医療現場のカスハラ、診療拒否できるのはどんなケース? 東京都で2024年10月、全国初のカスタマーハラスメント防止条例が成立しました(2025年4月に施行)。もっとも同条例には迷惑行為を行ったカスタマー(顧客)に対する罰則はなく、実効性の確保が課題となりそうです。 カスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)には、医療現場も苦しんできました…2024/12/03医師・患者関係
医療版事故調でのセンター調査の報告書が医療訴訟に影響? 医療版事故調となる「医療事故調査制度」は2015年10月にスタートし、今年で10年目を迎えました。同制度では、遺族または医療機関が医療事故調査・支援センター(以下「センター」という)に調査を依頼した場合には、センターによる調査も行われます(以下「センター調査」という)。そこで、今回…2024/10/31行政・制度
熱中症の裁判事例、対応遅れや治療効果の確認が論点に 9月に入りましたが、まだまだ暑い日が続いています。特に2024年7月の日本の平均気温は、1898年の統計開始以降、最も高いものとなりました。総務省消防庁の発表によると1)、2024年7月の全国における熱中症による救急搬送人員は4万3195人で、調査を開始した2008年以降、7月としては2番目に多い人…2024/09/19行政・制度
研修医が責任を問われた事例も、腹痛への対応を巡る裁判のポイント 6月17日に名古屋第二日赤病院に救急搬送された16歳の男性が上腸間膜動脈(SMA)症候群により亡くなったとの報道がありました。各種メディアでは、本件に対応した研修医がSMA症候群に気付かず、急性胃腸炎と「誤診」したことが取り沙汰されました。この件は医療機関が医療事故調査を行い、その検証…2024/08/15消化器
添付文書を味方に付けて法的リスクを回避へ 「添付文書に従わないと医療訴訟で負ける。医療訴訟上、添付文書は医療者にとって不利に働く」──こう思っていませんか? 確かに添付文書における使用上の注意事項に従わず副作用が生じた場合、医療訴訟では従わなかったことに特段の合理的な理由がない限り、医療者の過失が推定されることになっ…2024/07/11感染症
感染症の法的リスクを「より具体的な問診」で低減 溶血性連鎖球菌(以下、「溶連菌」)が原因で、手足の急速な壊死や臓器不全を起こす「劇症型溶血性レンサ球菌感染症(streptococcal toxic shock syndrome:STSS)」の患者が増加しています。毒素の量が多く、感染が広がりやすいとされる「M1UK」株の検出も増加傾向にあり、厚生労働省は注意を呼…2024/06/12感染症
エコノミークラス症候群を巡る裁判、控訴審で医師の過失を認めた例も エコノミークラス症候群は、2023年末に女優の中村メイコ氏が亡くなった原因となったことや、2024年1月に発生した能登半島地震でも話題となりました。正式には深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症と呼ばれ、度々報道で取り上げられることに加え、医療ドラマなどでも登場することから、一般的な知名度は比…2024/05/08循環器
判例に学ぶ「患者による身体危害から身を守る手段」 ここ数年、患者が医療者に身体危害を加えた事件が相次いで報道されています。医療者が患者から身体危害を加えられた場合、医療者やその家族・遺族は患者を刑事告訴できるほか、患者側に損害賠償を請求することが考えられます。しかし、損害賠償請求については、患者の責任能力に関連する法的問題…2024/03/27医療安全
「DNAR」の理解や記録が曖昧だと法的リスクに 難病ALSの患者から依頼を受けて、薬物を投与して患者を殺害したとして、嘱託殺人罪などに問われている事件の判決が、2024年3月5日に下される見込みです。この事件では、医師が積極的にペントバルビタールを注入しており、いわゆる積極的安楽死が許容されるか否かについて問われています。積極的安…2024/02/28医療安全
専門医への紹介が遅れると法的責任を問われるか 医療訴訟では、他院(他科)へ適時に紹介(受診勧奨)しなかったとして、過失を問われることがあります。もちろん、緊急の処置が必要で、自らの施設や診療科では対応できない場合、そのように判断した時点で他院(他科)に転院(転科)すべきなのは当然でしょう。 他方、慢性疾患で通院中の患者…2023/12/13医療安全
