『響け!ユーフォニアム3』1話 「過去と現在の久美子」をつなげるアバンタイトル。

今回はユーフォ3期1話の中でも素晴らしかったアバンタイトルのシーンを振り返ってみたいと思います。

1年生の春と、3年生の春。

久美子の3年生としての朝の風景が描かれるアバンタイトル。1期1話、1年生の久美子を想起するようなカットが多々あって、対比や意味の重ね方が面白かったです。

 


例えば久美子の部屋の机。高校の教科書が乱雑に置かれているところに「高校生活に慣れた久美子」が伝わってきますし、あすかとのエピソードで重要なプロップとして使われていた「たのしいユーフォニアム」が教科書と一緒に置かれていることで、高校生活の中でその教本の意味がアップデートされたことを感じさせます。

 

久美子の部屋にあるサボテンは1期1話(画像左)で丸い形だったものが3期1話(画像右)では二つのコブができていました。このサボテンは1期でシリーズ演出を担当していた山田尚子さんのアイデアで、その存在理由については1期1話のコメンタリーで山田さんが話されていました。

久美子は女の子です。妹なんです。結構空気読むというか、周りを見る子なんですよね。自分の好き嫌いを公に言わなくなるというか。久美子の部屋だけでは自分の隙ができる。好きなことをさらけ出せるというような。お姉ちゃんはいっぱい叱られたりとかあった分、天真爛漫な部分があるんですよね。「私これ好き」っていうような強さを持ってる。妹は怒られなかった分、自分を出すことがあんまりうまくないのかなと。

つまりこのサボテンは久美子の中にある「こうしたい」だとか「自分はこれが好きだ」っていう感情を具現化したものみたいなんですよね。そう考えるとこのサボテンは、自室の世界だけなく、誰かに「嫌い」「好き」を言えるようになったり、自己表現ができるようになった久美子の成長にリンクしているのではないかと思います。狙ったわけじゃないと思いますが、このとき山田さんが口にした「私これ好き」は、3期ディザービジュアルに書かれている「私、北宇治が好き」とも重なっているように感じました。また、1期1話の時点で考えられてきた久美子の「好き」が3期においても大事な要素として残っているところに、物語に一本通った筋の強さを感じます。

 


一方で牛乳を飲んだコップをほったらかして家を出ていく久美子は、1期1話(画像左)で麦茶を飲んだコップをほったらかしていたころから変わりなかったりするのが面白いです。最上級学年といえど未成熟な思春期の高校生っぽさもあるという、地に足付いた人物のワンシーン。ここも朝の風景の一つとしてさらっと映しているのが良かったです。

 


通学路のシーンは1期でも鮮やかだった桜の景色に目を引きますが、個人的に印象に残ったのは信号機のカット。1期1話(画像左)では吹奏楽部への入部をためらう久美子の心象風景として、長い赤信号の演出がありました。葉月たちに本音を話す久美子(つい口から出してしまったわけではなく)を映すシーンとしては初めてで、1期1話の物語上のフックにもなっていました。3期1話(画像右)では音楽に合わせて軽快に青信号で駆けていく久美子を映します。ポジティブな感情演出の一例として考えれば珍しくないですが、1期1話と重ねると『響け!ユーフォニアム』シリーズだからこその意味が生まれます。
1年生のころは「吹奏楽部」という横断歩道の先へ進むことに躊躇いがありましたが、3年生になった久美子はその横断歩道へ躊躇なく、まっすぐ北宇治高校へ走りだせる。その行動に久美子の今までの物語が詰まっているような気がして、とてもグッときました。ここでも「私、北宇治が好き」という久美子の心情に繋がっているようで、今の久美子の北宇治吹奏楽部への熱量を示すようなシーンとしても印象に残りました。

 

背景とレイアウトで語る久美子の過去と現在。

なんとなくですが、アバンタイトルは1期1話もそうですし、今までの場面を思いだすようなモチーフが多かったような気がします。

短いBGオンリーのカットも久美子ベンチだったり、通学路にある公園だったりと盛りだくさんでしたが、個人的に巧い映し方だなと思ったのは麗奈と合流するシーンの望遠カット。京阪宇治駅前の横断歩道と、坂道になっている国道7号線を映すことで1期5話Aパートの終盤と重ねているように感じました*1。

