今夜はいやほい

きゃりーぱみゅぱみゅの「原宿いやほい」のいやほいとは何か考察するブログ

一泊二日、奈良を食べる。満洲国皇帝、愛新覚羅溥儀をもてなしたグラスで酒を飲む。

 

三連休を得たので、奈良に出かけた。三連休一日目は大阪にいた。新幹線では、東京からは奈良に直通で行けないので、大阪に一泊することにしたのだ。

 

在華坊さんがツイートしていた大安が気になっていたので、行ってみることにした

破格の立ち飲み、西天満『大安』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

 

外から見るとかなり混んでいるように見えたが、戸を開けてみるとそうでもなく、普通に座ることができた。立ち飲みなのかと思っていたが、実際には小さな椅子が置いてあり、軽く腰掛けることができた。

 

とりあえず、石鯛のお造りと、菊菜のやまかけを注文する。厨房を囲うようにしてカウンターが広がっていて、なかなか活気を感じる。賑やかな人と、静かに飲んでいる人が半々だった。酒は鍋島を注文する。

 

菊菜のやまかけは、そんなのうまいのか...などとやや疑義を持ちながら食べると、菊菜はやわらかく、青さがちょうど良い加減で、出汁がなかなか上品でちょっとした料理なのにこれがなんともおいしい。冷えた体に、これと日本酒が組み合わさると、体が一気にあったかくなった。やまかけのつるんとした食感がまた良い。鯛も白身ながらに、旨味が濃厚で、脂がとても良いバランスだった。

 

 

となりの老人が話しかけてきた。

 

「どこから来たん」

 

「旅行で埼玉から来たんです」

 

「いつまでいるの」

 

「今日までで、明日は、奈良行くんですよね」

 

「奈良、あそこなんかうまいものあるんか」

 

大阪、京都というとたしかに、なんかうまそうなものがそこかしこにありそうな気がするが、たしかに奈良にはあまり食のイメージはない。

 

 

「そうですね...」とお茶を濁す。はまぐりのお吸い物を飲む。はまぐりは肉厚ですだちの酸味がここちよい。すだち大好き民族なので、すだちが入っていると、もう、一瞬で飲み干してしまう。ちょっと趣向の効いた感じがどれもよい。こう美味いものを食べてると、たしかに、奈良に行かずに、大阪で過ごせばいいか?という気になってくる。

 

となりのおっちゃんは「まあ、楽しんでな」というようなことを行って去って行った。

 

志賀直哉は言ったらしい「奈良にうまいものなし」と。いきなり気も削がれた感じもあるが、奈良にはもう長いこと行ってないし、もともとちょっと用事もあったので、予定通り奈良に向かうことにした。

 

大和西大寺の喫茶店でモーニングの満漢全席

 

寝て起きるとカピカピに体が乾いているタイプの極度乾燥ホテルで目が覚めた。大阪の北側のエリアでホテルをとっていたので、街並みも整然としている。

 

電車に乗り込み、奈良に向かった。大阪の喫茶店でモーニングを楽しもうと思っていたのだが、残念なことに、ホテルの周りにはちょうどいい店がなかったので、奈良で喫茶店に入ることにした。

 

大阪、京都は100メートルも歩けば喫茶店があるが、奈良は、近隣県であるのに、意外と喫茶店が少ないようだった。この違いはどのようにして生まれるのだろうか。Googleで調べると、奈良駅へ向かう途中にある大和西大寺駅に良さげな喫茶店があるようなので降りることにした。

 

珈琲館亜耶

 

古いマンションの少し奥まったところにあり、なんとなく暗い印象だった。しかし、案内された席は、目の前が一面ステンドグラスで、むしろ不要なまでに煌めきたっていた。予定通りモーニングを頼んだ。モーニングは、フルーツにキャベツの千切りにポテトサラダに卵にトーストという、喫茶店モーニング概念の満漢全席の様相を呈しており、朝から、胃がフル稼働を始めた。

 

カフェオレには、ステンドグラスの色が落ち込んでいた。奈良をまわりつくすぞ〜と気合を入れた。

 

 

銃撃事件の現場には

 

大和西大寺駅の近くには平城宮と古墳があるようだったので、その辺によりながら、自転車を漕いで奈良駅のほうに行くことにした。平城宮への道は、安倍元首相が銃撃された交差点だった。こんな観光ルートで撃たれたのか...と思いながら、その目の前を通り抜ける。この日は、ちょうど銃撃から半年だったらしく、報道陣がたくさん集まっていた。

 

 

