虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

ドラマスペシャル「火車」佐々木希出演場面抜粋。

toshi202011-11-05




火車 (新潮文庫)

火車 (新潮文庫)


 宮部みゆきの代表作「火車」が「相棒」「探偵はBARにいる」の橋本一監督によってドラマ化され、放映された。主演は上川隆也、そして2番目にクレジットされてるのが佐々木希である。演じるは、失踪した謎多き女性・関根彰子役である。

http://www.tv-asahi.co.jp/kasha/


 歴史的傑作ミステリーのドラマ化ということでテレビ朝日としても気合いが伺えるキャスト陣の中で、主演映画「天使の恋」、主演ドラマ「土俵ガール!」という彼女のキャリアで、今回の主演級起用はおそらく大抜擢と言っていい。
 彼女がなぜ、このドラマに抜擢されたのか。彼女の出演シーンを振り返る。


 以下、ネタバレが入っています。



・7分40秒 足に重傷を負い、休職中の主人公・本間刑事(上川隆也)の親戚の婚約者・関根彰子として登場。写真のみ。


・11分54秒 本間刑事、関根彰子の写真を見返す。写真のみ


・13分54秒 勤め先の履歴書に張ってあるスピード写真に写る彰子。写真のみ。


・17分36秒 関根彰子の破産手続きをした弁護士(笹野高史)に彰子の写真を見せると、写真に写る彰子は見たことがないという。佐々木希がホンモノの関根彰子ではないと判明。写真のみ。


・26分44秒 本間刑事、同僚刑事の碇の「女は変わるぜ」という台詞に対して、「小柄な女性がモデル並みの長身美女に変わるか?」と本物の関根彰子(田畑智子)と偽物の関根彰子の写真を渡して見せる。碇刑事、納得(ヒドイ!)。写真のみ。


・31分36秒 関根彰子(ニセ)が住んでいた部屋に残されてた、婚約者との思い出の写真を集めたアルバムの写真に登場。写真のみ。


・33分00秒 本間刑事、関根彰子(ニセ)が本物の関根彰子ではないことを、婚約者の親戚男性に告げる。写真のみ。



・34分55秒 改めて朝、憂鬱な顔で、関根彰子(ニセ)の写真を見返す本間刑事。写真のみ。


・39分54秒 関根彰子(本物)と関根彰子(ニセ)の接点を求めて、本物が勤めていたスナックで、ママ(美保純)にニセの方の写真を見せる本間刑事。写真のみ。


・48分08秒 本間刑事、関根彰子と関根彰子(ニセ)のつながりを求めて宇都宮へ。そこで彰子の幼なじみの本多(ゴリ)と知り合い、「こんな同級生はいないか」と写真を見せる。「こんな美人、いませんよ。」空振り。写真のみ。


・50分36秒 関根彰子の母親の四十九日に見知らぬ女がうろついていたらしいという。黒い帽子に黒いコート、サングラスをかけている姿で、初めて写真以外で登場。台詞なし。


・55分38秒 みどり霊園という会社で墓所見学ツアーというものに関根彰子が参加したことを知った本間刑事は、記念写真を見せてもらう。その記念写真の中に、関根彰子と関根彰子(ニセ)が一緒に写っていた。写真のみ


・58分12秒 関根彰子(ニセ)が関根彰子に近づいて一連の事件を起こした動機を尋ねられて、本間刑事、写真を見ながら「冷静で緻密で大胆だ。美人で頭もいい。なのに別人にならなければ生きていけないような過酷な境遇にいた。そんな気がする。」本間刑事、ほとんどベタ惚れを告白するような物言い。写真のみ


・1時間4分12秒 関根彰子(ニセ)が残したポラロイド写真を手がかりに、本間刑事は彼女が三芝建設のグループ会社にいたらしいことを突き止め、受付に彼女がいたかを聞いたけれど、社員の身元については教えられない、と断られる。写真のみ


・1時間06分56秒 三芝グループの中に、関根彰子が失踪時に残した品の中にあった段ボールの社名を発見し、そこの社員に写真を見せる。彼は関根彰子(ニセ)の元上司で元恋人だった。関根彰子(ニセ)の本名が判明する。新城喬子。写真のみ