1期5話のこのシーンは、久美子に対して初めて素の笑顔を見せる麗奈が印象的でした。そのうえで、3期1話のアバンタイトルで当然のように一緒に通学する二人の姿が良かったです。望遠で国道7号線に沿って二人を映す、というレイアウトの重ね方によって3期1話の関係性に至るまでの経緯を自然と想起させてくれました。

 

アバンタイトル終盤では『リズと青い鳥』のラストシーンの白壁が登場します。『リズと青い鳥』では画面下手へ向かって歩いていた希美とみぞれですが、3期1話はそれと対象的に上手へ向かう横位置のカット。背景とレイアウトによって重ねさせるようなこのカットは、1年生の時のできごとも2年生のときの物語も通り抜け、3年生として登校する風景を見せる...といったような構成でしょうか。

その場所にいること、そしてその場所から特定のレイアウトで描くことで、久美子の過去と現在地を描く。シリーズファンとして心揺さぶられる演出でした。やりすぎると意味深すぎて内輪ネタっぽく感じてしまうこともある演出ですが、軽快なカット割りが「過去と現在の久美子」を自然に結びつける役割を担っていたと思います。

 

アバンタイトルの登校シーンは原作にはなく、アニメオリジナルのものです。1期1話の景色と3年生の久美子という「過去と現在の久美子」を結びつけることで、『響け!ユーフォニアム』シリーズで味わったわたしたちの映像体験も重ねてくれたような、素晴らしいアバンタイトルの演出でした。

*1:1期5話は京阪宇治駅前の横断歩道を南に渡ったところでの一幕でしたが、3期1話は駅側である北に渡ったところでのカットなので、微妙に位置が違います。

【11月25日】個人的京アニ関連ニュースまとめ

『たまこまーけっと』コンパクト・コレクションの特典にオープニング&エンディング絵コンテ集が付くみたいです。

tamakomarket.com

来年2月21日に発売される『たまこまーけっと』のコンパクトパッケージ版ですが、京アニショップ購入特典でOP・ED絵コンテ集みたいです。
すでにDVD版と単巻とブルーレイボックスを持ってるので今回はいらないかなぁ~とか思ってたらまさかの豪華特典…!買いです…!!!

本編コンテはブルーレイボックスの特典冊子に抜粋として載ってるんですが、OP・EDは初ですかね。

個人的な見どころは芝居の細かいOPにどこまで山田さんのコンテ指示が載ってるのかというのと、EDのコンテにどんな山田端書が載っているのかというところでしょうか。

『MOON FIHTERS!』公式サイトに丸木宣明さん、秦あずみさん、高山真緒さんのロングインタビューが掲載されてます。

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京アニ公式でこれだけ長いインタビューも珍しいですね。特設ページを作ってて気合貼入ってますし、『草原の輝き』で吉田&堀口コンビを復活させたり、KAエスマ文庫の力の入れ具合が半端ないです。

インタビュー内で一番好きなのはここですね。

――賀東先生の小説の面白さに匹敵する魅力的な絵を書ける方というところで、お話があったそうですね。

丸木:名前を挙げていただけるのは、一人の絵描きとしては大変うれしい事ですし、キャラクターデザインにも興味はありました。一方で、制作現場を任された立場でもあったので、自分のやりたいという気持ちだけで引き受けていいものかと悩んでいたんです。そんな時、アニメーターの先輩である石立太一さんが「やるんだ!」と背中を押してくださったこともあってお引き受けしました。

その他、丸木さんの設定画が多く載ってるのも嬉しいです。瞳の描き方とかは『ツルネ』っぽいですね。ゴツゴツした顎の感じとかはかなりリアル寄りで、このままアニメ化したら京アニ作品中で一番リアル寄りな画になりそう。

12月に「私たちは、いま!!特別展」を町田と京都でやるみたいです。

www.kyotoanimation.co.jp

町田はアニメガ×ソフマップ 町田店。京都は京都駅ASTY京都 京アニグッズストアで12月中に実施予定。町田は数年前の原画展で行って以来だな~…なんだか原画展でしか行かない街というのができてきた気がする…仙台とか…。

