多様なシステムから生み出される多種、大量の「データ」を高速に分析し、そこから得た知見をビジネスの競争力強化や顧客満足度の向上に役立てようとする取り組み——「ビッグデータ」が、大きな注目を集めている。
4月中旬に開催された日本IBM主催の「Information On Demand Conference Japan 2012」の中で、実際にこのビックデータを活用して成果をあげているいくつかの企業の事例が紹介された。その中には、日本人口の約3割におよぶ個人消費者の購買行動に関するデータを活用し、パートナーに対してマーケティング視点での分析サービスを提供している企業があった。
「Tポイント」サービスを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)である。
同社アライアンスコンサルティング研究所チームリーダーの山本卓也氏は、「Tポイント事業における大規模データ分析事例のご紹介」と題したセッションで、Tポイント事業の現状と、そこで得られたデータを元にした分析から、企業はどのような知見を得ることができるのかについて説明を行った。
会員は日本人口の約3割 20歳代では6割以上
山本氏はまず、現在のTポイント事業の会員数、そしてTポイントカードの発行拠点となるアライアンスパートナーのプロファイルを紹介した。
ポイント事業開始から約10年を経て、2012年3月末現在での名寄せ後(同一人物が複数の会員番号を持っている場合は1人とする)の会員数は3907万人となっているという。これは日本の総人口の約3分の1に相当する人数だ。また、年齢構成で見た場合には、20歳代の日本人の63.8%がTポイント会員になっている計算になるという。
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Tポイントカードを発行したり、会員がTポイントを貯め、使うことができるアライアンスパートナーの数は、2012年4月末現在で83社、4万4637店舗にのぼる。パートナーの業種は、外食産業やコンビニエンスストア、スーパーといった食品関連、住宅ローンや賃貸仲介などの住居関連、そしてカラオケ店やスポーツクラブなどのレジャーサービス関連を含めて多岐にわたる。
Tポイント事業では、こうした幅広いドメインにパートナーを作ることにより、それぞれの拠点の特性に応じたユーザー層を獲得。実際の年齢分布に会員構成を近づけているとする。今後も、各ドミナントに対応した形での提携先増加を目指していくという。
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「何がいくつ売れたか」から「誰が何を買ったか」へ
山本卓也氏
山本氏は、Tポイントサービスによって得られる消費者行動のデータを「ID付きPOSデータ」だと表現する。一般的なPOSでは「何がどれだけ売れたか」をリアルタイムに知ることができた。また、レジ担当者の作業によって「どのくらいの年齢の、どの性別の人が、どの商品を買ったか」といった情報までは取得可能だった。
TポイントカードのIDに結びつけられたPOSデータからは「誰が何を買ったか」がより正確に分かるようになる。アライアンスコンサルティング研究所では、「Tポイントカード提携先のニーズや抱えている課題への取り組みにあたって、データ分析の手法を活用したPDCAサイクルの維持を支援する」ことがミッションであるとした。
「ポイントデータの分析にあたっては、行動変数、心理変数、デモグラフィック変数、ジオグラフィック変数などの多彩な変数が利用できる。この分析から得られる知見を、集客だけでなく、経営効率化の糸口にしてほしいと考えている」(山本氏)
現在、同社では各提携先からのオーダーに対して、約30名の社員がデータ分析に当たっているとする。この分析のためのデータは、日本オラクルの「Oracle Exadata」によって構築された同社の「データベースクラウド」に格納されており、分析ツールとしては、IBMが買収した統計パッケージ「SPSS」の「PASW Modeler」を利用しているという。