食品放射能検査について

1、食品を何で測っているか?

☆精密分析← 一番細かい。ゲルマニウム半導体検出器によるγ線スペクトロメトリー 
      (精度は高いが、速度と経済性が落ちる)
☆簡易分析← NaI(Tl)シンチレーションスペクトロメータ そこそこのラインが測れる(20Bq/Kgぐらいまでが限界)
      (速度はあるけど精度が落ちる)
☆スクリーニング ← 機種は色々。大ざっぱなところまで(食品検査では、大規模なスクリーニングではねるときに使用する程度
          非破壊検査になるので嬉しい)

の3つがあります。それぞれ特徴があるので、目的に応じて分析方法を選択しています。 

各装置の比較
http://www.get-c.co.jp/genai.pdf


2、計測に関して、留意点
同位体研究所のサイトがわかりやすいです。(ページ左のガイドにある「技術関連」の項目を読破してください)

ゲルマニウム半導体検出器による定量下限と効率的な測定
http://www.radio-isotope.jp/Analysis/tech_gedetector.html
精度と迅速性 
http://www.radio-isotope.jp/Analysis/Tech_type.html
検体量と検出下限・・サンプル量の決定
http://www.radio-isotope.jp/tech/tech_samplesize.html
基準値(規制値)と測定に必要な定量下限値
http://www.radio-isotope.jp/tech/regulatory_limit.html
必要な定量下限を得る為の測定時間の設定とは?
http://www.radio-isotope.jp/tech/tech_measure.html
検体量と検出下限・・サンプル量の決定
http://www.radio-isotope.jp/tech/tech_samplesize.html
NaI検出器とGe半導体検出器による測定比較
http://www.radio-isotope.jp/Analysis/tech_screening.html


3、うまくスクリーニングと、精密分析を組み合わせている事例←福島県の米の全袋検査
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet;jsessionid=3E0B6AC03503A0234AFE37BDFADA4C53?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=31330
計測結果
https://fukumegu.org/ok/kome/
詳細
https://fukumegu.org/ok/kome/graphDetail/999/0

↑97.8%が25Bq/Kg未満に収まってる
 しかもスクリーニングレベル(50〜80)を超えたので精密検査をしてみると、16%がじつは25未満だった。

スクリーニング法とは?
https://fukumegu.org/ok/images/1screeningmethod(kome).pdf
スクリーニングレベルとは?
https://fukumegu.org/ok/images/3screeninlevel(kome).pdf
スクリーニング法では、「測定下限値」は基準値100Bq/kgの1/4である25Bq/kg以下であることが必要
https://fukumegu.org/ok/images/2sokuteikagenchi(kome).pdf




4、読まなくてもいいけど、参考資料

「食品中の放射性物質の試験法について」 (厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/dl/shikenhou_120316.pdf
「食品中の放射性物質の試験法の取扱いについて」(食安基発0315第7号平成24年3月15日 厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/dl/shikenhou_120319.pd
「食品中の放射性物質の新基準(ダイジェスト)」(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/dl/leaflet_120329_d.pdf
「食品中の放射性物質の新基準リーフレット」(厚生労働省)
 http://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/dl/leaflet_120329.pdf
「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」(厚生労働省)
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001558e-img/2r98520000015cfn.pdf
「放射能測定法シリーズ16 環境試料採取法」(文部科学省)
 http://www.kankyo-hoshano.go.jp/series/lib/No16.pdf
「放射能測定法シリーズ24 緊急時におけるガンマ線スペクトロメトリーのための試料前処理法」(文部科学省)
 http://www.kankyo-hoshano.go.jp/series/lib/No24.pdf
「放射能測定法シリーズ7 ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリー」(文部科学省)
 http://www.kankyo-hoshano.go.jp/series/lib/No7.pdf
「解説」
 http://www.kankyo-hoshano.go.jp/series/lib/No7-5.pdf
「食品中の放射性物質に関する検査を実施することが可能である登録検査機関」(厚生労働省)
 http://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/dl/shokuhin_kensa.pdf

早野坪倉宮崎論文を読んで

早野坪倉宮崎論文を読んでーーWBC運用へのお願い


原発事故後、愛知県から放射線への影響や、現地での対応の進展について、関心を持ち続けています。当初の関心は、農家の一員として「放射性物質はどのぐらい作物に移行するか? 放射性物質を大人、子供、妊婦はそれぞれどこまで食べて良いのか? 放射性物質の入った作物はどの値までなら売って良いのか?」という事につきました。
そのため、ツイッター上の早野教授の情報に注目してまいりました。
4月11日に早野坪倉宮崎論文が発表されて、福島の内部被曝について一つの区切りを迎えたと感じています。(注1
早野坪倉宮崎論文及び早野先生のうったえかけにより実現し、各自治体によって平行して実施されてきた給食丸ごと調査や、COOP等の陰膳調査から理解できることは、(注2

1) 市場品の汚染度は非常に低いこと。(検査が有効に働いているためと、市場希釈が効いているため)――陰膳結果を見る限り、一般の方は一食に1Bqあるかないかというレベルです
2) WBCで正確に計測された値は、福島県内の一般人の場合、とても低いこと。―子ども達のほとんどは計測限界300Bq/body以下。稀に採取品等の自家消費率の高い方が数値があがるけれど、1mSv/y以内で収まっています。ー50Bq/Kg以上の方は計測全体の0.04% (市場品汚染度が非常に低いのが理由ですが、子ども達の高濃度な食品の消費も抑えてくださっている親御さんの配慮のお蔭でもあります)  (注3

でした。

福島の内部被曝が、チェルノブイリ時のベラルーシ、ウクライナ、さらには北欧サーミよりもはるかに低く抑えられていることを大変嬉しく思っています。(注4 また、現在の検査による出荷体制に自信を持つこともできました。(「どこまで売っていいか」のミニマム値は抑えられたと考えています。)

しかしながら一方では、いくつかの課題が残されているのも強く感じています。

1)正確なWBC値をBq/bodyで発表している自治体が少ないです。

早野坪倉宮崎論文の前提には、早野先生の明晰なWBC分析がありました。WBCの計測限界値領域にあった内部被曝値は、それだけでは値の変化を可視化することができません。「みんな1mSv/y以下です」という情報では、WBC結果を食事の改善に生かすこともできないし、継続したWBC検査へのモチベーションも失っていきます。
一方で、稀に高い方がいるということは潜在的な濃度上昇の因子はないわけではない。つまり、濃度上昇を抑える抑止力としてWBC検査を有効に働かせなくてはいけないです。なぜならば、出荷前検査が一番大事な前提だとすれば、WBC検査は答え合わせにあたるので。 出荷前検査が有効に作用していることを保証してくれるのがWBC検査であり、同時に自家消費のリスクを目に見える形にしてくれるのもここです。 (出荷後の希釈が効いた状態で購入した食品と、出荷前の食品を直に食べるのでは意味が変わってきますが、その結果を最終的に確認できるのはWBC検査です。測って得られた安心感によって、自家消費の増加をもたらす可能性があり、そうしたくなる気持ちも良く分かります。 また、実際これだけ余裕があれば食べても構わないのです。 現在、1段階目は恐ろしく低い値でクリアしました。次は自己管理による消費の段階が待っていると予想します。 このように予想される次の変化を測り取っていかないと、継続した健康管理には結びついていかないのではと思うのです。――「自家消費者はどこまで食べていいか?」)

また、消費側の数値感覚の緩和という点からも同様なことがいえます。現在の数値は大変低いです。チェルノブイリ後の北欧諸国と比較しても低いです。ここまで下げる必要は本当はないでしょうし、そのためにもしかしたらそこまでしなくてもよかった出荷自粛や生産品の遺棄が陰に隠れているかもしれません。例えば、里山からの採取販売を頼みにしていた農家では、おそらく相当の損失があります。 消費者の嫌悪感を少しでも軽減するためにもーー出荷前検査でヒットがあっても、市場品の平均値は低くなること。食べるBq値が多少あがっても、内部被曝の増加に大きく結びつくわけではないこと。を理解するためにーー、継続したまるごと調査やマーケットバスケット調査とWBC検査の連動した説明は必須です。(――「一般消費者はどこまで食べていいか?」)

早野先生が行ってくださったWBCの最適化は、「WBC値を有効に利用する」ための必須条件です。お蔭でWBC値を参考に使えるようになりました。(早野先生本当にありがとうございます)
ぜひ、あの成果をほかの自治体でも利用していただいて、細かいBq/bodyまで公開してください。

2) WBC値を、自治体の保健福祉活動に生かしてください。
保健婦さんの活動や、地域の健康診断とリンクさせて、生活習慣の改善のための一情報として生かしてこそ、具体的な放射性物質による内部被曝の予防になっていくのだと感じています。データを取って、「よくわかんないけど大丈夫だね」で終わらせず、継続的な内部被曝予防システムの構築を望みます。 情報の共有化と、有効活用の道筋が足りていないように見えるのを強く危惧しています。

3) 自治体レベルの検査結果があまりにも見えにくいです。どこかでプラットフォーム作ってもらえませんか?


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(注1 早野坪倉宮崎論文:
Internal radiocesium contamination of adults and children in Fukushima 7 to 20 months after the Fukushima NPP accident as measured by extensive whole-body-counter surveys
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pjab/89/4/89_PJA8904B-01/_pdf
日本語抄訳版
福島県内における大規模な内部被ばく調査の結果
― 福島第一原発事故 7–20 ヶ月後の成人および子供の放射性セシウムの体内量 ―
https://docs.google.com/file/d/0Byf-QYeE0N7pTWFyRnVhMnhZNmM/edit?pli=1


計測性能の最適化について、参考スライド:WBCの抱える様々な問題点 早野先生
http://www.slideshare.net/RyuHayano/ss-11315090
宮崎先生「第 1 回ホールボディカウンター学術会議は何を明らかにしたのか?福島県内に配備の進むホールボディ
カウンターの運用について考える」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhps/47/2/47_108/_pdf

三春町小中学生のホールボディカウンター検査結果の公表:http://www.town.miharu.fukushima.jp/soshiki/11/kensakekka-kouhyo.html

僭越ながら、要約も作成しました⇒:http://togetter.com/li/486718



(注2 おもな給食まるごと、陰膳、マーケットバスケット調査結果
給食丸ごと調査例(福島市):http://www.city.fukushima.fukushima.jp/soshiki/61/kyushoku12040401.html
給食まるごと調査例(震災復興支援放射能対策研究所):http://www.fukkousien-zaidan.net/research/%E7%B5%A6%E9%A3%9F%E3%81%BE%E3%82%8B%E3%81%94%E3%81%A8%E6%94%BE%E5%B0%84%E6%80%A7%E6%A0%B8%E7%A8%AE%E7%B5%90%E6%9E%9C%EF%BC%882012%E5%B9%B410%E6%9C%8831%E6%97%A5%E8%BF%84%EF%BC%89.pdf
陰膳(COOP):http://www.fukushima.coop/info/important/detail.php?d=4a3b9d072ff2df08439594b22047c2ac5e9a2e15
陰膳(震災復興支援放射能対策研究所):http://www.fukkousien-zaidan.net/research/%E9%99%B0%E8%86%B3%E6%96%B9%E5%BC%8F%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E6%94%BE%E5%B0%84%E6%80%A7%E6%A0%B8%E7%A8%AE%E6%B8%AC%E5%AE%9A%E7%B5%90%E6%9E%9C%EF%BC%882012%E5%B9%B410%E6%9C%8831%E6%97%A5%E8%BF%84%EF%BC%89.pdf
マーケットバスケット調査(厚労省委託研究):(PDF)http://trustrad.sixcore.jp/wp-content/uploads/2011/03/138201b57ed2d05cf8d81c2b52508832.pdf

(まとめ http://togetter.com/li/349516)



(注3 主なWBC計測結果

三春町小中学生のホールボディカウンター検査結果の公表:http://www.town.miharu.fukushima.jp/soshiki/11/kensakekka-kouhyo.html
ひらた中央病院(震災復興支援放射能対策研究所)http://www.fukkousien-zaidan.net/research/index.html
南相馬市 http://www.city.minamisoma.lg.jp/index.cfm/10,2033,61,html
福島市 http://www.city.fukushima.fukushima.jp/soshiki/71/h-kenkou12062801.html

(まとめ http://togetter.com/li/327396)



