金融経済の特殊性

まぁ、経済学の基礎も分からない人間が読むには、ちょっとヘビーな面もあって、ピンとこない部分も多いが、分かりやすかったのが、価格決定メカニズムの金融の特殊性に関して述べているところ。

普通、中学校とかで習う経済では、価格は需要と供給のバランスで決まって、需要>供給なら価格は上がるし、逆なら下がる。価格がどんどん上がっていけば、供給する側が儲けようとして生産を増やし、やがて供給過剰になると、需給バランスが逆転して価格が下がってくる。こうして、ある価格へ「均衡」するとされている。

ところが、金融商品は違う動きをする。

ひとたび価格が上がりだすと、「この先も値上がりするだろう」という期待を集める。金利の安い短期の借金をして購入して利ざやを稼ぐことも可能で、実体とは無関係に人々の「期待」で値が上がってしまう。実体経済の商品のように消費されることなく、単に「稼ぐ」という動機で需要が高まっていく。やがて価格上昇は「神話」を作っていく(土地神話とか、IT 神話とか)。

この神話が崩れると、今度はとたんに、その金融商品を持っていることで損失が広がり、損失を最小に食い止めようとして、売りに拍車がかかる。

...ということらしい(^^;。

中学校で習うような価格決定メカニズムとは違う動きになるのは分かるような気がする。

どことなく、制御工学に似ているような気がする。

一般的にフィードバックがかかる場合、負のフィードバックがかかれば、系は安定する方向になる。正のフィードバックなら発散してしまう。

中学生で習う価格決定メカニズムは、負のフィードバックがかかる場合で、この場合は価格は均衡する価格へ収束する。価格が上がれば、需要側は「値段が高いから、今回はあきらめようか」と考える人が出てきて、需要の総量は低下し、供給側は「値段が高いうちにバンバン売ってしまえ」と供給が増加する。ちょうど負のフィードバックが発生して、価格は均衡へ向かう。

でも金融商品は違う。価格が高い、安いではなく、「上昇傾向にある」ことから、近い将来、今よりも高くなるだろう、と未来予想を立てる。ならば、今買っておけば、近い将来、値が上がって儲かる、となって、価格上昇が需要を増大させる。ちょうど正のフィードバックがかかって価格は発散する。

と考えれば、市場メカニズムなるものは、適切なフィードバックがかからなければ制御不能になるのはあたりまえ。でも、市場原理主義の人たちは、制御工学的な言い方をすれば、無条件で「系が安定する」と言っているように思える。制御工学的な立場なら「そんなもの、適切にパラメータを調整しなきゃ安定するわけないだろう」なんだけど、市場万歳の経済学者の人たちって、そうは思わないんだろうなぁ。