『中二病でも恋がしたい!』11話の泣き作画。

この前『中二病でも恋がしたい!』を見返したんですが、11話、凸守の泣き作画が素晴らしかったです。

中二病を拒絶した六花が遠ざかり、勇太に空想を否定された凸守。驚き、悔しさ、悲しさ。いろんな感情が層のようになった表情の変化…というより「重ね方」というべきでしょうか。凸守の「いつもの反発」とも違う、時間の経過とともに中二病のもろさを映しだすような泣き作画でした。

輪郭を沿うような涙の表現はデフォルメチックでありながら表情はすごく複雑。表情と涙の流れ、粒の大きさがコントラストのようになっていて、すごく印象に残る表現でした。

涙の表現や泣きの表情作画ってここ10年を見ても多彩に変化していますが、ここの泣き作画は真に迫った感じがあって古臭さを全く感じないです。

11話全体がいつもとは違う空気感で、本心を伝えきれていない上辺だけの会話が続くわけですが、この凸守の涙でその空気感が崩れ去るようでした。そういう意味でも、この話数の重要なカットだったと思います。そしてそれを担うにふさわしい作画でした。

 

「中二病でも恋がしたい! 名場面線画集」にはこのカットのコンテと原画が載っているんですが、コンテの端書には

驚く凸守

裕太の剣幕が
少し恐かったのが
引き金にいろんな
感情が膨張して
あふれ出す

とあります。「色んな感情が膨張して」という表現が良いですね。そしてその表現をうまく絵に落としてこんでいて、素晴らしいです。

ちなみに線画集にはこのカットの原画も載っています。

原画番号41…。画集を見る限り引山さんの作監修正も結構載っかってるので、こんなところにも並々ならぬ「重ね方」。

原画番号の書き方にかなり特徴がありますが、これは他の話数や作品と見比べてみた感じ牟田亮平さんの特徴ですね。画集には1話のローラーシューズのカットも載っていました。

髪の毛のなびかせ方とか体の力が抜ける感じがとても上手。

牟田亮平さんについてはまた別の機会に。

映画『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』雲の演出。

映画『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』は、雲に始まり雲に終わる作品でした。
ドラゴンと空の親和性や空中でのアクションを考えれば雲が登場するのは当然ですが、本作における雲はそれだけの存在ではありません。雲は登場人物の心象風景を饒舌に語る役割を担っていました。

本作の軸は、カンナとキムンカムイという親子の相互理解にあります。しかし彼らはドラゴンであり、異世界の住人です。現代人の親子関係とは異なる関係性、異なる相互認識をもっています。人間世界を知ったカンナによってその関係は変化していきますが、「関係の変化」というものは非常に曖昧です。その曖昧な変化を形取る装置として、石原監督は「雲」を用いていました。

群れとしてのドラゴン

冒頭の雲は3Dを用いたキャッチーな表現ですが、その直後のこのカットではドラゴンの生態がぼんやりと切り取られています。「家族」ではなく群れで行動するドラゴンたち。キムンカムイだけが地上を走り、カンナ親子はその群れの一個体として位置づけられているように見えます。

ドラゴンたちが下手側へ飛んでいくのに合わせ、背後の雲も上手側に大きな塊があり、下手側へちぎれていきます。進行方向を意識づける造形であると同時に、「群れ」という認識を強く感じさせる配置です。個の前には必ず大きな群れがあるという、ドラゴンとしての常識が幻想的なカットの中に描かれています。

人間世界の「常識」と異種間の断絶

人間世界で小学生として過ごすカンナの夏には、定番の入道雲が描かれます。これは人間世界の「常識」を象徴する、いわばベタな雲ですが、一方で、キムンカムイの「仲間」という認識を押し付けられた後の場面では、同じ入道雲でも表現が異なります。

 

夏の景色というより、二人を取り囲む「もや」のような存在として描かれ、眼前に立ちはだかるキムンカムイの無理解を示しています。そして、わかり合えない異種間の感情が、二つに分断されたような雲によって表現されます。「小学生の夏」を彩る入道雲が、同時に負の感情も映し出すという点に演出の妙があります。

色味を使った心情表現

後半では、色彩による奥行きをもった雲の表現が印象的でした。キムンカムイやアーザードとの戦いでは、群青色の空と白い雲、そこに落とされる黒い影が、異世界の異質さと負の感情を強調していました。

 

戦いが終わり夕景へと移行したあとの雲の色も見事です。戦いの余韻を残す影と、変わり始めた空の色が一体化し、物語が地続きであることを示しています。夕景は変化の兆しを表す常套表現ですが、そこに重みを残すことで単なる場面転換ではないことを印象づけています。

 

カンナが再び人間界に戻り、才川と抱き合った次のカットも素晴らしかったです。
異世界にも存在した重厚な雲の奥に青空が覗いていますが、この青空は才川の愛情そのものだと感じました。才川は本編への登場こそ多くありませんが、カンナへの想いはとても大きく、そしてそれはカンナにとっても同じなのでしょう。
二人の再会も短いカットにすぎません。それでも、確かに、そして鮮やかに存在するその青空の力強さが、とても心に響きました。「これまで」の壮絶さと「これから」の爽やかな兆しを、雲だけのカットでとても叙情的に語っていました。

季節の描き方

ラストカットも見事でした。高い空に広がる鱗雲が、夏の終わりと秋の到来を示します。バックショットによって、次の季節へ進む彼らの姿が静かに切り取られていました。

ここには、石原監督が『AIR』『Kanon』『CLANNAD』で培ってきた季節表現がありました*1。季節の中で生きる彼ら、そして次へ進む彼らの姿を、一貫して雲によって描き出す。そこに石原監督の熟成された演出力を感じました。

疑似家族と雲の類似性

「こばやしさんち」は疑似家族です。父親の小林、母親のトール、娘のイルルとカンナ。そこに血のつながりはなく、種族も異なります。互いの結びつきは確かに存在しますが、形としては掴めません。雲も同様に、形や色や影はあっても手で掴めるものではありません。

一方、実の親子であるカンナとキムンカムイは血のつながりという事実を持ちながら、結びつきは希薄です。それでも終盤では互いに結びつこうとしますが、それでも関係性はまだまだ脆く、確固たるものではありません。

