
本当に「天地神明に誓って知らなかった」のか。中古車販売大手ビッグモーターの前社長・兼重宏行氏は7月25日の記者会見で、自動車保険の保険金不正請求について、今年6月の特別調査委員会の報告書で初めて知り、「耳を疑った」と発言した。
ところが2022年1月、兼重氏のおいに当たる社員が息子の宏一副社長(当時)と兼重氏に不正を内部告発していた。「知らなかった」発言とは裏腹に、兼重氏は不正を知りながら、告発をもみ消していた疑いが強まっている。
今回、同社の保険金不正請求を最初に内部告発したのは、千葉県の店舗に勤める兼重氏のおいだった。告発を受けたのは、社長と副社長の兼重親子だった。
報告書によると、塗装作業員として同店の板金・塗装工場に勤務していたおいの社員は、工場長が営業成績を上げるため、車を損傷させるなど「不要な板金・塗装の施工を強いている」と22年1月、「環境整備点検」のため同工場を訪れた副社長の宏一氏に訴えた。当時、工場内では社員たちが不適切な作業を強いられ、不満がたまっていたという。
宏一氏は社長である父の兼重氏に連絡するよう伝えた。このため、おいの社員は、社内連絡で利用していた無料通信アプリ「LINE(ライン)」を使い、証拠写真とともに同店で横行する不適切な行為の詳細を直接、おじの社長に告発した。
部長に調査を指示したが
これを受け、社長の兼重氏はどう動いたのか。兼重氏は担当部長に調査を指示したが、「おいと工場長の個人的な確執にすぎない」という先入観を持っていた。このため「告発内容の真偽を真摯(しんし)に調査する姿勢を示さなかった」という。
特別委は社長と副社長だった兼重親子の対応について「告発内容の真偽に関して特段の調査も行わないまま、社員を懐柔して黙らせることにより、結果的に告発をもみ消したといわざるを得ない」と指摘している。
これについて、兼重氏は7月25日の記者会見で「おいの告発については、工場長との個人的な確執だと思い込んでいたので…
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