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晩夏

夕焼け色のワンピースを縫って 黄昏のサッシュをしめている菩提樹のこずえに 白い猫と黒い猫が座っていて 夕焼け色の目をしてこちらを見ている

賢者

しなやかな蛇が集まって 昨日の水を飲んでまどろんでいる 互いの背中にもたれながら 隣の明日が幸せであればいいなあと夢を見て、 隣の昨日を燃やしてしまおうとつぶやいている ツボカビで蛙が死んで またちょっと空が色あせた 草はまだ青いから まだ勘弁し…

「野焼き」

寒い間タンポポは びたーーと開いて地面にはりついて 貼りついたまま、短い茎を起して花も咲かせる。 根が1メートル以上も深く伸びて、強靭かつはた迷惑な雑草は、 火をかけるぐらいでは死なない。 冬の終わりの野焼きの透明な炎は、なぜだか熱くない。

机の上のたんぽぽと焦燥

意地悪な細い指は からまって けれど、丁寧な受け答えはリズムの緩和を生みます 赤いボールペンと蛍光ペンで 傾向と対策の四角い構築物を塗りたくり、 はさみで三角形の砕片に断裁 酩酊したはさみは規則正しく15度 軸を傾けながら回りました はさみのアイド…

透明人間が夕飯に

透明人間のくせに食べる食べる。皿の中身が口と思しきところへシュッタと消え去っていく。 大食い選手権さながらに皿が消え、お代わりを請求する。 急いでご飯を盛り、追加にもう一斗焚き始める。鶏を2羽ネギと白菜を山のように切り刻み大なべで煮込みつつ…

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タイヨウが くるくるっと回って ぱーーん 口をすぼめて ぴゅーっと吹いたら ぴーーひょろろーー 歌が聞こえて ふふふーーんの へーんの ぽっかぽかーー ひらがなで ○ って書いてた ばーーーん ざーーーーい

鯖

「悪意って匂うねんよ。くさいくさい、生ぐさい。」って鼻をつまみながら ほらね って口から出てきた魚をみせてくよる。 魚屋の店先で一日たっちゃったような鯖で目があかい。「こういんは、ちょと醤油につけてやな から揚げにして食べてしまえばええんよ。…

グッドナイトメール

夜遅く、帰る人待って、 「オカエリナサイ」会話を続ける元気はなくて、 「オヤスミナサイ」三度に一度はそのまま熟睡 「ゴメンナサイ」

遺跡の町2

☆正式名称 長官の正式名称は、”メア複合遺跡特別保護区域統合管理長官” ☆シティドクター アール氏は街の都市建築課の課長だ。背が低くネズミのような風貌をしているが切れ者で、建築学と公衆衛生学の博士号を持っている。 「人間の住んでいる都市は、都市その…

遺跡の町

☆レイヤー 僕の町は遺跡だった。 「たった一つ遺跡がある」なんてちゃっちいもんじゃあない。有史以来一度の地震もハリケーンにもあっていない安定した谷間で、街全体が遺跡の上に遺跡が重ねられた複合遺跡だった。僕の家も200年前の家の壊れやすい部分を取…

マッチが燃え尽きるまで

ランダム係数で導き出された値を灰青色の明度に代入すると コペンハーゲンブルーからグレーまで アフリカ模様を織り上げていった

ホスト演歌♪「一円の薔薇」

こっそり隠した僕の薔薇 たった一輪、そっと、そっと 誰も知らない 茶色の葉かげ 純白の花 きつい刺で覆われて 冬枯れの白い庭園 茶色い刺のからんだアーチが 訪れる人をきっぱり阻む 知らずに歩かないでくれ 嘘の嘘の中に隠した僕の庭園を 知らずに触らない…

西瓜

96だった大叔父が暑さに耐えかねてとうとう往生したのが3年前の8月4日。 「もうちょっと前にいってくれりゃあ、初盆も今年すまかいたのに」と、葬式と三日七日と盆と忌明けがごちゃごちゃにきちまった夏に大叔母がこぼしてたのを思いだす。 喪服は暑く…

柱

街角には、白い柱が一本立てられている。象牙の色のなめらかな小さな突起に覆われ、大人が手を回しても少し届かない程度に太く、もたれるのにちょうどいいへこみがいくつもあった。 手を触れると人によっては柱の中へ消えてしまうことがあった。身につけてい…

♪シャンソン

広い囲いの真ん中で きりんが首をかしげたの ねえ、あなたの顔は━を向いてる あたしのお腹はからっぽ きゅうきゅうと空腹の音が 空に響いて ライオンがもらい泣き ねえ、あなたの顔は━を向いてる 抱きうさぎを抱いてみてよ ふるふるとふるえて ぴくぴくと鼻…