(注4 チェルノブイリ後の周辺各国の内部被曝値
http://togetter.com/li/462537

森林影響

日本森林学会 25年3月の大会 発表要旨

http://www.forestry.jp/meeting/files/%E6%A3%AE%E6%9E%97%E5%AD%A6%E4%BC%9A%E5%A4%A7%E4%BC%9A%E8%AC%9B%E6%BC%94%E8%A6%81%E6%97%A8%E9%9B%86WEB%E7%94%A8.pdf

千葉県内の竹林における放射性セシウム濃度―千
葉県中部地域の竹林の調査事例―
・廣瀬可恵1
・遠藤良太1
・久本洋子2
・山田利博2
・田野井慶太朗3
・中西友子3
千葉県農林総合研究センター森林研究所・2東京大学千葉演習林・
東京大学大学院農学生命科学研究科放射性同位元素施設

東京電力福島第一原子力発電所事故に伴い千葉県内の筍
から放射性 Cs が検出された。そこで、?県中部地域にお
いて、文部科学省の航空機モニタリングによる放射性 Cs
沈着量が多い地域(10-30kBq/m2)の竹林 A と少ない地
域(≦10kBq/m2)の竹林 B で筍等の放射性 Cs 濃度及び
空間線量率を比較する。また、?タケの各部位、落葉、土
壌の中で放射性 Cs 存在量が多い部分を特定する。調査は
竹林 A で 2012 年 4 月上旬、竹林 B で 3 月上旬に行った。
? 竹林A、B において、筍食用部分、葉、落葉の放射性 Cs
濃度と地上高 10cm、1 m における空間線量率を測定した。
? 竹林Aにおいて、タケの各部位、落葉、土壌に存在する
放射性 Cs 量を単位面積当たりで比較した。その結果、?
竹林A、Bの順に、各部位の放射性 Cs 濃度(Bq/kg)は、
筍食用部分(生重)53.1、30.4、葉(生重)82.9、129.3、落
葉(乾重)2,129.4、2,079.5、空間線量率(μSv/hr)は、地上
高 10cm で 0.047、0.072、地上高 1 m で 0.059、0.063 であ
り、必ずしも竹林 A で高くなかった。?放射性 Cs 量
(Bq/m2)は、タケの各部位に比べて落葉および土壌に多
く、タケの各部位の中では稈で最も多かった。

                                                                  • -

J07 栃木県那須野が原地域における除染装置を備えた木
質バイオマスガス化発電小型プラントの開発
・有賀一広1
・金築佳奈江2
・金藏法義2
・宮沢 宏3
・小出 勉4
・松本義広5
1宇都宮大学・2那須野ヶ原土地改良区連合・3
宮沢建設株式会社・4小出チップ工業有限会社・5松本興業株式会社

栃木県佐野市のセメント工場では、2009 年4 月から燃料
の 65%(年間 10 万トン)を木質バイオマスで賄う発電施
設が本格稼動した。この施設ではこれまでは RPS 制度を
利用してきたが、現在、FIT への申請を行っている。また、
栃木県那須塩原市、那珂川町の製材所では、現在、木質バ
イオマス発電施設の整備が計画されている。今年度、那須
塩原市に 265kW が、来年度、那珂川町に 2,000kW の発電
施設が整備される予定である。一方、先の東日本大震災で
は、栃木県北部に位置する那須野ヶ原地域でも甚大な被害
を受け、また、その後の放射能汚染による影響は大変深刻
な状況である。森林の除染については、落葉等の堆積有機
物、枝葉の除去や間伐など伐採による樹木の除去などが検
討されているが、これらの除去物質を木質バイオマスとし
てエネルギー利用することで、地域のエネルギー源確保に
繋がる。現在、宮沢建設株式会社、那須野ヶ原土地改良区
連合、小出チップ工業有限会社、松本興業株式会社、宇都
宮大学からなる事業組合によって除染装置を備えた木質バ
イオマスガス化発電小型プラントの開発が実施されてい
る。本発表ではその概要について報告する。

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外生菌根菌による放射性セシウムの吸収と共生
樹木への移行
中井 渉・岡田直紀・大橋伸太・高野成美
京都大学
菌類の子実体からは放射性セシウムが植物などと比べて
高濃度で検出され、その中でも菌根性のものからは腐生性
のものと比べて放射性セシウムが高濃度で検出されること
が知られている。植物の中には、菌根を形成して菌類と共
生し物質のやり取りを行うものがいる。放射性セシウムを
高濃度に含む菌類と共生した場合、植物体の濃度にどのよ
うな影響が出るのかを調べるために、外生菌根形成樹種と
それ以外の樹種について当年枝より葉を採取し、137Cs の
濃度を比較した。調査は福島第一原発から約 20km に位
置する福島県川内村の森林 2 箇所で、2012 年 7 月から
2012 年 11月にかけて行った。樹木葉、菌類子実体の他に、
移行係数による比較を行うために土壌サンプルも同時に採
取した。菌類子実体についてはこれまで知られている通
り、菌根性のものは腐生性のものより高い移行係数の値を
示した。樹木葉については、採取した 14 種において外生
菌根形成樹種とそれ以外の樹種とを比較したところ大きな
差は見られなかった。

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広葉樹種における枝の水分通導性と葉の生理的
機能の関連性
作田耕太郎1
・山本佑介2
1
九州大学大学院農学研究院・2
九州大学大学院生物資源環境科学
府
樹体全体の水分通導性は、根から葉への水輸送の重要な
制御因子の一つであり、葉の生理的機能と密接に関連する
とされる。これまでに発表者らは、広葉樹樹冠中の枝の直
径 1cm 程度の枝分かれのない部分(枝セグメント)につ
いて水分通導性の測定を行い、散孔材、放射孔材、そして
環孔材樹種の順に高まることを明らかにした。しかしなが
ら、枝セグメントの水分通導性と葉の生理的機能の関連性
については不明である。本研究においては、九州大学箱崎
地区構内に生育する環孔材 3 種、散孔材 4 種、および放射
孔材 3 種の合計 10 種の広葉樹種を対象に、枝セグメント
の水分通導性と葉の生理的機能との関連性について検討し
た。2012年の 8 月∼9 月にかけて、まず当年生葉の最大気
孔コンダクタンスについて晴天日の正午頃に測定を行い、
続いて測定葉の着生する枝を採取し、枝セグメントの水分
通導性を測定した。さらに、葉の水分特性値をもとめるた
め、当年生葉の P-V曲線を作成した。これらの結果をもと
に、枝の水分通導性と葉の最大気孔コンダクタンスおよび
水分特性値との関係について検討し、木部の道管配列グ
ループごとの水利用戦略について考察した

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放射性物質に汚染されたほだ場におけるシイタ
ケほだ木の放射性セシウム濃度の変化及び落葉
除去と遮へい台設置の影響
岩澤勝巳
千葉県農林総合研究センター森林研究所
【目的】放射性物質に汚染されたシイタケほだ場では、汚
染されていない新ほだ木を伏せ込んでも、落葉等からの放
射性セシウムの移動が懸念される。そこで、ほだ木の設置
方法を変えて伏せ込み、その違いが放射性セシウム濃度に
及ぼす影響を調査した。【方法】千葉県内の2か所のほだ
場(空間線量率 0.093∼0.183μSv/h)に新ほだ木を 2012 å¹´
4 月に伏せ込んだ。ほだ場には無処理区(落葉の上に伏せ
込み)、落葉除去区(落葉を除去して伏せ込み)、遮へい台
設置区(落葉の上に高さ 10cm のコンテナを設置し、その
上に伏せ込み)を設定し、設置前に 3 本、伏せ込み 6 か月
後に各区3∼6 本のほだ木を分析した。【結果】伏せ込み前
のほだ木の放射性セシウム濃度は検出せず∼4Bq/kg で
あったが、6 か月後は無処理区が 2∼20Bq/kg、落葉除去
区が検出せず∼36 Bq/kg と伏せ込み前より濃度の高いほ
だ木が多く、ほだ木下部の菌糸を経由して落葉や土壌等か
ら放射性セシウムが移動した可能性が考えられた。一方、
遮へい台設置区では検出せず∼4Bq/kg と伏せ込み前と概
ね同じで、遮へい台がほだ木の放射性セシウム濃度の上昇
抑制に効果的であった。

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ほだ木のフェロシアン化鉄処理によるシイタケ
中の放射性セシウム低減
鈴木拓馬・山口 亮
静岡県農林技術研究所森林・林業研究センター
演者らは、フェロシアン化鉄(プルシアンブルー)の 0.1
% 希釈液でほだ木を浸水処理すると、1ヶ月後に発生した
シイタケ子実体のセシウム放射能が処理前に比べて半減す
ることを報告した。しかし、希釈濃度や処理方法がセシウ
ムの減少に及ぼす影響は不明である。そのため、異なる処
理条件で試験を行った。フェロシアン化鉄希釈液によるほ
だ木処理区(0.1% 浸水、5%浸水、5%塗布)と無処理区を
設け、処理前及び処理 6ヶ月後に発生した子実体の放射能
と含水率を測定した。その結果、処理区におけるセシウム
137 の放射能(含水率91% 換算)は、無処理区に比べ有意
に低かった(P<0.05)。処理前後の比較では、処理区で有
意に減少し(P<0.01)、減少率は?0.1% 浸水で 75%、?5
%浸水で82%、?5% 塗布で64%、?無処理区で 30% で
あった。これらから、0.1%と 5% の希釈濃度では、同等の
低減効果があり、処理から 6ヶ月後でも持続されることが
明らかになった。また、処理方法は、浸水に加えて、塗布
も有効であると考えられる。新たな処理条件でも低減効果
を確認できたため、生産現場に最適な方法を検討すること
が今後の課題となる。

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列状間伐後の浮遊土砂流出特性:流出モニタリ
ングと放射性物質を用いた解析
南 葰娟1
・五味高志2
・恩田裕一3
・加藤弘亮3
・平岡真合乃2
1
東京農工大学連合農学研究科・2
東京農工大学国環境農学専攻・
3
筑波大学生命環境系
To examine the effects of forest thinning on suspended
sediment (SS) transports within catchments, we monitored
catchment runoff (K2: 17. 1ha, K3: 8.9 ha) and measured
radiocesium activity of SS. Strip thinning (50% by stand
density) for commercial timber was conducted in K2 with
skid trail installation, while K3 was remained as a
reference. Mean amount of SS in the K2 was four times
greater than that in the K3, while Cs-134 activity was 328
Bqkg
−1
(SD=109) and 516 Bqkg
−1
(SD=71), respectively. These results indicated the amount of SS can be
increased due to strip thinning. The SS on skid trails (mean
of Cs-134 activity=119 Bq kg
−1
; SD=40) may be mixed in
the SS of the K2, the resultant in lowerCs-134 activity. Our
finding suggests the SS can be transported from hillslopes
to stream-channels via skid trails.
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スギの葉、雄花及び花粉における放射性セシウ
ム(Cs)の移行
金指 努1
・杉浦佑樹1
・小澤 創2
・竹中千里1
1
名大院生命農・2
福島県林研セ
2011 年 3 月に発生した福島第一原子力発電所事故によ
り、大量の放射性物質が自然環境中に拡散し、汚染の原因
になっている。2012 年には福島県のスギから放射性物質
を含む花粉が確認されたが、人体への影響はほとんど無い
と言われている。しかし、スギの花粉生産量は年ごとに異
なるため、単年度の結果のみで判断すべきではない。2013
年のスギ花粉に含まれる放射性物質濃度を測定し、また花
粉への放射性物質の移行を解明するために、葉及び雄花と
比較した。2012 年 12 月初旬に福島県全域における任意の
85 地点から 3 個体ずつ、雄花が付着したスギ葉を採取し
た。雄花、花粉、伸長年の異なる葉(2012 年、2011 年、
2010 年以前)に含まれる放射性セシウム(Cs-137、134)の
乾重当たり濃度を高純度ゲルマニウム半導体検出器を用い
たガンマ線スペクトロメトリーにより測定した。警戒区域
内にて雄花では Cs-137 で最大 4.8万Bq/kg、花粉では 1 万
Bq/kg を越える地点が存在し、依然高濃度であった。雄花
に含まれる Cs-137 濃度は 2012 年に伸長した葉より高い傾
向があり、選択的に雄花に移行している可能性が示唆され
た。