疑似家族と実の親子。家族の関係性は異なり、実像は危うくとも美しい。それぞれの家族の在り方と雲の性質の類似性が、巧みに演出として用いられていました。

 

本作のスタッフコメンタリーで、石原監督は次のように語っています。

親子ってのは何なんだろうってのは色々考えました。例えば、全く血が繋がらなくても親子関係を築いている家庭もある。親子の情ってのは色々考えたし、自分なりにはこの映画用に答えは出したんだけど、まだまだこれからいろんなことを考えて、どんどん変わっていくだろうなという気がしてる。

雲の演出は原作には存在せず、その要素すら描かれていません。石原監督独自のものとも言えるこの雲の演出こそが、掴みづらい親子関係の「答え」を語るために用意した装置だったのではないか…そう感じずにはいられませんでした。

*1:最近でも石原さんがコンテを担当した『ツルネ -つながりの一射-』9話でも季節を切り取る演出がありました。

ムック本で山村監督が「(叔父の茂幸と永亮の)回想では時間の経過を表すために春夏秋冬を描いてほしい」という注文を石原さんにした、という話が載ってますが、その春夏秋冬の描き方が見事だな、と思います。特にコンビニ越しに見える青空と山を映した夏のカット。幼い永亮が茂幸と立ち寄ったコンビニで見た、なにげない景色なんだろうな、というのが一瞬で感じとれる情景です。ただ美しい夏の風景を切り取っているわけではないところに、石原さんのセンスと経験を感じます。

石原立也さんの机、その歴史。

先日より取り上げている、「私たちは、いま!!―京アニのセカイ展―」ですが、目玉のひとつとして石原立也さんの机がありました。

こんな感じで展示されてたんですが、キャプション曰く石原の机の再現、なんだとか。

おぉなるほどなるほど、レアだなぁ~と思ったんですが、その直後片隅にあった記憶が蘇ってきて、「石原さんの机を見るのってこれが最初ではないのでは…」となりました。

というのも、石原さんの机、というか京都アニメーションはDVDの特典映像等で幾度となく内部が映されており、だいたいそういう映像や写真があるのは石原監督作品だったりするわけです。
そうすると、必ずあるのが「石原監督のデスクコーナー」。そう、石原監督の机は今回が初公開ではないのです。

ということで、今回は過去の石原さんの机を振り返りつつ、その歴史を辿って見たいと思います。

 

2004年ごろ。

私の知る限り、初めて石原さんの机が世間に公表(?)されたのは『AIR』公式ホームページの特集・特別情報「京都アニメーション潜入リポート」。更新日は2004年10月28日。

https://www.tbs.co.jp/anime/air/special/special9.html

この画像の小ささと粗さが「ザ・2000年代」って感じですが、荒すぎてほとんどわかんないですね。ただ、石原さんの後ろ姿が若々しい。

 

2006年ごろ。

『涼宮ハルヒの憂鬱』のDVD特典映像には京アニを訪れる平野綾さんの映像が収録されています。

日にちも記載されていて、2006年5月7日。ハレ晴レユカイが発売される3日前。日曜の夜ですけど普通に仕事してる。京アニはほぼ定時帰りだ、みたいな話をどこかで読みましたが、特別に待っててくれたんでしょうか。

石原さんの机が池田さんの奥に。スタジオ引っ越し前ですね。『AIR』のときから場所が変わり、そして明らかに物量が縦に増えてる…。黒い照明は2004年から変わらず。

ハルヒのキャラ設定にシナリオ。左上の角川スニーカー文庫のハルヒは懐かしいですね。同じ並びにパトレイバーのムック本が。右側にはコンプティークにエース。手前の『海がきこえる』のコンテ集も目を引きます。

 

ちなみに石原さんの机はハルヒ公式サイトの制作日誌で、この4日前、5月3日のブログにも写真があったりします。

 

こちらは『Kanon』DVD特典より。ほとんど同じ感じ。机の上の赤いカメラはここが定位置なんでしょうか。ロケハン写真なんかを確認するのに使いそう。そしてCCレモンのパッケージが懐かしい。
ハルヒが2006年春、Kanonが秋ですからこの映像もハルヒが終わったあとみたいですね。左の壁からハルヒがなくなってたりします。
『海がきこえる』あたりの棚は、動きがなさそうにみえて並び順が変わってるので、どこかで石原さんが読み返したのかもしれない。

2009年ごろ。

ハルヒ公式サイトの制作日誌より。スタジオを引っ越して演出部屋に移動されてます。隣は武本さん。

遠めの写真ですが、歴史の転換点(?)としては照明のアームに石原さんのトレードマーク・ベレー帽がかかってることでしょうか。雑誌の写真とかを見返してみると、確かにこのころからベレー帽かぶってる。

2012年ごろ。

『中二病でも恋がしたい!』ソフト特典映像より。
映像内で中盤話数を制作中と語っており、石原さんが涼しい恰好をされているので放送前、2012年夏ごろでしょうか。

見どころがたくさんありますね。照明、本棚、机右側の事務用品入れ、フィギュアのラインナップ…はっきりと机が確認できた2006年と比べると、かなり歴史が動いてます。一方でベレー帽は安定の定位置。

ここに見える左側の黒いストップウォッチ、右側の電動消しゴムはこの後は要チェックです。

そして中段に鎮座する『海がきこえる』コンテ集はいまだ健在。その横は漫画『けいおん!』1~4巻でしょうか。右側の棚にあるファイルは過去作のコンテであることが映像の中で触れられてます。

パソコンはPanasonicのレッツノートシリーズですね。トラックパッドが特徴的です。
ちなみにこのレッツノートは『中二病でも恋がしたい!』1期2話で立花の部屋にもありました。

石原さんは立花と心を重ねることが多い…なんてインタビューで話してましたけど、持ち物まで同化していたとは。

 

同じく中二病特典映像。左側のワイヤーネットはバリエーション豊かですね。kanon、けいおん、らきすた、クラナド…ん?