京都駅の京アニグッズストアは一度行ってみたかったので嬉しいです。前後半で総計100点以上は展示がありそうですね。久々の京都旅行になりそうで今から楽しみです。

山本寛さんのブログで「師匠9」が投稿されていました。

ameblo.jp

山本さんのブログは正直、いろんな意味でなかなか読んでて辛い記事が多いんですが、木上益治さんとの思い出を語る「師匠シリーズ」の記事は面白くて、貴重で、心が暖かくなります。

今回は『宇宙大帝ゴッドシグマ』OPの原画をノンクレでやっているらしいという話。ゴッドシグマの頃は1980年で、そのころ木上さんは『怪物くん』をやってたからノンクレなのかな~って思って調べて見ると、この件について奈須川充さんが言及されてました。

山本さんの木上さん記事はたしかに思い違いがあったりするのかもしれないですけど、こうして情報がでてくるキッカケになってるのはありがたいなあと思うのです。
あと、話し方が『ギチギチみかん箱』で荒谷さんが描写する木上さんと同じなのがクスッときちゃいます。頭の中で白菜の木上さんがぼんやり浮かんでくる…。

「『ツルネ -つながりの一射-』公式ファンブック」を買いました。

『ツルネ-つながりの一射-』の公式ファンブックが10月23日に発売されました。
正直あんまり期待してなかったんですけど、KAエスマビジュアルブック文庫編集部、今回はグッジョブでしたよ…!

目次とページ数は以下のとおり。

  • キャラクター紹介・キャストコメント…42ページ
  • ストーリープレイバック…25ページ
  • インタビュー&コメント…35ページ
  • メイキング「感情を動かす色彩の世界」…2ページ
  • 山村卓也監督イラストコメント…1ページ

その他、ディザービジュアルだったりグッズ紹介のページがありました。

「ストーリープレイバック」に載せてる線画のチョイスが良い

各話のあらすじを載せている「ストーリープレイバック」が各話2ページずつあるんですが、その中で「クリエイターのイチ推し!」と題し、各話のスタッフがチョイスした原画や演出修正を載せていました。このチョイスとスタッフコメントが面白かったです。

個人的に気になったのは、まず8話。石原さんがチョイスしたのはここの原画です。

このカットなんですが、スタッフコメンタリーで原画は隈嵜那美さんが担当されてるという言及があったんです。原画の線や原画番号の描き方で他パートを追えそうだなという意味で、石原さんナイスチョイスでした。

同じ理由で山村さんがピックアップしている12話。

このカットは安藤京平さんの原画とスタッフコメンタリーで言及がありました。こっちは原画番号の描き方にすごく特徴があったので深掘りのし甲斐がありそうです。
山村さんのコメントではレイアウト段階から安藤さんがカメラワークを決めたと書かれていました。コメンタリーでも3Dのカメラワークを山村さんと安藤さんで何回もチェックした、という話をされてましたし、安藤さんの熱量がこもった原画が見られて眼福です…!

9話は髙橋真梨子さんがここのカットの演出修正をチョイスしています。

演出は以西芽衣さんなんですが、端書の多さとそこから伝わる情感がとてもよかったです。

"弓道そのものに復讐してやる"という決意のカオですが、くやしさと怒りがこみあげてきて涙がでそうなニュアンス*1

さらにその脇には

泣きそうな顔ではない*2

ともありました。すごく細かいニュアンスではありますが、このシーンの二階堂の感情として、落ち込む、悲しい…ではないんですよね。西園寺の門戸から拒否されたことに対する復讐心…いわば「血の涙を流しかけた」二階堂の感情なわけで、それがよく伝わる端書です。
この話数のスタッフコメンタリーには以西さんも参加されていて、表情にこだわったという話もされていました。光の反射や光源についてもこだわった、という話がありましたが、掲載されている演出修正にも細かく指定をされていて見応えバツグンでした。
今後の以西さん演出回には表情と光の使い方に要注目です。

その他、各話のキャプチャーとキャプションがついている「PICK UP」という項目があるんですが、演出について言及しているキャプションもあったりして、「ストーリープレイバック」ページ全体が面白かったですよ。

