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ローソンにドローン設置、「地域防災コンビニ」目指しKDDIなど3者が実証

 KDDIとローソン、石川県警は、ドローンで行方不明者の発見や事故の初動対応などの実証実験に成功した。「地域防災コンビニ」の取り組みの一環。警察活動の高度化と防災面での強化を図る。

左から石川県庁 デジタル推進監 成瀬英之氏、石川県警察本部 警察本部長 大嶌正洋氏、KDDI 取締役執行役員常務 CDO 松田浩路氏、ローソン 理事執行役員 中部カンパニー プレジデントの片岡淳司氏

ドローンで人探し、事故現場の検証

 実証は、石川県七尾市の七尾警察署とローソン七尾小島町店で行われた。行方不明者の捜索と交通事故の初動対応をドローンで実施する想定で、ドローンポートを県内のローソン店舗に設置した。

ローソン屋上に設置されたポートから離陸するドローン(写真中央やや右)

 実証のシナリオではドローンポートのあるローソン店舗からおよそ1kmの小丸山城址公園の行方不明者を捜索。ドローンのサーマルカメラで対象者を発見し、警察官を現場に急行させることに成功した。

右=ポートに駐機するドローンのカメラ
中央=中央付近に人と見られる反応。右=通常のカメラで人を確認

 また、ローソン店舗からおよそ5kmの能登島大橋駐車場での交通事故発生を想定。道路の混雑に影響されないドローンの特性を活かし、パトカーでは15分程度かかるところをおよそ8分で到着。カメラの映像をもとに3Dモデルを作成し、事故現場を立体的に把握、人が現場に向かわずに状況を把握することができた。

海を超えて飛ぶドローンのカメラ
カメラをズームして事故状況を確認
降下して事故車両の中の人の様子をうかがう

 実証内では、サーマルカメラの映像から人を確認したのちに、通常のカメラに切り替えて鮮明な映像で、通報にあった行方不明者と見られる人を特定。また、ドローンが備える3Dスキャン機能で事故車両の映像から3Dモデルを作成。車両の損傷や道幅を確認するなどの使い方が披露された。将来的に検討され得る用途のひとつという。

 いずれのケースでもSkydio製の「Skydio X10」を使用。オプションパーツによりさまざまな状況に対応でき、今後はスピーカーとマイク、RTK、緊急用のパラシュートのほか、自動で充電などができるドローンポートも提供される。

全国でドローン活用に期待の眼差し、今後も実証を継続

 10月にKDDIと石川県が結んだ包括連携協定に基づく取り組み。すでに、令和6年能登半島地震や奥能登豪雨でもドローンは活用されており、その有効性からさらなる活用への期待が高まっている。

 今回は、日常と災害時などを区別しない「フェイズフリー」というコンセプトを背景にしている。災害時のみを想定した設備は投資しにくいことから、災害時だけではなく、日常的な警察活動にもドローンを利用できるようにしている。

 米国ではすでに、ニューヨーク市警察がドローンでのパトロールを実施しているほか、オレンジ郡保安局でホテルにいる犯人を窓から撮影するなどの使用事例があるという。KDDI 取締役執行役員常務 CDOの松田浩路氏は「日本でもドローンの活用は当たり前の世界になる。そのための新しい技術の社会実装をKDDIはしっかり進める」と話す。ローソン 理事執行役員 中部カンパニー プレジデントの片岡淳司氏は「リアル店舗の価値をこれ以上発展させることが難しかったが、街の店がドローンのハブになることで地域に貢献できる」とその意義を説明した。

 KDDIのドローンに対する取り組みは自治体の関心を集めており、各々の地域が抱える課題への応用を検討したいという声があるという。同社では今後もさまざまな状況を想定して実証を繰り返し、実用化に向けて進めていく考えを示した。将来的には全国へ展開することを目指す。