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千葉県柏市の森林における放射能汚染の実態
福田健二・朽名夏麿・寺田 徹・Uddin, Mohammad Nizam・神
保克明・Mansournia, MohammadReza・渋谷園実・横川 諒・
佐藤樹里・山本博一・横張 真
東京大学大学院新領域創成科学研究科
柏市を含む千葉県東葛地域は、周辺地域に比べて高濃度
の放射能汚染がみられる「ホットスポット」となっている。
開発が進む柏市北部に残された都市近郊林「こんぶくろ池
自然博物公園」、「大青田の森」、「東大柏キャンパス」の 3
か所を調査地として、森林内の放射能汚染の実態を調査し
た。林内の空間線量は 0.2∼0.3μSv/h 前後で同地区の芝生
地等に比べてやや低く、樹冠による放射性セシウムの遮断
が示唆された。樹幹のセシウム濃度は、樹幹上部の外樹皮
で最も高く、材部では低濃度であったが、2011 年の年輪の
一部や 2012 年の当年枝からも検出され、樹皮や土壌から
の吸収と新梢への転流が示された。土壌のセシウム濃度
は、A0 層のリターと腐植層で数千∼1 万 Bq/kg で、下層
ほど低かった。2011 年秋の落葉は、コナラなどの落葉樹で
低く、スギ・ヒノキで高かった。落葉樹の 2012 年の落葉は
さらに濃度が低下した。2011 年、2012 年に採集したミミ
ズおよび地表徘徊性甲虫類で数百∼数千Bq/kg、キノコで
は腐生菌、菌根菌ともに数千∼数万 Bq/kg(乾重当り)の
高い濃度を示した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
針葉樹林と落葉広葉樹林における林床の放射線量
分布と放射性Cs 沈着量
佐々木道子1
・藤原佳祐2
・戸田浩人3
・崔 東壽3
1
東京農工大学大学院連合農学研究科・2
東京農工大学大学院農学
府・3
東京農工大学大学院農学研究院
2011 年 3 月の東電福島第一原発事故で放出された放射
性 Cs(134Cs、137Cs)の森林における分布状況を明らかに
するため、福島県と群馬県東部の森林林床の放射線量と放
射性 Cs の測定を行った。二本松の調査地点はスギ、アカ
マツ、ナラ林が 3 地点ずつ計 9 地点、群馬県はヒノキ、ス
ギ、ナラ林が 2 地点ずつと、ケヤキ林 1 地点の計 7 地点で
ある。2012 å¹´ 7∼12 月に、各調査地に 2×2m方形区が
50∼100 個できるよう調査区を設置し、A0層上と表層土(0cm)
の放射線量を簡易な放射線測定器(エアカウンター /
エステー)で測定し、そのうち 5∼10 地点をシンチレーショ
ンサーベイメータ(日立アロカメディカル)で測定した。
林床植生は植生内と植生上部の空間線量を測定した。放射
性 Cs 分析用試料として、各調査地より A0層(50×50 cm)、
林床植生、新鮮落葉を採取した。なお、群馬県の調査地は
以上の調査に先行して、2011 年 7 月よりリターフォール調
査を行っており、昨年 12 月までに採集したリターの放射
性 Cs を測定した。発表では林床の各空間線量と A0層、林
床植生、リターフォールの放射性 Cs、林相との関係などに
ついて報告する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
栃木県の異なる空間線量地域における落葉樹林林
床の放射性降下物の蓄積状況─ 1 年半後の結果─
大久保達弘1
・逢沢峰昭2
・飯塚和也3
1
宇都宮大学農学部・2
宇都宮大学農学部・3
宇都宮大学農学部附属
演習林
2011 年 3 月の福島原発事故により拡散・沈着した人工放
射性核種は東日本の広範囲に及び、放射性セシウムの沈着
は栃木県が 1 %(陸地分 22 % 中)で福島県(15 %)、宮城県
(3 %)に次ぐ。栃木県では園芸用腐葉土の生産・販売が全
国ルートとして確立しており落葉採取が専業的に行われて
きた。事故後、一端各種堆肥の施用・生産・流通の自粛が
促された後、各種堆肥は暫定許容値設定(400Bq/kg)によ
り自粛廃止に至ったが、腐葉土と剪定枝堆肥は引き続き自
粛解除なく今日に至っている。本研究は落葉広葉樹林林床
での沈着実態を把握するために、栃木県下のブナ、コナラ
の落葉広葉樹林を中心に空間線量率の異なる 3ヶ所【塩谷
郡塩谷町(2)、那須烏山市(1)】で、事故約半年後の 2011
年秋、1 年半後の 2012 年秋の二時期に、それぞれ空間線量
率、表面汚染密度、放射性セシウムの落葉、林床の落葉層
(F、H層)、鉱質土層(5 cm)の比放射能(Bq/kgDW)の
比較を行った。これらの内空間線量率、落葉の比放射能は
各地域で減少していた。さらに水平および垂直方向の放射
性セシウムの蓄積状況と落葉利用可能性について議論す
る。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
福島県二本松市の針葉樹および落葉広葉樹林にお
ける表層土壌の放射性Cs
藤原佳祐1
・佐々木道子2
・戸田浩人3
・崔 東壽3
1
東京農工大学大学院農学府・2
東京農工大学大学院農学研究科・
3
東京農工大学大学院農学研究院
2011 年に起きた東京電力福島第一原子力発電所の事故
により多くの放射性核種が森林生態系に放出された。今
後、森林に沈着した放射性 Cs が人間の生活圏に流出する
ことが懸念される。樹種および立地条件が放射性 Cs の分
布と動態に与える影響を評価するため、福島県二本松市の
森林において調査を行った。地表および空中の放射線量
(μSv/h)について現地調査を行い、A0層、表層土壌(0-5
mm、5-10 mm、50-100 mm)、代表する下層植生および新
鮮落葉については持ち帰り放射性 Cs 濃度(Bq/kg)を測
定した。樹種に限らず地域によって差がみられたことか
ら、放射性 Cs の沈着は現時点において、立地条件などの
地形的影響を強く受けていることが考えられた。同一地域
内において、樹種が放射性 Cs 濃度に与える影響は見られ
なかった。林床における放射性 Cs 濃度は土壌表面(0-5
mm、5-10 mm)に多く蓄積する一方、土壌深 50-100 mm
において、その濃度は著しく低下した。各森林の放射性
Cs 濃度比(5-10 mm/0-5 mm)は約 0.7 で、0-5 mm におけ
る放射性 Cs 濃度による差はみられなかった。

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福島原発事故から 1 年半後の森林の放射性セシウ
ムの分布状況
金子真司1
・高橋正通1
・赤間亮夫1
・池田重人1
・佐野哲也1
・三浦
覚1
・大貫靖浩1
・平井敬三1
・志知幸治1
・阪田匡司1
・橋本昌司1
・
梶本卓也1
・田中 浩1
・齊藤 哲1
・高野 勉1
・小野賢二2
1
森林総合研究所・2
森林総合研究所東北支所
東電福島第一原発事故で放出された放射性セシウム(Cs)
の森林における汚染状況の変化を明らかにするために、
2011 年 8-9 月に調査をした福島県の 3 試験地(5 林分)で
2012 å¹´ 8∼9 月に再調査を行った。森林内の地上 1 m の空
間線量率は昨年に比べて低下傾向にあったものの、Cs の
物理学的壊変から予想される放射能の減衰(前年比 86 %)
に比べて低減率(前年比 91-104 %)は小さかった。また樹
木の葉や枝の Cs 濃度は前年に比べて大幅に減少し、堆積
有機物中の Cs も全般に低下したのに対し、表層土壌(0-30
cm)の Cs 濃度は増加した。その結果、森林内の Cs 分布
は、樹木と堆積有機物の Cs割合が低下し、表層土壌の Cs
割合がいずれの林分でも約 70 % と高まった。森林の Cs
蓄積量は、川内試験地および大玉試験地のスギ林では前年
比 87 % と低下したが、それ以外の林分では Cs 蓄積量は昨
年とほとんど変わらなかった。以上、この 1 年間に森林内
の Cs は樹木や堆積有機物から表層土壌へ移動し森林内の
Cs 分布は変化したが、Cs 蓄積量に大きな変化がないこと
から森林に沈着した Cs のほとんどは森林に留まっている
ことが明らかになった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

スギ雄花に含まれる放射性セシウムの広域調査
赤間亮夫・清野嘉之・金指達郎・志知幸治
森林総合研究所
2011 年末および 2012 年末に、福島県を中心にスギ雄花
を採取し、放射性セシウム濃度を測定した。2011 年から
2012 年の 1 年間で空間線量率は 1 割程度低下していた。
両年ともに、空間線量率の高い地点では雄花中の放射性セ
シウム濃度(Cs-134 と Cs-137 の合計)も高いという関係
があった。スギ雄花に含まれる放射性セシウム濃度の
2011 年の最高値は 253000Bq/kg であったが、2012 年の最
高値は同一地点における、90500Bq/kg であり、最高値は
前年の三分の一程度になっていた。2012 年に調査した地
点につきそれぞれ対応する地点の前年の値と比較するとば
らつきがあり、一部には濃度の上昇が見られた例もあった。
ただし、全体としては前年の値の半分程度に低下していた。
このことは、2012 年における雄花への放射性セシウムの供
給状態が 2011 年とは異なっていることが考えられる。
2012 年に雄花に検出された放射性セシウムは、既に樹体内
(葉など)に蓄積されていて樹体内の転流により移動して
きたものが多く、この 1 年間に新たに吸収され雄花に蓄積
された放射性セシウムは多くはないと考えられる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
樹木による放射性セシウムの経根吸収の実態
竹中千里1
・金指 努1
・杉浦佑樹1
・小澤 創2
1
名古屋大学大学院生命農学研究科・2
福島県林業研究センター
2011 年 3 月の福島第一原子力発電所事故により放出さ
れ、森林域に沈着した放射性セシウムの森林内の物質循環
系の中での動態解明は、今後の森林域からの放射性物質の
再拡散のリスクを低減するための除染計画立案に非常に重
要である。事故後 1 年めは、葉や樹皮に沈着した放射性セ
シウムが、直接表面吸収され、樹体内を移動し、花粉や果
実に移行する現象が見出され、それらの移動・輸送を通し
ての再拡散が示された。もう一つのプロセスとして、土壌
にもたらされた放射性セシウムが根から吸収され、地上部
に輸送されるという経路が挙げられ、それを定量化し将来
予測することが重要な課題となっている。本研究では、事
故後2年目の成木の根系における放射性セシウムの分布を
明らかにし、経根吸収の有無とその状況を明らかにするこ
とを目的とした。調査は、2012 å¹´ 10 月∼12 月に、福島県
伊達市および富岡町において、コナラ、スギの成木、およ
びスギ、ヒノキ、ヒサカキの幼樹の根を採取した。イメー
ジングプレート法とγ線スぺクトロメトリによる分析結果
から、経根吸収が起こっていることが確認され、特にヒサ
カキの吸収能力が高いことが示唆された。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ササにおける放射性セシウムの吸収・輸送に与える
養分動態の季節性の影響
齋藤智之1
・五十嵐哲也1
・酒井 武1
・伊東宏樹1
・池田重人1
・赤
間亮夫1
・渡部秀行2
・大沼哲夫2
・高橋正通1
・田中 浩1
1
森林総合研究所・2
福島県林業研究センター
ササは林床に広く優占し、放射性物質による林床植物の
汚染の地域的な実態を比較する上で重要である。また、サ
サは分枝構造から各部位の齢が分かるため、放射性物質の
濃度は年毎に生産された部位毎に明らかにでき、時系列で
動きを追えるかもしれない。本研究では原発からの距離の
異なる二地域、ササ3 種の放射性セシウム濃度の測定結果
を報告する。ササの採取地と対象種は、原発から距離約 40
km の川俣町内の広葉樹林に分布するクマイザサ、同様に
約 70 km のいわき市に分布するミヤコザサ、スズタケであ
る。各ササは地上部、地下部を採取し、分枝パターンに応
じて部位毎に Cs137 濃度を測定した。植物体全体の
Cs137濃度は、川俣のクマイザサで約 6 kBq/kg、いわきの
スズタケで約 800Bq/kg、ミヤコザサで約 200Bq/kg で、
地域の空間線量率とオーダーレベルで対応したが、地域内
では分枝構造、現存量の異なる 2 種間で異なった。部位別
では空間線量率や種に因らず似た傾向を示し、葉で高かっ
た。稈の齢構成では、事故当時存在した 2 年生以前の部位
の濃度が高く、降下物が表皮に付着した影響と思われた。
今後も測定を継続し、放射性物質の動態を解明したい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
9 常緑広葉樹における葉齢に依存した 137Cs、
133Cs、および主要元素の濃度変化
佐野哲也・志知幸治・池田重人・赤間亮夫・三浦 覚・金子真司
森林総合研究所
常緑広葉樹の枝先端部における放射性セシウム(137Cs)
の動態を、自然界に存在する安定同位体セシウム(133Cs)
や同じアルカリ金属である K や Rb、アルカリ土類金属な
ど他の主要元素との比較から検討する為、これら元素の葉
中濃度を葉齢別に比較した。森林総合研究所構内のヤブツ
バキ 4 個体から各 5 本の枝を 2012 年 6 月末に採集した。
枝の齢構成を芽鱗痕から判別し(最大で 5 年分の葉が着
葉)、葉を洗浄乾燥後、齢別にまとめ、137Cs の濃度は Ge 半
導体検出器(井戸型)で、他元素の濃度は湿式分解の後
ICP-MS で測定した。アルカリ土類金属や Al は、古葉ほ
ど乾重当たりの濃度が高くなる傾向が見られた。一方、K、
Rb、133Cs などアルカリ金属は、若葉ほど乾重当たりの濃
度が高く、新葉に移動し易い元素であると考えられた。137
Cs は、事故時に着葉していた葉で乾重当たりの濃度が高
くなる傾向が見られたが、事故後に展葉した葉で比べると
他のアルカリ金属と同様の傾向が見られた。ただし、乾重
当たりの葉面積は古葉ほど減少する傾向があり、葉面積当
たりの濃度で比べると、新葉で濃度が高くなる傾向が認め
られない場合も見られた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

