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おいの内部告発もみ消し?ビッグモーター前社長の疑惑

川口雅浩・経済プレミア編集部
記者会見で不正について「天地神明に誓って知らなかった」と語ったビッグモーター前社長の兼重宏行氏=東京都港区で2023年7月25日、猪飼健史撮影
記者会見で不正について「天地神明に誓って知らなかった」と語ったビッグモーター前社長の兼重宏行氏=東京都港区で2023年7月25日、猪飼健史撮影

 本当に「天地神明に誓って知らなかった」のか。中古車販売大手ビッグモーターの前社長・兼重宏行氏は7月25日の記者会見で、自動車保険の保険金不正請求について、今年6月の特別調査委員会の報告書で初めて知り、「耳を疑った」と発言した。

 ところが2022年1月、兼重氏のおいに当たる社員が息子の宏一副社長(当時)と兼重氏に不正を内部告発していた。「知らなかった」発言とは裏腹に、兼重氏は不正を知りながら、告発をもみ消していた疑いが強まっている。

 今回、同社の保険金不正請求を最初に内部告発したのは、千葉県の店舗に勤める兼重氏のおいだった。告発を受けたのは、社長と副社長の兼重親子だった。

 報告書によると、塗装作業員として同店の板金・塗装工場に勤務していたおいの社員は、工場長が営業成績を上げるため、車を損傷させるなど「不要な板金・塗装の施工を強いている」と22年1月、「環境整備点検」のため同工場を訪れた副社長の宏一氏に訴えた。当時、工場内では社員たちが不適切な作業を強いられ、不満がたまっていたという。

 宏一氏は社長である父の兼重氏に連絡するよう伝えた。このため、おいの社員は、社内連絡で利用していた無料通信アプリ「LINE(ライン)」を使い、証拠写真とともに同店で横行する不適切な行為の詳細を直接、おじの社長に告発した。

部長に調査を指示したが

 これを受け、社長の兼重氏はどう動いたのか。兼重氏は担当部長に調査を指示したが、「おいと工場長の個人的な確執にすぎない」という先入観を持っていた。このため「告発内容の真偽を真摯(しんし)に調査する姿勢を示さなかった」という。

 特別委は社長と副社長だった兼重親子の対応について「告発内容の真偽に関して特段の調査も行わないまま、社員を懐柔して黙らせることにより、結果的に告発をもみ消したといわざるを得ない」と指摘している。

 これについて、兼重氏は7月25日の記者会見で「おいの告発については、工場長との個人的な確執だと思い込んでいたので…

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経済プレミア編集部

1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部。