宇宙服の石原さん…これをここに飾る石原さんのすごさ…

そして2025年。

ここから大きく時間が流れ、13年後。改めてイベント展示された石原さんの机を見てみましょう。



どうですか。なんか、歴史の移ろいを感じませんか。ストップウォッチも電動消しゴムも変わってしまい、フィギュアのラインナップも変わり、よく見ると電動鉛筆削りなんかも変わっていっています。
たくさん置かれたグッズたちもメイドラゴンやユーフォのものが多いです。これもまた時代の移ろいですね。

一方で、変わらないものもある。
ベレー帽の位置、レッツノート。ここらへんはモノは変われど同じベレー帽を同じ場所にかけ、レッツノートを使い続けているわけですね。
そしてなにより…

この背表紙が隠された本の右から4冊目あたり、これはジブリのコンテ集の外カバー…そしてこの色…『海がきこえる』、『海がきこえる』じゃないか!
石原さんの机、その歴史の生き証人(本)はいまだ健在です。

さらに、実は原点回帰みたいなことも起こってます。
ベレー帽がかかってる照明なんですが、Kanonの特典映像で映る作画室の照明と同じっぽいんですよね。

長年使ってた黒い照明が壊れて会社の余ってた備品を使ってる…みたいな感じでしょうか。もしくは机自体は別のもので、小物類だけ持ってきた…?

なにはともあれ、こんなところにもスタジオの歴史を感じてしまいました。

石原さんの本棚。

もう少し掘り下げてみてみたい石原さんの本棚。アニメ化した原作以外の書籍でわかったものをピックアップ。

  • 「帰宅支援マップ首都圏版」(昭文社 地図 編集部)
    ロケハンとかで使ってるんでしょうか。メイドラゴンの漫画付近にあるので越谷用?もしくは次回作…?
  • 「グリム童話: メルヘンの深層」(鈴木 晶著 講談社現代新書)
    ユーフォ原作の左端。なんとなくユーフォとグリム童話の関連とか深読みしたくなっちゃいますね。
  • 「日本アニメ(ーター)見本市資料集Vol.3 「カセットガール全記録全集」」(株式会社スタジオカラー)
    メイドラゴンの画集の隣に並んでる最近のアニメ本。最近の作品ですけど『カセットガール』は内容的に石原さん世代なんだろうなって感じですね。本書内のインタビューにもありますけど、『カセットガール』の企画の原点がDAIKONⅣのリメイクから始まってるので。
  • 「METHODS 押井守・「パトレイバー2」演出ノート」(押井 守著 KADOKAWA)
    2006年の棚にもあったパトレイバー関連本。パトレイバーファンという文脈でも、演出家としてもあって然るべきな感じしますね。本棚の真ん中に置いてあるのはなんとなく石原さんの主張を感じる…。
  • 「Pen 7/1号 (発売日2007å¹´06月15æ—¥)」
    ぶりぶりざえもんのすぐ後ろ。この号では写真家のアンリ・カルティエ=ブレッソンを特集しています。石原さんの趣味といえばカメラ。そしてなにより、石原さんはアンリ・カルティエ=ブレッソンの大ファン。ユーフォ2期1話のスタッフコメンタリー、OPのモノクロに触れるかたちで石原さん自身がそのことを話しています。

山田尚子さん 石原さん、アンリ・カルティエ=ブレッソンお好きですよね。

石原さん 好きという次元じゃないですよねあのへんの人達は。世界で初めてスナップ写真みたいなのを撮った人ですけど。ブレッソンさんの何が画期的かというと、あの人以前の写真には意味があった。肖像画みたいに記念に写真を、とか、なにかの現場、とか。でもブレッソンの写真は何気ない日常を切ったような写真。発表されたときはかなりセンセーショナルだった。今の僕らからするとユーモラス。当時の人からするとびっくりするものだった。一枚一枚撮るのが貴重な時代に、何気ないものを撮るというのがびっくり。

山田さん 石原さんが乙女みたいになってる。手を組みながら喋ってる。

石原さん 傾倒してるわけではないけど…あの人は写真の歴史を語る上で欠かせない方なので。

石原さんいわく大ファンというわけではないみたいですが…コメンタリーで作品以外の話をするのは相当レアな石原さん。話しっぷりから熱量を感じます。
名前でググるとアンリ・カルティエ=ブレッソンが撮った写真が見れますけど、躍動感ある日常みたいな感じが面白いですね。この号のPenを図書館で読みましたけど、ライカにもスポットを当てていて、カメラファンとしても保存しておきたいものだったのかもしれないですね。

  • 「写真集 大震災で壊れた建造物」(第三書館編集部)

阪神・淡路大震災で倒壊した建物の写真集です。これも図書館で読みましたけど、建物に関する情報を載せず、写真だけがズラッと載っていました。当時はネットはあれど資料は限定的だったと思いますし、アニメーターにとっては貴重な資料集だったんでしょうね。

以上。
冷静に考えると、20年以上前から遡れてしまう衝撃がまずある。約四半世紀にも及ぶ仕事机をこんな簡単に遡ることができるクリエイターが、一体この世に何人いるのでしょうか。
ぱっと思いつく限りは宮崎駿さんとか富野由悠季さんの机は何度も映されているような気がしますが、そういう意味では石原さんもその人達と肩を並べているわけです。

最近の京アニ作品にはこういう特典映像ってなくなっちゃいましたし、まぁ正直難しいとは思いますが、いつかまた石原監督の机を拝見できる日を願ってやみません。

そしてまた再会したい。石原さんの『海がきこえる』に…

第7回京都アニメーションファン感謝イベント「私たちは、いま!!―京アニのセカイ展―」原画展レポ(番外編)

原画展で発見したおそらくこの人だろうという原画をアニメーターさんごとにまとめてみたいと思います。

佐藤知美さん

ユーフォ3期3話。スタッフコメンタリーで言及されていたシーンです。

 

3期8話、脱衣所のシーンです。佐藤達也さんにも見えるけど、ツメ指示の矢印の書き方が佐藤知美さんかなあ。

 

3期12話。大吉山のシーン。こちらもコメンタリーで言及あり。
原画番号の書き方もそうですが、やはりツメ指示にも特徴あると思います。

 

1枚目がCITY1話の走馬灯。2,3枚目が6話冒頭。ツメ指示の書き方。

 

佐藤達也さん

ユーフォ3期3話。Aの字の底(伝わんなそう)が小さく内側に入ってるのが佐藤さん、みたいな印象。

 

CITY10話。変身カットは前後のカットもめちゃくちゃ上手い。

 

CITY13話。陽気に踊るところ。ミュージカルパートは石立さんとかも手を入れてると思いますけど、どこまで佐藤さんがやってるか気になりますね。かなりのカットやってそうですが。