宇都宮大学演習林における放射性降下物による樹
体への影響
飯塚和也1
・相蘇春菜2
・大久保達弘2
・逢澤峰昭2
・平田 慶3
・石
栗 太2
・横田信三2
・吉澤伸夫2
1
宇都宮大学農学部附属演習林・2
宇都宮大学農学部森林科学科・
3
宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センター
福島原発事故により広範囲わたり飛散・拡散した人工放
射性核種の中で重要な放射性セシウム(Cs)は、同族のア
ルカル金属であるカリウム(K)と化学的性質が類似して
いるため、植物体において、K の輸送系により吸収されて
いると考えられている。K の同位体である天然放射性核
種である K40 の一部は、γ崩壊をする。そこで、樹体中に
取込まれた放射性セシウムの挙動を調査するに当たり、
K40 に着目して、放射性核種ごとに Cs134、Cs137 と K40
の比放射能(Bq/kgDW)の測定を行なった。材料は宇都
宮大学演習林(空間線量率 0.2∼0.3μSv/h)のスギ、ナラ類、
コシアブラである。供試材料の比放射能は、U8 容器を用
い、Ge検出器(SEIKOEG&G)で測定した。測定時間は、
木材で 6000S、葉で 2000S または 4000S とした。若齢木に
おいて、コシアブラの葉はナラ類のそれと比べ、非常に高
い比放射性を示した。また、コシアブラの核種ごとの比放
射能の季節変動では、晩秋は夏に比べ、Cs は 1.8 倍の増加
を示したが、K40 では 1.5 倍の増加であった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
スギとコナラ樹皮におけるセシウムの存在形態
富岡利恵・岩瀬 香・竹中千里・金指 努・杉浦祐樹・福島和彦・
青木 弾
名古屋大学大学院生命農学研究科
森林内に降下した放射性物質は表層土壌や葉、樹皮など
に強固に付着することが報告されているが、時間経過とと
もに変化する森林生態系内での循環プロセスや生態系外へ
の流出プロセスについてはほとんど分かっていない。除染
も含めた森林管理や福島県産木材利用において、樹木に吸
着した放射性物質や根から吸収された放射性物質の動態を
明らかにすることが求められている。本研究は樹皮に吸着
した放射性セシウム(Cs)の動態を明らかにすることを目
的に、第一歩として樹皮における放射性 Cs と安定同位体
Cs の存在形態を調べた。名古屋大学構内で採取したスギ
とコナラの樹皮を粉砕し、安定同位体 Cs を吸着させた。
吸着した Cs の酢酸アンモニウムと希硝酸に対する溶脱量
を調べたところ、スギ樹皮は吸着量の約 55 %、コナラ樹皮
は吸着量の約 20 % が溶出した。この結果から、安定同位
体 Cs は樹皮の陽イオン交換サイトにも吸着するが、多く
は他の形態で安定的に存在することが示唆された。また、
福島県で採取したコナラ樹皮について同様に酢酸アンモニ
ウムと希硝酸に対する放射性 Cs の溶出量を調べた結果、
放射性 Csの抽出率は 0.1∼0.5%と非常に低かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アカマツとコナラの樹幹内における放射性セシウ
ムの分布
大橋伸太1
・岡田直紀1
・中井 渉2
・高野成美3
1
京都大学地球環境学堂・2
京都大学農学部・3
京都大学農学研究科
福島第一原発事故によって放出された放射性 Cs が1年
半経過後に樹幹内でどのように分布しているかを調べた。
福島第一原発から約 20 km 南西に位置するアカマツ林か
らアカマツを、落葉広葉樹林からコナラを 2012 年 9 月に
伐倒し、ディスク試料を高さ約 5 m毎に採取した。樹齢は
いずれも約 40 年である。ディスクは外樹皮、内樹皮、木部
に分け、木部はさらに中心に向かって数 cm 毎に切り分け
た。これらは全て乾燥・粉砕した後、高純度ゲルマニウム
検出器を用いて試料中の放射性 Cs の放射能を測定した。
両樹種において放射性 Cs 濃度(Bq/kg dry)は外樹皮、内
樹皮、木部の順で高く、ディスク中の放射性 Cs放射能(Bq)
の合計は外樹皮、木部、内樹皮の順で多い傾向にあった。
木部では放射性 Cs 濃度は最外部で最も高く、それを除い
た辺材部では外側から内側にかけてほぼ一様であり、心材
部になると内側ほど低いという傾向が見られた。内樹皮と
木部の放射性 Cs 濃度はアカマツでは高さ別で違いはほと
んどなかったが、コナラでは高い所ほど濃度が高くなる傾
向が見られた。したがって樹種によって樹幹中の放射性
Cs の輸送や拡散に違いがあると考えられた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
森林の堆積有機物から鉱質土壌への水を介した放
射性セシウムの移動
小林政広1
・大貫靖浩1
・篠宮佳樹1
・蛭田利秀2
1
森林総合研究所・2
福島県林業研究センター
2011 年 3 月の東京電力福島第一原子力発電所事故で放
出した放射性物質物質は、広範囲の森林に沈着した。長期
的な影響が懸念される放射性セシウムは、初期には樹冠と
堆積有機物層に多くが捕捉されており、時間の経過ととも
に鉱質土壌へ移行すると予想される。ここでは、福島県お
よび茨城県の森林試験地における、堆積有機物から鉱質土
壌への水を介した放射性セシウムの移動について報告す
る。各試験地において、テンションフリーライシメータで
堆積有機物層通過水を採取した。また、林内雨および深度
30 cm の土壌水も採取した。試料のセシウム放射能濃度
(Cs-134 および Cs-137)をゲルマニウム半導体検出器で測
定した。茨城県の試験地については、事故直後の試料も保
管されており、これらも測定対象とした。堆積有機物層通
過水中のセシウム放射能濃度は、夏季から秋季に上昇し、
林内雨より顕著に高くなる傾向が認められた。特に高濃度
の試料には、肉眼で確認できる懸濁物が含まれていること
が多く、ろ過により濃度が著しく低下することがあった。
これらには、主に夏季における堆積有機物の分解が影響し
ていると考えられる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
森林から流出する放射性セシウムの動態とその水
文過程の影響
伊勢田 耕平1
・大手信人1
・田野井慶太朗2
・小田智基1
・野川憲
夫3
・堀田紀文4
1
東京大学農学部・2
東京大学農学部放射線植物生理学研究室・3
東
京大学アイソトープ総合センター・4
筑波大学流域管理研究室
福島第一原発事故で放射性セシウム(137Cs、134Cs)が大
気に飛散し、東北、関東地方に広く降下した。現在、森林
に多く蓄積していると考えられる。一般に137Cs は粘土粒
子や有機物に吸着されやすく、それらが森林から懸濁物、
溶存物として河川へ流出し下流へ伝播されると考えられ
る。本研究では森林内外での137Cs の動態を把握すること
を目的とし、福島県伊達市上小国川流域上流部の森林で水
文過程に沿った調査を行った。森林では、樹幹流、林内雨、
林外雨の137Cs 濃度を測定した。樹幹流、林内雨の137Cs 濃
度は非常に高い一方で林外雨は低く、また、樹幹流の137Cs
濃度は常緑樹(スギ)、落葉樹で差はなく、林内雨では常緑
樹で高い傾向がみられた。これらから新たな大気降下物は
少なく、樹幹、葉の137Cs 現存量が多いことが分かった。
森林外では、上流から 9 地点で河川水を採取し、懸濁態、
溶存態に分け各々の137Cs 濃度を測定した。溶存態はこれ
まで微量とされてきたが、懸濁態よりも濃度が高い地点も
あり無視できないことが明らかになった。また、降雨時
の137Cs の流出量の変化から、主に降雨時に流出すること
が明らかになった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
森林を流れる渓流水の放射性セシウム濃度につい
て
坪山良夫1
・橘内雅敏2
・篠宮佳樹1
・池田重人1
1
森林総合研究所・2
福島県林業研究センター
2011 年 3 月に発生した東京電力福島第一原子力発電所
の事故では周辺の森林にも放射性物質が降下した。これら
の森林の多くは河川の上流にあり、冬に雪が積もる地域も
あるため、雪解けの増水にともなう放射性物質の流出を心
配する声があった。ただ、実態を把握するための情報は必
ずしも十分とは言えなかった。そこで、事故翌年の 3 月よ
り福島県内6 箇所の森林を流れる渓流水の放射性セシウム
濃度の調査を行った。その結果、渓流水の放射性セシウム
濃度が増水時に高くなる場合があり、その時に渓流水が含
む放射性セシウムは主に浮遊物質に由来するものであるこ
とが示唆された。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ウッドチップを用いた放射性セシウムの森林土壌
からの除去
金子信博1
・中森泰三1
・田中陽一郎1
・黄 垚1
・大久保達弘2
・飯
塚和也2
・逢沢峰昭2
・齋藤雅典3
・石井秀樹4
・大手信人5
・小林大
è¼”6
・金指 努7
・竹中千里7
・恩田裕一8
・野中昌法9
1
横浜国立大学・2
宇都宮大学・3
東北大学・4
福島大学・5
東京大
学・6
福島県立医科大学・7
名古屋大学・8
筑波大学・9
新潟大学
福島原発事故により汚染した森林の除染には、伐採や落
葉除去だけでは十分でなく、処理した木材と落葉の処分も
問題である。森林土壌から、安全に放射セシウムを除去す
る方法を提案する。落葉分解試験を、二本松市のコナラ林
で 2011 年 12 月から 2012 年 12 月まで行った。6 月には、
落葉の放射性セシウム濃度は土壌の 2 倍から 3 倍となり、
土壌の約 12-18 % が上方向に落葉へと移動した。この移動
は、糸状菌が有機物上で生育する際に土壌からセシウムを
取り込むためと考えた。落葉の代わりに伐採した樹木を
ウッドチップ化し、土壌のセシウムを糸状菌によってチッ
プに集める方法を考案した。汚染地域の木材中の放射性セ
シウム濃度はまだ高くないので、森林を伐採し、現地で幹
材をウッドチップ化しメッシュバッグに入れ、隙間なく置
いて半年後に回収することで、低コストで安全に除染が可
能である。半年程度経過したウッドチップはまだ分解が進
んでいないので、安全な施設で燃焼し、灰を最終処分する。
単に伐採して放置するのでなく、この方法で森林施業を積
極的に継続しつつ、汚染木材をバイオ燃料として活用し、
復興に活用することが可能である。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
福島県の山菜の放射性セシウム汚染
清野嘉之・赤間亮夫・齊藤 哲
森林総合研究所
山菜の放射能汚染が報告されているが、山菜の採取・利
用に当たっての注意は喚起されていない。科学的データに
もとづいて対処方針をたてる必要がある。2012 年 5 月に
福島県川内村と大玉村で山菜 14 種 30 サンプルを採取し、
γ線スペクトロメトリー法で放射性セシウム濃度を計測し
た。夏には 12 種 24サンプルを採った。5 月の結果(既報)
は以下の通りで、採取地の空間線量率は 0.3∼5μSvhr
−1
、
山菜乾重 1 kg 当たりのセシウム 137 濃度(Bqkg−1
)は
100∼14,300、同 134+137濃度は 162∼24,100、後者の生重
換算濃度は 16∼2,810 であった。セシウム 137 濃度は空間
線量率と正の相関があり、採取個体が付着根を持ったり、
集水地形に育つ場合に高濃度であった。成果にもとづき、
高濃度汚染の山菜を採る危険を減らすための対処方針(案)
を作成した。夏のサンプル乾重 1 kg 当たりのセシウム
137濃度(Bqkg−1
)は 187∼19,300 で、5 月と比べて、濃度
は低下したものから増加したものまで種によってさまざま
で、成長様式の違いが関係していると考えられた。今後
データを増やし検証していく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

