んでしまった。

河野さんコメント : 役にも立たない 友達をたくさん持っていると、利益が得られないどころかかえってひどい目に遭うものです。

 

とまぁ、、、こんな感じで、厳しいお話が続く。

 

ひどい神様とか、役に立たない友達とか、、、、ひぇぇ、、、シュールだわぁ。。。

 

多くは、「自分に驕ってはいけない」、「恩をわすれてはいけない」というお話。
似たようなお話もあるけれど、いったい全部で何編くらいをかいたのだろうか?

 

あの手この手で、人生における教訓をおしえてくれる。イソップ物語は、大人こそ読むべきお話かもしれない。

岩波少年文庫は、とても読みやすい。おすすめ。

 

 

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