そのダブルチェック、形骸化していませんか? 「ちょっと待て、そのダブルチェックは意味あるの?」──。読者の方々は、こんな疑問を抱いたことはないでしょうか。医療事故防止に有効なダブルチェックですが、その方法などによっては期待された効果が表れず、医療訴訟の場で問題点が指摘されることもあります。 例年、11月25日を含む1週間は…2023/11/08医療安全
マニュアルを「作って終わり」では法的リスクに 感染対策マニュアル、医師業務マニュアル、看護業務マニュアル、医療安全マニュアル……。医療機関には非常に多くのマニュアルが存在しています。日本医療機能評価機構の病院機能評価を受ける場合には、各種のマニュアル・手順書を整備する必要があり、医療事故が発生した場合の再発防止に向けた…2023/09/27医療安全
「癌告知時代」の医療トラブル【後編】癌の薬物療法が奏効しない可能性、説明義務は? 前編では、「癌告知時代」であるからこそ起きる癌診療特有の医療トラブルとして、患者が治療を拒否している場合に家族に告知すべきかどうか、また外科的切除をしたものの癌ではなかった場合の説明義務について、3つの裁判例を取り上げました。後編では、薬物療法を行った後、その甲斐なく死亡した…2023/08/23医療安全
「癌告知時代」の医療トラブル【前編】「癌でないのに切られた!」との訴え…裁判所の判断は? 癌診療に関する医療トラブルは多岐にわたります。例えば、患者が「癌でないのに切られた!」と主張したり、患者の家族が「本人に癌の告知をしたと言っても、自分は聞いていない!」と訴えたり、遺族が「この癌には効きもしないと分かっていながら薬を使われた!」と言ってきたりすることがありま…2023/08/22医療安全
初期研修中の医療事故、研修医と上級医・指導医の責任は? 4月に入職した初期研修医も、入職から3カ月余りが過ぎ、医療現場に慣れ始めた頃かと思います。しかし、実は業務に慣れてきた頃こそ、医療事故や医療紛争に巻き込まれやすい時期です。日本医療機能評価機構の報告書(医療事故情報収集等事業第64回報告書[2021年3月])では、初期研修医に関する医…2023/07/26行政・制度
専門外の疾患を見逃した医師は責任を問われる? 「交通事故の患者さんです。これから診てもらえますか?」という救急隊からの連絡。「患者さんが痙攣を起こしているようなので、来てください」という夜間看護師からの連絡。心の中では「専門ではないのに……」と思いながらも診療に当たるケースは多々あるでしょう。そのような場合、専門外でも…2023/06/28行政・制度
患者トラブルや過重労働でメンタル不調に…病院の責任と対応は? ゴールデンウイークも終わり、リフレッシュして充実した日常を過ごしていきたいと思っていても、なかなかうまくいかないのが現実です。日本では「五月病」という言葉が広く知られているように、年度が切り替わった後のこの時期は、精神的な不調になりやすい季節でしょう。厚生労働省でも、「メン…2023/05/23行政・制度
大野病院事件以降の刑事裁判、医師が有罪になる場合とは? 診療行為に関連した刑事事件というと、福島県立大野病院事件を思い出す方が多いのではないでしょうか。この事件では、帝王切開手術時に患者を失血死させたとして産婦人科医が業務上過失致死罪などに問われ、福島地裁は2008年、医師に無罪判決を言い渡しました。 同判決から15年になりますが、こ…2023/04/12医療安全
モニターアラームへの対応に遅れ、裁判例の教訓は? 心拍数や呼吸状態などを計測するモニターのアラームへの対応に遅れがあったとして、損害賠償請求を受ける例が後を絶ちません。では、どういった裁判例があり、どのような結論になっているのでしょうか。また、そうした裁判例を踏まえ、何に気を付けたらよいでしょうか。…2023/03/08医療安全
急性喉頭蓋炎、痰の貯留…気道閉塞を巡る裁判例の教訓 早いもので、2023年も、もう1カ月以上が経過しました。年初の時期に話題になるのが、餅による窒息事故です。消費者庁によると、65歳以上の餅関連の窒息事故による死亡者数は、2018年で363人、2019年では298人で、そのうち約4割が1月に発生していたとのことです(参考:消費者庁ニュースリリース)…2023/02/08医療安全
「褥瘡裁判」で敗訴するケースの特徴とは? 高齢化や、在宅医療・介護の増加に伴って、褥瘡の予防・管理は一層重要な課題となっているともいえます。また、本年(令和4年)、日本褥瘡学会から最新の「褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版」が発表されました。そこで今回は、いわゆる褥瘡裁判でポイントとなる事項について、特に褥瘡予防の観…2022/12/28医療安全