O18 福島第一原子力発電所事故に起因する野生キノコ
への放射性セシウムの蓄積─東京大学演習林にお
ける事例─
山田利博1
・村川功雄1
・齋藤俊浩2
・大村和也2
・高徳佳絵2
・井口
和信3
・井上 淳4
・才木道雄2
・齋藤暖生5
・辻 和明6
・田野井慶
太朗7
・中西友子7
1
東京大学千葉演習林・2
東京大学秩父演習林・3
東京大学北海道演
習林・4
東京大学演習林生態水文学研究所・5
東京大学演習林富士
癒しの森研究所・6
東京大学演習林樹芸研究所・7
東京大学大学院
農学生命科学研究科
【目的】福島第一原子力発電所事故に起因する放射性物質
の低汚染地域は東日本の広域に及ぶ。キノコは低汚染地域
であっても比較的高濃度の放射性 Cs を含むことが多い。
そこで低汚染の森林地域におけるキノコと土壌の放射性
Cs による汚染状況を明らかにすることを目的とした。
【方法】東京大学の 6 地方演習林においてキノコとその潜
在的な基質を 2011 年秋に採取し、134Cs および137Cs の濃
度を測定した。
【結果】放射性プルームの広がりの延長上にある秩父演習
林ではキノコとリターで比較的高い放射性 Cs 汚染が認め
られた。リターの汚染は千葉演習林や富士癒しの森研究所
まで広範囲に広がっていたが、一部のキノコを除きリター
よりもキノコの方が放射性 Cs の濃度は低かった。北海道
演習林および生態水文学研究所では今回の事故による放射
性 Cs は確認されなかった。また、大気圏内核実験あるい
はチェルノブイリ事故に由来すると推定される137Cs もキ
ノコと土壌で確認された。
O19 森林性ネズミ類における放射性セシウムの事故当
年の蓄積実態
山田文雄1
・友澤森彦2
・中下留美子1
・小泉 透1
・島田卓哉1
1
森林総合研究所・2
慶応大学
福島第一原子力発電所事故(2011 年 3 月)により放出さ
れた放射性物質は森林の落葉層や土壌表層に蓄積され、生
態系での動態や野生動物の影響把握が求められる。地表や
土壌中を生活空間とし、短寿命のアカネズミを対象に事故
発生の 7-9ヶ月後の放射性物質の蓄積の実態調査を行なっ
た。調査地は 1)原子力発電所から 30 km の福島県川内村
の国有林(川内調査地とよぶ、空間線量は平均3.6μSv/hr、
10 月下旬調査)と、2)70 km の茨城県北茨城市の国有林
(小川調査地、空間線量 0.2μSv/hr、12 月上旬調査)の 2 カ
所である。両調査地でアカネズミ類を 30-50 頭捕獲した。
測定した放射性物質は、放射性セシウム(半減期約 2 年の
Cs-134 と約 30 年の Cs-137)で、放射性ヨウ素(I-131、半減
期約 8 日)は検出限界以下であった。放射性セシウムの体
内蓄積の部位は主に筋肉中とされ、アカネズミにおいても、
筋肉(骨含む)中で肝臓より 4 倍高く、また毛皮より 2 倍
高かった。両調査地におけるアカネズミの筋肉(骨含む)
中の放射性セシウムの蓄積量には個体変異が大きいため、
空間線量や齢・性及び食性との関係を検討した。

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栃木県奥日光、足尾のニホンジカにおける放射性セ
シウムの蓄積状況
小金澤正昭
宇都宮大学農学部附属演習林
森林における Cs の動態を明らかにするため、空間線量
30 k−60 kBq/m2
の栃木県日光市でニホンジカ 80 頭を捕獲
した。測定部位は、筋肉、心臓、肝臓、肺、腎臓、胃内容
物、直腸糞、羊水、胎児とした。70Bq/kg 未満の測定値は
検出限界(36∼69Bq/kg)と検出限界未満(35Bq/kg以下)
に分けた。奥日光、足尾ともほぼ同じ蓄積傾向を示し、筋
肉が最も高く、奥日光では平均75Bq で、100Bq 越えた個
体は 12 % であった。足尾では平均 49Bq で、100Bq 越え
る個体はなかった。臓器類は検出限界で、腎臓>肝臓>心
臓の順に低下した。肺、胎児、羊水は検出限界未満であっ
た。また、胃内容物と直腸糞は高い値を示し、直腸糞は胃
内容物の 4倍から 5倍の値を示した。また、直腸糞と筋肉
には有意な相関は認められなかった。これは、直腸糞が胃
内容物と同じく直近の採食物の Cs 値を反映するのに対し
て、筋肉や臓器類は代謝の影響を受けた結果と考えられた。
一方、当地域の主要食物であるミヤコザサの葉は平均 249
Bq/Dwであったことから、採食によって常に放射性 Cs が
摂取されていると言える。
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O21 福島原発事故後 2 年目における捕食性節足動物へ
の放 射性物質の移 行-ジョロ ウグ モ(Nephila
clavata)の事例
綾部慈子・金指 努・肘井直樹・竹中千里
名古屋大学大学院生命農学研究科
2011 年 3 月の福島第一原子力発電所爆発事故により放
出され、その後森林地域に降下した放射性物質の食物連鎖
を通じての濃縮・拡散過程を明らかにするため、林内、林
縁部に生息する捕食性節足動物の造網性クモを対象とし
て、その虫体に含まれる放射性セシウムの濃度を測定した。
調査は 2012 å¹´ 10 月下旬に、発電所から北西 30∼35 km に
ある福島県伊達郡川俣町内の渓流沿いおよび高台の二次林
と、西 65 km の郡山市にある福島県林業試験場構内におい
て行なった。地表から 1∼2 m 高の網上のジョロウグモを
採集し、持ち帰って個体湿重を測定した。各採集地では、
地上高 1m の空間線量も併せて測定した。クモ個体は乾
燥重量測定後に粉砕し、高純度ゲルマニウム半導体検出器
を用いたガンマ線スペクトロメトリーにより 1.6 万∼35 万
秒測定し、Cs-137、134 の個体重当たり濃度を算出した。
その結果、30 km 地点の渓流沿いで採集されたクモの Cs-
137濃度は 2000∼6800ï¼»Bq/kgd.wt]、35 km 地点の高台の
二次林では 820∼2300 であったが、郡山市の大部分の個体
からは不検出であった。

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O22 放射能汚染地帯の野生生物の長期モニタリングに
向けて(環境変化と鳥類)
石田 健
東京大学
福島第一事故原発の北西方向に約 30 km 離れたおよそ
20 km四方の高線量地域において、2011 年 7 月から鳥類カ
ウント、景観観測、ウグイスの捕獲、累積線量測定など実
施している。結果の一部と現地での観察から、鳥類を始め
とした野生生物が、放射線と、人間活動低下等による環境
変化、それらの結果として生じる種間相互作用の変化など
によって、どのような影響を受けるのか、わからないなが
らも予測し、議論の種としたい。北阿武隈高地には、15 種
以上の地上性哺乳類や 150 種程度の陸生鳥類を始め、多く
の野生生物が生息している。なだらから残丘陵群の中に田
畑、牧草地、落葉樹林や針葉樹植林が混じった景観で、生
物多様性は高い。人の手が強く入ってきた生態系であり、
避難に伴って人間活動の低下がもたらす環境変化も大き
い。長期低線量内部被曝と環境変化の影響を区別すること
は容易ではないものの、長期の広域で鳥類カウントとウグ
イス等の捕獲個体を用いたモニタリングによって、少しで
も、両方の影響が明らかにできるかもしれない。ウグイス
の羽毛と地上約 12 m の枝先∼地中(15 cm)の微環境の線
量モニタリングの結果、線量変化をもとに、予測する。

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P2-001 スギ次世代選抜における個体育種価と若年後代
集団から推定された育種価の比較
武津英太郎・松永孝治・倉原雄二・千吉良治・高橋 誠
森林総合研究所林木育種センター九州育種場
森林総合研究所林木育種センターでは第 1世代精英樹間
交配家系の植栽試験地(以下、育種集団林)からの第2 世
代精英樹候補木(以下、候補木)の選抜を進めている。ま
た候補木の後代検定と第3 世代精英樹候補木の選抜を目的
とした候補木同士の交配家系の植栽試験地の造成を行うと
ともに、候補木のクローン検定を進めている。育種集団林
からの次世代精英樹候補木の選抜は試験地内微小環境の影
響を大きく受けるため個体の遺伝的能力の推定誤差が大き
い。そのためより高精度の個体評価法が求められている。
本報告では九州育種基本区のスギについて候補木の樹高
データに対し 3 つの異なる選抜時個体評価値(表現型値・
家系情報を考慮した育種価(以下、個体育種価)・形質の空
間自己相関と家系情報との両者を考慮した育種価(以下、
AR個体育種価))を算出し、後代検定林(林齢:2 年)で推
定された育種価(以下、後代検定育種価)及びクローン検
定林(林齢:5 年)でのクローン評価値との相関関係により
3 つの個体評価法を比較した。クローン評価値は AR 育種
価との間に有意な高い相関係数を示す傾向にあった。一
方、後代検定育種価と選抜時個体評価値との間の相関は小
さかった。

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福島第一原発事故後における空間線量率の低い
落葉広葉樹林の放射性セシウム動態(?)休眠
期から葉の展開後までの放射性セシウム濃度の
変化
伊藤 愛1
・加藤 徹1
・綿野好則2
・鈴木拓馬1
・近藤 晃1
1
静岡県農林技術研究所森林・林業研究センター・2
静岡県くらし・
環境部環境局自然保護課
森林内での放射性セシウム(以下セシウム)の分布や循
環の解明が、森林資源の管理のために重要な課題となって
いる。2011 年以降、東日本の森林でセシウムに関する調査
が進められているが、高線量の地域を対象としたものが多
く、低線量の地域における知見はほとんど無い状況である。
そこで、空間線量率が比較的低いクヌギ・コナラの混交林
2 地点(2012 年 1 月時点で 0.12 と 0.14μSv/h)において、
セシウムの分布と、休眠期から葉の展開後のセシウム濃度
の変化を調査した。同一個体(2 地点合計 9 個体)を対象
として、2012 年 2 月と 6 月に試料を 100 ml 採取し、乾燥
後にゲルマニウム半導体分析器でセシウム濃度の測定を
行った。採取部位は、樹体では樹皮と辺材(地上高 1 m と
6 m 地点)、葉と枝(セシウム降下後に伸長したもの)、樹
体以外ではリターと土壌 3 層(表層から 5 cm ごと)とし
た。その結果、樹体では樹皮で最も高濃度のセシウムが検
出された。セシウムは、事故後1年以上経過して展葉・伸
長した葉や枝からも検出された。2 月に林内で最も高かっ
たリター層のセシウム濃度は経時的に減少し、表層土壌の
セシウム濃度は増加する傾向にあった。

