(写真:REX/アフロ)

 アップルが自社の生成AI(人工知能)サービス「Apple Intelligence(アップルインテリジェンス)」の中国展開に苦戦を強いられている。中国では外国製の生成AIが原則禁止されている。中国でスマートフォン「iPhone」にApple Intelligenceを搭載するには、その基盤技術である大規模言語モデル(LLM)が中国当局の承認を得る必要がある。だがそのためには厳格かつ不透明な審査をクリアしなければならない。

クック氏、Apple Intelligenceの中国展開に意欲

 英フィナンシャル・タイムズ(FT)によれば、アップルは中国で自社のLLMを運用することを検討している。

 アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)は2024年10月下旬、中国を訪れて政府高官やテクノロジー企業の幹部と会談した。このとき同氏は地元メディアに対し、Apple Intelligenceの中国での展開に向けて「懸命に取り組んでいる」と述べていた。クック氏は「これには非常に特殊な規制プロセスがあり、それらを完了する必要がある。中国の消費者にもできるだけ早く提供したいと考えている」と意気込みを示していた。

 Apple Intelligenceは、送信メッセージを校正したり、長文メールの要約を作成したり、写真を編集したり、カスタム絵文字を生成したりできる。これらの機能はアップル独自のLLMと、ローカルデバイス及びクラウドサーバー経由の演算処理によって実現している。より複雑なクエリーの場合は、米オープンAIの対話型AI「Chat(チャット)GPT」による回答が得られる。

ChatGPTも使えない中国

 しかし、中国が米国製のLLMを承認するとは思えないと、関係者は話している。中国政府は23年2月にChatGPTの国内利用を禁止した。ネット統制を強める習近平(シー・ジンピン)指導部の意に反する言論が生成されることを警戒しているとみられる。