患者の判断能力が不十分、医療行為の同意は誰から? 「手術などを行う際、当院では、これまでは患者が20歳以上であれば親の同意は不要としていましたが、法改正により、親の同意が不要となる年齢は『18歳以上』となったのでしょうか」──。2022年4月1日、改正された民法が施行され、成人年齢が20歳から18歳へと引き下げられました。これを受け、上…2022/11/24医療安全
パワハラを繰り返すスタッフへの効果的な介入策は? 2022年4月1日から、パワーハラスメントの防止対策等の実施が、事業規模を問わず法律で義務付けられました。いわゆるパワハラ防止法の全面施行です。そこで筆者(桑原)は、2022年6月、普段の指導がパワハラにならないかと悩む医療者に向け、日経メディカル Onlineにおいて「『指導』とパワハラを…2022/10/27医師の職場環境
患者の「離院」に伴うトラブル、病院の責任は? 新型コロナウイルス感染症での隔離中に、入院していた患者が医療機関から脱走──。このような報道を、特に新型コロナの流行が始まった当初の時期によく目にしました。 これまでの日常生活から一気に隔離生活となり、環境の変化に対応できずに生じるこうした事態を踏まえて、2021年2月13日に「感…2022/09/14医療安全
転倒事故で裁判に、勝訴例と敗訴例の違いとは? 交通事故死の4倍の死亡者数──。これは、令和2年における、65歳以上の方の転倒・転落・墜落による死亡者数のデータです。厚生労働省の人口動態調査では、同年の65歳以上の不慮の事故による死因のうち、「交通事故」による死亡者は2199人であるのに対して「転倒・転落・墜落」による死亡者は8851…2022/08/10医療安全
内視鏡検査・治療を巡る3つの裁判事例の教訓 「内視鏡で腸に穴を開けたのは医療ミスですよね。責任を取ってくださいよ!」「わざわざ内視鏡治療をしたのに○○を取れなかったんでしょ!? どう責任を取るんですか?」──。読者の方々の施設では、患者・家族からこのようなクレームを申し立てられたことはないでしょうか。 内視鏡検査・治療…2022/07/13医療安全
医療機器の使用に伴う事故、責任はメーカー・医療者のどちらに? 医療現場では多種多様な医療機器が用いられており、医療機器が関係した医療トラブルも多く見られます。内視鏡を用いた手術を行い、術後の画像検査で異物が写り、摘出してみたら内視鏡の部品の一部で、患者が摘出手術に伴う損害賠償を請求してきた──。仮にこうした事態になった場合、その責任を…2022/06/08医療安全
「何かあったらすぐに受診して」の落とし穴 「何かあったらすぐに受診してください」──。患者さんを帰宅させる際、この一言を入れることでトラブルを回避できる、と理解されている方も多いのではないでしょうか。確かにこうした一言を入れることは大切なのですが、このフレーズは万能ではありません。 医師法23条には「医師は、診療をし…2022/05/11医療安全
ネットの書き込みで開示・削除請求、認容例と棄却例の差は? ある日、ネットで自院について検索したところ、5段階評価で最低の「星1つ」を付けられ、「過去受診した中で最悪の病院。受付の態度も悪い上、医者も上から目線」という口コミが載っていた。日頃から接遇には気をつけていたつもりなのに……。読者の方々は、こんな経験をされたことはないでしょう…2022/04/13医療安全
暴言、強要…病医院が患者・家族を訴えた3事例 医療機関の運営や医療従事者の診療において、患者やその家族などから業務妨害を受けることがあります。このような業務妨害としては、インターネットの書き込みによるものや、医療機関・医療関係者に対する直接的な行動、発言によるものがあります。後者の直接的な言動による業務妨害に対し、医療…2022/03/09医療安全
受付や待合室でのスタッフの会話が元で裁判に 2022年4月1日から、改正された個人情報保護法が施行されます。その詳細については今回は触れませんが、事業者が保有する個人データの開示方法について、電磁的記録の提供を含め本人が指示できるようにするなど、様々な改正内容が盛り込まれました。 こうした動きもあり、市民のプライバシーに関…2022/02/09医療安全
「標準治療以外の治療」を巡る裁判例の教訓 昨秋、自家がんワクチン療法を受けた末期の胆管癌患者が亡くなったことについて、がんワクチン療法に関する必要な説明をしなかったとして、医療機関側に110万円の支払いを命じる判決が下されたという報道がありました(2021年11月25日宇都宮地裁判決、下野新聞2021年11月26日記事)。 この報道に…2022/01/12医療安全
