企業におけるサイバー攻撃対策の“砦”として注目されるCSIRT。ただし、中小企業にとっては“高嶺の花”だ。リーズナブルなサービスの形で広く利用できる仕組みをつくれないものか。
EMCがCSIRT構築・運用支援サービスを提供
EMCジャパンが先頃、高度なサイバー攻撃に対抗する組織体制である「CSIRT」(Computer Security Incident Response Team)の構築・運用を支援するサービス「RSA Advanced Cyber Defence」(ACD)を提供開始すると発表した。
ACDは、米EMCのRSA事業部門が米国を中心とする企業に対してCSIRT構築・運用を支援してきた経験と、グローバル企業として世界各地の拠点をモニターする自社CSIRTの運用で培ってきた知見とノウハウに基づき、アセスメントからコンサルティング、構築・運用支援、技術トレーニングまでを総合的に提供するサービスである。
同社によると、企業におけるCSIRTの必要性は理解されてきているものの、企業規模、配置できる人員とCSIRTスタッフとしてのスキル、事業リスクの所在や種類などが企業ごとに異なるため、手本となる事例が少ないと指摘。高度化するセキュリティ脅威に対応する体制の確立が急がれる今、CSIRTスタッフとして機能する人材を育成し、CSIRTを構築、維持していくことが企業の課題となっているという。
そうしたニーズに対応したACDのサービス内容については関連記事を参照いただくとして、ここではCSIRTを大手企業が自ら設置するだけでなく、中小企業にもリーズナブルなサービスの形で広く利用できる仕組みをつくれないかという観点で考えてみたい。
「共助」のサービスとして実現したい中小企業向けCSIRT
その前に、あらためてCSIRTの役割について、11月5日付けのマカフィーの公式ブログにおいて非常に分かりやすく解説されているので、そこからポイントを抜粋して以下に紹介しておきたい。
「CSIRTはその名の通り、インシデントレスポンスを実施する組織である。インシデントレスポンスとは、ウイルス感染、不正アクセス、情報漏えいなどのセキュリティ脅威に対して、原因の調査、対策の検討、サービス復旧などを適切に行うことを意味している。これまで企業は、ファイアウォールやエンドポイントのウイルス対策などさまざまなセキュリティ対策製品を導入し、セキュリティ脅威に対処してきた。つまり、まずは問題を起こさないことに注力してきた」
「しかし、サイバー攻撃手法が高度化している現在、ある程度被害を受ける可能性があることを想定しておくことが大切だと考えられるようになってきた。そこで、セキュリティインシデントが起こることを前提に、被害を最小限に抑えるための組織づくりの一環として、CSIRTを構築する企業が増えてきた」
特に最後の部分がミソである。こうしたCSIRTを中小企業でもリーズナブルに広く利用できるようにするために、例えば健康保険組合のような「共助」のサービスとして構築・運用することはできないものか。必要なリソースやノウハウは、先に紹介したEMCのサービスなどを適用すればいい。費用面で公的補助があれば、実現性は高まるだろう。
EMCジャパンの発表会見でこうしたCSIRTのサービス提供について聞いたところ、EMCのRSA事業部門でACDを推進するシニアマネージャーのStephen McCombie氏は、「米国企業ではセキュリティ対策を外部に委託しているケースも少なくない。
米EMCのRSA事業部門でACDを推進するシニアマネージャーのStephen McCombie氏
ACDはどのような利用形態でも適用できる」と語った。EMCによると、CSIRTにはネットワークやデバイスを24時間365日監視してサイバー攻撃の検出・分析、対応策のアドバイスを行う「SOC」(Security Operation Center)の機能も含んでいると解釈していいようだ。
今後ますます高度化するサイバー攻撃に対処するためには、企業規模にかかわらずCSIRTを利用できるようにすべきだと考える。大手企業は「自助」で対応できるだろうが、中小企業には「共助」の仕組みが不可欠ではないか。もう、そうしたことを考えなければいけない段階に入っていると、一言もの申しておきたい。