10話はこのカットなんですけど、キャプションがめっちゃ演出語ってて好きです。

1年前、二階堂が辻峰高校にやって来た頃を描いた回想シーン。校舎に掛けられた温湿度計の針は、ぎりぎりのところで安全圏を保っている。廃部寸前の弓道部の状況や、私怨による復讐を遂げようと目論んでいる二階堂の心理状態を表しているようでもある。*3

ボリューミーなスタッフインタビュー

あとは「インタビュー&コメント」のページあるスタッフインタビューがボリューミーで読みごたえありました。京アニスタッフに絞っても24ページはあります。インタビューを受けている京アニスタッフとページ数は以下のとおり。

  • 山村卓也さん…4ページ
  • 門脇未来さん…4ページ
  • 丸木宣明さん…4ページ
  • 落合翔子さん…2ページ
  • 篠原睦夫さん…2ページ
  • 秦あずみさん…2ページ
  • 唐田 洋さん…2ページ
  • 船本孝平さん…2ページ
  • 山本 倫さん…2ページ

山村さんのインタビューは映像作家としての山村さんの芯に少し近づけるような内容で面白かったです。

インタビュー冒頭で2期の作品づくりを問われた山村さんですが、こういったコメントをされてました。

観た人の「心をえぐる」ような映像が作りたいと思いました。世の中にはたくさんの映像作品があって、残念ながら忘れ去られてしまう作品もあります。ですが、その中でも「あの映画のこのシーンが好きだ」とか、心に刻まれるものがあると思うんですね。それは、映像に「心をえぐられた」ということなのだと思います。これまで『ツルネ』以外の作品で各話演出を担当した時にも、常に「人の印象に強く残る映像を作りたい」と思ってやってきました。(後略)*4

以前から山村さんの演出回はここぞという時にギアを入れ替えるような瞬間があるな、と感じていたので納得のコメントでした。
例えば『響け!ユーフォニアム2』10話の山村さんコンテ演出回。Aパートのここぞ、は久美子の姉と味噌汁を作るシーン。姉自身の今までの失敗と鍋についた焦げを重ねるんですけど、ここのシーンだけ会話劇でありながら映像が登場人物の感情を先だって語る、という仕掛けがありました。その仕掛けがあるからこそAパートラスト、姉の前で素直になれない久美子が電車で涙するシーンが刺さるんだと思うんです。
ラストBパートは渡り廊下の久美子とあすかのシーン。ここも久美子の想いをぶつける言葉が常時強いんですけど、その言葉を紡ぐまでの思案の時間はここぞと映像演出で仕掛けていて、久美子の瞳のブレがそれだったと思います。個人的には、山村さんを意識するキッカケとなった演出でしたし、今でも『響け!ユーフォニアム2』といえば石原さんの演出回でも、山田さんの演出パートでもなく、このシーンを思い出すので、「心をえぐられた」演出といえばここだな、と思い返したりしました。

あとは山村さん自身についてではないですけど、石原さんの演出について。

(前略)第9話の短い回想シーンで、いかに二階堂のバックボーンを伝えるか工夫が必要でした。第9話の絵コンテを担当された石原(立也)さんには、「回想では時間の経過を表すために春夏秋冬を描いて欲しい」と伝えました。二階堂と茂幸叔父さんが過ごしてきた、大切な日々を季節の移ろいとともに感じてもらえるシーンになったかと思います。(後略)*5

この季節を表すシーン、やはり石原さんのアイデアか!と。春夏秋冬といえば、みたいなアイコニックなものがあって、もちろん石原さんも秋はイチョウとか使ってるんですけど、その使い方がテクいな、と思って印象に残っていたんです。

この2カットは夏、秋だと思うんですけど、どっちも「誰かの記憶」っぽい画にしているのが巧いなぁと思ったんですよね。二階堂の回想なので、二階堂の記憶だと思うんですけど、夏=入道雲、みたいなカメラの置き方じゃなくって、茂幸と行った夏休みのコンビニという記憶にある夏の景色、というような。秋のカットもそうですよね。色づいたイチョウ、ではなくて車から見た景色に秋があった、という記憶のような画面づくり。山村さんも言及しているとおり短いシーンなんですけど、二人が過ごした時間で二階堂だから覚えている特別な景色だとわかります。すごく上手な演出だな、と感じました。