「患者には○○が説明してくれるから」の落とし穴 チーム医療を行っている中で、「私以外の医師が患者に説明をしているから、説明しなくてもいいだろう」「薬のことは薬剤師が説明してくれるから、私が説明しなくても……」と思ったことはありませんか。チームで医療を行っている以上、自分以外の医療者が説明をしていれば問題ないのではないか、…2021/12/08医療安全
患者に退院・転院を請求できる場合とは 退院や転院を拒否する患者の対応に苦慮したご経験はないでしょうか? 患者に対して診療を拒否できるかという問題とは別に、患者が入院中である場合には、退院や転院を求めることができるかという問題があります。この点については、いわゆる「迷惑患者」の増加や家族関係の希薄化などのためか、当…2021/11/10医療安全
裁判でカルテ改ざんが認定、問題とされた記載とは? 今年5月、眼科手術に関するカルテの改ざんについて、裁判所が病院側の賠償責任を認めた事例が報じられました。カルテの改ざんが許されないのは当たり前です。では、そもそもカルテの改ざんとはどのようなケースが該当するのでしょうか。また、カルテの改ざんをすると、医療訴訟でどのように扱われ…2021/10/13医療安全
身体拘束で刑事告訴も、紛争防止のポイントは? 逮捕・監禁罪という犯罪をご存じでしょうか? 刑法220条では「不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、3月以上7年以下の懲役に処する」として、逮捕および監禁の罪を定めています。逮捕とは「身体を直接拘束して移動の自由を奪うこと」、監禁とは「一定の場所から脱出できなくすること」ですが、こ…2021/09/08医療安全
医師の「労働時間」問題、裁判所はどう判断? ○○年問題という言葉は、コンピューターシステムに関する「2000年問題」をはじめとして様々なものがありますが、医療界がこれから直面するのが「2024年問題」です。働き方改革関連法に基づき医師の労働時間規制が適用される2024年は、大きな変革期といえるでしょう。 国が進めてきた働き方改革…2021/08/11医療安全
臨床研究の治療でトラブル、裁判所の判断は? 国の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」と「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」とが統合されて、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(以下、統合指針)が策定され、本年6月30日から施行されています。 今回は、臨床研究に参加した人に健康被害が発生…2021/07/14医療安全
禁忌、適応外処方をしたら医療訴訟で敗訴する? 医療現場では、添付文書上は禁忌となっている医薬品を投与したり、禁忌とはいえないまでも適応外とされている医薬品を投与することもあると思います。また、医薬品の投与以外でも、例えば医療材料の使用でも、同様のことがあるかもしれません。 では、こうした投与や使用後に、患者が死亡したり…2021/06/09医療安全
血栓塞栓症の予防・診療を巡る紛争を防ぐには 今回は、血栓症の中でも脳塞栓症の予防や診療に関連した裁判例を見ていくことにします(医療訴訟において肺血栓塞栓症を巡る裁判例も少なからず見られますが、それについては別の機会にご紹介できればと思います)。…2021/05/12医療安全
アナフィラキシーを巡る紛争予防の勘所問われる問診・記録の不備、事前の説明にも留意を 本年2月17日、新型コロナウイルスのワクチン接種が開始されました。3月末日現在で、主に医療従事者を対象に約100万回の接種がなされています。ワクチンによる新型コロナウイルス感染症予防に対する国内の関心は極めて高く、連日、多くの報道がなされています。こうした中、マスメディアで「アナフ…2021/04/14医療安全
医師、看護師のパワハラが問われた裁判例に学ぶ不合理なクレームに対し謝罪させる、反省文を書かせるなどの行為は要注意 企業などで発生したパワーハラスメント(パワハラ)の報道を目にする機会は多いことと思います。パワハラ対策に関しては法改正が行われ、2020年6月より職場におけるパワハラ対策は事業主の義務になっています。医療現場しかりです(常時使用する労働者数が100人以下の場合は2022年4月施行)。 こ…2021/03/10医療経営
