人生を変えたゲームと再会!名作になりそこねたSFC版の『エメラルドドラゴン』絵日記

吉田輝和

過去の絵日記でも紹介したが、僕がオタクへの一歩を踏み出す原因となったのは「PCエンジンDuo-R」というゲーム機を購入したことだった。そしてゲーム機と一緒に買ったソフトが『エメラルドドラゴン』だ。

『エメラルドドラゴン』は1989年にパソコン用ソフトとして発売し、その後様々な機種で展開されていた。

僕が当時プレイしたのは、1994年に発売されたPCエンジン版だが、今回プレイするのは、PCエンジン版のあとに発売されたスーパーファミコン(以下:SFC)版だ。

本来なら当時ハマったPCエンジン版で本記事を書きたかったのだが、PCエンジンの本体一式を揃えるとなると予算オーバーしちゃうのだ……。

■仲間は魅力的なおっさん揃い!

ストーリーをざっくり紹介すると、ドラゴンとともに育った少女「タムリン」と、ドラゴンの青年「アトルシャン」たちが、人間に仇なす魔王ガルシアが率いる魔軍と戦う物語だ。

人間の住む聖地イシュ・バーンにはドラゴンに対して死に至る呪いがかけられているため、アトルシャンは人間の姿に化身している。この二人を主軸として物語が展開していくのだが、脇を固める仲間たちも大勢登場する。

女ったらしな性格ながら正義の心も持ち合わせているハスラム。ハスラムのお目付け役の修道士ファルナ。

汚名を着せられて近衛兵を追放になった中年剣士バルソム。

魔道士としてその名を知られている老人バギン。

レジスタンスの長を務める白髪の老人ホスロウ。

中年でありながらレジスタンス内で最強と名高い戦士カルシュワル。

そう、このゲームはおっさんキャラがやたらと多い。

日本のRPGでは少年主人公が多いため、20代後半くらいのお兄さんでもおっさんキャラ扱いされていることが多いが、本作に登場する仲間はガチの中年だ。

もちろん他にもイケメンキャラが存在するんだけど、主人公を除いた仲間キャラの半数がおっさんなのだ。しかもみんな良いキャラしてんだよなあ。

本作をプレイする前の僕の好みは、ツンツンヘアーの剣士タイプで、火や雷属性を持っているような王道主人公タイプのキャラだったが……

いつの間にか無骨なおっさん好みになってしまった。そうさせる魅力が本作にはあるのだ。

■SFC版の追加要素は悲喜こもごも

キザっぽいポーズでウインクしたり落ち込んだりする姿はコミカルで可愛らしい。小さなドットキャラながらも、表情や感情がよく伝わってくる。

アニメーションではないものの、気合の入った一枚絵も登場する。また、一部のイベントシーンではキャラクターボイスも採用されている気合の入りようだ。ただ、音質についてはかなりこもっていて、ハッキリ聞き取りづらかったんだよな……。

SFC版で追加された要素として、アトルシャンが戦闘中にドラゴンの姿に戻って敵を攻撃する「ドラゴンチェンジ」なる技がある。

ただ、呪いのかかったイシュ・バーンの地でドラゴンに戻るのは自殺行為そのものであり、ドラゴンチェンジ後には自身も大ダメージを食らう。

プレイヤーからすれば単なるHP消費技なんだけど、アトルシャンからすれば使うたびに死を覚悟するレベルだろう。気軽に使っちゃっててごめんね。

そしてSFC版で個人的に一番印象の強かったのは、コミカルな演出の追加だ。

シリアス度の高い他機種版より、アトルシャンがちょっとお調子に乗っている。SFC版は対象年齢を低めにしているのか、全体的な難易度が下げられ、コミカルな演出が随所に盛り込まれていたように思う。

といっても全体的なシナリオ自体はシリアスなままだし、個人的には許容範囲内の改変だったんだけど……それでもコミカル演出の犠牲者はいる。その名は、ダードワの森に住む民、ヤマンだ。

戒律に重きを置く父親に対して、戒律よりも大事なものがあることを知り反抗する、心優しき良い男だ。ちなみにCVは山寺宏一氏だ。

PCエンジン版では、アトルシャンを狙った敵の矢から身を挺して守り死んでいくのだが、SFC版の死に様はというと……。

町の入口で矢の練習をする子どもに対し、弓矢の扱いをレクチャーするヤマン。フラグである。

そしてその後……建物から出た瞬間、子どもが練習で射た矢がヤマンに突き刺さる。

ヤマンは「これもダードワの掟に逆らった報い」と言うが、ダードワの掟もこんなことは想定してなかったと思うぞ。

アトルシャンは、ヤマンのお父さんになんて報告したんだろうな。

このコミカルではすまされない改変はユーザーの間でも語り草となり、ゲームは未プレイでもこのイベントは知っている人もいるだろう。

ハードの制約上、ビジュアルシーンがカットされているなどのマイナス要素はありつつも、それを補えるほどのハイクオリティなグラフィックや演出を備えていながら、SFC版が名作になれなかったのは、このイベントが悪目立ちした影響が大きかったんじゃないだろうか。

とはいえ『エメラルドドラゴン』自体は名作だし、全体的に見れば悪いゲームではない。

ちなみに本作の10年後を描いたゲームやドラマCDが販売中なので、記事を読んで興味を持った方はそちらもぜひチェックして欲しい。

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