ただ、この春のカットはちょっと石原さんが登場しちゃってる感じはありますね。春に菜の花、というのは不思議じゃないですけど、『CLANNAD AFTER STORY』がちらついちゃうんだよなあ、みたいな。

丸木さんのインタビューでは瞳の修正に関する話があったり、徳山さんが作監になったいきさつについて簡単に触れられていて読み応えありました。1枚だけですが丸木さんの総作監修正も載っていました。

インタビューの端には「好きをみつめるQ&A」というミニQ&Aがあるんですが、「湊にとっての雅貴のように、師匠または心の支えとなる人はいますか?」という質問はナイス…ではあるんですが、みなさん抽象的な答えが多かったのが少し残念。

 

以上です。

3500円なのでムック本としてはやっぱり高めなんですが、今回はその価値以上のものがありました。

ムック本読みながらツルネ2期を見直してたんですけど、やっぱめちゃくちゃ面白いです。ぜひとも3期を…!あとコンテ本も…!!!

*1:「『ツルネ -つながりの一射-』公式ファンブック」75ページ。

*2:同上。

*3:同上、77ページ。

*4:同上、86ページ。

*5:同上、87ページ。

「私たちは、いま!!特別展」(喜久屋書店 仙台店 2023.10.1~11.30)に行ってきました。

6月の原画展に続き2回目の仙台へ行ってきました。今まで東北の地に足を踏み入れたことなかったのに、今年だけで早くも2回目…!新幹線なのでお金はかかるんですが1時間ちょいでついてしまうのが仙台のいいところですねぇ。

 

展示内容は以下のとおり。

合計72点。

『特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト』

ボクシング奏(リングネームっぽい)原画とかチョコまん麗奈とか、他の展示と重複するものも結構ありましたけど初めて見たのもいくつかありました。

 

OPの3年生組の写真の原画です。さらさらっとスライドしていくので、3枚目の原画のところが本編で映るのって2,3フレームだけなんですよね。
めちゃくちゃ良いのに…表情豊かに描いてらっしゃるのに…もったいない...!原画番号に「M」が使われてるのとか初めて見たかもです。

 

駅ホームのシーンの原画と作監修正。この作監修正も徳山さんぽいですね。

ここの修正も徳山さんっぽいんですけど、必ずしもA・Bパートで作監分けてないのかもですねえ。

『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』

終盤のシーンの原画が多くて他の展示と重複してるのが多かったです。

この終盤、船内のカットは初めて見たような気がします。めっちゃ上手ですよね…髪の毛の質感とかなんとなく石立さんっぽい気がしましたが、多分違う…。

画面が暗いのもあると思うんですけど、髪のなびきとか服の汚れの描き方とか、原画の方が情報量多いように見えますね。細く柔らかい線質も良くて、本編以上に印象に残りました。

『Free!シリーズ』

今回の展示はOP・EDの原画が多かったです。

三枚目の2期EDラストカット、手の描き方が良い…。

 

3期は作監修正もありました。この12話の作監修正は高瀬さんですね。線質もですけど、端書が高瀬さん。ヴァイオレット以外の高瀬さんの線画見れるのレアですね。

 

『ツルネ』シリーズ

2期の原画は結構重複してましたが、この原画は初めて見たかもです。パンするからか特殊なサイズで描かれてました。

 

1期のは序盤話数が多かったです。この2話の作監修正は明見さんかもですね。2話の作監は明見さんと高瀬さんなので。

 

『小林さんちのメイドラゴン』

メイドラゴンの展示はほとんど見たことないので嬉しいです。

1期の6,8,13話の展示でした。13話の作監修正がいくつかあったんですが、3,4枚目は門脇さんっぽい。

 

これは誰だろうなぁ。13話の作監は丸子さん、岡村さん、池田晶子さん。

 

1期OPの原画もありました。いや~このカットめっちゃ好きなんで嬉しかった…。ライティングとか撮処理の良さもあるんですけど、表情が素晴らしいです。眼福です…。
3枚目は門脇さんの作監修正ですね。やっぱ門脇さんの修正は立体感がすごい…!