メガホンをくわえたからす

ぎざぎざの空 柔らかなゴムでつながった ビルと車 自転車に乗った悪人と善人 いっぱいになっても まだ注ぎ続けられて あふれる あふれた 泣き笑い

根の国

どこまでものびる根に絡み取られて骸が溶ける けっして混ざりあうことのなかったいずれの骸もへだてなく 地上にあった輪郭も 根の国の薄暗いぬくみの中に薄れ あなたもあたしもない黄泉比良坂のなだらかな坂を あなたもあたしもなくしながら下り降り 言葉は…

小僧のピアノ

びっこをひいたトルコの兵隊 かがやく行進、チューリップ どん ぱっぱっぱ どん ぱっぱっ まちがえちゃっだめ まちがえちゃだめ まちがえちゃだめったら まちがえちゃだめ よろめく行進 なぜだか だんだん だんだん だんだん だんだん だんだん はやくなって…

るりいろのらっぱ

るりいろのらっぱ かんつばきのクラリネット ハコベのほるん 天帝さまの庭園オーケストラで 演奏するのは オヤスミ中の春の風 灰色雲の帽子とマフラー 抜ける青色 しばれる空気 はあふう、ひいふう 息が白いよ はあふう、ひいふう 雪が重いよ

エコロジーエレジー

ペットボトルはリサイクル ペットボトルはリサイクル ペットボトルはリサイクル ペットボトルはリサイクル(蓋ははずすんだよ、あんちゃん) 生ゴミはコンポスト ビニール洗って分別ゴミ 牛乳パックも洗って干して カーテン屋の端切れのチェック 給食袋にラ…

あぁぁ焼き鳥 きっと焼き鳥

こんがり焼けるけむりの下で ぼんぼちねぎまの熱いほおずり つくねかわいや かわいやつくね つづく玉道 こがねに丸い 塩かしょうゆかはたまたたれか 迷うもうれしや 炭火の前で 皮にレバーに わかどりももよ たまる串数 財布を知らず ホッピー片手に亭主にた…

ポエト

2分の1に分割された魂 15億9千4百3分の1に砕かれた欠片を 3億の嘴がひとつひとつ祈りをこめて 立ち昇る紫煙は清々しいあるいは 鼻の曲がるような香りを 路上に放置されている犬の轢死体 這いだした蟻はかつてあった唄を大声で 少年は 自分の魂の半…

こたえ

どうしてだろうと 口に出すときには もう 半分ぐらい答えを知っているのだ ただ、 その答えがあんまり泣けるので 海辺の砂地にまぎれてしまえばいいのにと 思うのだ 船虫がきっと食べてくれるだろうと 思うのだ 黄色い花が咲いてくれればいいのにと 思うのだ

「瀬賀小波出稼人情譚」

これは 稀少なる学位をば修めたる優秀なる雇われ人である。名を小波と申し候。 さても遠江の国、自動2輪跨車を製作する工場なるところの職をば拝命せし候。 久しく留め置き候ところに、家うちへのいたはりと申して、たびたび暇を乞ひ候へども、この秋ばかり…

◆夏の終わりに:2007/09/30(日)

夏の終わりに 巨大な鳥の夕焼け空で 大きく開けた嘴の中に 夕日がおちた 巨大な鳥は 薔薇色の雲にちぎれていって 後ろむきの 月が 踊る ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 梁山泊に投稿、お題は 空

â—†baby star

♪世界のどこかで 小さな星が (僕にはわかったんだ) 生まれた 生まれたばかりの Baby Star 夕日の照りつけるアスファルト (汚れたビルの向こうに) 生まれた milkをあげよう (かあさんの胸に抱かれて) 小さな声で鳴き声をあげ (Baby Star) お前は小さ…

◆タバスコ

hot hot hot tabasco hot hot hot-chri papper あつい あついよ、 ぎんぎん かんかん あつい あついよ 冷ましてくれよ ぶん殴るときゃ親指はそと 石ころにぎって 息をためろ あの女 ハイヒールで踏んでいきやがった おれの服 みせびらかしてた安売り胸の 干…

正しいことが鉄の雨のようにふりそそいで

白い原稿用紙に痩せた象を書き、 赤い紐で閉じた

人間の幸福

ハッピイアイランドへようこそようこそ、ようこそ、さあ花束持って ようこそ、ようこそ、記念撮影、 あなたはハッピイアイランド入島1万人目! いつでも誰でも1万人目!おめでとう、おめでとう おめでとう、おめでとうハッピイアイランド 誰もが幸福 青ざめた小学生もニコニコ笑…

泥だらけになった苗を洗う 天の水滴

轟音をたてて落ちる水 水底に眠るたにしの頭上に ウォータークラウン 重なって重なって重なってかさなって、重なって描かれる円 重なって 反響する音 波紋 走り抜けていく自転車の老婆 右のはさみをふりたてる赤いザリガニ 黒々とほてる土に 水が道を刻んで …