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【一気読み】『男色義理物語』巻二【現代語訳】

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 新年最初は、『男色義理物語』巻二の一気読みでございます。

 巻一の一気読みはこちら。

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 読みやすいように、省略したり意訳したりしていますので、ちゃんと読解したい方は、個別のページをごらんくださいませ。


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 【初めての方へ】

 原典の画像だけでなく、スクロールすると、ちゃんと活字の原文(可能な限り漢字に直し、送り仮名と振り仮名を補足しています)と現代語訳と解説がありますよヾ(๑╹◡╹)ノ"

 

 【スマホでご覧の方へ】

 諸事情により、PC版と同じデザインになっています。なるべくスマホでも読みやすいようにはしているのですが、もし、字が小さいと感じた場合は、スマホを横にして拡大すると読みやすいと思います。


 

 

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霞亭文庫 · 男色義理物語 · 東京大学学術資産等アーカイブズ共用サーバ
男色義理物語 : 4巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション
※赤字の書入れ等は筆者。


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『男色義理物語』巻二「歌に思いを寄せる恋」

 内蔵之助が帰ってしまい、あとには釆女の話し相手をして慰めてくれる友など、誰も居ようはずがありません。
「春の新田を打ち返し(=耕し)ながら、恋しいあの人のことを思います」
 という歌ではないけれど、眠れないくらいまぶしく寝室に差し込む月の光を、采女は打ち返し(=何度も)見ながら、恋しい頼母の事を思うのでした。
 そして、
「命など惜しくないのに、無駄に生きながらえてしまっている私の姿を、月が光で照らして見ているかと思うと、恥ずかしくて」
 と、采女は詠みました。
 やっと寝る事が出来て、夢で頼母に会えたのですが、風が妻戸に当たる音で目が覚めて、最後まで夢を見ることができませんでした。
 なので、
「花でさえも春風を誘って美しいうちに散ろうとするのに、私ときたら散ることもできずに無駄に生きながらえています。
 そればかりか、頼母殿に会った夢が春風のせいで最後まで見ることができなかったことに、ムカついていてしまっています」
 と、采女は詠みました。

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 すると、東隣で琴を弾いて、
「千賀浦《ちがのうら》に住むあの人とは、近くにいるから会えるけれど、話すことはなかなかできません」
 などと、誰かが美しい歌声で歌っているのが聞こえてきました。
 それを聞いて、
「ああ、この歌は、私の気持ちをよく表していますな。
 私と同じ境遇の人などいないと思っていましたが、このような歌を作る人もいるのですなあ。
 良きかな、良きかな」
 と采女は、独り言をしました。
 そうするうちに、時が過ぎて午前2時ごろになりました。
 すると、門の辺りで、そよそよと、着物が擦《す》れる音がしました。
「どなたでしょうか?」
 と采女が聞くと、
「私でございます」
 と、内蔵之介が再び訪ねてきたのでした。
 采女は、先ほどキツく当たられたので、ドキドキして気持ちが落ち着きません。
 内蔵之介は、話しながら近づいてきました。
「さても、不思議な縁があったものですな。
 あの後、偶然にも頼母殿が、あなた様のご病気がどのような状態か、私にお聞きにいらっしゃいました。
 頼母殿は、
「采女殿のご病状はどのような感じでしょうか?
 私は殿の御前で『貞観政要《じょうがんせいよう》』の講読会がありまして、なかなか時間が取れません。
 采女殿のお見舞いにも一日しか行けていませが、どうかご容赦くださいませ」
 などと、おっしゃいました。
 私は、これはチャンスだと思って、
「そう、その事でございますが、、、」
 と、あなた様が頼母殿に好意を持っていることを、それとなく伝えました。
 頼母殿は、
「ああ、とんでもない冗談をおっしゃいますなあ」
 と言って、殿の御前に戻られました。
 さあ、こうやって伝えてしまったからには、今更、畏《かしこ》まっても仕方ありません。
 遠慮なんかも不要です。
 くだらない和歌を詠んで頼母殿のことを想像するだけではなく、直接、頼母殿に思いを伝えて本心を聞き出してください」