 

以上。

今回はOPED原画が多くてよかったです。特にメイドラゴン1期OPのカットはすごい好きなので、見られてホント嬉しかったです。仙台まで行った甲斐がありました!

「私たちは、いま!!特別展」(BOOKSルーエ 2023.10.1~10.31)に行ってきました。

吉祥寺駅近くにあるBOOKSルーエまで原画展を見に行ってきました。
今まで中央線沿線だったり多摩地方へ行くことがほとんどなかったので、原画展のお陰で色々な街が見られて楽しいです。

展示内容は以下のとおり。

原画の写真をあげたいんですが、ショーケースの中に入っていて反射しまくっているので今回は抑えめで行かせてください…!

『特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト』

本編の原画は冒頭のミーティングのシーンとラストの舞台裏のシーンの原画でした。

このミーティングの久美子と、

ここのつばめ、久美子、麗奈の原画(セル組みが違うのでそれぞれ個別)でした。

ミーティングのシーンのほうは8月の立川の原画展にもあった徳山さんの作監修正も展示されていました。

サントラジャケットのレイアウトと楽器作監修の展示もありました。

レイアウトは池田和美さんですかね。イメージBGについての端書もありますが、実際のジャケット画も水中にいるような撮影処理がかかっていました。

作監修正は太田さんでしょうか。楽器の密度や影の塗分けがほんとに微細で、楽器作監修の展示を見ると息を呑んでしまいます…!

そしてもう一つ気になるのは右側の端書。「100%B4」「高級(?)パラパラ漫画」「自分の描いた絵が(?)度のタイミングで表示されるのか。」「頭◯(わからない…)の間尺」「原画らくに書く」…この修正とはあまり関係なさそうなメモ書きっぽいような。個人的な動きのタイミングの考え方みたいなものをまとめているように感じますが…うーん、これよく展示に持ってきましたね…!笑

『Free!-Dive to the Future-』

『Free!-Dive to the Future-』は最終話のラスト、集合写真の原画と作監修正が3点。6月の仙台で展示されてたのと同じです。

『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』

『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』はホッジンズからギルベルトが生きているかもしれないと伝えられる夜のヴァイオレットの部屋前シーン(画像左)と、その後の代筆部屋でヴァイオレットが不安を吐露するシーンの原画がありました。部屋前のシーンは別の展示でホッジンズのカットを見ましたけど、原画番号の描き方とかが全然違いました。シーンの前後で原画マンが別の方かもしれないです。

『ツルネ -風舞高校弓道部-』

久々に一期の展示を見た気がする…。11話(画像左)と13話(画像真ん中、右)の作監修正がありました。

11話は丸子さんと岡村さんが作監。筆跡的に岡村さんぽくないので丸子さんかなあ、と思ったんですが、自信なし。

13話は複数作監がいますがどちらも門脇さんっぽい。真ん中の修正の端書には口の開き方についてメモ書きがありました。右の修正には「フクロウの頭ガイ骨は小さい感よろしく」とありました。どちらも立体感感じる修正で見入っちゃいました。表情がすごく活き活きとしていて素晴らしかったです。

 

以上。
展示場所が階段の踊り場なので少し窮屈でした。平日の昼間に行ったら空いていたので、ゆっくり見たい方は休日とかは避けたほうがいいかもですね。

あとはショーケースで反射しちゃうのはしょうがないと思うんですが、ショーケースの引き戸の縁が展示物にかぶってました。。。

3階の漫画コーナーには京アニグッズの特設コーナーがありました。自分が行ったときには氷菓の原画集なんかもおいてありましたよ。
本棚の上にはいろんな作家さんの色紙やサインが飾ってありました。
京アニ関係では『甘城ブリリアントパーク』の賀東招二さんのサインが!(店員さんに聞いたら撮影OKとのことでした)

こちらも蛍光灯の反射できれいに取れず…

「私たちは、いま!!特別展」(ビックカメラアウトレット×ソフマップ 池袋東口店 2023.8.4~8.31)に行ってきました。

展示を見に行ったのは『アンサンブルコンテスト』トークセッションの帰りだったので8月5日のことですが、今更記事に上げたいと思います。

池袋で京アニ原画展といえばアニメガが入っているマルイだよなあ…と思って今ググったら2年前にマルイが閉店していてびっくり…!知らなかった…!!!

