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源語秘訣

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

源語秘訣』(げんごひけつ)は、一条兼良が『源氏物語』の秘事を記し、子息・一条冬良に伝えた秘伝書である。以下の名称でも呼ばれる。

  • 源語秘訣抄』(げんごひけつしょう)
  • 源氏十五箇奥義』(げんじじゅうごかおうぎ)
  • 源私抄』(げんししょう)
  • 源氏秘説』(げんじひせつ)
  • 源氏十七ヶ条秘訣』(げんじじゅうしちかじょうひけつ)
  • 源氏不審抄』(げんじふしんしょう)
  • 源氏物語之内秘事十五ヶ条』(げんじものがたりのひじじゅうごかじょう)
  • 源氏物語秘訣抄』(げんじものがたりひけつしょう)
  • 源氏物語秘事』(げんじものがたりひじ)

著者

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一条兼良室町時代公卿摂政関白で古典学者である。一般に「かねら」と呼ばれることが多い。兼良の著作とされる抄出・注釈・評論・随筆戯作は『弁疑書目録』(べんぎしょもくろく)によって窺える。『弁疑書目録』は兼良の著作書目を多く載せている(すべて著作というわけではなく、学ぶ際に書写・抄出・覚書の形式をとり、後世から著作とされることもある)[1]。この中に『花鳥余情』のほか、難語を解釈した『源氏物語和秘抄』(『和秘鈔』とも)、光源氏の年譜である『源氏物語年立』、有職故実を記す『江家次第』なども記されている。研究は公事の根源を究めるため、学は和漢、神儒仏教の3教にも及んでいる。

成立

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花鳥余情』が完成する文明4年(1472年)に13か条の『花鳥口伝抄』(かちょうくでんしょう)を作成し、その後1項目替え、『口伝抄』(くでんしょう)を作り終えていることから、本来3か条の秘事と10か条の口伝を合わせた13か条であった。その後2項目加え15か条の『源語秘訣』ができたとされる[2]

書誌

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以下2種の奥書(おくがき)によって伝本を分類できるが、内容はほぼ同一である。

  • 唯伝一子之書也不可出閫外付嘱中納言中将畢、
    文明九年二月吉日 老衲覚恵 草名
  • 唯伝一子之秘説也堅可禁外見者也 後成恩寺御奥書同御判

前者は冬良に授けた相伝本、後者は前者とは別系統で他者から求められた際、「一子にしか伝えないほどの秘説」とに断り書き(但し書き)したものとされる[2]

概要

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文明9年(1477年)に成立。全1冊で15項目からなるが、一説によると、16・17項目からなる。巻名と内容に関しての項目があり、有職故実に関することを含め、兼良自身の考察が書かれている。

花鳥余情』は序文によると、四辻善成の『河海抄』の不足を補い、訂正を行うためとあるが、『源語秘訣』は『花鳥余情』の秘伝書として著している。『源語秘訣』本文には「色々の説あり、いつれも皆あやまり也、信用すへからす」(榊巻)、「旧説さま/\にいへり、皆証拠もなき事也、もちゐるにたらす」(乙女巻)など旧説に対し否定する箇所も見られる。

内容

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『花鳥余情』に「秘説これあり、別にしるすべし」などとしている項目に関しての注である。以下15項目からなり、そのうち最後の1項目は奥書の後に書かれているものもある。

  • 無服殯の事(桐壺巻)
  • 揚名のすけの事(夕顔巻)
  • 侍童着指貫事(夕顔巻)
  • おきなもほとくまひ出ぬへき事(花宴巻)
  • 大将かりの随身事(巻)
  • ねの子の三か一の事(葵巻)
  • さるもしいませ給への事(葵巻)
  • とのゐもの袋の事(賢木巻)
  • まくなきの事(明石巻)
  • わか君のたすき引ゆひ給へる事(薄雲巻)
  • をしかいもとあるしの事(乙女巻)
  • 水鳥のくかにまとへる事(玉鬘巻)
  • 高巾子の事(初音巻)
  • ひのよそひの事(胡蝶巻)
  • ついたちころ月の事(藤裏葉巻)

