ユーザー事例でクラウド&コグニティブのメリットを強調
基調講演でLeBlanc氏は、IBMクラウドを利用し、ビジネスを前進させた数多くのユーザー事例を紹介した。
例えば、英国のファッションメーカーであるSHOP DIRECTは、すべてのシステムをIBMクラウドに移行させ、カスタマーエクスペリエンスの向上を実現した。また、白物家電メーカーである米WhirlpoolはIBMと提携。洗濯機などの家電をインターネットに接続して情報を収集し、Watsonのコグニティブ機能を使って顧客のニーズを理解することで、個々のサービスを提供できる環境を構築しているという。パナソニックは、100のウェブサイトと5万人のパートナーを有するパートナーポータルをIBMクラウドに移行させたとのことだ。
IBMクラウドの顧客企業ロゴを前に事例を紹介するLeBlanc氏
今回、ハイブリッドクラウドへの移行を促すツールとして発表されたのが、「IBM Cloud Connectors」である。これは、オンプレミス環境にあるデータや業務アプリケーションをクラウドから利用できるようにするコネクタツール群だ。
WebSphereポートフォリオをクラウドに拡張する「IBM WebSphere Cloud Connect」のほか、自社のシステムやデータをAPIとして公開、管理する「API Connect」、オンプレ/クラウドのアプリケーション向けビルド済みコネクタ「App Connect」、IBMのMQポートフォリオをBluemix Message Hubに接続するBluemixのサービスである「MQ Connect」、データのロードやマイグレーションを簡素化する「Dataworks」、ブロックチェーンクラウドからエンタープライズへの暗号化ルートを提供する「WebSphere Blockchain Connect」、アプリケーションとDB2に格納されているデータを容易に接続できるようになる「DB2 Connect」、 z Systemで実行されているアプリケーションのAPIなどを作成し、z Systemにあるデータやアプリケーションをクラウドと接続する「z/OS Connect Enterprise Edition」を新たにリリースした。
これらを利用すれば、アプリとデータをクラウドに移行させることはもちろん、アプリを拡張してクラウドにアクセスしたり、新規のクラウドアプリとバックエンドのアプリを連携させたりすることも可能になる。LeBlanc氏は、「こうしたコネクタの活用で企業は、アプリやデータへの何十億ドルといった投資を無駄にすることがなくなる」と主張した。
「Swift」がBluemix上で利用可能に
もう1つ注目された発表が、Appleが開発したプログラミング言語「Swift」がBluemix上で利用可能になったことである。Swiftは2015年にオープンソース化しており、Linux上でも利用できる。
基調講演にはAppleでプロダクトマーケティング担当バイスプレジデントを務めるBrian Croll氏が登壇し、「IBMはSwiftの最大のユーザー企業であり、100以上のモバイルファーストアプリケーションを開発している」と語り、両社の関係の深さを強調した。
IBMによると、AppleがSwiftのソースを公開し、IBMが「Swift Sandbox」をリリースしてからわずか2カ月間で10万人の早期テスト開発者がSwift Sandboxを利用し、50万以上のコードがSwift Sandboxで実行されたという。
Bluemix上でSwiftを利用するには、Swift Sandboxのほか、ウェブフレームワーク「Kitura」の活用、Bluemix上の「Swift Package Catalog」でSwiftリソースを共有するなどの方法がある。Croll氏は、「(iOS対応の)アプリは、1000億回ダウンロードされており、アプリの完成度に対するユーザーの期待値は上がっている。Swiftはアプリを迅速に開発できる言語であり、(Bluemix上で利用可能になったことで)その可能性はさらに拡大する」と語った。
Apple プロダクトマーケティング担当バイスプレジデント Brian Croll氏