(写真:NAOWARAT/Shutterstock)
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 ジュエリーショップがひしめく都内某所。2階建てのビルに店舗を構える、「X」もそんなジュエリーショップの一つだ。しかし、表通りに面する1階のショーケースに宝石はあまり陳列されておらず、そのためか、宝石を購入しようとする顧客の出入りも疎らである。

 その代わり、頻繁にワンボックスカーが店舗に横付けされ、明らかに重量がありそうなバッグを運び込む男らが頻繁に目撃される。

 一体、Xではなにが行われているのか。

 実は、表向きジュエリーショップのXは「金密輸」の一大拠点なのだ。

密輸先として狙われる日本

 金の価格は相場に連動しているので世界共通だ。ただ多くの国では非課税になっているのにたいし、日本、韓国、インドなど課税対象としている国もいくつかある。なので、海外で非課税で購入した金を日本に持ち込む場合にも、申告し、消費税10%を納付しなければならない。

 実は今、その税制の違いを利用し、非課税の国で購入した金を日本に密輸したうえで、払っていない消費税分を上乗せした価格で転売することによって、消費税分を儲けようとする企てが横行しているのである。

 たとえば直近では、今年9月、愛知県警に韓国籍の男2人が関税法違反などの疑いで逮捕された。台湾から中部国際空港への入国に際し、税関に申告せずに金塊6kgを密輸し、消費税520万円を免れようとしたのだ。台湾から航空機に乗り込んだ1人の男が座席シートのなかに金塊を隠し、降機。その機体は中部空港を経由し、新千歳空港に向かう予定で、もう1人の男が同じ座席シートを予約し、金塊の回収を試みる手筈だった。

 さらに、今年2月にも韓国籍の3人を含め男女9人が第7管区海上保安本部に関税法違反の疑いで逮捕されている。こちらは、韓国・釜山と山口県下関市を結ぶフェリーで1個1kgの金塊30個を密輸しようと目論んだ。金塊は5個ずつ紙に包まれた状態でポーチ2つに入れられ、活魚の運搬車の助手席に置かれたインバーター(電力変換器)のなかに隠されていた。その金塊は非課税の香港などで手に入れ、わざわざ韓国を経由することで、密輸を疑われないようにしたと見られる。

 金の密輸を企てているのは、たいてい外国人の犯罪グループだ。なかでも、目下、台頭してきているのは中国人だという。冒頭で紹介したXはその代表格なのだ。