かーずSPの戯れ言

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『ヴィンランド・サガ』から教えてもらった、人の世の生きづらさと、それでも自分を貫くことの大切さ

なぜか自分は人生が辛くなると読み返すマンガがありまして、それが幸村誠先生の長編マンガ『ヴィンランド・サガ』であります。



あらすじ

千年期の終わり頃、あらゆる地に現れ暴虐の限りを尽くした最強の民族、ヴァイキング。トルフィンと名づけられた彼は、幼くして戦場を生き場所とし、血煙の彼方に幻の大陸“ヴィンランド”を目指す!!


■世間に迎合することができないグズリーズ、その心の悲鳴

心が弱ってる時にこのマンガを読み返す理由がよくわからなかったんですが、どうやら私は、登場人物たちの生き様に強い共感を覚えているからじゃないかと気づいた次第。

今回共感を覚えたのは、15巻から登場するグズリーズ。



彼女は明るくて元気いっぱいの少女なんだけど、家事は苦手で「女らしくない」と周囲の大人から呆れられている。

そんなお転婆娘にも、いよいよ結婚の話が舞い込む。

それも豪族のハーフダン、その息子シグルドというこれ以上ない縁談に、義理のお姉さんも大喜びで祝福する。

だけどそれは、グズリーズの本意ではなかった。

彼女は幼い頃からレイフに、いろんな船旅の思い出を聞かせてもらっていたので、しだいに海に憧れを持つようになった。

瞳をキラキラさせてレイフの冒険譚に聴き入っているような少女は、いつか大海原で冒険したいという気持ちを、大人になってからも持ち続けている。

そんな跳ねっ返りの性格なので、当然、恋とか愛なんてまったく興味がないまま育ってしまった。

なのでシグルドとの初夜を迎えたグズリーズは、シグルドの足を刺して逃亡してしまう。

逃げてきたグズリーズは、主人公・トルフィンたちに胸中を打ち明ける、このシーンに刮目してほしい!

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「みんなが……当たり前にできることが、できなきゃいけないことが……っ できない……」

「でも……っ どうしようもないんだ 自分でも……」

※16巻より

もうね、号泣です。私自身も昔からそうだった。

クラスメイトたちが騒いでいる音楽とか芸能人とかにちっとも興味が持てず、無理して話を合わせようとしてCDを聴いたりトレンディドラマを見てみたけれど、ちっとも楽しくなんかなかった。

一般の人と世間話ができないのも辛いんですよ。

みんな明日は天気だとか、昨日見たTVがどうだとか、普通に会話してる。

でも、自分にはそれができない。急に話しかけられても、なんて返事すればいいのかものすごく難しくて、心が悲鳴を上げるような痛みがしんどい。

そういう事態に陥ると「自分は社会に適合しない、ダメな人間なのだ、人間失格だ」というみじめな気持ちに陥ってしまう。

これ、普通に会話できる人には絶対理解できない感情だと思うんだけど、わかってくれる人もいますよね?


だからグズリーズが感じている閉塞感には、ものすごく共感を覚えるんです。



■困難でも己を貫く生き方を選ぶトルフィンとグズリーズに、人生の理想を見た

『ヴィンランド・サガ』で描かれている物語には、時に残酷な悲劇がままある。何の罪もない平和に暮らしていた村が、いきなり傭兵たちに皆殺しにされたりするという、目を覆いたくなるシーンが日常のように起こっているのだ。ん~エグい。

そんな理不尽や不運から、グズリーズのような悩み、一度復讐に堕ちたトルフィン。

さらにトルフィンの敵であるアシェラッドに至るまで、弱者から強者に至るまで誰もが苦悩しながら、それでも生きることをやめずに前に進む物語になっているところに、ものすごく夢中になれる。

一度は奴隷にまで身をやつしたトルフィンは、復讐も、闘争も、すべてを飲み込んで「戦争も奴隷もない平和な国」を作ることを目指す。
その前向きな姿勢には、私の心のあり方にも大いに影響されて、すごく刺激されてしまう。

「どうして、自分の生き方を、自分で選べないの?」

グズリーズは問い、トルフィンは答える。

「選べるさ」

「ただし、」とトルフィンは付け足す。

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「生きてここへは戻れないかもしれない。それでも一緒に来るかい?」

お前(グズリーズ)が選ぼうとしている道は、険しい道なのだと諭す。

本当は結婚して子供を産んで育んで、織物を編み、羊の世話をして社会に溶け込むことの方が、人生も楽には違いない。周囲の大人は望むし、家も繁栄する。

でも、そんな当たり前のことが苦しくて辛いというグズリーズは、一緒に船旅に出ることを決意する。

……まあノルドの男が名誉を傷つけられて黙っているわけはなく、シグルドからの追っ手から逃げるためというのも大きいんですけどね。

でもこのやり取りからは、己を貫くことの困難さと、それでも自分を曲げずに生きていこう!という力強いメッセージを感じる。

私にとってのヴィンランド(理想郷)を探す旅も、自分を貫かないと見つけられないものだろうから。

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『ヴィンランド・サガ』といえば、バイキングの派手な戦闘もかっこよく、緻密な絵から伝わるド迫力も魅力的です。

ですが「動」の部分と同じくらい、こういう「静」のシーンにこそ、作品の深みが増すエッセンスが凝縮されているところに、私は惹かれるのだなあと思います。