マルクス経済学者に聞くコロナ禍(下)
マルクス経済学者の的場昭弘・神奈川大学経済学部教授にコロナ禍の世相を聞くインタビューの2回目。コロナがもたらした経済への悪影響に加え、環境問題が「資本主義の終焉(しゅうえん)をもたらす可能性」にまで話が及んだ。どういうことなのか、的場氏に詳しく聞いた。【聞き手は経済プレミア編集部・平野純一】
--コロナがもたらした消費減退や格差拡大に加え、いま環境問題が非常に深刻になっています。
◆的場昭弘さん 近年、極めて重要な問題は、資本主義下で成長を続けた結果、人類がいま環境制約の壁にぶち当たっていることです。
「単純再生産」と「拡大再生産」という考え方があります。自然環境は単純再生産です。一方的に何かが増えたりせずにバランスが保たれています。唯一、人類が資本主義下で行っていることだけが拡大再生産です。だから、地球上で人類だけが増え続け、20世紀初めは16億人だった人口が、いまでは80億人に達しようとしています。
利潤率は下がっている
--資本主義を続けることで、さまざまなものを食いつくそうとしているということですね。
◆資本主義経済における「資本」の恐ろしいところは、あるところから人間の意思を離れてどんどん自己増殖していってしまうところです。しかし、増殖の結果、資本から生まれる利潤率は明らかに下がってきています。
利潤率と金利は並行して動くので、多くの先進国がゼロ金利になっているのはその証左です。マルクスの「資本論」のポイントは、資本主義は自己増殖的に成長し続けるしかなく、しかし、成長が止まった瞬間に資本主義は終わるということです。
--その…
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