最近外国人と仕事をする機会が非常に多いが、仕事をしながら感じることは、もう少し日本という国に対する自分の知見を増やしたほうがよいなぁ、ということ。
- 日本人の品質に対する基準っていうのは、どうしてかくも過剰に厳しいのか?
- 同じアジアであるのに、中国人は契約を守らないが、日本人はどうして守るのか?
- 見積書なんて必要な情報が含まれていればよいのに、日本人はどうしてそんな書式にこだわるのか?
なんて、ことに対して「That's natural for Japanese, I suppose(そういうものだから)」で片付けてしまうのもよいのだが、根っこのところでアメリカ人と日本人はどう違う、中国人と日本人はどう違うということは抑えておき、その上でもう少し突っ込んだ議論なり、説明をしないと、結局向こうの行動に結びつかないんじゃないかと感じている。
そんな問題意識から「日本」をとりあつかった本をいくつか読んでいるのだが、そのうちの一冊が『日本人としてこれだけは知っておきたいこと』。
- 作者: 中西輝政
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2006/10
- メディア: 新書
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第一章では、戦後の戦前自虐史観、即ち戦前の日本は侵略戦争に盲目的に突入したどうしようもない軍国主義国家だったという歴史観はGHQの侵略戦略に基づいて展開された偽りであったということが熱っぽく語られている。枝葉末節に疑問を呈すと本書はきりがないが、少なくとも第一章の上記の大枠の主張は、私にとっては目から鱗感が強かった。少なくともこういう意見があり、マスコミの情報や一般的な学校教育にふれる際には、そういう懐疑的視点を持つべきというのは、「日本人としてこれだけは知っておきたい」ことだと思う。
第四章の日本文明論もなかなか読み応えがあり
宗教と近代科学は衝突します。それが、彼らの大きな悩みであり、ときには自然法則の中には必ず神の意思が宿っているはず、と考え熱心に科学研究にも取り組んできました。それが西欧近代の発展の原動力となったのです。また、その信仰心が「神との契約を守らなければ地獄へ落ちる」という恐怖心と一体となった宗教であることも忘れてはならないでしょう。
対して、日本の宗教(日本文明)は、自分の心を清々しく保つことを重視します。奇跡に依存したりはしません。戒律もありません。神は外部に存在するのではなく、「自らの心に宿る」。そういう意味では、一番進んだ宗教(宗教心)であり、近代科学とも矛盾しない宗教といえます。『日本人としてこれだけは知っておきたいこと』 〜第四章 日本文明とはなにか P.244〜
特に上記でふれられている、崇拝すべき神、定められた守るべき戒律が外部に存在する他国の宗教とはことなり、自身を律する精神に神が宿るというのが日本の宗教観であるという指摘には、私も大きくうなづくところがあった。結婚式は教会であげ、葬式はお寺で行うから日本人は無宗教、という広く言われている考えが誤りであることにも気づく。
歴史や文化に対して不勉強な私にとって、部分部分で「おぉ!」と思うところがある反面、極論が多く、主張の根拠に乏しい箇所が多いのは本書の欠点。読みやすくコンパクトにまとめたため、詳細な説明や事例提供を削らざるをえなかった、という点を割り引く必要はあるが、下記のくだりにふれると、私もさすがにドン引きしてしまう。
あの耐えて祈り続けるお姿は、まさしく昭和天皇の再来で、歴史の重荷を国民がもう何も感じなくなってしまった今でも、皇室だけが可能に背負われ、今上陛下の御心を代弁しておられるわけです。これほど高貴なお心を持たれた君主を頂くことの幸せと、「もったいなさ」を感じざるをえません。
『日本人としてこれだけは知っておきたいこと』 〜第三章 日本人にとっての天皇 P.213,214〜
ブログでは書評があまり書かれていないが、アマゾンのレビューでは賛否両論の本書。ここに書かれていることを鵜呑みにすることの危険性はそれらをみれば十分にわかるが、こういう本を読みながら筆者と対話を自分の中でできるような、歴史観、日本観をもつことは非常に大事なことと改めて思う。