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7 森林環境における福島原発事故由来の放射性セ
シウムの移行
加藤弘亮1
・恩田裕一1
・河守 歩2
・小松義隆2
・依田優紀2
1
筑波大学生命環境系・2
筑波大学大学院生命環境科学研究科
福島第一原子力発電所の事故に伴って大気中に放出され
た放射性物質(特に放射性セシウム)は、福島とその近県
の広範囲に及ぶ森林の放射能汚染を引き起こした。しか
し、我が国の森林での放射性物質の動態についてはよく分
かっていない。そこで本研究では、常緑針葉樹と落葉広葉
樹において、林内雨、樹幹流、落葉等に含まれる放射性セ
シウム濃度の分析を行い、森林内での移行状況を明らかに
することを目的とした。調査対象地域は、栃木サイト
(137Cs沈着量<10 kBq/m2)と、福島サイト(137Cs 沈着量
> 300∼600 kBq/m2)である。本研究の結果から、森林に
降下した放射性セシウムの大部分が樹冠にトラップされ、
その後の降雨によって徐々に林床へ移行していることが明
らかになった。落葉広葉樹林では、林床で最も高い放射性
セシウム濃度が検出されたが、一方の常緑針葉樹林では、
原子力発電事故から 1 年経過した後も、大気からの総沈着
量のおよそ 25∼40 % が依然として樹冠に残存しているこ
とが明らかになった。

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林木と土壌の放射性セシウム 南相馬市におけ
る事例
益守眞也・野川憲夫・丹下 健
東京大学
原子力発電所の事故によって放出された放射性物質が降
下した福島県南相馬市において、林木や土壌の放射能を事
故 1 年半後の 2012 年夏から計測している。
成長錐などで採取した材片をイメージングプレートに載
せて放射能分布を画像化したところ、様々な樹種において
樹皮表面に強い放射能が不均一に分布しているようすや、
個体によっては木部にも放射性物質が含まれているようす
が見てとれた。
スギとアカマツについて、枝、葉、根、高さごとの幹(樹
皮と辺材と心材)に分けて放射能を定量した。葉と樹皮に
放射性セシウムが多く検出された。事故後に形成された 1
年生葉や当年葉にもセシウムが含まれていた。木部からも
検出された。とくにスギでは、樹冠に近い幹の木部で、辺
材より心材に多く含まれる傾向があった。事故直前に伐倒
されセシウム降下時に葉付きのまま林内に放置されていた
スギの木部にもセシウムが含まれていた。根系を介さず樹
皮あるいは葉から取り込まれて木部まで移行したものと考
えられる。
また、落葉落枝層と土壌表層にセシウムが多く含まれて
いることや、事故後に林内で発生した実生にも少なからず
セシウムが移行していることが示された。

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リタ-を通じた福島第一原発由来の放射性セシ
ウムの針葉樹林樹冠から土壌への移行と分布状
況
Teramage, Tesfaye1
・恩田裕一1
・加藤弘亮1
・五味高志2
1
筑波大学・2
東京農工大学
The accident of Fukushima Daiichi nuclear power plant
on March 11, 2011 was recorded as third major episode
that injects anthropogenic radionuclide materials to our
biosphere. The distribution patterns of the radionuclides
depend on different factors including land use type that
the plume could crossover. Due to large surface area
provided by tree canopy, forest acts as radiocesioum
storage pool and continuously delivers to forest floor via
falling litter and rain. Our investigation in coniferous forest
revealed that litter contributes about 23 % of the soil
radiocesium inventory and more than 80 % of the
inventory located in organic rich upper soil layer. The
Activity in Of-layer increases steadily and it likely be a
zone of accumulation and biogeochemical barrier for
radiocesium migration. Therefore, forest floor would be a
source for biogeo-recycling radiation routes and exposure
font for forest-dependant living chain including humanbeing in for an extended period of time.


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日原川流域における放射性物質の分布状況
小川雄太・山中弘己・橘 隆一・福永健司
東京農業大学
2011 年 3 月 11 日に発生した東京電力福島第一原子力発
電所の事故により、大量の放射性物質が大気中に放出され
た。その一部は多摩川の源流域にも沈着し、降雨や土砂移
動によって河川に流出している。源流域は 9割以上が森林
で、沈着した放射性物質の大部分は森林に存在する状況と
なっている。本研究では、多摩川源流域でも特に放射性物
質の濃度が高い日原川流域において、尾根部 5 地点と山頂
13 地点のリター、土壌表層部(0-5 cm)、深層部(5-20 cm)、
及び河川 4 地点の堆積物に含まれる放射性セシウム(134
Cs、137Cs)を測定した。その結果、リターでは、山頂で平
均2,211Bq/kg、尾根部で 1,128Bq/kg、土壌表層部では山
頂で 764Bq/kg、尾根部で 1,396Bq/kg、土壌深層部では山
頂で 199Bq/kg、尾根部で 546Bq/kg だった。つまり、放
射性セシウムはリターでは山頂で高いが、土壌では表層、
深層に関わらず尾根部で高くなった。また、河川堆積物で
は 160Bq/kg で、河川に流出した放射性セシウムが未だに
検出されることが分かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

震災当時、鼻血が出て心配だったというおかあさまへ、、、


色々計算してみました。


☆震災後の鼻血は一過性か?その後も継続か?:
1、一過性の場合:物理的な原因を疑います(鼻の内部に何らかの原因で傷ーーアレルギー反応や異物) ⇒傷が治ればOK 
2、継続している場合:病的な原因を疑います⇒病院へ

震災直後の鼻血はもしかしたら多かったかもしれない(⇒春休み期間に入り、統計がない。)
継続性はどうもなさそう(福島県内の保健室での聞き取り調査でも白、年間の県別保健室統計からも、地域差はみられないーー鼻疾患数の数値そのものはいくつかの県で若干高めだが、揺らぎの範囲)
⇒どうも一過性。(←病的な原因である可能性が激減するので、まずは安心してください)


☆なんらかの原因が放射性物質と仮定した場合、放射性エネルギーによって鼻血の原因になるような外傷になるか?⇒ならない。
:ヨウ素治療の服用量(メガベクレル単位を一度に服用:1MBq=1000000Bq その日のうちに70%排出&一部鼻粘液からも分泌しても鼻血はでない)から考えて、鼻の中に仮に1万Bqが停留してても、そこからの放射線では痛みも感じないし、鼻血にも直結しません。


☆では、放射性物質の粒径が大きくなったせいで、異物となり鼻粘膜に傷がつくだろうか? :
http://www.niph.go.jp/journal/data/60-4/20116004003.pdf
「131I のほとんどはガス状であるが一部は微小粒子として存在しているのに対し放射性セシウム(134Cs と 137Cs)は数ミクロンの粒子として存在」

およそ数ミクロンとは(マイクロメートル)ーー今話題のPM2.5と同レベルか少し大きいぐらいー
なので、単独の粒子だけでは鼻血と直結はしにくいです。
しかし、数ミクロンの大きさの粒子は、ほとんど上気道領域で止まる(肺まで入らない)
(ヨウ素131はガス状なので⇒肺で血管へ吸収) Csが粒子状で鼻腔に残りやすいという事は言えるかもしれません。
http://www.env.go.jp/council/07air/y078-07/mat02_1.pdf


☆粉塵としての被害の可能性? ⇒ここで問題になるのは濃度。

☆粉塵濃度を調べてみる
4月15日付近の避難所の粉塵濃度は、工事現場レベル0.2 〜3(f/L)でした。
あとの比較のため㎥単位で考えると、1ç«‹æ–¹mは1000Lなので、立方メートルあたり200〜3000個の粉塵粒子が飛んでいることになります。(⇒粉塵マスクが必須なレベルです)
http://www.env.go.jp/jishin/attach/asbestos_survey_r110427.pdf
(この時点ではほとんどの放射性粒子は雨で地表面に沈着済み。これは大気中の放射性濃度測定によって確認できます。浮遊しているのは他の粉塵の分)
比較 2012年11月分(おおむね1ケタさがりました)
http://www.env.go.jp/jishin/attach/asbestos_survey_r121220.pdf
(福島県内の避難所の数値が宮城県より高かったのは、多分換気のできない屋内退避が長く、人が長期間にわたって避難所内にこもっていたせいじゃないかな?という気がします。資料の中でも繊維の粉塵が多かったとあるので、服や毛布や布団綿の埃が沢山浮遊していたのではないでしょうか。)

国立環境研究所の粉塵調査をみてみると、
http://www.nies.go.jp/sympo/2012/pdf/2012_youshi_a04.pdf
http://www.nies.go.jp/sympo/2012/pdf/2012_slide_a04.pdf
調査時期が少し遅いのですが、初期はもっと高かったはずです。

多分鼻血の原因はこれ。


でもきっと気になると思うので、

☆放射性粒子の粉じん濃度を考えてみる
大気中の放射性粒子の放射能濃度は、、3月19日の福島第一原発構内はCs137 の2.4 × 10-3 Bq/㎤ Cs134 2.2 × 10-3 Bq/㎤= 4.6 Bq/L =4600Bq/㎥
ヨウ素が、1.4Bq/L=1400 Bq/㎥
1立方メートルあたり6000Bq。
http://www.niph.go.jp/journal/data/60-4/20116004003.pdf


☆じゃあ、放射性の粉塵濃度は?、
Lあたり何粒子あるかを出さないといけないです。
⇒1粒子あたりの平均放射性濃度。

仮に1粒子あたりの放射性濃度を1Bq未満と仮定すると、粉塵濃度があがり、
逆に1粒子あたり数Bqと仮定すると、1Lに粒子1個以下。粉塵濃度は下がります。

原発構内のCs137の粒子を例にとってみると、
例えば1粒子が2.4Bqだったら、1Lに1粒があります。
1粒子が0.0024Bqだったら1Lに1000粒が含まれ、逆に1粒子が24Bqだったら10Lに1粒です。

しかし1Lに数ミクロンの粒子が1000個もあったら、物凄い粉塵濃度になってしまってそれだけで問題がおきているはずなので、おそらく後者です。つまりイメージとして、1㎥あたり100個ぐらいの放射能24Bq粒径数ミクロンのCs137粒子が3月19日の原発構内を浮遊してたという感じではないかと思います。(←1粒子あたり何Bq集まっていたのか?は本当に見当がつかないので、どなたかご存じでしたらご教示ください)


ここでさらにイメージを持つために、花粉の量と比較します。

http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/hozen/pdf/120208-04.pdf
? 飛散量が普通の年では1㎥あたり数十個、飛散量の多い年では1㎥あたり数百個程度。
?? 過去9年間の最大値は、2008年3月の群馬県での観測値で、 過去9年間の最大値は、2008年3月の群馬県での観測値で、 1㎥あたり2 1㎥あたり2,,207個。
スギ花粉の大きさは30μmなので、約10倍です。10倍の大きさの粒子が通常年で数百個飛んでるから、異物として花粉のほうがはるかに迷惑。
http://www.jwa.or.jp/content/view/full/4691/ (←2011年は大飛散の年でした)



ただし、小さければいいかというと、そういうわけでもなく、、、

米国ガン協会コホートの2002年の調査によると、PM2.5が1立方メートルに付き10マイクログラム増えれば、心臓や肺の病気の死亡率が9%、肺ガン死亡率が14%増えるとされており、全死亡率では6%増えるととされています。

・WHOは、1立方メートルに付き25マイクログラム未満を推奨。
・アメリカ環境保護庁は、
40までが「許容範囲」とし、
66以上で「危険:一 般の人々に呼吸器病状が表れる」、
251以上で「緊急事態:心臓や肺の悪い人、お年寄りの病状は著しく重くなり、死亡率も高まる。 
・日本の現行の基準値は、1日平均で1立方メートルあたり35マイクログラムで、世界と比較すると高いとも低いともいえません。

数ミクロンの1粒子の重さが1μグラムというわけではないので、比較しにくいですが、
粒径が小さければ、原発構内の粒子は粉塵としても危険だったということが言えるかもしれません。
(アスベストの資料で拾っている粉塵は、数μmの長さの長い繊維が主です)

☆敷地外ではどうか?
ダスト濃度をみてみます。
ダストサンプリングの測定結果
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/contents/6000/5079/24/115_hp_0912_18.pdf
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/contents/4000/3698/24/1210_201103.pdf

原発周辺はさすがに高くて0.5〜最大で11000Bq/㎥までの濃度が観測されています。
(原発構内と同じく、高い場所では粉塵として危険でした)

しかし、全体にみれば、原発周辺の採取ポイントでも、立方メートルあたり数ベクレル止まりです。
大人が吸入する大気の量を平均1.5㎥/hと考えると、事故初期の原発周辺のダストが濃かった場所を除けば 震災の粉塵に紛れてしまうのではと思います。





追加 除染時の粉塵量と放射性濃度
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001wd45-att/2r9852000001wf2g.pdf

坪倉先生の熱弁

http://www.ustream.tv/recorded/23304292
第1回原子力被災者等との健康についてのコミュニケーションにかかる有識者懇談会
今朝つくったまとめ↓
http://togetter.com/li/321998
前半に神谷先生の発表があります。



