祝杯

 さきほど旧知に久しぶりに電話したら、昨日、お母さんになったとのこと。寝ぼけ声だったので、「おめでとう」もそこそこに電話を切った。先週、何年かぶりに、ふと電話した時には先方の都合が悪く、折り返し彼女が電話してきたときには私は既に寝かぶっていた。で、今夜、電話したのだが、そうか、先週のあのときには出産直前だったのか。昨日、産まれたのか。お母さんになったのか。娘さんだそうだ。そうか。


 こんなことを書くと、まるで私と彼女の間に色恋のワケアリがあったかのように思われるかもしれないが、そのようなことは全く無い。何となく知り合いになって、私がすごく弱っているときに彼女が手助けしてくれたことがあった…という程度のことだ。


 先週、ふと、「どうしているかな」と思ったので電話したのだ。折り返しの電話を待てず寝てしまったが、そうか、臨月だったのか。


 そういえば彼女は、お婆さんやお母さんの話をして、自分の因果の話もしていたっけ…と思った。で、やはり、娘の母親か…思わず、私に笑みがこぼれる。私がそうだ、祖父の、父の、そういう物語の果てに、私が息子二人の父親になった。私が男子の父にならざるをえないように、彼女は女子の母になった。そこが何とも言えぬ。


 私は職場が変わって、ふたたび窓口部門に戻った。今日は、やたらと乳幼児を連れた親御さんが目に付いた。私はアレに弱い。目はその子達を追う。赤ちゃんと目が合うと、もう、メロメロである。こっちが目を動かし、首を動かして、赤ちゃんが反応すると、もうグデグデである。


 そんな話でもしてみようかと彼女に電話して、そして、昨日お母さんになったと聞いたのだから、たまらない。
 おめでとうおめでとうおめでとう…
どれだけの祝福も言い足りない。
 幸あれ幸あれ幸あれ、彼女と娘さんに、幸あれ!!!