話を戻して今回の原画展。展示内容と展示点数は以下の通り。

『Free!』シリーズ…21点

『ツルネ -つながりの一射-』…24点

『Free!』シリーズ

何期何話か特定できなかったものもあるんですが、ほとんどは『Free!-Dive to the Future-』と、『劇場版 Free!-the Final Stroke-』の原画でした。特に後者の展示が多かった気がします。

『Free!-Dive to the Future-』のOP、EDの原画、作監修正がありました。一枚目のOPカットって欠番カットですよね…?作監は植野さんと明見さんなんですけどこれどっちだろうなぁ。指の描き方とかかっこよくて特徴的ですけど…ちょっと断言できない…。『Free!-Dive to the Future-』は13話の原画とかも数点展示されていました。

 

『劇場版 Free!-the Final Stroke-』前編ですね。金城楓とアルベルトの原画があるのは結構珍しい気がする…。前髪が長い遙とかアルベルトの前髪の乱れってアニメだとあんまり見ない気がします。1枚目のアルベルトの、普段だと耳に掛かっているであろう側面の髪の束が前の方に来る、みたいな。

 

こういう仕上げにかかわる部分の端書きの細かさが、さすが仕上げ会社出身の京アニ…って感じるのは気のせいですかね…。

 

『劇場版 Free!-the Final Stroke-』前編、終盤のシーンですね。服のしわの描き方、遙の表情…どれもすごく上手です。

 


これは遙が広告になったやつですよね。勢いをだすためなんだとおもいますけど、直線の多さがなんとなくメカっぽい気がしなくもないです。原画は岡村さんでしょうか。

『ツルネ -つながりの一射-』

OPと13話の原画が多かったですが、他の展示会場のものと結構重複してました。初見っぽいものから何点かピックアップしてみます。

 

2話のラストシーンですね。2話は岡村さんの作監回ですが、上手な原画マンが多いです。このカットもカメラワークのタメツメだったり、髪の毛のなびきの描き方に力感が感じられて素晴らしいです。
この永亮カッコいいですよねぇ。好きなカットなので見られて嬉しかったです。

 

7話、愁の自宅客間のカットですね。1枚目は作監修正ですけど、この話数は門脇さんと引山さんが作監。引山さんっぽい気がします。2,3枚目の原画は線質が独特でカッコいいです。

 

 

以上です。

今回の展示はかなり他の展示とダブっていたような気がしました。それはそれで「仙台で会った原画とまた会えた…!」みたいな嬉しさはあるんですが。

あとは展示スペースが結構狭くて、他の方の邪魔にならないように撮るのに苦労しました…池袋マルイ、お前が恋しい…。

京アニ作品のモブ野球部員たち。

『特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~』は学校外どころか校舎外にカメラを向けるカットがめちゃくちゃ少ないです。
学校外で言えばメイン4人組の下校シーン、校内オーディション冒頭の宇治市の景色、ラストの公園のシーン。ほんとにこれくらいしかないです。
校舎外に範囲を広げると、みぞれと久美子のシーンやホルン組が中庭で練習してるカットなどがありましたが、そのうちの一つに野球部がミーティングをしているカットがありました。校舎外のカットというだけでもレアですが、吹奏楽部員が映っていないカットとなるとなおさら珍しいです。

そんな感じで野球部のカットがやけに印象に残ったので京アニ作品を脳内で遡ってみると、モブ野球部を使った演出だったり、映像としての導線で使われてるのがいくつかあったなぁと感じた次第です。

ということで、今回は京アニ作品内のモブ野球部員を振り返ってみたいと思います。
それに意味があるのかと言われると書き始めた今はまだ見えてこないのですが…書きたいことを書くのが第一ということで…。

『涼宮ハルヒの憂鬱』7話

草野球の練習場としてハルヒたちにグラウンドを占領される北高野球部。原作では野球部員のセリフや描写はほとんどありませんが、アニメではギャグっぽい動きと色仕掛けに弱い部員たちになっていて、SOS団と違う空気感が面白いです。谷口とも少し違うタイプのザ・男子高校生感がとても良いです。