 

FreeFS後編。霜狼学院大学新入部員紹介。雑に写真撮ってしまった…Freeの展示スペースは広いスペースだったけど肩身が狭かった。
公式ファンブックで言及があった佐藤さんパート*1の原画は見当たらず。

唐田洋さん

CITY4話。7の横線、Aの書き方。シーン頭から部屋を飛び出すまでは間違いなく唐田さんだと思う。

ユーフォ3期13話。オーディションで久美子が選ばれなかったところ。Dの書き方。唐田さんのツメ指示の書き方はあんまり定まってない気がします。

 

FreeFS後編。このツメ指示の書き方が一番多い気がする。

浦田芳憲さん

CITY7話。ボールが飛んでくところのめちゃくちゃ短いカット。特徴云々の前に「ウラタ」の署名あり。

 

ユーフォ3期2話、ラストのシーン。高橋真梨子さんもそうですが、みなさん「タ」の字を3画で書かずに「ヌ」っぽく書いてる。浦田さんはイラストメッセージの署名もこういう「タ」を書いてる。

太田稔さん…?

FreeFS後編、終盤で試合終わったあとにぼんやりしてる遙。フレームを間違って描いちゃった太田さんのメモ書き。…というかこんな原画も展示しちゃうなんて。

ここ原画も太田さんなのかなと思いましたけど、違うような気もします。この原画番号の描き方は過去作でも結構あって、Aの突き出た部分とか数字の描き方、ツメ指示なんかは特徴的なんですけど、太田さんが参加してる話数じゃないところにもあったりしました。
私の見当違いの可能性もありますが、おそらく演出修正時に書いたんじゃないかな、という気がします。この前取り上げた演出トークでもここらへんのシーンについて太田さんが言及してましたし、演出での関わりなんじゃないかな、と。

この原画は引き続き過去の原画をあたってみたいところ。

 

以上。

原画展のおかげで過去の原画集を見返すのが一段と面白くなりました。

第7回京都アニメーションファン感謝イベント「私たちは、いま!!―京アニのセカイ展―」原画展レポ②

引き続き原画展レポ。

 

小林さんちのメイドラゴン

劇場版の展示が60枚くらい、2期のものが30枚くらいでした。

2期OP。展示会場の一番入り口に近いところ、一番最初に見た原画がこの石立さんカット。うれしい。
もっと枚数展示してくれてもよかったんだけどなあ。

 

2期OP、門脇さんの修正。しらこばと橋に降りてくる小林とトールのカット。マルで囲んで「はい」と返しているのはマル「タ」の字なので、原画パートはメンツ的に高橋さんっぽい。

『境界の彼方』のOPはキャラを見せるカットを門脇さん、アクションを石立さんで分担したらしいですけど、メイドラゴン2期のOPもそんな感じしますね。キャラのカットを高橋さん、アクション浦田さん、ダンス石立さん、みたいな。

 

 

2期1話、岡村さんの作監修正。「A」の書き方健在。ポーズも肉感も素晴らしい。

 

2期9話。佐藤さんの原画ではないことはわかるけど…アクションカットだから宮城さん、というわけでもないような気もする…でもアクション作画を見ると宮城さんっぽいような…。

 

2期12話、こちらも石立さんですね。これこれこういうの!っていう感じの展示。エフェクトがかっこよすぎる。

 

劇場版メイドラゴン。序盤の公園のカットですね。endの書き方が疋田さんっぽいですが、ここまで演出に突っ込んだアイデアが出てくるところに京アニの強みを感じます。緊張感が段違いなカットだったので、目パチ入れるor入れないでかなり印象が異なる気がします。

 

劇場版メイドラゴン、序盤のカット。筆跡的に作監池田さん?「か、かわゆ!ありがとうございます!」はマル「カ」の門脇総作監でしょうか。

 

EDの原画も展示されてましたが、圧巻でしたね*1。一枚絵としての存在感、表情、皺。素晴らしかったです。

Free!

FSの後編がメイン、前編少し。約100枚くらい展示されてました。

FS前編のアバンカット。石立さん原画だったんですね。この原画だけだとビジュアル重視の止めカットっぽいですけど、実はこれが鳥の瞳の映り込みだった、みたいにズームアウトするカットで、かなり動的なカットです。

www.sakugabooru.com

推測ですが、アバンは全部石立さんな気がする。このあとの鳥とかメッセージビデオのシーンも上手い。

 

後編冒頭の遙回想カット。手の描き方が上手い…。

 

後編。同じ人かはちょっとわかんないですけど、フレーム外のポーズをラフで描いてる原画がいくつかありました。京アニだとあんまり見ない気がする。

 

後編。岡村総作監でしょうか。西屋さんリスペクトなパキッとした線が最高にかっこいいです。

 

これめちゃくちゃ門脇さんっぽい。というかツルネっぽい。後ろのモブ選手、弓引いてそう。そしてめちゃくちゃ皺がかっこいい。

その他

ヴァイオレット、中二病、ツルネも展示がありましたが先に取り上げた作品と比べると小さいスペースでした。ヴァイオレットは劇場版の原画が5,60点くらい展示されていて、中二病、ツルネは15点くらい。いくつかピックアップしてみます。

劇ヴァイオレットの中盤、新規回想パート。岡村さんの原画に見えるな~

 

劇中二病、クラナド聖地パート。岡村さんだ。Dパートが作監パートだったんですね。演出パートはインタビューで割れてましたけど、作監の言及はなかった気がする。
見比べてみてもやっぱ上の原画は岡村さんですね。

 

劇中二病、ラブホのパネル前で妄想する勇太。「こんなんでどうでしょう」「!! イケダ」。

 

ツルネ2期1話のアバンカット。石立さんの原画がたくさんあって眼福。

 

ツルネ2期1話ラストカット。ここにも石立さん。この直前に永亮が射るカットがありますが、そこも含めて石立さんがやってそう。1話の大体は石立さんが大事なカット持ってる感じなのかな。

 

