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送配電網協議会

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
送配電網協議会
Transmission and Distribution Gird Council
左端が経団連会館。
略称 TDGC、送配協、送配電網協
前身 電気事業連合会 電力技術部・工務部
所在地 東京都千代田区大手町1丁目3番2号
会員数
10社
ウェブサイト https://www.tdgc.jp/
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送配電網協議会(そうはいでんもうきょうぎかい)は、日本の一般送配電事業者10社で組織する団体[1]。一般送配電事業者10社の協調、関係行政機関との連携、関係行政機関への提案、情報発信などのための業界団体である[2]電気事業連合会から派生した[1]。略称に、送配電網協[3]送配協[4]TDGC[5]がある。

組織

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会員は、以下の10社である[5]

  1. 北海道電力ネットワーク株式会社
  2. 東北電力ネットワーク株式会社
  3. 東京電力パワーグリッド株式会社
  4. 中部電力パワーグリッド株式会社
  5. 北陸電力送配電株式会社
  6. 関西電力送配電株式会社
  7. 中国電力ネットワーク株式会社
  8. 四国電力送配電株式会社
  9. 九州電力送配電株式会社
  10. 沖縄電力株式会社

法人格のない団体であり、東京都千代田区大手町経団連会館に事務所を置く[5]

役員として、会長(非常勤)、副会長(非常勤)、常勤の理事1人(常勤のトップ[6])、非常勤の理事10人を置く[2]。非常勤の理事は、沖縄電力以外の9社の社長と沖縄電力の常務取締役送配電本部長とが就任する[2]。会長・副会長は、非常勤の理事のうちから選出する[2]

機関として、総会、理事会、事務局、各種委員会を設置する[2]。事務局長は、常勤の理事が兼ねる[2]

需給調整市場

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電力会社が電力系統を通じ供給する電気の周波数が一定範囲から外れて変動することは、機器の故障や大規模な停電につながる。周波数を一定範囲内に維持するためには、負荷(電力需要)の増減に応じて発電設備の出力を加減することにより、需要電力と発電電力とのバランスを保ち、発電機の回転数を一定範囲内に維持することが必要である。このような周波数維持・需給バランス調整の目的で使用できる発電設備(電源)を調整力という[7]

2016年4月以降の日本の電気事業制度では、電力系統の周波数を維持する責任(周波数維持義務)は、送配電網を維持・運用する一般送配電事業者が負っている[8]。2020年4月以降、一般送配電事業者は、発電事業者から分離されており、発電設備を所有していない(一部の離島と沖縄電力を除く)。このため、一般送配電事業者は、2018年度分(2017年度公募)以降、毎年度、調整力を公募しており[7]、応募した発電事業者と契約し、対価を支払って、調整力となる発電設備を制御する権限を手に入れている。

2021年3月、沖縄電力を除く一般送配電事業者9社は、調整力を取引する需給調整市場を運営する組合として、電力需給調整力取引所を設立した[9]。取引所が需給調整市場を開設し、2021年4月分以降、9社は一部の調整力を市場から調達するようになった[7]。送配電網協議会は、取引所から需給調整市場の運営に関係する業務を受託している[7]

沿革

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沖縄電力(1972年設立)以外の9電力会社は、連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ/SCAP) の指示に基づく占領行政の一環である電気事業再編成により1951年5月に発足した。吉田内閣は当初、電気事業再編成を法律に基づき実行する方針で、電気事業再編成法案と公益事業法案を第7回国会に提出した。しかしながら、野党のみならず与党にも反対論者が多く、法案は審議未了で廃案となった。そこで、内閣は、国会が可決しなかった法案と同様の条項をポツダム政令(電気事業再編成令・公益事業令)として制定するという占領下でのみ可能な非民主的手法により、電気事業再編成を断行した。再編成により発足した9電力会社は直後に電気料金の大幅な引上げを申請し、世論はこれに強く反発した。1952年4月に平和条約が発効して占領行政が終了すると、占領下に行われた電気事業再編成のやり直しを求める「電気事業再々編成論」が勢いを得た。