・1時間09分17秒 元恋人の回想で、部屋のベランダで、物憂げに夜空を眺める新城喬子台詞なし。



・1時間12分24秒 碇刑事の調べで、新城喬子が伊勢で結婚していたことが発覚。本間刑事は伊勢へ向かうことに。写真のみ


1時間16分25秒 和歌山県に向かった本間刑事。新城喬子と結婚していたとされる倉田(高橋一生)という青年に会い、写真を見せる写真のみ。


・1時間17分05秒 倉田の回想。父親の借金を催促しにきたやくざから逃れるために雪の中逃げる喬子のシルエット。台詞なし。


・1時間17分17秒 倉田の回想。ヤクザから逃れて、ホテルで仲居をしている新城喬子。ホテルの前でオケからひしゃくですくって水を巻いている。そこに倉田がやってきて一目惚れ。時代劇だ。台詞なし。


・1時間19分14秒 倉田の回想。正式に結婚して、役所に戸籍を入れたことで、再び借金取りのやくざが和歌山に。父親の借金なので、父親が死んでいれば相続しなくて済むと思った倉田と喬子は、図書館にある行旅死亡人公告で父親の名前を捜す。父親の死を祈るように、必死に捜す喬子の顔を見て、だんだん引き始める倉田。「喬子。自分の顔、鏡で見てみろ。まるで、鬼だ。」。お前はお前であんまりだろ。喬子の目のアップ。台詞なし。


・1時間23分31秒 名古屋にいる新城喬子の親友・須藤薫(井上和香)に会う本間刑事。薫の回想で雨の中逃げるように走る喬子のシルエット。台詞なし。


1時間24分15秒 須藤薫の回想。彼女のアパートに逃げ込む新城喬子。右手にはやけど。風邪引いて高熱を出している。一週間入院した。台詞なし。


・1時間25分00秒 須藤薫の回想。退院して御礼を言いに来て、その別れ際。「いつもは「また来ます」と言うのに、その時だけ「さようなら」って言ったの」。というピンクの部分で登場。台詞あり・・・かと思いきや、井上和香の台詞をかぶせてあるので惜しくも台詞なし。


・1時間25分16秒 本間刑事、碇刑事と事件を整理する。写真のみ。


・1時間36分24秒 新城喬子、新聞で関根彰子の母親の転落死を知る。雨が叩く窓越しに映る喬子の姿。台詞なし。


・1時間40分23秒 関根彰子であり続けるわけにはいかなくなった新城喬子が狙う標的を先回りしようとする本間・碇両刑事は、関根彰子によく似た境遇の木村こずえ(前田亜季)という女性に接触。彼女に新城喬子の写真を見せる。写真のみ。


・1時間43分 新城喬子が木村こずえに接触し、銀座で会うことを知った本間と碇刑事は、こずえを囮に新城喬子を待ち伏せることに

 待ち伏せている銀座のビルにワンピース姿の新城喬子が入ってくる。やがて彼女はこずえの席の前に座る。本間と碇が彼女に近づく。その近づいた影に気付いて、新城喬子が振り向く。本間刑事は言う。


「新城喬子さんですね。あなたの話を聞かせて下さい。あなたが逃げ惑い、隠れ暮らす生活の中で積み上げてきた話を。あなたが、独りで抱えてきた話を。」。


 そう話しかける本間の言葉に、立ち上がり、やがて何かを話そうとする喬子。その瞬間、本間が言う。


 「警視庁捜査一課刑事、本間俊介です」。


 佐々木希の出番終了。


 全編、台詞なし。


 主演級なのに、台詞なし。
 原作の「火車」は、最後まで佐々木希演じる関根彰子=新城喬子は登場せず、最後に、彼女と本間刑事が出会う、という構成。つまり、佐々木希の演技力はハナから考慮に入れず、新城喬子が持つ「美人であること」という記号性だけを最大限に生かすための起用だったのである。


 このドラマは、佐々木希を、最も正しいカタチで生かしたドラマとして語り継がれるべきだと思い、ここに記します。