以上。

ものすごくボリューミーな展示でした。作品によってはほとんどの話数の展示があったりして、大変満足。

改めてイベント開催に感謝したいです。ありがとうございました。

*1:追記:ソフトのスタッフコメンタリーで言及あり。EDの原画は安藤京平さんで、丸木さんが修正。左上のが丸木さんの修正で、他は安藤さんの原画かな。

第7回京都アニメーションファン感謝イベント「私たちは、いま!!―京アニのセカイ展―」原画展レポ①

すでにイベントから2か月が経過し年を越しましたが…

展示は『響け!ユーフォニアム』、『CITY』、『小林さんちのメイドラゴン』、『Free!』の展示で9割、『ツルネ』、『中二病でも恋がしたい!』、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の展示1割みたいな感じでした。どの作品もシリーズ内の最新作の展示がほとんどで、FreeはFS前後編、メイドラゴンは2期と劇場版の展示もありました。

まずは各作品の気になった展示をいくつかピックアップしてみたいと思います。

 

響け!ユーフォニアム3

ユーフォ作品の展示はすべて3期からでした。
ざっと数えて約120点。動画の展示もあったのでそれも含めると更にあったかも。

まずは1話。作監修正だし、筆跡的にも「よろしくおねがいします」は高橋真梨子さんっぽい。「すみません~」と書いているのは別の方で、原画担当の方でしょうか。丸で囲んだサインが疋田さんの疋の字っぽい。今回の原画展はこういう端書の多い展示が多くて見どころたくさんでした。

 

アンサンブルコンテストにもあった先行カットの真由。これも高橋さんの作監修正ですね。

2話、コンクール曲を聴く久美子のカット。参考のラフっぽいですけど映り込みの部分の巧さにビビる。布団の皺と置かれたスマホの立体感が素晴らしい。

 

4話のコントラバス。特別カットと書いてありますが、仕上げ、撮影を通常よりも情報量多く色分け、撮処理するカットとしてガイドブックでも取り上げられてました。

このカットの場合だと夕景の色味を通常の色から付加するという意味でも特別カットなのかもしれないです。

もう一つ気になった点としては省力の仕方ですね。このカットではサファイアがコントラバスを少し傾けるんですが、「動画不要」とあって、割らずに原画と撮処理で完成画面までもっていってるんでしょう。悪いとかでなく、むしろ省力の巧さを感じました。

 

5話の作監修正。作監は徳山さん。ほかの作監さんの絵と見比べるという意味でも、原画展はいい場所でしたが、ユーフォに関しては徳山さんの修正が光ってましたね。立体感ある丸みを帯びたフォルムが高橋さんとか池田和美さんとも違うし、池田晶子さんのデザインとも少し違う。個人的には『あいうら』の細居美恵子さんの絵を思い浮かべたりしました。やわらかさ、丸さと肉感。そっちの方向で言えば堀口さんとか植野さんとか京アニにいましたけど、二人ともいなくなっちゃいましたし、京アニ作監陣にはいなかったタイプな気がします。

 

7話の作監修正。高橋さんですね。原画展には高橋さんの絵が多かった気がする。

 

8話、門脇さんの作監修正。いやーでもやっぱ門脇さんの絵、めちゃくちゃいい…。門脇さんの線画って線の太い質感がすごいかっこいいんですよね。

 

9話、橋の上で対峙する麗奈と久美子。髪の毛の色の塗分け、トレス部分の多さ、そして頭の反射のカッコよさ…。

 

12話の大吉山カット。ここって1期8話の大吉山と原画番号まで併せるこだわりっぷり。

 

13話。原画番号の書き方的に池田和美さんの作監修正だと思いますが、注目すべきは楽器を持つ手のところに楽器作監・太田さんの別紙修正ありのメモ書き。フローチャートとしては原画→作監→楽器作監みたいな流れということでしょうか。

CITY THE ANIMATION

ざっと数えて140点くらい。

1話の徳山さん作監修正。線の強弱と立体感。なんとなく後続話数よりも線が全体的に太い気がする。このあと紹介したいと思うんですけど、後続話数だと外側の線は太く、内側の線は細いみたいな指示があったりするんですがこの修正はそうなってるところもあればそうじゃないところもあったり。絵の濃さが一段とあるような気がします。

 

2話、池田和美さんの作監修正ですね。
「アニメージュ」の2025年9月号に石立監督のインタビューが掲載されているんですが、以下のようなお話をされています。

ーキャラクターと背景が一体となった、アナログ時代の背景動画の画面を思い出すような、一枚絵が動き出すようなビジュアルが全編にわたっているところが印象的です。

石立 最初はあのルックを目指していなかったんです。むしろ漫画原作だからこそマンガに寄せたくないと思って、ろんな方向性を考えていたんですが、どれもしっくりこなくて。最終的に「原作のあらゐさんが描き出す世界観をいかに再現できるか」ということを頑張ってみようと。そしてやるなら徹底的にやらないと、というところですね。普通、背景美術とキャラクターセルは、意図的にテクスチャー、質感が異なるものを重ねることによって、キャラクターが浮き出るようにする、というのが、アニメーションの表現のやり方だと思うんですね。特にそれは日本のリミテッドアニメの工夫の一つだと思うんですけど、でも世界に数多ある、過去のいろんなアニメーション作品を見れば、そこに境界がなくてもアニメーションって成立するよねって。もっと言うと、ピントのボケとか撮影処理とかもなくなっていい、それでも全然、アニメーションって成立するんです。

まさしくこの方向性を目指すための指示書きがここにあるな、と感じました。このカットって画面中心にいるまつりが主役であるための撮影処理があって然るべきだと思うんです。石立さんのインタビューにもあるとおり、うしろのみみねことBGをボカす、とかわかりやすいですよね。でもそれを線の強弱で視聴者の目線を誘導する。それも前後のセルや背景に強弱をつけることを極力避けて。そうして画面全体の統一感を作るっていう、なんというか、まさに職人芸みたいな画面づくりが面白いなあと思いました。

 

2話。もうほんと、『CITY』っていう作品は線でできているんだな、と思った原画。

 

同じく2話。先程ピックアップした徳山さんの作監修正から少し方向性が変わってきたのかもしれない、と個人的に感じたやつです。マルで囲んである署名が「タカハシ」に見えるんですが、2話は高橋真梨子さんいないんですよね。

2話の作監修正。こちらも線の太さに指示書きあり。爆発くんの付箋に目が行きがちですが、シンプルに絵が上手い。

 