以下は奥書の後に書かれている項目

  • 外にかつらの院(松風巻)

このうち「揚名介」(ようめいのすけ)「ねのこの餅」「とのゐものの袋」は「三箇の秘事といひつたへたり」とする。『花鳥余情』で「とのゐものの袋」の条には「ことなる事なけれど、秘事といひつたへたる事なければ、あらはにしるすに及ばず」と注している。

『花鳥余情』の〈別注〉と『源語秘訣』の項目には、項目数は同じであるが、項目内容が重ならないものもある。また項目内容が重なるが、大内政弘の求めに応じて与えた『花鳥口伝抄』と、冬良以外に送った『口伝抄』では解説や典拠を省略し、『源語秘訣』にのみ記述がある。

諸本

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著者自筆本は現在伝わっていない。写本版本は多いため、以下一部挙げておく。

写本

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  • 国立国会図書館蔵本
  • 国立公文書館内閣文庫本(延宝8年写)(校正本)
  • 静嘉堂文庫本
  • 東洋文庫岩崎文庫本
  • 宮内庁書陵部蔵本(寛延2年源芳隆写)
  • 東京国立博物館蔵本(寛文8年坂上家広写)
  • 学習院大学蔵本
  • 東京大学蔵本(伴信友写)
  • 国学院大学蔵本(寛文8年窪氏知足軒奥書)
  • 北野天満宮蔵本
  • 神宮文庫本
  • 前田育徳会尊経閣文庫本
  • 京都大学蔵本(吉村正武写・寛文8奥書)
  • 立命館大学図書館西園寺文庫蔵本(西園寺賞季写・明和5奥書)

版本

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刊年が延宝8年版

  • 国立国会図書館蔵本
  • 国立公文書館内閣文庫本(加茂真淵等書入本)
  • 静嘉堂文庫本
  • 九州大学蔵本
  • 早稲田大学蔵本
  • 浅野文庫本
  • 神宮文庫本

中村孫兵衛版(同版ながら刊年が不明も存する)

  • 国立国会図書館本
  • 静嘉堂文庫本
  • 学習院大学蔵本

翻刻本

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  • 群書類従』巻319;物語部13
  • 梁瀬一雄・伊井春樹『源語研究資料集』(碧冲洞叢書第87輯)1969年(昭和44年)2月
  • 『増補国語国文学研究史大成3 源氏物語上』三省堂 1977年(昭和52年)
  • 中野幸一編『源氏物語古註釈叢刊 第2巻 花鳥余情 源氏和秘抄 源氏物語之内不審条々 源語秘訣 口伝抄』武蔵野書院 1978年(昭和53年)12月

マイクロフィルム

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静嘉堂文庫所蔵

  • 『源語秘訣』『源語秘訣抜粋』(物語文学書集成)雄松堂書店

脚注

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  1. ^ 永島福太郎著『人物叢書 新装版 一条兼良』吉川弘文館 1988年(昭和63年)12月
  2. ^ a b 「源氏和秘抄」伊井春樹編『源氏物語 注釈書・享受史事典』東京堂出版 2001年(平成13年)9月

参考文献

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  • 伊井春樹編『源氏物語 注釈書・享受史事典』東京堂出版、2001年(平成13年)9月発行
  • 日本古典文学大辞典編纂委員会編『日本古典文学大辞典』1983年(昭和58年)10月 - 1985年(昭和60年)2月発行
  • 正宗敦夫編『覆刻 日本古典全集 書目集 上』現代思潮社 1980年(昭和55年)2月発行
  • 永島福太郎著『人物叢書 新装版 一条兼良』吉川弘文館 1988年(昭和63年)12月
  • 国書総目録

関連項目

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外部リンク

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