2024-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ウソつき伊藤君

私は猫猫塾を2009年に始めたのだが、初期の生徒に伊藤君という30歳くらいの男子がいた。この人はなんでも一橋大学出身の人物で、家が大金持ちだというのだが、当時、ハタメイコ事件というのがあり、阪大でヨコタ村上孝之にレイプされたと主張する女子院生が…

「小説神髄」と「小説総論」

私は高校二年の時、二葉亭四迷の作品や中村光夫の「二葉亭四迷伝」を読んで、面白く感じたので、逍遙の「小説神髄」や二葉亭の「小説総論」も読みたいと思ったのだが、当時「小説神髄」は岩波文庫で絶版になって久しく、「逍遙選集」でしか読めなかった。そ…

「全国アホ・バカ分布考」の松本修

「探偵!ナイトスクープ」という番組を私が知ったのは、カナダ留学中に立命館の学生らから教えられてのことで、92年の帰国後はほどなく東京でも放送が始まったので観ていて、93年にプロデューサーの松本修の『全国アホ・バカ分布考』が出たのをすぐ買って読…

アポなし突撃

18日水曜の午後6時半、マンション入り口の呼び出しが鳴ったので出たら、知らない男(30代くらい?)が「××といいます。スガ秀実さんの弟子で、小谷野さんと話がしたくてアポなしで来てしまいました」と言うから、狼狽して、いや、そりゃいきなり無理でしょう…

武田勝頼の遺児

さっき、舘ひろしが武田信玄、里見浩太朗の山本勘介、古手川祐子の由布姫、丹波哲郎の武田信虎という、1992年の民放の「風林火山」を観ていて、これは谷崎潤一郎の「盲目物語」の書き換えだなと思ったのだが、私の最後の実家である越谷市瓦曽根の家のそばに…

犬と目があう

30年くらい前じゃないかと思うが、新聞に女性が書いたのか投書したのか、その女性が一人の男性に、「女が電車の中で新聞を読んでいるとどう思う?」と訊いたら、「道を歩いていて、ビルの高いところにいる犬と目があった時の気分だ」と言ったと書いてあって…

新説のある種の運命

サヴォイ・オペラの『ミカド』の翻訳を出した時、倉田喜弘さんの論文を付録にした。「宮さん宮さん」のメロディーは、日本でできたものではなく、サリヴァンが作曲したものが逆輸入されたものではないかというもので、倉田さんは別途、歌詞さえ明治維新当時…

著書訂正「直木賞をとれなかった名作たち」

66P「『悲の器』の主人公はガンで死んでしまうが」→「『悲の器』の主人公の妻はガンで死に、主人公は社会的地位を失うらしいが」

音楽には物語がある(69)「青春」嫌い  「中央公論」9月号

先ごろ、三島由紀夫賞と山本周五郎の選考委員会と、それに続く記者会見を見ていたら、山周賞の受賞作について、選考委員の小川哲が、「青春小説」としても読める、というようなことを言っていて、受賞者もその点について質問されていたので、おや、と思った。…

年上のお兄さんのエッセイ

若い頃、というのは大学生から院生になりたてのころだが、私は鴻上尚史(1958-)、野田秀樹(1955-)、村上龍(1952-)などのエッセイを愛読していた。具体的には『鴻上夕日堂の逆襲』『ミーハー』『すべての男は消耗品である。』などだが、それらは自分…

車谷長吉の変名

車谷長吉『癲狂院日乗』では幾人かの人の名が「よ氏」「り氏」などと変名にされている。この処置は高橋順子氏がやったことである。しかし「も氏」については、翻訳書の題名が書かれているので、すぐ高山芳樹氏であることが分かった。 『文士の魂・文士の生魑…

作家の生理

今年の大河ドラマで、紫式部が「源氏物語」を書いている場面を見ていて、ずいぶん書くのがのろいなと感じていたのだが、あれは吉高由里子が自分で書いていて、吉高は左利きなので、ものすごい訓練をして書いているというから、それでのろいのかと思った。作…

女男爵アメリー・ノトン

ベルギーにアメリー・ノトン(1967- )という作家がいる。女で、幼い頃日本で育ち、日本企業で働いた経験もある。日本ではノートンとされているが、これは英国の作家メアリー・ノートンと間違えたのか、綴りはNothombなのでノトンだということを、比較文学…

永井龍男の災難

私は永井龍男が文化勲章をとるほどの作家かどうか疑わしいと思っている。当時、左翼作家が多くて勲章を辞退した結果、永井に回ってきたのだろう。 その永井が1974年から76年1月まで『小説新潮』に連載した身辺雑記『身辺すごろく』の最後の回を読んでいたら…

『ミカドの肖像』の思い出

猪瀬直樹の『ミカドの肖像』が出たのは1986年の暮れで、私が大学院へ入るちょっと前だったが、4月ころには読んで、大層面白く、友人に電話してぺらぺらしゃべったら、面白いところは全部君に聞いてしまっていたとあとで言われた。 それから三年くらいして、…