患者情報を家庭内で漏洩…個人情報を巡る裁判の教訓は 最近、ある大学病院がランサムウェアの標的になった事件が報道されました。ランサムウェアとは、コンピューターウィルスの一種で、身代金を意味するRansomとソフトウェアSoftwareとを組み合わせた造語です。このウイルスに感染すると、パソコン内に保存していたデータや接続している他の端末のデ…2021/02/10医療安全
「医行為」の実施・指示を巡る裁判例の教訓は 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は、現在第3波とも言われており、いまだ拡大に衰えが見られません。そうした中で、PCR検査の実施について、民間企業が次々と参入し、最近では格安の料金でPCR検査が可能な民間検査センターが開設されるなどの報道もありました。なぜ格安でできるのかと…2020/12/09医療安全
患者の自殺を巡る裁判で問われるもの 本年10月27日、自殺対策白書が閣議決定されました。それによると、昨年の自殺者数は2万0169人と、前年と比較して671人減少し、昭和53年の統計開始以来最少となったようです。しかし、15~39歳の各年代の死因の第1位が自殺であり、「若い世代の自殺は深刻な状況」ともされています。今年は、芸能人…2020/11/17医療安全
新型コロナの治療、「推奨」に従わないと紛争で不利に? 2020年9月9日、日本集中治療医学会と日本救急医学会の日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG)2020 特別委員会は、同ガイドラインの特別編として、「COVID-19 薬物療法に関する Rapid/Living recommendations」を公表しました。10月14日には第二版が公表されています。同ガイドラインでは、酸素投…2020/10/21医療安全
「4要件」を満たせば積極的安楽死は許される? 先般、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者に対し薬物を投与し、患者が死亡したとして、医師2人が嘱託殺人罪の疑いで逮捕された件が報道されました。嘱託殺人罪とは、嘱託を受けて人を殺害する犯罪であり、刑法202条により、6カ月以上7年以下の懲役または禁錮に処するとされています。ちなみに、普通…2020/09/09医療安全
「わいせつ」が問われた過去の裁判例の教訓は 「逆転有罪」。7月13日に報道された判決の結果に、衝撃を受けた医療関係者は多いでしょう。乳腺腫瘍術後に病室のベッド上に横たわる女性患者の着衣をめくって左乳房を露出させて、左乳首を舐めるなどしたということで、医師が起訴されていた事件の控訴審判決で、東京高裁第10刑事部は、医師を無罪…2020/08/12医療安全
患者が「検査すべきだった」と提訴、判決が示す教訓とは? 新型コロナウイルスに限らず、検査の意義や必要性に関する医師と患者との認識の違いからトラブルになり、裁判にまで至ってしまうケースは少なくありません。そこで、今回は、そうした事例で裁判所がどのような判断をしているのか、4つの裁判例を紹介し、そこから得られる教訓をお示しします。…2020/07/08医療安全
感染症の訴訟対策としても読んでおきたい3つのガイドライン COVID-19の流行に伴う緊急事態宣言は解除されたものの、医療機関内における感染拡大の事例が依然として報じられています。院内での感染拡大と医療訴訟との関係については、本連載において今年3月に解説しました。それから約3カ月が経過した現時点では、院内感染対策に加えて、COVID-19と判明した…2020/06/10医療安全
医師の電話指示の是非が問われた3つの裁判例 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大に伴い、電話やパソコンなどの情報通信機器を用いた診療に関する要件が緩和され(令和2年4月10日厚生労働省通知など)、初診患者や再診患者に「非対面式」の診療を行うケースが増えています。今回の緩和措置は時限的・特例的なものではありますが…2020/05/13医療安全
COVID-19疑い患者の診療拒否は認められるか? 年明けから続く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の勢いはすさまじく、日本の医療現場にも多大な影響が生じています。今年4月1日には日本医師会から「医療危機的状況宣言」が出され、4月7日には新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が出されたように、限られた医療資源の…2020/04/08医療安全
