2024年9月24日、月経困難症治療薬エステトロール水和物・ドロスピレノン(商品名アリッサ配合錠)の製造販売が承認された。適応は「月経困難症」、用法用量は「1日1錠を毎日一定の時刻に定められた順に従って(ピンク色錠から開始する)、28日間連続経口投与する。以上28日間を投与1周期とし、出血が終わっているか続いているかにかかわらず、29日目から次の周期の錠剤を投与し、以後同様に繰り返す」となっている。
同薬は、1錠中にエステトロール水和物15.0mg、ドロスピレノン3.0mgを含有する実薬錠(ピンク色)24錠と、主成分を含有しないプラセボ錠(白色~微黄白色)4錠の28錠を、PTPシートに包装した、低用量エストロゲン・プロゲスチン(LEP)配合薬である。
月経困難症は、原因となる疾患が特にない「機能性月経困難症」と、子宮内膜症などが原因で生じる「器質性月経困難症」に分類される。月経期間中、月経に随伴して起こる病的症状で、下腹痛や腰痛を主とした症候群である。子宮内膜で産生するプロスタグランジンの関与が大きいことから、国内のガイドラインでは、プロスタグランジン合成阻害薬の非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)などの鎮痛薬が用いられ、効果が不十分な場合には、LEP配合薬の使用が推奨されている。
日本で月経困難症に使用されているLEP配合薬は、いずれもエストロゲンとしてエチニルエストラジオール(EE)を含有し、プロゲスチンの一種であるドロスピレノンを配合した製剤(ヤーズ、ヤーズフレックス他)、ノルエチステロンを配合した製剤(ルナベル他)、レボノルゲストレルを配合した製剤(ジェミーナ)が使用されている。
現在、使用されているLEP配合薬は月経困難症に対する有効性は高いものの、血管や肝臓のエストロゲン受容体にも作用することから、主要なリスクとして静脈血栓塞栓症が懸念されている。これは、エストラジオール(E2)の合成誘導体EEにより、凝固線溶系の変化を来すことで生じると考えられている。
アリッサは、月経困難症治療薬として日本初のエステトロール(E4)を含有するLEP配合薬である。天然型エストロゲンのE4は、下垂体に作用することで卵胞刺激ホルモン(FSH)および黄体形成ホルモン(LH)の分泌を抑制し、卵胞の発育を抑制することで、排卵を抑制する。また、抗ミネラルコルチコイド作用と抗アンドロゲン作用を併せ持つ合成プロゲスチンのドロスピレノンを配合することで、子宮内膜増殖の抑制作用を示す。既存のLEP配合薬のEEに比べてE4は、血管および肝臓のエストロゲン受容体などへの作用が少なく、子宮・卵巣に選択的に作用することで静脈血栓塞栓症の低減が期待される。
国内の月経困難症患者を対象とした国内第III相試験(無作為化プラセボ対照比較試験)において、同薬の有効性および安全性が確認された。海外では、経口避妊薬として、2024年6月現在、欧米やカナダなど12の国または地域で承認されている。
重大な副作用として、血栓症(四肢、肺、心、脳、網膜など)の可能性があるので、十分注意する必要がある。また、その他の副作用として主なものに、月経中間期出血(74.8%)、重度月経出血(16.8%)、希発月経、骨盤痛、乳房痛、悪心、頭痛(各5%以上)などがある。
薬剤使用に際して、下記の事項についても留意しておかなければならない。
●対象患者の選択について、事前に添付文書の「禁忌」「特定の背景を有する患者に関する注意」を参照すること
●薬剤投与中の注意などに関しては、添付文書の「用法及び用量に関連する注意」「重要な基本的注意」「相互作用」「副作用」を参照すること
●医薬品リスク管理計画書(RMP)では、重要な潜在的リスクとして「乳癌」「良性及び悪性の肝腫瘍」「子宮頸癌」「器質性疾患の増悪」が挙げられている
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