3話。こういう作業量の多そうな原画や修正にはかならず線の太さに関するメモ書きがあったように思いました。

 

6話。イベントを通しての衝撃度合いとしては、電気目録の監督が太田さんだったことよりも、CITYの展示で筆ペンで書かれてるものが大量にあったことですね。申し訳ないですが狂気の沙汰としか言いようがない。

筆ペンでの作画については前述の石立監督インタビューでも触れられていました。

(前略)

中でも特に伝えたいのは、「動画セクション」がすごいんですよ。これ、自分でも聞いていてびっくりするんですけど、筆ペンで「中割り」をしてるんですよね。だから、消しゴムは使えない、デジタルでもない、アナログで描いて筆ペンで中割りできる動画マンが、けっこうな人数ちゃんといるっていうのがすごい、京都アニメーションの動画スタッフは優秀だなと。よくやるなって(笑)、本当に思います。

話しで聞いていても実物をみると、なんかもう「衝撃」としか言えない。というかこの筆ペン中割りって石立さん発案じゃないのかな。

 

6話。線へのこだわりがここにも。シンプルな画面なのに原画からの情報量が半端ない。原画を見たあとに完成画面を見ると、確かに撮影処理じゃなくて実線で歪んでいることがわかります。狂気。

 

8話。引山さんの作監修正でしょうか。「つけパンみたいな」っていう例えがわかりやすい。

 

10話。激しいなびき表現を短い線で表現するのは、まさしく漫画の手法ですよね。原作世界の再現というよりかは漫画をアニメーションにしてる、みたいなところまで行ってしまってるような気がしますが…。

その結果、仕上げセクションから「ぬり分けつくって下さい…」って言われてしまってるという。

 

11話の背景動画。狂気。

 

12話のラストカット。原画番号の描き方的に石立さん自らの原画っぽい。シンプルな画面に果てしない情報量。線の引き方に試行錯誤があれど、作風のスタンスは変わらずでしたね。

 

 

一旦以上。

CITYの展示は本当にすごかったです。動画の展示もたくさんありましたし、パラパラめくれるようになってるのもありましたが、ほんとに筆ペンで描いてました。普通の原画に混じって筆ペン特有の滲んだ線が展示されてて、ゼロ距離でマジマジと見てしまいました。全話数の展示がありましたが、そのチョイスも面白かったですね。

ユーフォ3期の展示は後半話数の展示が少なかったような気がしましたが、こちらも全話数のものがあって見応えありました。


全作品の展示をピックアップしようと思いましたが、長くなりそうなのでまた次回。

第7回京都アニメーションファン感謝イベント「私たちは、いま!!―京アニのセカイ展―」ステージイベントレポ

すでに一ヶ月以上経過していますが、イベントに行ってきました。
本当に素晴らしいイベントで、あまりにも濃すぎてヘトヘトになりました。

ということで、まずはステージイベントでのスタッフトークをまとめてみたいと思います。
全ステージに参加したんですが、その中からスタッフトークに多くの時間を割いていた3つのステージをまとめてみたいと思います。

ただまとめるだけではつまらないので、ところどころで私の注釈や感想をいれてますがご容赦ください。

 

クリエイターマル秘トーク【Free! × ツルネ × 小林さんちのメイドラゴン のセカイ】

登壇者

丸木宣明(作画監督)
岡村公平(キャラクター設定・総作画監督)
米田侑加(色彩設計)
笠井信吾(美術監督)
植田弘貴(撮影監督)
山本 倫(3D監督)

・『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』

モニターにドラゴンの設定が表示される

丸木 ドラゴンのデザインは犬とか猫、馬…他の生き物をモチーフにしていて、ドラゴン自体をモチーフにしていない。

異世界シーンの美術が表示される

笠井 異世界にある植物の色は工夫した。普通の世界にはない亜熱帯のような色をした植物を作り、かつ大きい植物を作った。参考に大阪にある植物園に取材に行った(取材の写真が表示されたが、建物的に咲くやこの花館)

米田 異世界は色味にこだわった。普通の世界のノーマル色とは少し違って、影を強めにしている。

山本 CGは雲やわたげにこだわった。雲をCGで作ることはほとんど初めて。ファーストカットにも出てくるからとてもこだわった部分。丸木さんにドラゴンもCGにしてほしいっていう要望をいただいただが、相当難しい注文。だめだとは言えないからやんわり断った。

・ツルネシリーズ

丸木 山村監督からは、作品を作る上で弓道という競技性、武道という精神性を大事にしたいという話があった。的が弾け飛んだり、少年漫画チックな作品ではないものを作る。作画は、弓を引くときの姿勢にこだわった。

モニターに弓を引く時の姿勢について、描き下ろしの正誤作画が表示される。

丸木 正しさとしても、絵的にかっこいいのも胸を張っている絵。二期を前にして新しい試みも行った。一期の再放送がNHKであったときにエンドカードを描き下ろした。そこではコンテ段階で色をつけてからエンドカードを描いた。

・freeシリーズ

笠井 シリーズ通してプールの中の水の色をこだわった。見栄えのいい色で、かつキャラクターの色とマッチしたものを。特にナイトプールは上手く作れたと思う。*1

丸木 凛と遥の色(赤と青)が上手く使われてた。

 

モニターに『spoon.2Di Vol.52』の版権絵の線画が表示される

※11月30日追記 監督机スペース脇にラフが展示されてました。

 

岡村 この版権は、普通背景は背景さんに描いてもらうけど、統一感が欲しくてこの版権は自分で背景の花も描いた。出版社からは「ボタニカル、セクシー&ワイルド、亜熱帯雨林のような水滴と濡れた髪」という依頼。人物を描くよりも花を描く方が時間がかかった気がする。凛の胸筋は我ながらよく描けた。

米田 色は私が塗った。髪の毛は濡れているから濃い色を、花は亜熱帯植物を参考にした。

岡村 版権の依頼、freeは出版社の人の熱意が溢れたものが多く、内容も細かいため打ち合わせも「じゃあ、それで」で一瞬で終わることが多い気がする。

 

・QAコーナー

Q1.こだわりきれなかった部分はあるか

丸木 メイドラゴンのドラゴン。爬虫類の動きをするドラゴンを描けなかったのが心残り。犬とか馬みたいなドラゴンだけで、背骨を左右に動かすような動きをするドラゴンがいなかった。迫力を出すのが難しく、泣く泣く登場させるのを断念。

