「ロケットスタート」を切った高市早苗首相。永田町には毎度の“解散風”が吹いているが…(写真:UPI/アフロ)
高市早苗内閣の高支持率を背景にして、自民党内からにわかに衆議院の早期解散論が浮上している。少数与党から過半数回復の近道として「一か八か」の勝負を期待する声もあるが……。それでも自民党が解散・総選挙など絶対にやれない事情を「日刊ゲンダイ」第一編集局長の小塚かおる氏がレポートする。
「今なら自民単独での過半数を取り戻せる」とけしかける主戦論者
「今しかない」
最近、自民党内でそんな声が上がっている。衆議院の解散・総選挙をやるなら今しかない、ということ。10月下旬に召集されたばかりの臨時国会(会期は12月17日まで)で衆議院解散に踏み切るべし、というものだ。
もちろん、伝家の宝刀を抜くか抜かないかの判断は高市早苗首相にあるが、新政権が発足してまだ2週間足らずなのに、早くも「今しかない」と自民党内が浮足立つのは、予想された以上に高市内閣が高い支持を集めているからだ。
報道各社の世論調査の内閣支持率の数字は軒並み60~70%台。発足直後としては歴代2位や3位という高さで、石破茂内閣の最後の調査と比べても30ポイント以上の上昇だ。高市首相本人が狙った「ロケットスタート」が現実となった形だ。
さらに、株式市場は「高市トレード」に沸き、米国の株高も相まって日経平均株価は史上初の5万円を突破した。ASEAN(東南アジア諸国連合)から始まった一連の首脳外交でも、高市首相はトランプ米大統領との信頼関係構築に成功し、「120点だ」との歓声が上がる。
「今なら勝てる」と解散・総選挙の誘惑に駆られる状況なのは間違いなく、前回選挙で落選した浪人中議員の多い旧安倍派や官邸周辺の主戦論者が「一気に自民単独での過半数を取り戻せる」と首相をけしかけている状況なのだという。
しかし、長年、自民党の選挙に携わってきた選挙のプロは「やったら失敗する」と断言し、次のように語る。
「高市内閣の高支持率は、厳密に言えば『支持』ではなく『期待値』。これから何かやってくれるのではないか、政治が変わるのではないか、という期待です。だから、結果を出せなければすぐに支持率は急落する」
「石破前首相がいい例です。昨年10月の就任直後に衆議院を解散したことを『非常に痛恨だった』と本人も後悔していた。『予算委員会で議論をしてから解散』と言っていたのに、予算委を開かず、総選挙に突っ込み、大敗した。何の結果も出さずに高市首相が早期解散に踏み切れば、石破氏と同じ轍を踏むことになる」
2024年10月27日、衆議院選挙で自民党が過半数を失い、「厳しい結果は国民の叱責と受け止めている」と述べた石破茂前首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)早期解散で過半数奪還というシナリオが「机上の空論」である理由は主に3つある。