跳ねて進むジャンプアクション『LocoRoco』

kodamatsukimi2006-08-30


 公式 http://www.jp.playstation.com/scej/title/locoroco/ ASIN:B000BN981I


・『ロコロコ』は、とても良く出来た2Dアクションで
 否マリオジャンプアクションにおけるひとつの代表作といえる出来です。


・SCEといえばです。『グランツーリスモ』『みんなのゴルフ』を例外として
 発想は独特で良いけれど作り込みの甘い作風ゲームメーカー、という
 一昔前までの印象であったのですが
 『サルゲッチュ』なども実は良く出来ており、このゲームもどうやら例外。
 ステージ構成の幅も量も奥行きも申し分なし。全体に素晴らしい。
 広告に騙されまいと、騙されてはいけません。



・公式の紹介から想像される感じでは、玉ころがしゲームの一種。
 操作対象の玉を転がして、あるいは地面を傾けて、ゴールまで導くゲーム。
 『スーパーモンキーボール』とか『マーブルマッドネス』とか『キャメルトライ』。
 駄菓子屋で売っていたようなおもちゃにもそういうのがありました。
 大人が大金掛けて遊んでいる玉弾きは別物ですけれども。

・『ロコロコ』はそれらとは少し違います。
 遊ぶ感じは『マリオ』とかに同じ2Dジャンプアクション。


・LRボタンで画面内の舞台地形を左右に傾けます。右へ左に転がります。
 LRを同時押しして離すと、画面が上に跳ねて飛び上がる。
 それが操作方法。
 迷路地形を抜けて、敵を避けたり潰して倒したりし、得点アイテムを回収しながら
 より早く、より多くのアイテムを得て、ゴールするゲーム。


・そういう今までに同じ玉ころがしゲームと違うのは
 転がるより跳ねていった方が速い点。

・玉の跳ね動作は、従来の玉ころがしゲーム、
 例えばXBOXLIVEの『Marble Blast Ultra』http://www.xbox.com/ja-JP/games/m/marbleblastultralivearcadexbox360/
 などにも見られますけれども
 それはこの種のゲームが初めから、駄菓子屋の店頭で刷り込まれた時点で
 3Dで立体的、図形の球でなく玉転がし、であったことによって
 テレビゲーム上でも自然3D舞台地形とあいなった、のかも知れないですが、むしろ
 2Dだとそれこそ『ルート16ターボ』、もとい『パックマン』になりかねず、
 そして玉の転がる挙動に見えない、つまりそれこそこの種ゲームの意義である、
 よって、古くから段差を意識して玉の跳ねる挙動も取り入れ
 ただ上から迷路をたどるでないものとして設計されたことによるもの、と言えます。
 『クレイジータクシー2』のクレイジーホップ導入までの経緯と比べたり。

・地面の傾け操作及びそれに伴う転がり移動には
 おめが?日記で指摘されているように遅延があります。

 プレーヤーはロコロコ自体を操作していると思いがちだが、
 そうではなく実際には地面を傾けている。
 ロコロコ自体の重量は結構あるようで、停止するだけでも慣性が働き、ディレイが遅延が発生する。
 そこがキャラクタ操作型のアクションと決定的に違う。
http://d.hatena.ne.jp/o_mega/20060721より

(「遅延」について関連 http://ab2.blog6.fc2.com/blog-entry-14.html)
 その遅延、傾けているのに転がる対象の反応の遅さが
 玉ころがしゲームにない最大の特徴。もちろんミスでなく意図的な設計。 


・このゲーム、慣れない内は人前で遊べません。
 中々転がらないので、わかっていても腕を傾け本体傾けるだけでなく、
 思わず気付くと体をよじる。
 ぐにぐにぐねぐね。レースゲームのコーナー傾きの比でなく人様にお見せ出来ない。
 傾けて転がすゲームでなく、その操作方法で弾いて進むゲームであるのです。




・本作のステージ構成の特徴として
 操作できないパートが合い間に挟まれているのが目に付きます。
 風に吹かれて飛ばされたり、歯車に巻き込まれて涙滴状に落下していったり。
 その間傾け弾き操作は一切効かない。
 これはなんのためにあるのか。

・ステージ構成上の緩急。見せ絵と演出効果ですけれども
 その場面で思い起こされるのは2D『ソニック』のループダッシュ。
 ジェットコースターはブレーキが踏めないからこその楽しさである、それ。


・玉ころがしゲームにおいて、最短経路を最速で行く、という
 ただひとつの正解にたどり着いた時点で飽きてしまわれないようにするための工夫は
 車と玉の挙動の違いや、コース構成の自由さによる特徴付けの他に
 ステージにわき道を作り、クリアアイテムやスコアアイテムあるいは
 『パックマン』のパワーエサ、『ディグダグ』の岩のように
 正解までの道をただひとつでなくする方法。
 『塊魂』においてはアイテム取得で道筋展開が異なるという転回構築がされて出色。

・『ロコロコ』はアイテムとると見た目大きくなるのですが運動性能は変わらない。
 『塊魂』のそれでなく、従来玉ころがしのそれ。
 そして

 製品版の各ステージは、ただクリアするのはとても簡単で短め、
 しかし隠されたフィーチャーを探したり記録に挑戦しようとすると
 だんだん難しくなり脇道もいろいろある、という構成になっている。
 2Dの横スクロールアクションゲームだけど、
 ここらへんのステージ構成のテイストは
 3Dのプラットフォーマー(箱庭型)ゲームに近いテイストだ。
     http://d.hatena.ne.jp/msrkb/20060720/LocoRocoより

 誰でもクリアできる難しさかつ豊富な量が求められる、
 近年嗜好に合わせたそれです。

・ただ最短経路をトレースするだけでは競い合う面白さのレースゲームと比較されてしまう。
 ただより早く。それも価値だけれども
 Bダッシュで駆け抜ける途中にリフトが上がってくるまで静止して待つ時にも
 より早くあることに矛盾しないという価値を
 レースゲームでなくアクションゲームは持たせることが出来る。 
 ジェットコースターは静止するからこそ急降下がまた際立つ。


・また、後半のステージに掛けての難度上昇曲線がそれほど緩くないところは
 構成の幅狭さへ自ら押し込めてしまった『NEWスーパーマリオ』の難度と比べて
 面白いところ。結果としてより長く遊べるのでは。
 誰にでもクリアできることは果たしてどれだけの価値があるのかという問題、
 このふたつの違いはどちらが正解といえるのでしょう。



・転がすのでなく、弾いて跳ねるほうが早い。

・『ドンキーコング』は上からタルが転がり落ちてきます。
 マリオはそれをジャンプしてよける。
 しかしダッシュはまだしない。そしてジャンプは回避であって移動を兼ねない。
 タルを避けられる場所へ移動する。ジャンプ。その繰返しのゲーム。

・『マリオ』はタルが転がってくるのでなく
 自分が移動していって、任意の場所でタルを避けられるゲーム。
 同じより早くゴールへたどりつくゲームでも違う。
 玉を転がすゲームと、跳ねて進むゲームの違いです。


・『ロコロコ』は玉ころがしゲームの操作方法で『マリオ』をするゲーム。
 玉を転がして進ませるのでなく、弾くことで跳ねて進み、より早くゴールするゲーム。
 3D玉ころがしゲームでなく2Dジャンプアクションであり
 ジャンプボタンでジャンプするのでなく、地面を弾いてジャンプする点が独特。
 それに気付かせる構成も、それを制御して戯れる過程の質も量も良し。

・べた褒めさせていただきます。
 『LocoRoco』は『マリオ』に劣らぬ傑作アクションゲームなり。