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 釆女はしつこくそそのかされたので、内蔵之介の提案を断り切れなくなりました。
 それに、話しているうちに、だんだん気持ちもほぐれてきたので、
「たとえこのまま恋死《こいじに》したとしても、はかないこの世に頼母殿への思いは置いて行くつもりでした。
 死んだ後でも誰にも知られないようにしようと、ずっと思い嘆いていました。
 でも、あなた様の御心配《おこころくば》りをとても無視することなどできず、ありがたいくらいなので、今は、まあ、そういうことで、でゅふ」
 などと、ぶつぶつ言いながら笑いました。
 そして、あれこれ考えながら、釆女は紅葉模様の薄手の和紙を手に取って、頼母への思いを全て手紙に書きました。
 手紙の最後には、
「陸奥国に通じる白河の関ではありませんが、私の心の中の関所で、頼母様への思いは止めたつもりでした。
 それでも、やはり、どうしても、頼母様の事を思うと、涙で袖を濡らしてしまうのです」
 と書き、しっかり結んで、内蔵之助の前に置きました。
 仲立ちとなった内蔵之助は、手紙を受け取りました。
 それから内蔵之助は、心の余裕も無くなり、人目をうかがいながら、手紙を渡そうと、あちらこちらと頼母のそばに付きまといました。
 しかし、あれやこれやと差し障りがあって、思うようにいきません。
 一日二日と経っていくものの、手紙は袖の中に深く納められたまま、内蔵之助はためらい続けるのでした。
「このまま長い時が経って、むなしく手紙は紙魚《しみ》に食べられてしまうのではないか」
 と、内蔵之助は恋に悩む采女よりも、もっと心苦しく思い悩みながら、夜を明かすのでした。
 そんなある朝、頼母が屋敷の南の端近くに立ち寄って、なんとなく花に向かって歌をくちずさみ、ぼんやりと眺めているのを見つけました。
 実に木の枝には、花がたくさん咲き乱れています。

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 ゆったりと吹く明け方の風に乗って、何とも言えない良い花の香りが漂《ただよ》ってきます。

 その花の香りが頼母の香りと混ざって、胸がドキドキします。
 頼母はそばにあった琴を引き寄せて、『鶯《うぐいす》の囀《さえずり》り』という曲を弾きました。
 そして、花の下に立ち、
「春風が吹かず花の上にとどまっている朝露のように、私には恋する相手もいないので、一人寂しく過ごすしかありません」
 と詠んで、辺りを見渡しました。
 その顔付きは、この上も無いほど美しく、どんな憎い相手であったとしても、思わずニタアと笑みをこぼしてしまうでしょう。
「ああ、なるほど、人の心を悩ました理由が、分かりすぎるほど分かりました」
 と、仲立ちの内蔵之助も思わず心を惑わすほどでした。
 ちょうど、ほかに人もいなかったので、内蔵之助は、通り過ぎざまに例の手紙を、頼母の袖の中にさっと押し入れました。
 頼母は気づいたものの、何事もなかったかのように振る舞いました。
 そして、なにげなく庭の茂みの中に、こっそり入って行きました。
 おそらく、この手紙を見るためでしょう。
 しばらくしてから、頼母は仲立ちの内蔵之助を招き寄せ、采女の思いを受け入れるかどうかの返事は言わず、
「その人が私のせいで寝込んでいるのなら、今すぐに出勤させてください。
 ただでさえ、無責任に悪い噂をたれ流されるような世の中です。
 なにしろ、自然に花が散る事でさえ、風の責任にされるくらいですから、ずっと寝込んでいたら、どんなあらぬ噂を流され、変な疑いを掛けられるか分かりませんもの」
 と言い捨てて、どこか奥深い所に紛れ込んで行きました。
 仲立ちの内蔵之助は急いで采女の所に戻り、先ほどのやりとりの一部始終を詳しく話しました。
 そして、
「いかにも、頼母殿は、人目を気にしているようです。

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 ですので、気を長く持って、一年に一度の彦星と織姫の逢瀬のような恋をなさってください」
 と、言いました。
 すると、この困ったちゃんの采女は、いかにも嬉しそうな様子で、
「身に余るありがたいご指示なので、従わないわけにはいきません」
 と言って、急いで入浴し、髪をとかして、いつのまにやら出勤していました。
 同僚の若い人々は、珍し気に話しかけてきて、
「このたびは、危《あや》うい命がお助かりになったようで、とてもめでたいことです」
 などと言い、碁打ち、乱碁《らんご》、貝覆《かいおお》い、偏継《へんつ》ぎなどに、お誘いになりました。
 しかし、釆女は憂鬱《ゆううつ》で、気分が乗らず、ウロウロしたり、ぼーっと立っていたりしました。
 そして、心細げな顔付きで
「今日、初めて私の気持ちを伝えたばかりなので、いつの夜になったら逢えるのか見当もつかず、もどかしいままどうやって過ごしたらいいか分かりません」
 と詠みました。
 虚《むな》しく月日が過ぎていくのですが、在原業平《ありわらのなりひら》が、
「惜しんでいても月日は無常に流れていき、今日はもう春の最後の日の夕暮れになってしまいました」
 などと詠んだのも、今はまた自分の身の上に重なります。
 時は実際に三月の最終日が明けて、いつしか四月一日の衣替えの日になりました。
 今日はもう、日も長閑《のどか》に照っています。
 言いたい事があっても、言えないのはもどかしいものです。
 さて、その頃、主君の唐橋侍従に、世継ぎとなる初めての御子息がお生まれになりました。