Q2.作品ごとに異なる雰囲気だが、苦労する部分などはあるか

丸木 作品ごとに求められる線質が全然違うため、書き分けが難しい。

Q3.お気に入りのシーンはあるか

植田 劇場版メイドラゴンの冒頭、空を飛んでいるシーンは大変だったがお気に入り。石原監督からいろんな要望メールが届いてた。雲とか空を飛んでいるところの参考資料とか。

山本 可哀想なくらいリテイクしてた。

植田 30回はあったと思う。

 

クリエイターマル秘トーク【中二病でも恋がしたい! × 響け!ユーフォニアム × CITY THE ANIMATION のセカイ】

登壇者

池田和美(キャラクターデザイン)
竹田明代(色彩設計)
山崎詩央里(美術監督)
篠原睦雄(美術監督)
髙尾一也(撮影監督)
佐藤敦仁(プロデューサー)

・中二病でも恋がしたい!シリーズ

モニターに劇場版中二病のメインビジュアルのラフ、レイアウト、各素材のレイヤーが表示される

https://www.kyotoanimation.co.jp/img/works/key_visual/chuniMovie.jpg

 

池田 石原監督から立花の持ち物をテーマにしたビジュアルを、とお願いされた。設定ですでに決まっているものに含めて、持ってそうなものを考えて作り込んでいった。

当時はラフをFAXでやりとり*2。監督とのやり取りの中で小物を見せる方向で、という指示があったと思う。レイアウト段階では自分が描くであろうところから先に描いていったけど、打ち合わせで背景やCGと役割分担をしていくと徐々に自分が書かなきゃいけない小物が多くなっていった気がする。

・響け!ユーフォニアムシリーズ

モニターに真由のラフが表示される。含みを持った表情のラフが多い。

池田 真由は久美子からすると心をざわつかせるような存在。監督からは掴みどころのない、ぬるっとしたキャラクターを描けますか?と言われ、描いたのがこのラフ。明らかに悪いことを考えてそうな表情。監督たちからは「う~ん」という反応。真由のキャラクター性を表情で作るのは諦めて、物語の中でどうにかするしかないというぶっつけのような結論に。黒タイツはあすか先輩を意識した。

モニターに真由の色の案が映される。案のタイトルはカレー、チョコレート。色が連想させる食べ物の名前になっていた。

竹田 真由の髪の色は決まるまで紆余曲折あった。最初は原作からのイラスト2つしか参考がなかった。監督からは白髪が良いという話があったが、原作と違いすぎるため却下に。

モニターに3期12話、真由と久美子がオーディション前に会話するカットが映される*3

高尾 個人的にこだわったカットはここの付けパン。この話数のコンテは小川さんが担当していたが、コンテの端書に「初めての場所でうまくやっている それに触れられたイラ立ちとそれに包みこまれた安心感」と書かれていた。そのこだわりに応えられるような付けパンを目指した。付けパンは動かしすぎてもわざとらしくなってしまう。そうならないように気をつけた。

・CITY THE ANIMATION

山崎 こざっぱりした絵面を目指した。石立監督からは「たのしいとかわいい」がテーマと聞いた。最初はテクスチャのある背景。空もグラデーションをかけていたが石立監督から「いらないんじゃない」と言われ、どんどんシンプルな画面になった。色も似たような色を使って画面をシンプルにした。

篠原 CITYはデザインを考えるような作品だった。リアルのその先にあるものを目指すのは難しいと思う。

山崎 あらゐけいいち先生のデザイン的なものを表現したいと思って作り上げていった。

モニターにCITYの注意事項資料が映される

山崎 BOOKでセルと重なるときは、BOOKとセルが同じ線の太さになるようにしている。注意事項以外にも、最終的には筆ペンで作画するようになった部分も。

山崎 空の色は宮田さんと一緒に決めた。最初はコントラストをつけたけど前述の通りそれはやめて、淡い色、濃い色と作っていく中でその中間の色に決まった。

山崎 EDは石立監督、あらゐけいいち先生から新しいことをしようとの提案があり、フルCGのEDになった。

佐藤 山崎さんが起用されたのは『はぐれ星のうた』で山崎さんがイラスト担当だったからだったと思う。石立監督からなにか話があった?

山崎 いや、そこらへんは覚えてない。ただ、EDの案出しがかなり煮詰まってたときの石立監督の一言が印象に残ってる。監督から「ドラマはあるのか」という言葉とともに、バックショットの絵をさらさらっと描いてくれた。そこからEDのバックショット*4が生まれた。監督からは全キャラクター出すようにという話もあったが、とても無理。動物だけ出てくるEDにした。

佐藤 あらゐけいいち先生はEDのテロップの文字を手書きしてくれている。「監督 石立太一」と「演出 石立太一」の字がそれぞれ書かれているところにもこだわりを感じる*5。特殊EDもあらい先生の文字。

 

・QAコーナー

Q1.目立たたないけどお気に入りの部分は?

山崎 背景に書かれた看板。原作のようにアニメにもネタを仕込ませている。自販機前の「愛犬肌診断」の看板*6とかお気に入り。

 

演出クロストーク【創造のセカイ】

登壇者

山村卓也
小川太一
太田 稔
宮城 良

モニターには演出を解説するパワーポイントが。バジャとガーくんのイラストは山村さんの描き下ろし。

・CITY THE ANIMTIONについて

宮城 原作をいかに映像に落とし込むかをこだわった。

小川 CITY、難しかった。アイデアが全然出せない。作打ちも「よろしく」で終わっちゃう。

太田 自分も雰囲気でやってしまう。原画さんからは「わかりません」って言われがち。

小川 石原監督の打ち合わせも雰囲気重視。身振り手振りでコンテを解説してくれる。でもみんな手元のコンテ見てて石原監督を見てない。太田さんはCITY5話をどうやって作ったの?