「電気事業再々編成論」の台頭に脅威を感じた9電力会社は1952年11月、業界団体として電気事業連合会を結成し、「再々編成」の機運を殺ぐための各種活動に心血を注いだ。その一環として、9社は自主的な「広域運営」により電気の安定供給と原価抑制を図るため、1956年9月に電力融通協議会を結成した。1958年4月、9社と電源開発との間で「広域運営に関する協定書」が締結され、電力需給の安定と電気料金原価高騰抑制のため、この10社が協力して電気事業の広域運営を進めることになり、広域運営のための機関として中央電力協議会と地域電力協議会(北地域電力協議会、東地域電力協議会、中地域電力協議会、西地域電力協議会)を設置した。

中央電力協議会の事務局にあった設備運用部は、1997年7月、電気事業連合会に移管され、電力計画部、工務部などになった[10]。電力計画部は2000年3月、電力技術部になった[11]。中央電力協議会は2016年3月末をもって閉会した[12]

2020年4月、電気事業連合会内に送配電網協議会設立準備室が発足し、電力技術部の業務を引き継いだ[13]。10月、電気事業連合会の内部組織として送配電網協議会が発足した[1]。2021年3月、設立総会を開催し[2]、4月、送配電網協議会が電気事業連合会から独立した[1]。また、電気事業連合会の工務部の業務が送配電網協議会に移管された[6]。送配電網協議会の初代会長には関西電力送配電代表取締役社長の土井義宏が、初代副会長には東北電力ネットワーク取締役社長の坂本光弘が、初代常勤トップの理事・事務局長には中部電力副社長を経験した平岩芳朗が就任した[2][6]

関連項目

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出典

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  1. ^ a b c d 北海道電力ネットワーク株式会社ほか (2020年9月30日). “「送配電網協議会」の設置および需給調整市場の利便性向上を目的とした受付窓口の設置について”. 送配電網協議会. 2021年3月13日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h 北海道電力ネットワーク株式会社ほか (2021年3月17日). “「送配電網協議会」の設立について”. 送配電網協議会. 2021年3月17日閲覧。
  3. ^ “送配電網協、系統技術の次世代化へロードマップ策定: 50年排出ゼロへ”. 電気新聞: p. 1. (2021年5月24日). オリジナルの2021年5月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210524104113/https://www.denkishimbun.com/archives/125145 2021年5月24日閲覧。 
  4. ^ “災害時の連携事例、送配協HPで公開: 情報共有で良好例取り入れ”. 電気新聞: p. 2. (2022年1月24日). オリジナルの2022年2月2日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220123220615/https://www.denkishimbun.com/archives/177824 2022年2月2日閲覧。 
  5. ^ a b c 送配電網協議会. “組織概要”. 送配電網協議会. 2021年5月24日閲覧。
  6. ^ a b c “送配電網協議会、理事・事務局長に平岩氏”. 電気新聞: p. 1. (2021年2月8日). https://www.denkishimbun.com/archives/106489 2021年3月17日閲覧。 
  7. ^ a b c d 需給調整市場とは”. 送配電網協議会. 2021年3月13日閲覧。
  8. ^ 電気事業法第26条第1項「一般送配電事業者は、その供給する電気の電圧及び周波数の値を経済産業省令で定める値に維持するように努めなければならない。」
  9. ^ 北海道電力ネットワーク株式会社ほか (2021年3月17日). “「電力需給調整力取引所」の設立について”. 送配電網協議会. 2021年3月17日閲覧。
  10. ^ 中央電力協議会 (2016). 中央電力協議会58年の記録. 電気事業連合会技術開発部. pp. 23-25 
  11. ^ 中央電力協議会 (2016). 中央電力協議会58年の記録. 電気事業連合会技術開発部. pp. 34-35 
  12. ^ 中央電力協議会 (2016). 中央電力協議会58年の記録. 電気事業連合会技術開発部. p. 45 
  13. ^ 電気事業連合会 (2020年3月13日). “「送配電網協議会設立準備室」の設置について: 分社化される一般送配電事業者による協議会設立に向けて”. 電気事業連合会. 2021年3月13日閲覧。

外部リンク

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