「のぞみ」自由席、来春削減へ(東海道・山陽新幹線のN700S)「のぞみ」自由席、来春削減へ(東海道・山陽新幹線のN700S/写真:共同通信社)

 JR東海とJR西日本は、来春のダイヤ改正で東京駅―博多駅間を走る東海道・山陽新幹線「のぞみ」の自由席車両を削減することを発表した。これまでにもゴールデンウィークや年末年始に運行するのぞみ全車を指定席にするなどの対応を取ってきたが、そうした繁忙期以外にも自由席車を削減する目的は何なのか。フリーランスライターの小川裕夫氏が解説する。(JBpress編集部)

長時間移動する新幹線は混雑がトラブルを引き起こす一因に

 JR東海とJR西日本は、2025年春のダイヤ改正で東海道・山陽新幹線を走る「のぞみ」の自由席車を現行の3両から2両へと削減すると発表した。新たに指定席車となるのは3号車の全85席で、一編成に占める指定席の割合は9割近くにまで上昇する。

 現在、東京駅―博多駅間を走る東海道・山陽新幹線の「のぞみ」は、16両編成で運行されている。これまでにもゴールデンウィークや年末年始といった繁忙期に運行する「のぞみ」は全車指定席という対応が取られてきたが、通常期でも指定席を増やすことで、利用者が座って移動できるという快適性を確保するとしている。

2023年、年末年始の全車指定席の告知をする新幹線「のぞみ」2023年、年末年始の全車指定席の告知をする新幹線「のぞみ」(写真:日刊工業新聞/共同通信イメージズ)

 東北・北陸新幹線は立席特急券を販売することもあるが、基本的に指定席は座席の数しか乗車できないので、自由席のように混雑時に立ったまま乗車する乗客はいない。長時間にわたって移動する新幹線において、混雑はトラブルを引き起こす一因にもなる。

 自分が座るすぐ横の通路に、ずっと立ったままの乗客がいたらどうか。駅弁を食べたり、居眠りしたり、はたまたパソコンで作業をしていたら気が散るだろう。イライラが募り、肘が当たったなどという些細なことから一悶着が起きることもある。

 こうした混雑によって引き起こされる問題は、全車を指定席にすることで最小限に抑えることができる。いきなり自由席を全廃すれば、これまで自由席に慣れ親しんできた利用者から不満が出るだろうが、JR各社は在来線を走る特急列車から自由席を段階的に削減してきた。そして、その波はとうとう東海道・山陽新幹線という大動脈にも押し寄せたことになる。