ちらほらと、人が歩いて来ては、手を合わせたり、花束を添えたりしていた。その様を報道陣が遠くから撮影していて、交差点を渡りきったら、記者が取り囲みインタビューをしていた。その様を遠くから眺めた。テレビ越しではいまいちわからなかったが、結構賑やかな街の、交通量も多いところで事件は起きたことを知った。かなり開けたところで、360度演説者が見えるので、ここで警備するのは難しいのだろうなと思った。

 

せんとくん、グーパンチ

そこから数分歩くと、平城宮だ。ちょうどマラソン大会をやっていて、賑やかだった。何があるかと言えば、何もないただっぴろい空間だ。

 

名前が2時間くらい思い出せなくて、もやもやしたせんとくん。軽やかなぐーパンを放つ。着ぐるみは、夏は信じられないくらい暑いらしいが、冬はあったかいのだろうか...

 

 

 

大極殿や朱雀門が再現されている。平城京の中心地でも数千年たつと跡形もなく真っ平な公園になってしまったりするのだ。時の流れというのはとてつもないパワーを持っているのを感じる。

 

 

子供たちがたくさん集まって、凧を飛ばして遊んでいた。

 

 

自転車を少し漕ぐとウワナベ古墳なるものが見えて来た。仁徳天皇の皇后である八田皇女の陵墓かもということになっているらしい。平城宮のように真っ平になっているかと思えば、それより古くてもこうして現代まで形を残しているものもある。東京は千年後にはどうなっているのだろう。それは、途方もないことだ。

 

 

奈良駅の方に向かって自転車でひた走る。だんだんと天気もよくなって来た。知らない街を自転車を漕ぐというのはなかなか良いものである。すこし疲れて来たので、また喫茶店に入る。

 

喫茶アーガイルのちびドッグ。成人たちよ健やかに。

 

 

地元の老婆が集まり、卓を囲んで、すごい密度で会話をしていた。僕は、盛り上がっているところ、すみません...と申し訳なさそうな姿勢をアピールしつつ席に座る。

 

 

ちびドッグなるものがあったので注文した。カレーソースに卵焼きが挟まったちょっとしたサンドイッチだ。これが想像通りといえば想像通りなのだが、カレーとパンとたまごのバランスが良くけっこうおいしかった。たしか、120円だった。コーヒーのつまみにこれがこの値段で食べられるのはとてもよい。

 

 

成人式を終えた若者たちが、流れこんできた。マスターと顔馴染みなのか、プレゼントと言って、ケーキが出されていた。うおーを新成人が盛り上がる。マスターと軽口を叩き合っている。こうして自分の参照点のような店が地元にあるのはとても羨ましいことのように思う。新成人と、老婆にはさまれコーヒーをすする。

 

奈良公園

 

外に出ると、またこれが寒い。手をこすりながら、自転車に乗る。春日大社の方に向かって走っていく。

 

 

コロナで、人がこなくなったせいで鹿が痩せているというニュースを見たことがあるが、人出も戻って来ていて、最近の鹿は健康的に見える。

 

 

15年ぶりくらいに見た、奈良の大仏はやはり、デカかった。

 

 

寒い中、自転車をこいで疲れたので、博物館で暖をとりつつ、仏像を見る。美しい造形だなと思うと同時に、仏像には薄暗い空間が似合っているようにも思われ、なんというか、味噌汁にみかんでも入っていたかのような、そこはかとないシュールさがあった。この仏像もまさか、こんな形で、適切な照明空間に金具で止められ晒されるとは思っていなかっただろう。

 

 

天理ラーメンを屋台で食べる

 

体もあったまって来たので、ホテルに戻って、荷物を置くことにした。自転車をこぐ。一部の、超過密地帯を除けば。奈良の観光エリアは、自転車で移動するとなかなか効率がよいなと思った。少し休んで、もともと食べたいなと思っていた天理ラーメンを食べるべく、天理への行き方を調べる。

 

 

調べたにもかかわらず、なぜか別の路線に乗ってしまい、30分かけて駅から駅を歩いたりして、やっと天理駅についた。一気に腹が減った。最近、旅先で電車の乗り間違えが多い。アプリで調べてなんとなくわかった気になって、ぼんやり電車に乗るので、気がついたら、別の駅にいるのだ。気を付けねばならない。

 

夜まであと少しというような時間帯だった。

 

 

天理駅の前には。不思議な円形の構造物がある。コフフンというらしい。奈良には全般的に、古墳っぽくすればよいという気運があるのだろうか。

 

 

 

大きな天理本通り商店街をぬけると、あたりは真っ暗だった。少し歩くと、屋台が見えて来た。オープンの時間の18時をすこし過ぎたくらいについたのだけれど、ほぼ満席で、席をつめてもらいギリギリ座ることができた。すごい人気だ。

