連載:幸せな結婚のバランスシート
未来への備えとしてのバランスシート
結婚生活は、出産、転勤、子供の独立、親の介護など、多くのライフイベントを経て変化し続けます。
そのたびに、夫婦関係のバランスシートに揺らぎが生じるものです。
ライフイベントは夫婦にとって喜びや成長のきっかけになる一方で、新たな環境変化や負担をもたらし、関係を難しくすることもあります。
例えば、出産や転勤といったイベントは、それぞれの役割や優先順位に大きな影響を与え、互いのニーズが大きく変化することがあります。
これから出産を迎える夫婦にとって、新たな家族が増えることは喜びや生きる源など、プラスの効果をもたらします。
一方で、育児の負担や時間の制約といった負の側面も同時に生みだす可能性があります。
ライフイベントがもたらす変化と夫婦関係
こうした変化にお互いが気づかなかったり、誤解したりして、関係を拗らせてしまうケースが少なくありません。
例えば、出産後に妻が育児に専念することで「夫婦で過ごす時間の優先度」が下がると、夫は「自分が後回しにされている」と感じ、孤独感や疎外感を抱くことがあります。
さらに、相手がその変化に気づかないこともすれ違いを生む大きな要因です。
夫が転勤で新しい環境に適応しようと奮闘する一方で、知人のいない新天地で「家族との時間を大切にしたい」と思うようになった妻の新たなニーズを見落とすと、妻は「自分の思いを理解してくれない」と感じてしまうでしょう。
こうした変化を「ニーズの変化」として受け止められず、「相手が変わってしまった」「以前とは違う人間になった」と誤解すると、さらに不信感が募ります。
例えば、「子供が生まれてから夫が冷たくなった」「妻が母親モードに入り、女性らしさを失った」と感じ、関係がこじれやすくなります。
また、変化の中で「感謝」や「努力の共有」が不足すると、それまで相手に感じていた「資産」が毀損していくことになります。
特に、育児や介護で片方に負担が集中すると、そのストレスが「感情の摩擦」や「一方的な責任感」を生み、夫婦の会話や協力が減少する結果を招くかもしれません。
このように、ライフイベントによる変化が夫婦関係を難しくする原因は、変化そのもののみならず、その変化に気づかず、適切に向き合えないことにあります。
夫婦のバランスシートを活用し、こうした変化を冷静に整理することで、誤解やすれ違いを防ぎ、健全な関係を築く手助けとなるでしょう。
こうした変化に対応するためには、夫婦関係を現時点で上手くいっているかどうかだけで捉えるのではなく、将来に向けた変化を想定し、備える視点が必要です。
今回は、代表的なライフイベントごとに夫婦のバランスシートがどのように変化し得るかを考え、その変化にどう向き合うべきかを解説します。