院内感染の裁判で病院側が「無責」と判断される場合とは? 現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって様々な社会的な影響が出ています。法的には、COVID-19は今年2月、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)6条8項の指定感染症と定められました。医療機関では、新型コロナウイルスの感染予防対策、患者からの問い合…2020/03/11医療安全
誤嚥による窒息、勝訴・敗訴例の違いはどこに? 「病院で出したもので父が誤嚥して、窒息したわけですよね。なぜ、誤嚥するようなものを出したんですか。看護師がそばで見てなかったんですか? すぐに気付いて先生を呼んで、取ってくれれば助かったんじゃないですか」──そんなことを家族に言われたとします。誤嚥による窒息事例です。こうした…2020/02/12医療安全
死因の説明に遺族が納得せず…裁判例の教訓は? 「父が死亡した原因は、本当は説明したものと違うのではないですか? 何か隠そうとしていますね」「母の死因が前回の説明と変わっていますね。もう信用できません!」──。そんなことを遺族に言われたとします。そして、医療内容に対してだけでなく、こうした死因(原因)の説明そのものが不合理…2020/01/15医療安全
証人として出廷要請も!診断書記載はここに注意 医師が行う業務の1つに診断書の作成があります。診断書発行業務は、ややもすれば「面倒くさい」と思われるかもしれませんが、医師の責務の1つです。学校や企業、保険会社、役所、裁判所など様々な場所に提出されることのある診断書は、身分証明書を除く様々な証明書の中で、最も身近な存在である…2019/12/11医療安全
採血に伴う神経損傷、勝訴と敗訴の分かれ目は? 「血液を採ったときに神経を傷付けましたね。責任を取ってください。」――患者や健診の受診者から、このような訴えがあったことはないでしょうか。採血や注射に伴い神経障害が生じたとしてトラブルになることは、しばしばあるかと思います。では、採血・注射に伴って神経を損傷した場合には、医…2019/11/13医療安全
敗訴のリスクを高める患者への「過度な配慮」 「その説明では患者は誤解しますよ」――。裁判で患者側がこのような主張をし、医師に説明義務違反が認められて敗訴することがあります。そうしたケースでは、いったいどのような説明がなされていたのでしょうか。以下に示す3つの事例を基に、患者説明のときに注意すべきポイントを紹介したいと思…2019/10/23医師・患者関係
「無診察治療」を巡る訴訟、裁判所の判断は? 「薬だけください」――。そう言って、医療機関を訪れる方がいます。原則として、診察もせずに処方をすることは禁止されています。医師法20条は「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し(中略)てはならない」としているからです。 それでは、治療に当たっ…2019/09/11医療安全
3つの裁判例に見る「正しい患者への謝り方」 医療現場で、「後々トラブルになったときに備え、患者や家族に謝罪しないように」と言われることはよくあると思います。では、謝罪をすると、実際に医療訴訟で不利に扱われるのでしょうか。この点について、裁判例を3つ紹介します。1つ目の裁判例は、訪問診療、訪問看護を受けていた在宅患者に左…2019/08/28医療安全
添付文書とガイドラインで異なる記載、どちらを優先? 医薬品の使用が関係する医療訴訟で、医師の過失などを判断する材料として医薬品の添付文書が重視されることはご存じかと思います。実際、この点については有名な最高裁判例があり、「医師が医薬品を使用するに当たって添付文書に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生…2019/07/10医療安全
診療1カ月後のカルテ追記、紛争で不利になる? 医療訴訟では、カルテに記載されている事実は、基本的に信用性が高いと判断されています。それは、専門的な資格を持つ者が、その職務に基づいて記載をするものだからです(2014年1月28日岡山地裁判決)。では、カルテに追記された内容に関してはどうでしょうか。…2019/06/11医療安全
連載の紹介日常診療に生かす医療訴訟の教訓患者とのトラブルで頭を悩ませないようにするためには、日々の診療で紛争予防を意識した対応をしておくことが欠かせません。本連載では、医療機関側の弁護活動を行う仁邦法律事務所(東京都港区、桑原博道所長)の弁護士が、実際の裁判例も参照しつつポイントを解説します。