 

 

チャーシュー麺を注文する。屋台というのは、なかなか味わい深いのだが、なにせ寒い。店員さんが鍋の蓋をあけると、ごーっと湯気が立ち上った。あたりは住宅街なのでとても静かだ。

 

となりのおっちゃんは、開店のタイミングで来ていたらしく、一足先にラーメンが来た。「かーっやっぱラーメンはこれやな、かーっ」などといいながら、麺を箸でつまんで高く上げ、ゆらゆらさせながら、一気に食べた。僕はそれを横目で見て、尋常ならざる空腹を感じた。

 

 

隣のおっちゃんは自分の中に、天理ラーメン・ルーティーンがあるらしく、目を細め、妙な手際で、豆板醤が入っているデカいボトルを箸でぐわぐわと混ぜ、らーめんにぺちょぺちょ落としてはすすりあげ、そしてまた、豆板醤を混ぜてはぺちょぺちょ落とすのであった。

 

そんなスープと豆板醤のリズムを感じていたら、僕の元にも天理ラーメンがやって来た。辛味とニンニクの匂いがぷわんと香る。僕も、豆板醤を混ぜてラーメンに落とし、麺を思いっきりすすった。なかなかパンチがある味わいで、しかし、野菜が多めなので結構食べやすい。この辛さとニンニクは寒い中食べるのがちょうどいい感じがある。これは確かに、ふーとか、はー、ではなくかーっと言いたくなるような味だ。

 

 

近所に屋台がある生活というのは羨ましい。露天風呂が気持ちよいように、露天ラーメンもやはり開放感が良いのだ。天理ラーメンは、想像していたよりもだいぶ美味しかった。完全に満足をして、屋台を去った。

 

満洲国皇帝愛新覚羅溥儀をもてなしたグラスでサイドカー

 

天理ラーメンの誤算は、ニンニクが想定以上のものだったということだ。僕はこのあと、奈良のバーに行こうと思っていたのだが、この状態でいくのはかなりの迷惑行為なのではないかと思った。バーというのは寿司屋などと同じく香水をつけて入ったりするのはマナー違反らしいが、香水がダメなら、ニンニクはよりダメであろう。一度、ホテルに戻ることにした。歯をみがいた。1時間ほど休憩しブレスケア的なものを噛み、なんだったらもう一度歯を磨いてホテルを出た。

 

 

目当ては奈良ホテルだ。本当であれば、奈良ホテルに泊まれば良いのだが、結構高かったのでバーにだけ行くことにした。なかなか広い敷地で、ゆるやかな坂を登っていく。鹿がかわいい。

 

 

奈良ホテルは1909年に営業を開始した歴史あるホテルである。ホテルと言いながら、作りはクラシックな木造で、荘厳さがある。

 

 

エントランスに立っただけで、泊まりたかったという気持ちがこみ上げる。しかし、金は無尽蔵にあるわけではないのだ。

 


天井が高い。木の梁がかっこいい。吹き抜けの2階は廊下がぐるっと一周している。ロビーにあった説明書きを読むと、アインシュタインなども来たことがあるらしい。歴史すぎる建物である。

 

 

 

いざ、バーへ。なぜ、わざわざ奈良ホテルまで来たのか。奈良ホテルのバーでは満洲国最後の皇帝愛新覚羅溥儀をもてなしたグラスで、酒が飲めるらしいのだ。さすが歴史あるホテルである。

 

 

カウンターに座りたいなと思っていたが、残念なことに、テーブルの方に案内された。一人客でテーブルに座るというのもやや寂しい感じもするが、気にせずに愛新覚羅グラスで飲めるサイドカーを注文した。テーブルであれば、ニンニクの匂いも気にすることはないだろう。窓越しに奈良ホテルの内庭のようなところが見える。僕以外には老夫婦が二組座っていた。

 

数分で、サイドカーがやって来た。これがそのグラスだ。

 

 

僕は本当にこれが本物なのか、疑念がわきたち、ウェイターの方に「これって、溥儀皇帝が使ったんですか」と聞いた。

 

「溥儀皇帝が来日された時に、奈良ホテルに泊まられたのですが、それを記念して作成されたグラスとなります。実際に、溥儀皇帝の一団の方々に使っていただいたものですので、お客様が使われているものも、そのグラスとなります」

 

ウェイターの方は、宿泊客でもない、品の良い服装の老夫婦に囲まれユニクロダウンで入って来た僕にも丁寧に説明をしてくれた。

 