参考資料 
第7回福島県県民健康調査まとめ
http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/240612shiryou.pdf
坪倉先生の内部被曝通信
https://aspara.asahi.com/blog/hamadori/entry/QH7ekB6krF



まとめのための下書き

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第1回原子力被災者等との健康についてのコミュニケーションにかかる有識者懇談会
一部抜粋(坪倉先生:1時間44分経過より)

もともと血液が専門。放射線関係ではないです。
南相馬病院にいったのは、緊急時避難準備区域で、入院が規制されて、外来を手伝ったのが最初。
医者は4人しかない。7月頭からWBCが入る。230床の総合病院
原発に一番近い唯一の稼働していた大きな総合病院でした。

南相馬市総合病院は23K地点 人口は1万人まで減って4万人まで増えました。

100mS酈からリスクがと現場で言って、「うん」と言ってくれる人はほとんどいない。
意味は分かっても、最終的な意志決定はそこでは無理です。
一番は、「寄り添って、そこで対話を繰り返す」しかない。

相馬市、南相馬市では説明会を担当。(去年の5月半ばから)
現地で最初におじいちゃんたちに説明すると、放射線とか、まったくわからない。
「やあ、おれんちの回りで線量計持ってる人だれもいねえんだ、1mとか5mとか言われても全然わかんない、だからどうなんだ」

20ミリが安全とかテレビで議論があるけれど、LNTとかICRPとか神学論争みたいなもので現場では全然使えない。

南相馬市は海側と山側と真ん中で線量が全く違う。考え方も全然違う。 9分割されている。
例えば県民健康調査と言われても違和感がある。会津とかいらっとくるでは?
浜通りといっても、相馬と南相馬でも全然違う。個別対応が必要

「あなたは風邪です、風邪では死なないです。」と説明しても納得できない。
「ご家族さんは?収入はどうされてます?ご出身は?子どもは?部活は?」といったことを聞いて採血をみて、WBCの結果をみて、ぼくはこう思いますよ。と説明して、 それで安心するか?というとそういうわけではまったくない。
多くの人は安心したのではなくて、具体的の今後の生活でどうしたらいいかが
少し見えて、前進できそうだから、安心という言葉になっているだけ。
リスクの話をわかったから安心してるわけではない。

南相馬のWBC3台目が入りました。(キャンベラ)
検出限界は2分のスキャンで 200〜300Bq/bodyぐらいです
今年の3月に南相馬の子どもさん100人測ったとして、セシウムの値を検出してしまうのは1人(0.8人)です。去年の9月には60人でした 。大人は今10人検出します。去年には70人でした。

この結果からわかることは、
1、セシウムは排出していくものである
2、子供は内部被曝が極端に抑えられている(追加の量がない)
3、100人に1人しか検出しないので、去年の3月の評価はもう出ない。
(急性期の評価ではなく、慢性期の評価に移行)
ヨウ素の検出は一回もできなかったので、厳しいです。

検出率は下がってきています。

WBCに関して
去年の7月から開始、医者は5人。誰もやったことがない、わからない、これを押せばわかりそうだ、とりあえずボタンおしてみる、結果がでる??数値がでる。じゃあセシウムは検出されてるんだと思った。

説明しないといけない。ご家族のみなさんに説明してみました。
例えば4000Bqなのでシーベルト換算すると0.1なので大丈夫ですといっても納得しない
今後、どういうふうに検査します、こういうふうにフォローしますとご説明して、初めてちょっと安心。

継続した対応が必要

一発かぎりの検査ではいけない。

丁寧な説明が必要。

しかし対応する制度がない。南相馬市は院長先生がやってくださる。他の地域は?ないです。人の調整は誰が?いないです。この病院でできると発表すると、、

去年の9月の段階で3月までの予約は1瞬で埋まった。

回らない。
入院も増える、手も回らない

書類通知に変えた→クレームの嵐

同じことが県民健康調査でも起きた、甲状腺のA2問題。
あなたの甲状腺にはA2が出ました、でも大丈夫です、という通知が来た。
意味不明で納得いかない。爆発的クレーム。
誰が説明してるんですか?コールセンターで?無理。
1対1の対話が必要。寄り添って話をしないとダメ。

番場さんという方がボランティアで対応してくださってる

説明会は20人が限界(20人超えると伝わらない)
20人以上になるとバックグランドがばらばら過ぎて無理。
物凄い手間がかかる。かみっぴらの説明では無理。

NDとなってる方が7割超えてて、南相馬の9割以上の方が1960年代の日本人の平均値より低い。
しかし大丈夫と思っていただけるか?といえば科学のデータだけでは納得頂けるとは到底思えない。

ロシアに比べれば2ケタ違う。値は低いのは確か。

値が下がっているという状況だけれどBq数値にすると下がらなくなってる人がすでにいる
(平衡状態になった)→放置はできない。
2000Bqという値は、確かに㏜換算では低いです。科学的にはそう。しかし納得は別。
継続的にみましょうとか、何を食べてるの?と細かくききながら対応して一人20分はかかります。
午後全部やって6,7人の対応が正直限界。それでも100%のご理解は無理。
しかしそういう方法しかない。


ウクライナの地産地消がはじまって数値が増えたのも知っている

一日当たり10Bq/dayぐらいのの方がぽろぽろといらっしゃいます。COOPの陰膳調査とほぼ一致。もっとも食べている人が10〜20Bq/day
ほとんどの人は増えていない。ので食べ物から摂ってる人はほぼいないです。

おかあさんたちの反応は?
「自分が食べていることが危険かどうかわからないんだから、そんな中途半端なことを言うな」と言われます。
もっともです。

南相馬市の市立病院で魚とか肉とか
産地を選んでいる人といない人で差がでるか?と調べてみると、ほとんど差がないです。
水も差がない。
ジャア大丈夫です、とお伝えはする。
しかし、今みなさんが必要とされる情報をタイムリーに出し続けないといけない。

南相馬から飯舘村へ避難→後悔しているお母さん方がたくさんいらっしゃる。
調べてみて差はないです、そうお伝えもします。しかし明確なことは言えないので、継続してみていきましょうという話になります。


上大田の21k地点で去年の7月にご説明したとき。
聞かれたのは「布団を外に干していいの?」「この干した食べ物は大丈夫か」「ここの地形のここに行ったときにこの線量は大丈夫か」
と具体的な質問ばかりです。そういう疑問に対応していかないといけない

避難した人には慢性疾患や、うつ病が増えてしまっている、そちらも一緒に対応していかないといけない。
一つ一つゆっくり話を聞いて、一つ一つ答えていくことに尽きる。


質疑応答:
頭で理解することと心で判断することは違う
慢性疾患の悪化は非常に大きな問題。肥満、高脂血症、高血圧 糖尿病、うつ病。
印象として増加している。

神谷先生の質問:
まさしくリスクコミュニケーションを実践。
私達もそういうことをやりたい。地域にはいっていかなければできない。
そういう上で、ものすごく時間と手間がかかる。
そういうコミュニケーションを必要としている多くの住民がいる。
物理的にマンパワーとして対応するためにどのぐらの人が必要になってきますか?

坪倉先生の答え:
例えばWBCを申し上げると、一番ネックになるのが医者の説明
WBC自体が医療行為ではないので人件費が賄えない。病院がダメージ
一人一人と話をしていくことに最も時間が必要
100人/日、2200分かかる、専属で10人とか医者が必要。
しかも継続的に同じ人が対応できるほうがいい
理想的には現場で1年とか2年とかずっと来てくれて対応してくれると嬉しい。
自分も専門家ではない。他の人にやってといったとき、医者も専門外なので困る。
正直誰もいない。
県や国では説明されているとお聞きしていますが、
機械の校正とかは例えば東大の早野教授がいろんなとこを飛び回ってチェックしてOKを出してる。
彼がいなくなったら全てが潰れます。
僕個人としては、ごく何人かの人が全てを回ってなんとかしている状況。
ぜひ現地で長く仕事をしてくださる人がいればと感じます。

人数としては、20人とか30人とか1病院あたりに必要。

長瀧先生の質問:
先生自身は現在の放射線が健康に影響がある問題ではないとわかっているけれど、実際の対応ではどうされていますか?

坪倉先生の答え:
県民健康調査などを見ると、9割の方はコレステロールの悪化で再検査です。
セシウムも一つのカテゴリー。トータルで考えないといけないとお伝えしています。
しかし、それは1対1の対話だからできることでメディアで一斉にでことではないと正直思います。

参考レベルについて

おそるおそる、甲斐先生に質問をしてみました


質問のメール

拝啓

甲斐先生
先日は丁寧な対応をしていただいて、本当にありがとうございます。
甘えついでにもう一つお聞きしてもよろしいでしょうか?
(お忙しい場合は、「無理です」とするーしてください)


質問は「日本政府は、正式に(ICRPの現存被ばく状況の防御態勢に準じた)参考レベルを発表していますか?」です。

この質問は、こちらの理解の度合いを確認しないと答えにくいのではないかと思うので、以下に
私自身の認識(農家のおばちゃんがネット情報から判断したレベルなので、間違ってる可能性大です)
を書かせてください。(ドラフト111と、ICRP103、109その他を通読済です。ICRPドキュメント全体は
http://d.hatena.ne.jp/leaf_parsley/20120603 のような感じで読んでいます。)

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時系列に書いていきます。

事故前には2007年勧告のとりこみのための中間報告が出されています。(まだ検討中で間に合わなかった。)

3月11日に震災

3月21日のICRPからの通達(2007年勧告に従うようにと通知が来ました。)
http://www.u-tokyo-rad.jp/data/fukujap.pdf

4月10日 正式に、緊急時準備区域と計画的避難区域の指定が行われます。その際にはICRP2007年スキームによって、防御態勢を整えていくという通達がありました。
http://www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2011/genan022/siryo_ex.pdf
再リンク(一部訂正のため差し替え)
http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/info/bougokijun.pdf
http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/anzen/soki/soki2011/genan_so22.pdf
http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/anzen/shidai/genan2011/genan022/siryo1-2.pdf

放射線防護の線量基準の考え方 第22回会議の資料 4月10日  (イメージ図)
http://www.nsc.go.jp/info/20110411_2.pdf

4月27日 首相官邸HPでICRP準拠で行うとのPR
放射線から人を守る国際基準〜国際放射線防護委員会(ICRP)の防護体系〜
http://www.kantei.go.jp/saigai/senmonka_g5.html

4月のこの発表は、2007年勧告の国内取り込みは法的な枠組みとしては間に合わなかったけれど実質的には
それに従うという意味と受け止めました。すでに当初より、各省庁、それぞれに対策に走っておられました。

5月19日に「放射線防御の助言に関する基本的な考え方」が公開
http://www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2011/genan033/siryo6.pdf
(再リンク)
http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/anzen/shidai/genan2011/genan033/siryo6.pdf
この時点で、福島事故の影響が、現存被ばく状況と緊急被ばく状況が混じった状況であることが理解。
自分なりには、20K圏内と計画的避難区域と緊急時準備区域は緊急被ばく状況に該当。
その他の地域で1mSv/y以上で居住が継続できる地域が現存被ばく状況であろうと推測しました。



7月19日 今後の避難解除、復興に向けた放射線防護に関する基本的な考え方について が公開
http://www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2011/genan054/siryo.pdf
再リンク
http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/anzen/shidai/genan2011/genan054/siryo4.pdf

緊急被ばく状況を経ずに現存被ばく状況に至っている地域がある点について言及されました。
緊急被ばく状況を経て現存被ばく状況に至る場合は、一旦避難なり、避難準備なりの状態をへて、その後、現存被ばく状況への移行をもって、居住の許可を与えられることになるけれど、今回の場合は、最初から居住の許可が認められている地域が広かったです。したがって、最初から実質的な現存被ばく状況にあったと言えます。
それは、ある意味、汚染の度合いが低かったおかげですが、あとから現存被ばく状況であることを示されるという経緯をたどりました。
数値的には緊急被ばく状況の参考レベルの最下限と現存被曝状況の参考レベルの上限が同じ数値であり、緊急被ばくでの閾にそれを選んでいるために、矛盾は起きていません。けれども、腑に落ちない部分があったのは否めませんでした。