みくるを見て色めき立つ野球部員に「わかりやすい青春」という感想を漏らすキョンですが、このセリフがモブ野球部員を映すことの本質をついている気がします。『涼宮ハルヒの憂鬱』でいえば、部活動に打ち込んでいる、いわば「わかりやすい青春」を送っている野球部と、普通の青春を過ごしたくないハルヒが作ったSOS団。作品序盤の話数*1でもありますし、そのコントラストを狙ったシーンでもあるのかな、と感じました。

『日常』15話

「ラブ的」のコーナー(?)でモブ野球部が登場。マネージャーに帽子をサッと被せる仕草に青春の色が…みたいな感じですが、ここでも青春の象徴として野球部員が出てきます。

コンテ・演出は北之原さんなんですが、画面上の演出というよりは脚本によるアイデアな気がします。ちなみに15話では石立太一さんが脚本を担当されています。

さらにちなむと、この野球部は時定高校野球部じゃないんですよね。別の話数で時定高校野球部が出てきますが、帽子のマークは星印でした。デザイン的にも、なんとなく『タッチ』の明青高校っぽい帽子な気がしなくもないですが…。

『響け!ユーフォニアム』12話

北宇治高校野球部のペッパーカット。エピソード冒頭、エスタブリッシュメントカットとして使われています。打球を付けPANで追うカメラワークに躍動感があって印象に残っていました。

このカットの前後には他の運動部の点描もあって、その後に吹奏楽部が練習する音楽室へとカメラが向かいます。野球部のカットは「部活動の練習」の象徴みたいな役割を果たしていました。

野球作画も上手です。手首を使ったトスとトップを作ってスイングするバッターの動き。

『ツルネ -つながりの一射-』4話

このエピソードではシーン初めの場面転換として辻峰高校野球部が登場。ノックで上げた打球を付けPANで追って、その勢いでPANダウンし弓道部練習場へ。エスタブリッシュメントカットとして面白いアイデアです。先に挙げた『響け!ユーフォニアム』12話と似たカットですが、アイデアは更に追加されてます。

そしてアイデアだけにとどまらず、整った環境で練習する野球部とそうでない弓道部の対比にも使われているのがまた面白いです。上へのPANと下へのPANでネガティブ・ポジティブなイメージも重ねていて、シーンの導入かつ短いカットですが、辻峰高校弓道部の演出にもなっていました。

この野球部カット、セカンド付近で守る選手が打球を追う前に足を上げて、一歩目に向けた予備動作をしてる芝居を入れてるのがめちゃくちゃ凄いです。野球経験者なら当然の動きですけど、映像作品では滅多に見たことないです。

『特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~』

そして『アンサンブルコンテスト』。モブ野球部カットはさつきの頭を撫でる久美子のシーンから下校のシーンまでをつなぐカットとして登場します。

「上手な人の演奏が楽しみ」と話すさつきに、部長としてどういう言葉をかければいいのか悩む久美子。それとは対照的に堂々と声がけする北宇治高校野球部の姿は、理想の部長像のように映されていました。

野球部をカメラの中心に据える前に窓越しのカットを入れるのがテクいですよね。理想像を縁取る枠のように映りますし、久美子が窓越しに外を見るカットへ繋げることで、まだその理想像にたどり着けない久美子を表現していました。モノローグで語られる久美子の心情を上手に演出する野球部のカットでした。

 

こうして振り返ってみると、モブ野球部員はキョンのセリフにあったような「わかりやすい青春」のモチーフとして使われていることが多いです。それは逆に言うと主人公たちが青春の一丁目一番地を歩いていないのかもしれません。『涼宮ハルヒの憂鬱』のSOS団、『響け!ユーフォニアム』シリーズの吹奏楽部、『ツルネ』シリーズの弓道部は高校野球で言う「甲子園」みたいな、明確な達成目標や目標までの過程が分かりづらい。そこで演出陣をはじめとする京アニスタッフは野球部員を使って登場人物の環境や熱量を(ときには対比的に使いつつ)表現しているのかもしれませんね。

今後も主人公たちの活躍と合わせて、モブ野球部員の躍動にも要注目です。

*1:2009年の時系列順で放送された際は7話でしたが、2006年放送では4話でした。