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 そのお祝いとして、ご一族やお偉方をお招きになり、色々と御馳走《ごちそう》を一日中ふるまっただけでなく、能楽師を招いて、能楽の公演も始まりました。
『式三番《しきさんばん》』で奏《かな》でられる鈴の音が喝采を浴びるのも、今が平和な世の中であるからこそで、とてもめでたいことです。
 それから、『花筐《はながたみ》』が舞われたのですが、
「あなた様は月ではなかったようで、袖に影を映すこともできず、水面の影を手に取ることもできません」
 と謡《うた》っている時に、例の采女が、頼母の顔をとても恨めし気に見つめているのに、頼母は気づきました。
 頼母は、隠すことなく愛着を露《あら》わにした姿に心惹《こころひ》かれて、その日の夕方、紅色に太陽をデザインした、端の色がとても濃い扇に、
「忍ぶ草からこぼれる露のように、あなたの私への思いが、忍べずにあふれているようなので、それならば私もあなたの愛の言葉を信じることにいたしましょう」
 と、返事と思われる歌を書いて、釆女に贈りました。
 それからは、人目をはばかりながらもこっそり通う方法はあるもので、阿武隈川《あぶくまがわ》の水のように清らかに深く心を信じることをお互いに誓い、変わる事のない契りを交わしたのでした。
 今はもう、枝の上に並んで羽を重ねる鳥のように結ばれ、「来世でも一緒に」と誓って、深く心も体も許し合ったのでした。
 具体的にどういうことがあったか書きたいものですが、色々とアレなので、みなさまのご想像にお任せします。
 ところがどっこい、このまま幸せな日が続くと思いきや、なにやら気にかかることが。
 それは、最近、後藤式部《ごとうしきぶ》という若衆が、念願叶って召し出されたことです。

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 この人も家柄は良かったのですが、血の気が多くて人に迷惑をかけ、いつも太刀の柄《つか》をカチカチと鳴らして威嚇《いかく》していたので、寄り添う人も無く、むしろ人に疎《うと》まれていました。
 ある夕暮れ時、風も吹いていなかったので、
「蹴鞠《けまり》をするにはちょうど良い日のようですな」
 と、蹴鞠をして盛り上がりました。
 若衆たちは、「私は負けませんよ」と誰もが自信ありげでした。
 しかし、その中に、例の頼母が、ふらっと参加すると、その華麗な足さばきに誰も勝てませんでした。
 人々はみんな、
「ああ、『源氏物語』の柏木がいた昔でも、頼母殿より蹴鞠が上手な人はいなかったでしょうな」
 などとつぶやきました。
 人々が藪の間から覗いてささやき合っている所に、タイミング悪く例のデリカシーの無い式部が通りかかって、頼母の姿に目を奪われてしまいました。
 荒くれた気持ちを抑えることができず、
「人を介して告白するようなものではない」
 と、顔を合わせるたびに、深い山の奥でやかましく鳴く蝉のように、泣いたり笑ったりして、色々と何度も頼母を口説きました。
 さらに、足に傷を付けるなどして、柾木《まさき》の葛《かづら》がからみつくようにしつこく、ひたすら執念深い様子を見せつけてきました。
 頼母は、
「私を思って命を落とさんばかりに長く患《わずら》った采女殿との約束を破って、少しばかり言い寄られたくらいで心を惹《ひ》かれたとしたら、つながれずにフラフラしている舟のようで、情けないことです。
 実にいやしい女の身でさえ、一途な思いを貫くものです。

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 武士の家に生まれたからには、恥ずかしくも心変わりするようなことがあってはなりませぬ」
 と、頼母は心に深く誓って、式部に全く返事もせず、そのまま放置して過ごしました。
 しかしながら、類は友を呼ぶというのがよくあるこの世の中。
 それからどう言って頼んだのか、これも侍従の御側近くに仕える、渋川露斎という余計な世話を焼くのが好きな茶坊主を、式部は仲立ちとしました。
 露斎は頼母に、
「あなた様の式部殿へのご対応は、あまりにも冷たく存じます。
 せめて、イエスかノーかのお返事だけでも」
 と、泣き落としたり、荒々しい言葉を交えたりしながら、色々、様々に、手を変え品を変え、説得しました。
 すると頼母はたちまち表情を変えて、
「そもそも、武士というものは、武具を身につけ、弓を引いて、強く勇ましいことを第一とします。
 法師もまた、髪を剃って、袈裟《けさ》と衣《ころも》を身につけ、経を読み、名号《みょうごう》を唱え、人を弔《とぶら》うことを第一とするものです。
 あなたの仕事である茶臼を回すために使うべき労力を、好色の手助けのために使うとは、いかにも不相応《ふそうおう》なことですよ。
 だいたい、鵜《う》の真似をするカラスは、水でおぼれて死んでしまうものです。
 今後、このようなバカげたことは、決して言い出さないように」
 と、太刀の柄《つか》をじっと見ながら、荒々しく座敷を立ちました。
 今や露斎のはかない命は、風前の灯火《ともしび》のようなものです。
 こうして露斎もいたく興ざめして、面目丸つぶれと言った顔つきで、
「そのようにおっしゃったとしても、このままただで済むはずはないものを」
 と、言い捨てて帰りました。

『男色義理物語』巻の二終わり

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