8月30日 平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の
事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法 の制定
http://www.env.go.jp/jishin/rmp/attach/law_h23-110a.pdf
この法律は除染と廃棄物処理に関連する法律だったのですが、福島の汚染が外部被曝メインであることを考慮すると、
実質的に 参考レベルへの法的な枠組みを与えてしまった法律と認識しています。
翌日には文科省で放射線審議会を踏まえた基本会議が開かれていて、以下の資料が公開されています。

文科省の8月31の第40回基本会議より
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/002/gijiroku/1311781.htm
国際放射線防護委員会(ICRP)2007 年勧告(Pub.103)の国内制度等への取入れ(現存被ばく状況関連)に係る論点整理
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/002/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2011/09/05/1310658_1.pdf



この間にも各省庁はそれぞれに放射線防御対策を進行
環境省によるモニタリングの整備、廃棄物管理、復興庁によるメッシュ調査、食品安全委員会による食品摂取基準の評価、厚生労働省による食品基準の検討、文科省による学校での線量制限値の設定と給食検査、農林水産省による各通達、経済産業省による避難区域の公示と補償その他への対応。消費者庁による流通食品の監視、等々

9月30日 緊急時避難準備区域の解除 (公示は経済産業省)
http://www.meti.go.jp/press/2011/09/20110930015/20110930015.html
http://www.meti.go.jp/press/2011/09/20110930015/20110930015-2.pdf
公示(引き続き警戒区域の公示)
http://www.meti.go.jp/press/2011/09/20110930015/20110930015-7.pdf
その地図
http://www.meti.go.jp/press/2011/09/20110930015/20110930015-10.pdf
解除前の地図
http://www.meti.go.jp/press/2011/09/20110930015/20110930015-12.pdf
3月30日時点の地図
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/20120330_02g.pdf

11月25日 小さな変更(地点追加)
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/111125c.pdf


11月11日 平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の
事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法
に関する基本方針が公開

http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=18581&hou_id=14431
8月30日に出された同法律は、当初は汚染物質をどう処理するか?という切羽詰まった必要に応じて制定されていたと
思うのですが、実質的にその対処は外部被曝管理を意味してしまうため、おそらくこの法律と整合をとって
現存被曝状況への対応を迫られたのだろうと推測します。
(p5において、数値目標が掲げられてしまっているため、実質的な参考レベルはここになってしまっています。
しかし、現存被曝状況における参考レベルは、先験的に決定することができない、という前提にも反してしまっているし、
利害関係者との調整、透明なプロトコル、といった注意事項も無視した記述に思います。)


12月26日福島第2の緊急事態宣言の解除
http://www.nisa.meti.go.jp/oshirase/2011/12/231226-4-1.pdf
(第一は16日に冷温停止と安定化宣言まで。。)

26日時点の詳細資料
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/111226_01a.pdf
(しかし 「参考レベル」 という形での数値設定の発表はみあたらないような、、、)

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どうも、8月30日制定の法律と、その解釈にあたる11月11日資料が、ICRP準拠とは別の流れを作り出してしまい、
結果として、正式な形での参考レベルの制定ができていないように思うのですが、、
どうなのでしょうか?


甲斐先生より

返信が遅くなりましたことを最初にお詫びします。
〇○さんの質問に対して次のようにお答えします。

質問は「日本政府は、正式に(ICRPの現存被ばく状況の防御態勢に準じた)参考レベルを発表していますか?」です。

参考レベルとは、計画時被ばく状況(放射線、放射性物質を計画的に利用する際に、管理された状況で受ける通常の被ばく)以外の被ばく状況(緊急時、現存時)に使用される管理目標値です。この点からだけから判断すると、福島事故以外に設けられたさまざまな基準はすべて参考レベルであるといえます。

〇○さんの疑問は、政府はいろんな数値基準を設定しているが、それらば参考レベルの意味合いになっているのか、という問題意識と理解しました。

問題は、参考レベルがいかなる意味の基準として用いられているかです。ICRPのいう参考レベルは最適化の上限値として考えていますので、数値を下回ればそれ以上の対応が求められないことを意味しません。しかし、法律上は、判断基準として用いていますので、ある判断(例えば、避難をさせるのを20mSv/y)のために用いていて、その数値だけからは最適化という放射線防護で最も重要と強調している対応が含まれていないことになります。

ここに社会と政府の示す基準(参考レベル)とに大きなギャップがあると感じてきました。一番よい事例が、昨年の4月の学校校庭を使用判断基準として設定した3.8μSv/hrです。この数値が政府やICRPのいう参考レベルの数値に対する不信感となっていったことはご承知の通りです。

放射線防護は、リスクを前提にした防護理論の上に立っています。つまり、いかなる被ばくもその線量に応じたリスク(影響が発生する確率)がある。これは、あるしきい線量(これ以下ならな影響は絶対にない)を想定することが困難であるという現在の科学的な認識から来ています。実際のリスクはさまざまな要因(個人の生活習慣や遺伝的背景)に影響を受けると推測されるので一律のリスクを推定することは実際上困難ですが、あくまでも防護対策をとるべきか、とるとしたらいかなる対策をとるのかを判断する目安となるべくリスクを用いています。

汚染対策の基準としても、環境省は1mSv/yを設定しました。確かに中期的(5年程度)にはこれを目指すべきでしょう。しかし、短期的には、実際上は、難しい地域もあるし、比較的レベルの低い地域もこの基準を超えれば同じ対応がとらるとことになり、参考レベルが目指す高い汚染地域から優先して低減化していくという意味合いがなくなる。汚染するかしないかの判断基準として使用されてしまい、最適化していくとうリスク本来の対応がとられない可能性が高くなる。

以上のように考えると、法律や行政のとる判断と、参考レベルによるリスク低減対応のための判断にはギャップがあることがわかります。法律はどうしても参考レベルを随時見直していくということができません。リスク管理の課題と考えています。

甲斐倫明


でした

ICRPのドキュメントをどう読むか

暫くICRPのことばかり議論していたので、個人的にICRPのpublication群をどう読んでいるかをメモしておきます。(別に専門家ってわけじゃなくて、1年あれらを読みながら自分なりに考えてきたことっていう程度です)



ICRPの委員会は、(PDF)http://www.icrp.org/docs/ICRP_Membership.pdf こういう構成をもっていて、5つの委員会と、メイン委員会があり、それぞれボランティアの学者さんで構成されています。5つの委員会は、1、影響(健康への影響ですね) 2、線量(線量評価をどう行うか 3、医療(なんといっても医療関連の放射線利用は多いので) 4、防御 5、環境での放射線  です。
各publicationは、それぞれの分野に注目しながら、必要な変更をかけるときに出されています。2007年勧告は、久しぶりにかなり包括的な内容になっていた勧告だったんじゃないかと思います。
長いICRPの歴史の中で、1と2の検討は、実質的な根幹になってきた部分で、個人的には、ここはしっかり理解できたらいいなあと望みつつ、中々力及ばず泣いている分野です。



2007年勧告から続くpublicationで特に注目されてきたのは4の防御の実践部分にあたるところです。 そのコンセプトは、昨年のICRPシンポジウムの発表で垣間見ることができます。(PDF)http://www.icrp.org/docs/Jacques%20Lochard%20Application%20of%20Recommendations.pdf
下手に概略説明をするより、ぜひPPをご覧になってほしいのですが、、サイエンスと価値観と経験を総動員して、みんなで放射線防御を築いていきましょう。ということなのかなと読んでいました。
数値的な規制より、原則を、とか、可能な限り利害関係者に参加して自発的で効果的な防御を目指そう、ということと同時に過去の科学の膨大な蓄積を生かしていこう、というのもあって、それは両輪だろうなあと感じます。
科学と人間のバランスをとりながら、放射線防御を実践することが求められているのではないでしょうか。



そこで、あえて原点にもどるんですが、、ALARAとLNTは確かにICRPの慎重さを最大に発揮した部分ですが、その前に慎重かつ科学的作業があって、それなりの数値も提示してあることを忘れてはいけないです。ALARAとLNTだけでいいなら、そんな綿密な作業、全く必要ありません。


2007年勧告は、基本的に被ばく状況を計画被ばく状況、緊急被ばく状況、現存被ばく状況の3つのカテゴリーに分け、それぞれに応じた防御の方法を論じているドキュメントです。
 例えば、昨年武田教授が「放射線従事者が1m㏜以内でなければいけないのだから、一般市民もそれを守る必要がある」と主張して、一般人を混乱に陥れていましたが、カテゴリーを分けてあるのは意味があるし、それぞれの目標値は危険の閾値ではないです。
つまり、 ICRPに出されている数値は、2つの種類があります。1つは、細かいエビデンスや調査から得られている、「どこからが本当に危険なのか?」という数字。もう一つは「十分に防御的であるためにはどこを目標にすればいいか」という数字です。 
このどこを目標とすればいいか?という値が、さきほどのカテゴリー分け(計画、緊急、現存)によってそれぞれ決定されています。(そのシチュエーションに応じて、できるだけ低い値が選ばれています。 防御的であるためにですね。)


この1年、自分でも右往左往を繰り返していましたが、自分が混迷してしまった大きな理由は、「心配しないといけない数字」と「防御的であるために目指すべき数字」の区別が中々つかなかった点でした。
妊婦さんの例をとれば、「100mSv以下の被ばくであれば、堕胎とか考えなくていい」というのが心配しないといけない数字です。そして、十分防御的であるための目標値が、ALARAによる1mSvなわけです。
(前者のラインは核種やシチュエーションや該当被害によって異なる数字になります) まあ、色々合わせたうえで、「まだわかってないところもある」も含めて後者の目的値になってるんだと思うんですが、、 ニュアンスとして 「明らかに心配」な線と「よくわからんけど下げとこうか」線の違いを意識することは、大事なのじゃないかと思っています。(だからっていって、下げなくていいわけじゃなくて、下げたほうがいいに決まっています)


111の枠組み(現存被曝状況)の中で、放射線感受性の高い子どもたちや妊婦さんへの留意というのは、「まずは参考レベル以内ならそんなに心配はないです。 しかし、やっぱりALARAに原則に従って、1mSvを目指して、合理的に下げていきましょう。 その際に、放射線感受性の高い人たちは、優先的に考慮していきましょうね」 という意味合いと受け取っています。





カテゴライズされて設定された目標値は、その状況において有効な目標値です。例えば、緊急時の作業者の場合は、その作業に参加するかしないかという地点でコントロールが効くので、そこで数値をかましてあります。 しかし、緊急被ばく状況でも、現存被ばく状況でも一般人は状況に対してほとんどコントロールが効かないです。 避難するか、ゆっくり地道に、避けたり除染したりしないといけない。その状況で規制数値をきちきちにかましても意味がないーー−というのが、現存被曝状況において参考レベルを設定する、理由なんだと思うのです。現存被ばく状況(及び緊急被ばく状況)の参考レベルは、計画被ばく状況での規制値と異なり、その時の状況で可能な許容上限値です。同時にこの参考レベルは曝露状況や、地理的条件、経済力、時間的要因その他もろもろで、可変です。状況に応じて最適な値を選んでくれと言ってる。つまり、決まった数値ではなく、「下げていくという原則」を重んじた、自由度の大きい、ある意味現場を信じた規定です。ここを扱ってる時に、他のカテゴリでの「固定された規制値の概念」を混同しないようにするのは、現存被ばく状況の中で生活していく場合に、とても大事な点なのじゃないかと思います。
現状が、ほぼ安心であることを理解し、落ち着いて合理的に被曝線量を下げていければいいなあと願います。
(ついでに、今後、もし参考レベルが下がったとしても、それは実質的にそれ以上の線量がなくなったという意味でしかないので焦らない。)




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー補足(自分の誤解部分)−−−−−−−−−−−−−−

まず、居住許可(正当化)があって、それから参考レベル。
参考レベルは被ばく線量をさげていくための目安。



buvery ‏@buvery
それは、正当化。参考レベルと関係ない。参考レベルは、正当化をした後の最適化の過程。RT @leaf_parsley: @kikumaco  基本的に、緊急被ばく状況から現存被ばく状況への移行は、ここまでなら居住可能というラインを出すことですよね?

菊池誠 ‏@kikumaco
@buvery @leaf_parsley 参考レベルは、居住許可が出てから設定するのであって、居住許可のための設定ではないと理解しています

buvery @buvery
兼ねてません。参考レベルは、個人の年当たりの実効線量で書くように、とあり、政府の決める居住(=正当化)とは無関係。RT @leaf_parsley: @kikumaco あれ兼ねてしまってないですか?正当化の瞬間と最初の参考レベルの設定って