アメリカ疾病予防管理センター (CDC)が、2004年のインド洋津波の復旧経験などを受けて作業をどのように安全に進めていくべきかをまとめたリポートなどを基に、北里大学医学部衛生学公衆衛生学講師の和田耕治氏らが地震や津波が起こった際の対処方法を自身のWebサイトに掲載している。日経メディカル オンラインでは、同氏の許可の下、同サイトを編集、転載させていただいた。
東日本巨大地震で、残念ながら亡くなった方が大勢おられます。本人の特定も必要ですし、埋葬など様々な手続きの関係でご遺体を取り扱う作業が必要になります。ご自身の健康と安全をまもるための14のヒントを米国CDCのインド洋沖地震の津波の評価を参考に示しました。
1.明快な指揮系統に基づいて作業者が安全にできるようにする。
2.体液がついたらすぐ洗えたり、とがったもので切ったらすぐに治療できるようにする。
3.安全な環境を確保する(飲食物のある地域を被災地外に確保すること、手洗い場や目鼻の洗浄機器を十分な量確保すること)。
4.使い捨てマスク(サージカルマスクなど)などの個人用保護具の適切な使用方法を徹底する。N95マスクは作業が困難になるので難しい。PAPR(電動ファン付き呼吸マスク)があるとよい。
5.脱水を予防するための水分摂取と休憩を十分にとる。
6.感染性エアロゾルの発生を抑えるために、鋭利な器具はできるだけ使わず、骨切断の振動も最小限にする。また、必要に応じてフェイスシールドやサージカルマスクを使用する。
7.移動する時に転倒などの注意をする(例:電線、開いた排水溝など)。
8.腰痛などの筋骨格系の外傷を予防する(例:頭上での荷揚げを避ける、移動を車輪の付いたカートで行う、複数人で対応する)。
9.適切なワクチン接種を行う(B型肝炎、破傷風など)。
10.検死によって出たゴミの搬送や汚染を適切に処理する(例:鋭利な物、感染性廃棄物などは分別し、オートクレーブや焼却で処分する。液状のゴミは行政が指定した処分場で処分する)。
11.セキュリティーやその後のフォローのために作業者の記録を行う。
12.精神的なカウンセリングを提供する。
13.個人の安全や環境衛生に関する教育研修を行う(例:個人用保護具の正しい使い方、ケガの応急処置)。誰が研修を受けたかを記録しておく。
14.血液曝露、換気を適切に処理すれば、感染リスクは低くなるということを、作業者や被災者に説明する。安心して働けるようにすることは緊急事態でも不可欠である。
担当
多田隈潔・西本真証・石丸知宏 産業医大産業医実務研修センター
黒石真紀子 西日本旅客鉄道株式会社 健康増進センター
荒薦優子 三菱電機(株)
田中優子 和歌山労災病院 脳神経外科
松井亜樹 パナソニック
河津雄一郎 平和堂
和田耕治 北里大学
参考
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5414a1.htm#box