太田 監督とのコンテ打ちではホントにやるのか?と思いながら聞いていたけど、監督がやるって言ってるならリスクゼロだな、と思って前向きにやれた。

小川 作ってるときにはどうなるんだろうと思ってた。スタッフ総動員みたいな感じになってた。チェックで見たとき「やったな!」と思ったし、アニメの歴史に名を残せたんじゃないかな。

・ツルネシリーズについて

山村 1期の1話と12話は自分でやろうと最初から思っていた。2期ではみんなの道を作るという意味でもたくさん描いた。

小川 一人でやってると同じ構図で描いてることもあって、難しい部分もあると思う。

・『CITY THE ANIMATION』9話について

宮城 コンテを描くときには基本的に原作重視。レースの終盤、長回しも原作からアイデアをもらった。これはそうするしかない、どれだけ大変になるかわからないけどやるしかないだろう、と。

・『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』について

宮城 石原さんと一緒に演出をやった。いかに石原さんのエッセンスを奪えるかと思っていた。石原さんが作打ちでキングカムイの動きを実演したり、そう部分も大事なことだなと思った。

・それぞれの演出的なフェチズムについて

小川 横顔。くびすじも好き。カメラが絶妙なところにおけるよう修正することが多い。あとは足の太さや細さ。

山村 目線*7。どこを見ているか。何を感じているかが伝わってくる。あとは瞳のブレ。前まで意識せず演出にいれていたけど、最近は意識し始めてる。

宮城 フェチとは違うかもしれないけど、スタジオから前の社屋にはためている旗が見える。それはずっと見てられる。だからなびきとかエフェクトがフェチなのかも。

小川 髪のなびきも好き。どうなびかせるのがいいか…永遠のテーマ。

山村 アニメとして良いなびきがかけると気持ちいい。

太田 イケメンが颯爽と歩いてきて、まわりがキャーっていうけど、その先にメインヒロインが居て「お待たせ」っていうのが好き。

山村 それはフェチじゃなくて好きなシーンでしょ。

 

QAコーナー

Q1.作品を作るうえで共通して大切にしていることは

山村 見た人の心をえぐりたいと思っている*8。ちょっとした風景とかなんでもないシーンでもグッと来るような作品を作りたいと思っている。

宮城 面白いものを作りたい。ただ、その面白いものは探し中。自分だけじゃなくて見ている人も面白いと思ってもらえるものを作りたい。

小川 以前の作品で鶴岡音響監督が「演出のための演出をするな」と話してくれた。グサッときた。独りよがりの演出を見抜かれてたんだと思う。そこから内容に則した演出ができるよう意識している。演出にも構成力が大事だと思う。誰にとって面白いんだ、という構成力。

太田 視聴者の顔を思い浮かべながら作ることを大切にしている。

Q2.ここはうまく作れた、というシーンはあるか

小川 最近だとユーフォ3期12話は良く作れた。演出が山村さんで良かった。

山村 オーディションで真由がスッと前へ出るシーンはこだわった。あそこをスローモーションで描けたのが良かったと思うけど、スローモーションの大変さも味わった。

小川 3期9話も鶴岡音響監督のおかげで更に良くなった。久美子と麗奈が対峙する橋のシーンは1期の劇伴を使っていて、鶴岡監督の技を感じた。12話の劇伴もすごく良くて、絶妙なところで劇伴が流れ出す。自然と涙が出そうになった。

山村 ツルネ2期11話の辻峰の反省会シーンはうまく演出できたと思う。あとはユーフォ3期7話、プールで久美子と真由が話すシーン。真由が撮った飛行機雲の写真はシナリオにはなかったがコンテで入れた*9。

小川 確かに真由はああいう写真撮りそうって思った。

宮城 CITY9話の2カット背景動画でやったところ。原画は自分でも描いた。まつりとえっちゃんがゴールするあたり。

太田 フェチの話で思い出したけど、Free最終章・後編で大会が終わったあと窓際のベンチでぐったりしてる遙のアゴ*10が好き。

 

以上。
聞き逃してしまった部分や多少ニュアンスが違う場合もありますがご容赦ください。

大本命だった演出トークが期待値どおりのおもしろさで、大満足でした。
宮城さんのお話を聞けたのが大きかったです。原画パートとかから察するにゴリゴリ動かすタイプのアニメーターさんだとは思ってましたが、エフェクト好きの話が聞けて更に納得。

あとはコメンタリー常連の竹田さんの生声を聞けたのが地味に感動しました。AIRのコメンタリーがもう20年以上前ですけど「ああ、聞き馴染みある声だ!」ってなりました。古くからの知人に会ったみたいな感覚を勝手に感じてました。

高尾さんや別のステージに登壇された石立さんの小ボケも健在。一方で山崎さんや太田さん、宮城さんのようなブレイク中のクリエイターのお顔が見られたのも嬉しかったです。

*1:ここらへんの話は公式サイトに載ってるスタッフトークのほうが詳しく語られてますね。
SPECIAL | 『劇場版 Free!-the Final Stroke-』公式サイト「劇場版 Free!-the Final Stroke-」後編スタッフトーク オフィシャルレポート【前半】

*2:池田さんと石原さんがDoと京アニで離れてたからか。

*3:(追記)モニターに写った資料の全部が「『響け!ユーフォニアム3』メモリアルファンブック」に載ってることに気づいてしまった…ちょっとスペシャル感が減ってしまった。

*4:


*5:全部違う…!


*6:2話Bパート。


*7:関連して、こちらのインタビュー記事も参照したくなります。
作りたかったのは「背中を押してくれる作品」『ツルネ -つながりの一射-』山村卓也監督インタビュー① | Febri

――なるほど。あと第2期でも目のアップや、瞳を使った細やかな芝居が印象的です。
山村 よく「目は口ほどにものを言う」と言いますけど、たとえば、何かを言われてキャラクターが動揺したとき、それがどこに表れるかというと目なんです。そんなふうに、キャラクターたちが抱えている感情を目で表現したかったというのがあります。あと弓道の試合に行くと感じるんですが、その場にいる人たちは弓を引いている人のことをしっかりと見ているんです。そういう真剣な眼差しを描きたかったというのもありますし、『ツルネ』は湊がいろいろな人の射(しゃ)を見ることによって成長していく物語でもある。そういう意味で、瞳の描写は大切にしたいと思っています。

7年前(!)に書いた自分のブログ記事もよろしければ…

山村卓也さんの演出「目線の移動と瞳の揺れによる感情表現」について。: 雑感雑考

*8:ツルネ2期のムック本でも同じ話をされていました。

*9:


*10:ここだろうか。太田さんの演出パートもこのあたりだったりするのかな。