メジャー移籍を目指す佐々木朗希投手の争奪戦はさながら「逆指名ドラフト」のよう。写真は2023年のWBC(写真:CTK Photo/アフロ)

(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)

 日本のプロ野球・ロッテから米大リーグ移籍を目指す佐々木朗希投手の争奪戦が本格的に幕を開けた。米テキサス州ダラスで開催された、メジャーの球団幹部や代理人ら関係者が一堂に会したウインターミーティングで取材に応じた代理人のジョエル・ウルフ氏によれば、20球団以上が接触してきたという。

 人気殺到の背景は実力だけではない。佐々木投手はポスティングシステムを利用した移籍で「25歳ルール」の対象選手のため「お買い得」だからだ。25歳ルールでは25歳未満かプロ6年未満の海外選手はマイナー契約しか結べず、契約金や年俸が制限される。佐々木投手は23歳だ。

 今回の争奪戦で球団側は、獲得資金という金銭面で他球団と「差」をつけることが難しい。移籍市場ではかなり特異な状況だ。佐々木投手からの「逆指名」を勝ち取るには、金銭面以外の要素が鍵を握りそうだ。

20球団以上が争奪戦

「逆ドラフトのようなものだ」

 メジャー20球団以上を巻き込んだ異例の激しい争奪戦の模様について、代理人のウルフ氏はテレビカメラの前でこんな感想をもらした。

代理人のウルフ氏(写真:AP/アフロ)

 佐々木投手のメジャー移籍については、大リーグ機構(MLB)がポスティングの申請を受理し、メジャー全30球団に通知済み。交渉期間は45日間で、日本時間10日午後10時から来年1月24日までと設定された。

 佐々木投手の武器は、192センチの長身から繰り出す日本選手最速タイの165キロの直球と鋭く落ちるスプリットだ。これまでに史上最年少で完全試合を達成し、今季は自身初の2桁勝利(10勝5敗)をマークした。

 プロ5年間で規定投球回数に一度も達していない点は不安材料である一方、年齢的にも若く、成長段階の逸材であることも意味する。獲得を目指すメジャー球団側は、これからのキャリアの中でさらなる成長も含めて高い期待を抱いている。

 メジャーの移籍市場では、フリーエージェント(FA)と同じ扱いで、全ての球団と契約交渉を行うことができる。通常のFA選手と違うのは、海外のプロリーグから移籍する25歳未満の選手であるため、マイナー契約しか結ぶことができない「25歳ルール」が適用されることだ。