サイドカーを飲む。おいしいけれども、特別な味がするわけではなく、オーソドックスなサイドカーだった。溥儀皇帝は、奈良ホテルで何を思い、酒を飲んだのだろうか。意外としょうもない人間関係のことを考えていたのかもしれないし、天下国家を考えていたのかもしれない。

 

グラスのカットがかっこいい。

 

人間というのは不思議なもので、これを割ってはならないと思えば思うほど、動きが不審になり、手は汗ばみ、むしろグラスを割ってしまいそうな気がしてくる。無駄に慎重に、しかし、不審にならないようにグラスを傾ける。歴史に触れたような気がして、よい経験になった。

 

ウェイトレスの方が、長崎ホテルで使われていた食器が使えるセットもありますよとのことで、それも頼むことにした。

 

長崎ホテルは。1898年に創業され1908年に廃業することになった当時、極東一豪華なホテルと呼ばれていたホテルらしい。

明治時代の長崎ホテルの金銀食器1600点、奈良で発見: 日本経済新聞

 

 

たしか、ナイフとフォークは本物で、皿はレプリカと言っていたような気がする。松の実のケーキで、美味しかったのだが、カチーンとぶつけて傷を入れないかやはりソワソワしてしまった。

 

 

奈良ホテルを出た。2杯酒を飲んだわけだが、やはり心地よい感じになるためにはもう数杯飲みたいところだ。ホテルの方に向かって歩いていく。五重塔がライトアップされて輝いている。

 

 

奈良の夜はLAMP BARで更けていく。檜の香りのネグローニ

 

Google マップで検索をして帰り道にあるLAMP BARというバーに行ってみることにした。賑やかな通りの建物と建物の間を進んでいくと、隠れるようにして扉があった。

 

 

扉から予想したより倍くらい大きい空間だった。バーテンダーの方がキビキビと動いていた。

 

「いかがいたしましょう」

 

「初めて来たんですけど、ちょっと苦い感じのカクテルでお願いできますか」とオーダーするとネグローニが出てた。

 

 

グラスを口に持っていくと、奈良の檜を焦した匂いが立ち込めて、これだけでも意識がどこかの森林奥深くに飛んでいってしまいそうな、たまらない香りなのだが、飲むと苦味と甘みが口に広がり、飲み込むと、奥のほうから、液体の香りがばーっと広がるのだ。飲食物には、完璧な温度というのが存在している気がすが、これはそれであった。

 

大変美味しかったので「めちゃくちゃおいしいです!!」と伝えると、紳士的スマイルで「ありがとうございます。カンパリがこのBar自家製のものとなります」と答えてくれた。

 

バーは賑わっていて、外国からの客も複数名いたりして、人気っぷりを感じた。もったいないので、ちびちびとネグローニを飲んだ。志賀直哉もこれを飲んだら黙るだろうと思った。

 

追加で2杯飲んだ。左がペニシリン、右がクッキーを砕いて入れているらしいティラミスっぽいカクテル。寝る前の良いデザートだった。 


ネグローニのインパクトがとてもすごかった。この一杯で、今日は完璧に締まったなと思った。よい思い出になりましたと告げて店を出た。

 

 

朝、珈琲果汁 SUGIでミックスジュース

 

翌日、奈良市内はとにかく喫茶店が少ないので、探すのに苦労した。SUGIという店があったので行ってみた。

 

 

ミックスジュースを飲む。甘みと酸味が朝にここちよい。

 

 

ちょろちょろと観光をする。

 

 

茶粥に山盛りの漬物

 

奈良出身の知り合いにおすすめしてもらった茶粥と漬物の店に。

 

 

漬物が取り放題なので、大量にとって来た。とりあえず奈良漬を食べてみる。味が濃く、酒粕の香りが米を誘う。そして、この瞬間に気がついた。もしかして取り過ぎたのではないかと。漬物というのは基本的にしょっぱいので、コメが必要になるのだ。結果、米2杯、茶粥2杯も食べた。長芋の漬物とはりはり漬けが好みだった。オクラの漬物もさっぱりして美味しかった。

 

 

 

食べ過ぎたので、街の中を歩いて腹を減らす。椿井市場がなかなか極まっている感じがしてよかった。風が強かったので、がっと強風が来た時に天井のトタンが一気に剥がれていって、諸行無常を感じた。ここに現役で営業している中華料理屋があるらしく、休業日だったのでやっていなかったのだが、今度来た時には行ってみたい。

 

 

樫舎でお茶を飲む

2時間ほど街中を歩き、帰る前に、少しお茶をするため、樫舎に。

 

 

茶を飲み、お茶菓子をかじる。満足度が高い一泊二日だった。

 

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